自己破産
自己破産した後の生活はどうなる?よくある不安と知っておきたいポイント
2024.11.28
自己破産は抱えている借金を整理する際に有効な手段ですが、手続きを進めることでさまざまな影響を及ぼします。
その際、自分ではなく家族にはどういった影響を及ぼすかは知っておきたいところです。
本記事では、自己破産をすることで家族に与えるデメリットを解説します。
また、家族への迷惑を最小限にする方法についても触れていくため、自己破産を検討している方はぜひ参考にしてください。
自己破産をすることで家族にどういった影響を与えてしまうのか、手続きを検討している場合はなるべく迷惑をかけないよう把握しておきたいところです。
ここからは、自己破産で家族に与える可能性のある5つのデメリットについて解説します。
自己破産をすると20万円以上の価値がある高価な財産は処分の対象となるため、自己破産をされる方が名義となっている家や車などは失う可能性があります。
仮に名義が自己破産をされる方でないにしても、家や車などを購入する際に収入や借金から工面をした場合、破産者の財産と判断され処分の対象になることがあるのです。
これらを処分して得られたお金は、債権者への配当に充てられます。
一方、配偶者が自分の貯金で購入した車や、両親がローンを組み購入した家など、家族所有の財産は処分の対象にはなりません。
自己破産後も、家族はそれらを所有することができます。
自己破産をした際に抱えている借金について、家族が連帯保証人になっている場合はその家族が返済義務を負わなければいけません。
この場合、借金が高額であっても、家族が一括での返済を求められることになります。
急に多額の一括返済を求められると家族に迷惑をかけてしまうため、自己破産を検討している場合は事前に知らせることは必須です。
クレジットカードの本会員である方が自己破産をした場合、それに紐づいている家族カードについては解約となり使用できなくなります。
今やクレジットカードは主な支払い手段として使われているため、影響は小さくないでしょう。
家族が契約して本会員となっているクレジットカードについては、破産者とは関係ないため使い続けられます。
自己破産された方が名義となっている保険契約に、20万円を超える解約返戻金がある場合は原則として解約されます。
解約返戻金とは、文字通り保険契約の解約時に払い戻されるお金です。
自己破産では20万円を超える解約返戻金がある保険も、高額な財産として処分の対象となります。
一方、解約返戻金の金額が20万円以下の場合や、掛け捨て型で解約返戻金のない保険については処分されません。
多額の解約返戻金がある場合、保険を解約して手に入るお金が債権者への配当に充てられるのです。
子どもの学資保険や配偶者の生命保険など、破産者が保険料を支払っている保険についても、解約となる可能性があります。
手元の現金についても、99万円を超える分については債権者の配当に充てるため没収されます。
たとえば子どもの先々のために自宅の金庫などにお金を貯めていた場合でも、自己破産される方の収入から貯蓄されていたのであれば、処分される場合があるのです。
自己破産をすると借金苦から解放されるのと引き換えに、人生において多大な影響を受けることになります。
家族にも悪影響を及ぼすことは明白ですが、自己破産に対する認識相違も少なくありません。
ここからは、自己破産と家族に関して、よくある誤解について解説していきます。
自己破産をすると破産者本人だけでなく周囲を含め、一文無しになると認識している方は多いでしょう。
しかし、それではこの先生活ができないことから、自己破産をしても99万円以下の現金は自由財産として手元に残せます。
99万円というのは、民事執行法と破産法により定められた金額です。
民事執行法では「標準的な世帯の2ヵ月分の必要生活費」として、「33万円×2=66万円」は差押えの対象外としています。
破産法では民事執行法のルールを拡張し、その1.5倍(3/2倍)の99万円までを自由財産としているのです。
(破産財団の範囲)
第三十四条破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
3第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
一民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
引用元:破産法 | e-Gov 法令検索
(差押禁止動産)
第百三十一条次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
一債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
三標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
