個人再生
個人再生でクレジットカードは使えなくなる?いつから使える?代替手段や注意点を解説
2024.11.26
個人再生する場合、「退職金が没収されるのでは?」と気になっている方が少なくないようです。
結論から申し上げると、個人再生は退職金の支払いに影響しないため満額を受け取れます。
ただし、退職金は財産とみなされるため、金額や受け取るタイミングにより、借金の減額割合が変わってしまいます。
また、個人再生の申立てには退職金証明書が必要になるので、会社に請求すると、借金問題が社内にバレてしまうでしょう。
本記事では、個人再生するときの退職金の扱いや、会社にバレない方法などをわかりやすく解説します。
個人再生で借金問題を解決する場合、高額な財産は基本的に処分されますが、退職金の支払いには影響がありません。
ただし、個人再生には「清算価値保障の原則」があるため、退職金の全額または一部が清算価値に計上されます。
清算価値保障の原則とは、個人再生する人の全財産を弁済額の下限とし、債権者への返済に充てる考え方です。
将来受け取る予定の退職金は清算価値となり、個人再生中の返済額に影響するので、以下を参考にしてください。
個人再生では退職金を清算価値へ計上しますが、実際に退職する必要はなく、退職金を確実に受け取るかどうかも現時点では不明です。
すぐに退職する予定がなければ、退職金見込額の8分の1を清算価値とする裁判所が多いでしょう。
退職金見込額が2,000万円だった場合、「2,000万円×1/8=250万円」が清算価値に計上されるため、弁済額の下限も250万円ほど上がります。
つまり、退職金見込額が高くなるほど、個人再生中の返済額も多くなる仕組みです。
個人再生する場合、以下の財産を清算価値に計上します。
対象財産 | 清算価値に計上する基準 |
現金 | 99万円を超える部分 |
預貯金 | 20万円を超える部分 |
退職金 | 退職金見込額が160万円を超えるときは8分の1 |
生命保険 | 解約時返戻金の見込額のうち20万円を超える部分 |
車やバイク | 評価額が20万円を超える場合 |
不動産 | 不動産会社の査定額からローン残高を差し引いた部分 |
株式や投資信託 | 個人再生時の時価 |
過払い金 | 返還された額または請求権がある場合の回収見込額 |
損害賠償請求権 | 請求可能な損害賠償の金額 |
貸付金や売掛金 | 未回収の金額 |
個人再生は借金を5分の1に減額し、3年で返済するケースが多いため、清算価値がいくらになるかで1回あたりの返済額が決まります。
現金や預貯金は容易に把握できますが、過払い金や交通事故などの賠償金は計算がわかりにくいので、正確な金額を知りたいときは弁護士に相談してみましょう。
個人再生では退職金を清算価値に計上しますが、受け取り時期によって計上割合が変わります。
清算価値の計上割合が大きくなると、借金の減額割合が小さくなるため、毎月の返済負担に影響します。
退職金の受け取り時期と個人再生の返済額については、以下を参考にしてください。
現役で働き続ける期間が長く、退職の予定もなければ、清算価値に計上する退職金は以下の割合になります。
退職予定がない場合、将来的に退職金を受け取れるかどうか確実性がないため、清算価値に計上する割合が低くなっています。
なお、清算価値の基準は裁判所ごとに異なっており、必ずしも8分の1になるとは限りません。
退職が決まっている、またはすでに退職しているが退職金を受け取っていないケースであれば、以下の割合で退職金を清算価値に計上します。
退職日や退職金の額が確定している場合、清算価値への計上割合が高くなります。
個人再生する人がすでに退職しており、退職金も受け取っている場合、全額が清算価値に計上されます。
受取済みの退職金は現金や預貯金の扱いになるため、現金で保有していた場合は99万円を超える部分、預貯金であれば20万円を超えるが清算価値になります。
退職金をできるだけ多く受け取りつつ、個人再生を成功させたいときは、再生計画の認可決定後に退職するとよいでしょう。
個人再生しても退職金は受け取れますが、退職間際や退職後の個人再生は清算価値に計上割合が大きくなるため、借金の返済負担を軽くできません。
裁判所に個人再生を申し立てる場合、再生計画の認可決定までには6ヵ月程度かかるので、退職時期を十分に考慮する必要があります。
退職金が確定していない状況で個人再生するときは、「退職金見込額証明書」が必要です。
