テレビのコマーシャルやSNSの広告などで、「借金減額制度」について見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
どのような制度なのか気になっているものの、本当に信頼できるものなのか半信半疑な方もいるかもしれません。
結論からいうと、「借金減額制度」は主に債務整理のことを指し、怪しいものではありません。
特別な法律が施行されているというわけではなく、従来からある制度を活用したものだと考えてください。
借金減額制度には、さまざまな種類があります。
それぞれについて正しい知識を理解したうえでしかるべき手続きをおこなえば、借金の負担を軽減することができます。
本記事では、借金減額制度によって負債が少なくなる仕組みや、制度を利用するメリット・デメリットなどについて解説します。
弁護士に依頼した場合の費用目安や、専門家や業者に依頼した場合の注意点についても紹介するので参考にしてください。
借金減額制度は主に債務整理のことを指す
テレビのコマーシャルやWeb広告などで見かける「借金減額制度」「借金救済制度」などと呼ばれるものは、主に債務整理のことを指しています。
広告によっては、「過払い金請求」を含めていることもあります。
債務整理や過払い金請求自体は怪しいものではありませんが、どのような制度なのかが具体的に説明されていない場合も多くあるため、なかなか理解しづらい部分もあるでしょう。
ここでは、借金減額制度の概要のポイントを3つ解説します。
1.債務整理の広告表現を変えただけで新しい制度ではない
借金減額制度とは、債務整理の広告表現を変えただけで新しい制度ではありません。
債務整理とは、借金返済が難しくなった場合に、債権者と交渉したり、裁判所に介入してもらったりして、借金の減額や免除を求める手続きのことです。
債務整理は、大きく分けて以下の3種類に分けられます。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
また、借金減額制度には、過払い金請求を含める場合もあります。
過払い金請求とは、違法な金利によって払い過ぎていた利息を取り戻す手続きのことです。
債務整理も過払い金請求も、以前から存在している借金減額方法です。
近年、債務整理や過払い金請求などを取り扱う法律事務所が「借金減額制度」と、わかりやすい表現を用いて集客するようになったため、注目を集めているだけに過ぎません。
各手続きの詳しい内容は、追って詳しく解説していきます。
2.「国が認めた」の文言は法律に則った手続きであるということ
広告によっては「国が認めた借金救済制度」などと謳うものがありますが、これは一般的に自己破産や個人再生のことを指しています。
実際に、自己破産や個人再生は法律に基づき、裁判所を通しておこなわれる手続きであることから「国が認めた」といえなくはないでしょう。
これらに対し、任意整理はカード会社などと直接交渉する手続きのため、あくまでも「国が禁止していない」手続きであり、「国が認めた」という表現はあまりなじみません。
しかし、債務整理をうながす広告の多くは、任意整理も含めて「国が認めた」としていることが多くあります。
「国が認めた」という文言は、あくまでも広告の謳い文句である点は理解しておくとよいでしょう。
3.借金減額制度の対象はキャッシング・カードローン・奨学金など
借金減額制度のうち債務整理の対象となるのは、以下のような借金です。
- カードローン
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- クレジットカードのキャッシング
- リボ払い
- 奨学金
反対に、税金・罰金・健康保険料などの公共性の高い債権は「非免責債権」と呼ばれ、債務整理で減額・免除することはできません。
また、過払い金請求の対象となるのは、消費者金融などから違法な金利で借り入れた借金です。
もともと金利の低い銀行からの借入れや奨学金などは、過払い金請求の対象から外れます。
借金減額制度で借金が減額・免除される仕組み
借金減額制度には、具体的にどのような方法があるのでしょうか。
ここでは、借金減額制度で借金が少なくなる仕組みについてそれぞれ解説していきます。
1.任意整理|債権者と交渉し将来利息や遅延損害金をカットできる
任意整理は、借金の債務者と債権者が借金の減額について話し合い、和解を目指す手続きのことです。
(和解)
第六百九十五条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。引用元:民法 | e-Gov法令検索
借金の取扱いは当事者間の話し合いで自由に決められますが、将来利息や遅延損害金をカットしたうえで、返済期間を3年~5年程度に延長してもらうケースが一般的です。
債権者との交渉次第ではあるものの、元本まで減額してもらうことは難しいといえるでしょう。
任意整理中に過払金が発生していることが判明した場合は、過払金返還請求の手続きへ移行するケースもあります。
任意整理は裁判所を介さない手続きなので、比較的シンプルかつ短期間で借金減額を実現できます。
また、個人再生や自己破産とは異なり、債務整理の相手を自由に決められる点も大きなメリットといえるでしょう。
2.個人再生|裁判所から許可を得て、借金を最大10分の1に減額できる
個人再生とは、裁判所に申立てをおこない、元金を含めた借金を大幅に減らす手続きのことをいいます。
(再生計画の効力等)