引用元: 民事執行法 | e-Gov 法令検索
自己破産をしても家族名義の財産については処分されません。
処分対象となるものは、あくまで破産者本人名義の財産です。
そのため家や車なども、名義が破産者ではない場合は処分されず保有し続けられます。
自己破産をした者が家族にいると、就職や結婚に影響すると考えている方は少なくないかもしれませんが、基本的には影響しないといえます。
まず、就職について破産者は資格や職業制限を受けることとなりますが、家族については制限がないため影響ありません。
結婚についても法的な制限はなく戸籍や住民票に記載されないため、自己破産をした者が家族にいることで足枷とはならないでしょう。
ただし官報などで家族が自己破産した事実を知れば、相手方がよい印象をもたない可能性はゼロではありません。
自己破産をしてもブラックリストに掲載されるのは破産者のみであるため、家族に影響はありません。
クレジットカードを申し込みたい、ローンを利用して車やスマートフォンを購入したいといった際も、基本的に問題は生じないでしょう。
ただし、審査に家族の信用情報が影響することがまったくないわけではありません。
契約するローンにより信用情報をどこまで確認するかは異なるため、注意が必要です。
自己破産をしたことで、別居中の家族に影響は及ぼしません。
自己破産の手続きを進めるなかで、別居中の家族に連絡はいかないため、借金の保証人になっているなどの事情がなければ発覚する恐れも少ないです。
自己破産をすると、少なからず家族に迷惑をかける恐れがあります。
そのため、自己破産以外の選択肢を検討することも大切です。
ここからは、家族に迷惑をかけないためにとれる、借金問題解決に向けたほかの方法について解説します。
任意整理とは債権者と交渉して利息のカットや分割払いなどを認めてもらうことです。
任意整理をすることで、抱えている借金の返済を減額できるため負担が軽減されます。
また、交渉する債権者を選べる点も任意整理の特徴です。
任意整理は自己破産と違い車や家などの財産を残せるうえ、家族が借金の保証人になっていてもその借金を任意整理の対象から外すこともできます。
そのため家族への影響を抑えられるのです。
ただし、任意整理は借金を帳消しにできるわけでなく、自己破産に比べて減額効果が高くありません。
つまり、手続きを完了してからも返済義務は残るため、返済能力が求められます。
また、任意整理は債権者が了承してくれる必要があるため、思うように借金を減額できない可能性もある点は注意が必要です。
個人再生とは裁判所を通して、借金の額を1/5~1/10に減額しそれを原則3年で分割返済する手続きです。
個人再生では自己破産のように借金をゼロにはできません。
その代わりに、家やローン返済が終わった車であれば手元に残すことが可能です。
そのため自己破産に比べ、家族への影響を軽減できます。
自己破産をすると家族に迷惑がかかるため、借金状態から解放されたくても一歩を踏み出せない方は少なくないでしょう。
とはいえ、今の状態を続けていくことは精神的に辛いため、迷惑をなるべくかけない方法は知っておきたいところです。
ここからは、自己破産をして家族にかけるであろう迷惑を、最小限にするための方法を紹介します。
自己破産をするにあたり家族へ迷惑をかけないためには、大前提として財産を隠さないようにしましょう。
自己破産によって返済義務が免除されるには、免責の許可が必要となります。
しかし、財産を隠す行為は免責不許可事由となるため返済義務免除とならず、家族に多大な借金を背負わすことになりかねません。
少しでも財産を手元に残そうと、自己破産の手続き前に家や車などの名義変更をするなど財産を隠す行為は避けてください。
自己破産をする際は、特定の債権者に限って返済してはいけません。
たとえば家族に迷惑をかけないために、家族が保証人となっている借金だけ返済するのはNGです。
自己破産をする際、没収される財産は全ての債権者に対して平等に分配されます。特定の債権者に限り返済をすると、偏波弁済として免責不許可事由となるのです。
つまり特定の債権者にのみ借金の返済をした場合、自己破産が認められなくなる可能性があります。
その結果、借金が減らず家族に迷惑をかけてしまうことになりかねません。
自己破産によって家族に迷惑をかけるからと、離婚をするのは必ずしもよい策とは言えません。
離婚をする場合、共有の財産を夫婦で分け合う財産分与という手続きをおこないます。
この手続きにより財産の名義変更などをおこなうことが、裁判所に財産隠しとみなされてしまう可能性があるのです。
どうしても離婚をするのであれば、裁判所に財産隠しではない旨の証明をする必要があります。
具体的にどのように証明する必要があるかは、債務整理の対応を得意とする弁護士に確認しましょう。
自己破産の手続きを滞りなく済ませ、問題をきちんと解決したうえで家族にも迷惑をかけないためには、債務整理を得意とする弁護士への相談がおすすめです。