退職金見込額証明書の取得方法や、会社に退職金制度がない場合の対処法については、以下を参考にしてください。
退職金見込額証明書が必要なときは、勤務先の給与計算の担当者や総務系の部署などに相談してみましょう。
退職金の計算方法は就業規則や退職金規程に定められていますが、勤続年数や税金などの要素を考慮するため、自分で計算すると間違える恐れがあります。
会社によっては業績功労などを加味する場合もあるので、退職金は専門部署に計算してもらったほうが確実です。
裁判所に個人再生を申し立てる際は、就業規則や退職金規程、雇用契約書なども提出するため、すべて会社側に請求してください。
会社に退職金制度がないときは、就業規則や雇用契約書の写しを取得しておきましょう。
就業規則などの写しがあれば、退職金制度がない旨を証明できます。
退職金制度の明記がない場合は、退職金がない旨の証明書を会社側に作成依頼してください。
多くの企業は勤続5年目以降に退職金を支給しますが、5年未満でも退職金がない旨の証明が必要です。
企業によっては勤続3年目以降に退職金を支給するケースがあるため、まず就業規則や退職金規程を取り寄せ、退職金の支給要件などを確認してください。
退職金に関する規程がなければ、退職金がない旨の証明書を会社に発行してもらいましょう。
退職金見込額証明書を会社に請求した場合、退職予定がなければ個人再生がバレてしまう可能性があります。
借金問題や個人再生をバレないようにしたいときは、以下のように対処してください。
会社に退職金見込額証明書の発行を請求した際、用途を聞かれたときは、住宅ローンの審査を理由にしてください。
通常、住宅ローンの審査に退職金見込額証明書を提出するケースはありませんが、「銀行が見たいと言っている」と伝えれば、特に疑われる心配はないでしょう。
会社に退職金規程があれば、自分で退職金を計算する方法もあります。
自己計算の場合は退職金見込額証明書が必要ないため、会社に個人再生がバレる恐れはありません。
ただし、勤続年数や業績に応じた加算額などがあると、給与担当者などに聞かなければ正確な金額がわからないでしょう。
退職金制度がない会社は一般的な計算方法で退職金を算出しますが、一時金や年金形式などの違いも考慮しなくてはなりません。
退職金の計算が難しいときは、弁護士に相談してみましょう。
退職金は個人再生中の返済額に影響するため、「確定拠出年金だったらどうなる?」などの疑問もあることでしょう。
個人再生と退職金の関係については、以下のQ&Aも参考にしてください。
従業員貸付制度を利用している場合でも、会社からの借入金を退職金から差し引く扱いはありません。
労使間の協定がない限り、給与や退職金は全額支給するよう労働基準法に定められています。
ただし、給与や退職金を前借りしており、会社と従業員が合意している場合は、前借分を相殺するケースもあります。
すでに転職している場合は、現職の退職金見込額を清算価値に計上します。
勤続年数が退職金の支給要件を満たしていないときは、清算価値への計上は不要です。
なお、前職で受け取った退職金がある場合は現金や預貯金の扱いになるため、裁判所に用途を報告し、一定額を超えた部分を清算価値に計上します。
退職金を確定拠出年金で受け取る場合、差し押さえの対象にはなりません。
確定拠出年金の受給権などを含め、以下の債権は差押禁止になるため、清算価値への計上は不要です。
なお、すでに確定拠出年金などを受け取っている場合は、財産の種類を現金や預貯金として扱うため、一定額を超えるときは清算価値に計上します。
パートやアルバイトが個人再生する場合、退職金がない旨の証明は不要です。
雇用形態から「退職金なし」が明確になっていれば、就業規則などの提出のみで構いません。
会社が就業規則を見せない場合、労働基準法に違反します。
10人以上の常時雇用がある会社は就業規則を作成し、従業員が閲覧できる状況にしなければなりません。
会社が就業規則の閲覧を拒否するときは、労働基準監督署に相談してください。
個人再生しても退職金は受け取れますが、見込額の一部が清算価値となるため、借金の減額に影響します。
すぐに退職する予定がない場合は、退職金の8分の1を清算価値に計上する必要があり、会社から退職金見込額証明書を取得しなければなりません。
借金問題が会社にバレると人事評価に影響する可能性があるため、困ったときは弁護士に相談してください。
初回の相談は無料になるケースが多いので、1人で悩みを抱え込まないようにしましょう。