自己破産
自己破産した後の生活はどうなる?よくある不安と知っておきたいポイント
2024.11.28
自己破産をして借金問題の解決を検討している方にとって、どういったリスクが伴うかは事前に把握しておくべきです。
そして、自分だけでなく家族にはどのような影響が及ぶかも知っておく必要があります。
本記事では、自己破産によって自分が受ける影響、家族への影響について解説します。
一方で、自己破産により影響を受けないことや、自己破産をしないほうがよい可能性の高い人の特徴にも触れていくため、ぜひ参考にしてください。
自己破産をして自身が受ける影響にはどういったものがあるのか、事前に把握しておくことでリスク回避に繋がります。
ここからは、主に挙げられる8つの影響について解説します。
自己破産をすると、個人信用情報機関に事故情報が登録されます。
この状態を俗に「ブラックリストに載る」といい、さまざまな影響が生じます。
ブラックリストに載ると、クレジットカードの新規発行や各種ローンの申し込みの審査が通らなくなるなどします。
なお、事故情報は5年から7年に渡り残ります。
いつ誰が自己破産をしたかという情報は、官報に掲載されてしまいます。
官報とは国が発行する新聞のようなもので、掲載されることで周囲に自己破産をしたことがバレるリスクがあります。
ただし、官報を日常的に参照される職種の方は限られるでしょう。
ほとんどの方は、官報をみたこともないと考えられます。
そのため官報への掲載によって、自己破産したことが周囲にバレる可能性は低いです。
自己破産をすると職業制限を受けるため、主に次のような仕事には就けません。
自己破産をすると士業や警備員などの職種には就けないため、対象となる仕事を生業としている場合は影響を受けます。
なお、職業制限を受ける期間は自己破産の手続きをしている数ヵ月間のみで、この先一切その仕事に就けない訳ではありません。
仮に資格を必要とする職業に就いている場合でも、自己破産によって資格がはく奪されるわけではありません。
自己破産をすると高価な財産は処分の対象となるため、家や車などは手放さなければならない可能性があります。
そのほかにも、価値が20万円以上の財産については債務者への配当に充てられるため、自己破産をすると失うことになります。
また、20万円を超える預貯金や99万円を超える現金、ローンを完済していない商品なども処分の対象です。
スマートフォンを所持するにあたって、端末代が高額なことから分割にする方は少なくないでしょう。
自己破産をするとスマートフォンの分割払いはできなくなります。
そのため、スマートフォンの購入がし辛くなるでしょう。(一括での購入であれば可能。)
自己破産時にスマートフォンの分割払いが終わっていなかった場合は、強制解約となるのが一般的です。
携帯電話会社との間でおこなわれたスマートフォンの割賦購入契約は、自己破産の免責対象となります。
そのため割賦購入契約の残債は支払わなくてよくなりますが、携帯電話会社も自己破産の事実を知ることになるのです。
その結果、携帯電話会社との契約に従って強制解約となります。
ただし、すでに端末代の支払いが完了している、利用料金の滞納が無い場合は所持し続けられます。
スマートフォンは高額といえど、自己破産による処分の対象となる、20万円以上のものとなることは少ないため、処分されることはほぼないでしょう。
自己破産をすると賃貸住宅に住めない場合があります。
賃貸住宅に住む際は賃貸保証会社と契約を結ばなければいけない場合がありますが、一部の賃貸保証会社では審査時に信用情報を確認することがあるのです。
そのため賃貸住宅によっては、審査に通過できず入居できない場合があります。
入居・更新の審査時に信用情報を参照するのは、信販系と呼ばれる賃貸保証会社です。
主にクレジットカード関連の保証会社が信販系に含まれ、信用情報機関に加盟しています。
信販系の賃貸保証会社で審査を通過できなかった際は、ほかの保証会社が使えないか不動産会社へ相談しましょう。
そのほか連帯保証人をつけたり、賃貸保証会社が不要の賃貸住宅を選んだりする方法もあります。
いずれにせよ、不動産会社に相談するとよいでしょう。
自己破産をするとブラックリストに載ることから、保証人になれません。
たとえば、子どもの奨学金の保証人になれず、家族に迷惑をかけてしまう可能性があります。
奨学金だけでなく、さまざまな金融商品に対して保証人になることもできません。
なお保証機関が連帯保証をする機関保証制度を使えれば、保証人不要で奨学金の借り入れが可能です。
自己破産をすると、加入している保険を解約しなければいけない場合があります。
保険によっては解約すると加入者に現金が戻ってくる解約返戻金というものがあり、その額が20万円を超える場合は原則として解約のうえ債権者へ分配されるのです。