弁護士は自己破産の手続きを代行してくれたり、周囲に迷惑をかけないためのアドバイスをくれたりと、全面的にサポートしてくれます。
また、弁護士に相談することで債権者に対して受任通知を送るため、その時点で借金返済に関する督促はストップします。
つまり、取り立てがなくなるため精神的苦痛から解放されるのです。
かつ、債権者とのやり取りは弁護士に一任できるため心強いでしょう。
ここからは、自己破産をすることによる家族へのデメリットに関して、よくある質問をピックアップのうえ解説します。
疑問点を払拭するためにも、ぜひ参考にしてください。
家族と同居している場合、バレずに自己破産をすることは極めて難しいです。
まず、債権者あるいは裁判所から自宅へ郵送物が届くため、家族に自己破産の事実を知られてしまう恐れがあります。
また、破産手続をするうえで配偶者の収入証明が必要となるため、何に必要かを問いただされるとバレる可能性は高いです。
また、自己破産は価値ある財産が処分されるため、家や車などを失うとバレるでしょう。
日常生活のなかでも、クレジットカードを使用できないとなれば怪しまれ、自己破産がバレるかもしれません。
ただし、別居している場合は生活の変化がわかりづらいため、バレる確率は低くなります。
自己破産の手続きをするにあたって、家族は同席する必要がありません。
裁判所へは、破産者のみが出席します。
自己破産をしても法的には親に迷惑をかけることは少ないですが、たとえば親が借金の連帯保証人になっている場合は返済義務が生じるため、多大な迷惑をかけることとなります。
また、自己破産の手続きをする本人名義の家に親が同居している場合、処分対象となることから住まいを失うことにもなるのです
自己破産をすると、生活に大きな変化が生じることが避けられません。
親や家族にバレずに生活を続けられる可能性は低いので、あらかじめ時間をかけて事情を説明することが推奨されます。
自己破産をすると家族と海外旅行に行けなくなる可能性はゼロではありません。
手続きの進め方によりますが、手続き中は渡航を制限される場合もあります。
仮に海外旅行が制限されない方法であっても、自己破産の手続き中は旅行へ行くのを控えるべきです。
どうしても海外旅行をしたいときは、あらかじめ弁護士へ相談しましょう。
借金の支払いが免除されたら、家族が代わりに支払う必要はありません。
法的に借金の支払い義務が免除されたため、周囲が肩代わりすることはないのです。
ただし、家族が保証人もしくは連帯保証人になっている場合は、返済義務が生じる可能性はあります。
家族は一括請求を求められるため、その点には十分注意しなければいけません。
なお、保証人であっても、業者との交渉次第では分割払いを認めてもらうことも可能です。
親が自己破産をしても、子どもへ影響がないことは次のとおりです。
自己破産の事実を学校が知ることはないため、進学には影響しません。
また、子どもの信用情報にキズがつく訳ではないため、クレジットカードやローンの申し込みにも問題は生じないでしょう。
子どもの財産についても処分の対象外となります。
親が自己破産をした場合、子どもには次のような影響が生じます。
破産者が名義の家は処分の対象となるため、住まいを失う恐れがあります。
そして、親の連帯保証人になっている場合は請求がいったり、親が保証人となっているものは変更しなければならなかったりします。
また、加入保険を解約して、解約返戻金を借金返済に充てなければいけない場合もあるのです。
自己破産をしても家族の貯金に影響はありません。
家族の貯金は破産者の財産ではないため、処分の対象外となります。
国民年金・厚生年金・共済年金などの公的年金については、法律で差し押さえが禁止されています。
故に、自己破産をしても年金がストップしたり、借金の返済に充てたりする必要はありません。
以降の受給資格についても失うことはないため、生活は守られます。
自己破産は個人に対する手続きとなるため、基本的に家族の収入に影響は与えません。
しかし、同居する家族が保証人や連帯保証人の場合、債権者から借金の返済を求められる可能性があります。
つまり、同居家族の収入は借金の返済に回るため、日々の生活がままならなくなる恐れがあるのです。
自己破産は個人の手続きとはいえ、家族に事情を説明しておくことは重要です。
本記事では、自己破産をすることで家族に与えるデメリットや、家族への迷惑を最小限にする方法について解説しました。
家族が同居している場合や保証人・連帯保証人になっている場合などは、自己破産により多大な迷惑をかける恐れがあります。
契約しているカードや保険が利用できないといった可能性も出てくるでしょう。
自己破産で家族になるべく迷惑をかけないためには、財産を隠さないことや特定の債権者にのみ返済しないことなどが重要です。
それらを踏まえたうえで、法律を熟知する弁護士に相談することが解決への糸口を掴む、かつ家族を守ることに繋がります。