ただし、解約返戻金が20万円以下の場合は解約の必要はありません。
自己破産による影響は自分自身だけでなく、家族にも及びます。
では、どのような問題が発生するのでしょうか。
ここからは、自己破産によって家族に与える影響について解説します。
自己破産をすると価値ある財産を失いますが、持ち家もその対象です。
破産者が名義となる不動産は自己破産を機に処分されるため、同居する家族は家を失うことになります。
持ち家を失い引っ越しをしなければならなくなると、家族への影響も小さくないでしょう。
子どもの転校や配偶者の転勤などが必要になる可能性もあります。
車も一定の価値があれば、自己破産によって処分されます。
すると、移動手段として活用していた車を失うことにより生活が不便になるでしょう。
なお、ローンが残っている場合についても信販会社に引き揚げられるため、手元に残りません。
日々の生活で買い物に使っていた、通勤の足となっていた、子どもをはじめ家族の送迎に使っていたなどの場合は影響を受けてしまいます。
20万円を超える預貯金については、自己破産をすると処分の対象となります。
一方で子ども名義の預金は、原則として親の自己破産によって処分さることはありません。
しかし、子ども名義でも親が貯金をしている場合、口座の所有者は親とみなされます。
故に、子ども名義でも処分の対象になる恐れがあります。
子ども名義で積み立てた学資保険についても、生命保険同様に解約返戻金が20万円を超える場合は解約されます。
これによって教育費を確保しづらくなり、子どもの進学先に影響が生じる可能性もあるのです。
自己破産をすると破産者名義となる本会員カードはもちろんのこと、それに紐づいている家族カードも使用不可となります。
家族カードで普段の買い物などをしていた場合、家族に影響が出るでしょう。
家族カードで公共料金を支払っていた場合などは、支払い方法の切り替えも必要になります。
家族が連帯保証人になっている場合は、自己破産により本人が支払えなくなったものは肩代わりしなければいけません。
つまり、連帯保証人である家族に請求が向かうため、甚大な影響を及ぼしてしまうのです。
たとえば、まだ残債がほとんど残っている住宅ローンの連帯保証人が家族だった場合、その家族に一括返済が求められます。
一括返済が高額となれば支払えない可能性もあるため、そうなると家族も債務整理をせざるを得ない可能性があるのです。
自己破産の手続きをすることで、自身はもちろん家族にも多大な影響を及ぼします。
そのため、自己破産に踏み切るにしても、自身や家族の人生に与える影響、周囲への配慮などが求められます。
しかし、自己破産による影響に対する認識違いを起こしている方も少なくありません。
ここからは、自己破産の手続きをしても影響しないことを紹介します。
不安材料を少しでも排除できることに繋がるため、ぜひチェックしておいてください。
自己破産の手続きを開始すると、そのあとに得た収入も回収されると認識している方は一定数いるかもしれません。
しかし、手続きを開始してからの収入は新得財産といい、回収対象外となります。
また、収入だけでなく財産についても、自己破産の手続き開始後に得たものであれば回収されません。
一定期間が経過しブラックリストから削除されれば、クレジットカードを作ったりローンを契約したりすることもできるようになります。
自己破産をしたことは自分から言い出さない限り、友人や勤務先、近隣に住む方などに知られる可能性はほぼありません。
自己破産をした事実は前述のとおり国の機関紙「官報」に掲載されますが、ほとんどの方は官報を読むことはないでしょう。
自己破産後も、要件を満たせば生活保護を受給し続けられます。
生活保護は経済的に苦しんでいる方に対し健康で文化的な最低限の生活を保障するためのものなので、自己破産が影響しないのです。
自己破産をしたことは戸籍や住民票には記載されないため、これらから誰かに知られる心配はありません。
マイナンバーについても個人信用情報機関と紐づいていないことから、マイナンバーから自己破産の情報がバレることもありません。
自己破産をしても、自分から言わない限り勤務先に知られることはまずありません。
仮に勤務先に知られたとしても、自己破産したことを理由に解雇することは法律上許されていないのです。
就職活動・転職活動についても同様に、自己破産をしたことが影響することは基本的にありません。
選挙権は18歳以上の日本国民に与えられている権利であり、自己破産をしても失うことはありません。
自己破産の手続き中、もしくは手続きが完了してからも問題なく投票できます。
自己破産により結婚できないという法律はないため、法的な観点からいうと問題ありません。
ただし、自己破産をするとその後の人生に影響するため、相手から婚約について白紙にするよう求められる可能性はゼロではないでしょう。
また、自己破産を理由に相手から離婚を要求されることはあるかもしれませんが、離婚裁判に発展した場合、自己破産により敗訴となることは原則考えにくいです。
仮に自己破産について隠していた場合は、法定離婚事由の「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性があります。
慰謝料や交通事故などの損害賠償請求が、自己破産によって免責されるというのも誤解です。
以下の条件に該当すると非免責債権とされ、自己破産によって免責されることはありません。
上記のような損害賠償まで自己破産で免責されると、被害者を救済できないので非免責債権のルールが定められているのです。
たとえば交通事故の損害賠償について、加害者がわざと事故を起こしていたり、重大な過失とみなされたりする場合は非免責債権とされます。
そのため自己破産によって、免責されることはないわけです。
逆に言うと、上記にあてはまらない損害賠償請求については、自己破産によって免責される可能性があります。
慰謝料についても、自己破産によって免責されるかは個別の状況次第です。
たとえば配偶者のDVで離婚し慰謝料を求めるケースでは、「悪意による不法行為に基づく損害賠償義務」と判断される可能性が高いといえます。
この場合、慰謝料は非免責債権とされ免責はされません。
一方、配偶者の不倫で慰謝料を求める場合は、非免責債権とみなされず免責となる可能性が高くなっています。
いずれにしろ個別の状況次第なので、判断に迷う場合は弁護士へ相談してアドバイスを求めるとよいでしょう。
税金については、自己破産をしても免除されません。
また、年金についても非免責債権に該当することから、自己破産をしても支払う必要があります。
仮に滞納を続けた場合は、財産の差し押さえに遭う可能性があるため注意してください。
国民年金や厚生年金といった公的年金は差押禁止債権に当たるため、自己破産をしても受給可能です。
ただし、個人年金は差押禁止債権ではないため、解約返戻金が20万円を超える場合は処分される可能性があります。
自己破産をしても海外へ行くことに制限はないため、旅行や出張などは自由です。
ただし、自己破産の手続き中において長期間に渡って自宅を離れる場合や住所を変更する場合は、事前に裁判所からの許可が必要となります。
自己破産は借金を帳消しにできる可能性がある手続きです。
しかし、多額の借金を抱えていても、自己破産をしないほうがよい場合もあります。
ここからは、自己破産以外の方法を検討したほうがよい方について解説します。
借金問題を解決する債務整理には、自己破産以外に任意整理や個人再生があります。
任意整理は裁判所を介さずに債権者と直接交渉のうえ、借金を減額する手続きです。
自己破産より大きな減額にはなりませんが、財産を残せる点がメリットに挙げられます。
そして、個人再生は裁判所を介して借金を大幅に減額でき、かつ財産も残せます。
任意整理もしくは個人再生で解決できる場合は、財産を失うという自己破産のリスクを避けるほうが好ましいです。
自己破産をすると20万円以上の価値がある財産は処分されるため、持ち家や車などは自己破産の手続きにより失ってしまう可能性が高いです。
これら財産を失いたくない場合は、自己破産でなく任意整理や個人再生で解決できないか、弁護士にアドバイスを求めるとよいでしょう。
自己破産の手続き中は、職業制限を受けてしまいます。
主な対象は弁護士や税理士などの士業、警備員、銀行・不動産関係などです。
これらの職業についている方は、破産手続き中は制限されている仕事ができません。
その間は社内で別の業務を担当したり、一時的に休職したりする必要があります。
破産手続きの完了後は仕事を再開できますが、不安な方は任意整理や個人再生も検討しましょう。
本記事では、自己破産による自分や家族への影響、一方で影響を受けないことを解説したうえで、自己破産をしないほうがよい可能性が高い人の特徴も紹介しました。
自己破産で家や車を失えば、自分自身だけでなく、一緒に暮らしている家族にも影響します。
クレジットカードなどが使えなくなることで、経済的に困ることも少なくないでしょう。
一方で自分から言わなければ友人などに自己破産をしたことがバレる可能性は低い、雇用は法的に問題ないなど、影響を受けないこともあります。
財産を失いたくない、制限を受ける職業に就いているなど、自己破産をせずに解決できることが好ましい方もいます。
自身での判断が難しい場合は、法律を熟知する弁護士への相談がおすすめです。