第二百三十二条 小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定したときは、第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる債権は、それぞれ当該各号に定める金額の再生債権に変更される。
個人再生は、借金を5分の1から10分の1程度まで減額でき、原則3年間、最長5年間での分割払いをおこないます。
裁判所をとおしておこなう公的な手続きのため、提出した再生計画をもとに着実に履行することが求められます。
しかし、その分借金の減額効果が大きいことや、持ち家などの資産は保有したままにできることなどが個人再生のメリットとして挙げられます。
3.自己破産|裁判所から許可を得て、借金を全額免除できる
自己破産とは、借金の返済が困難な状況になった場合に裁判所に申し立てて免責許可を得ることで、残債務の支払義務が免除される制度です。
(免責許可の決定の効力等)
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。引用元:破産法 | e-Gov法令検索
裁判所から免責許可が認められれば、その後の借金の返済は原則不要となります。
ただし、浪費やギャンブルなどが原因で借金している場合は、原則として自己破産は認められません。
また、自己破産は借金問題の最終的な解決手段のひとつとされていますが、デメリットも多いので、弁護士の助言を仰ぎながら慎重に検討することをおすすめします。
4.過払い金請求|払い過ぎた利息を取り返せる
過払い金請求とは、違法な金利によって払い過ぎていた利息を取り返す手続きのことです。
金利上限は出資法と利息制限法によって定められていますが、2010年6月17日の法改正までは以下のようなズレが生じていました。
- 出資法の上限金利:20%
- 利息制限法の上限金利:29.2%
そして、29.2%を超えなければ刑事罰を回避できたため、20%~29.2%のいわゆる「グレーゾーン金利」が消費者金融などで広く用いられていたのです。
しかし、グレーゾーン金利は利息制限法に違反する利息なので、20%を超えて支払った分に関しては、過払い金として業者に不当な利得として返還を請求することができます。
すでに借金を完済していれば、回収分がそのままプラスになるうえ、返済中であれば回収分と残債を清算できる場合もあります。
2010年6月17日の法改正以前に消費者金融などで高金利の借入れをおこなっていた場合は、過払い金請求できる可能性があるので、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
借金減額制度を利用する2つのメリット
次に、借金減額制度を利用する2つのメリットを解説します。
1.借金返済の負担が減り、生活を立て直しやすくなる
借金減額制度を利用すれば、返済の負担が減り、生活を立て直しやすくなります。
借金の返済が難しくなると、新たな借入れの繰り返しで負債が膨らむなど、事態は悪化していくケースがほとんどです。
厳しい取り立てを受けることもあり、冷静さを保つのは難しくなるでしょう。
しかし、借金減額制度を利用して、借金の減額・免除を実現できれば、金銭的にも精神的にも負担が軽くなります。
そのため、生活再建に向けたスタートが切りやすくなることを覚えておきましょう。
2.弁護士に依頼すれば債権者からの督促がストップする
弁護士に依頼して借金減額制度を利用すれば、債権者からの督促がストップします。
弁護士に依頼した時点で、債権者に対して受任通知が送られます。
そして、受任通知を受け取った債権者は、債務者に対して直接督促することができなくなるのです。
債権者からの連絡は、全て弁護士が対応してくれるため、精神的に追い込まれたり、家族や職場に迷惑をかけたりすることなく、借金減額に向けた手続きを進めることができます。
借金減額制度を利用するデメリット
借金減額制度にはいくつかの種類がありますが、それぞれに異なるデメリットが存在します。
デメリット | 債務整理 | 過払い金請求 | ||
---|---|---|---|---|
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | ||
信用情報に傷がつく | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
保証人・連帯保証人に請求をされる | △ | 〇 | 〇 | × |
財産が没収される | × | △ | 〇 | × |
官報に氏名・住所が掲載される | × | 〇 | 〇 | × |
一部の職業・資格 | × | × | 〇 | × |
まず、借金減額制度を利用すると、信用情報機関に事故情報として登録されるため、5年~7年程度はローンやクレジットカードの作成が難しくなります。
ただし、過払い金請求は回収後も残債が残っている場合にのみ、事故情報が登録されます。
債務整理後は、保証人・連帯保証人に請求をされてしまう点にも注意が必要です。
任意整理であれば対象とする借金を自由に選べますが、個人再生・自己破産は全ての借金が対象になるので、保証人・連帯保証人に迷惑をかけたくない場合は避けたほうがよいかもしれません。
自己破産では、価値のある財産は基本的に処分されます。
個人再生もローン返済中の住宅や車は原則処分されますが、「住宅資金特別条項」により住宅を手元に残すことは可能です。
また、個人再生・自己破産は裁判所を介する手続きであり、官報に氏名・住所が掲載されるため、周囲に債務整理したことがバレる可能性もゼロではありません。
自己破産では手続きが終わって免責されるまで、士業・警備員・生命保険募集人などの一部の職業につけなくなることも覚えておきましょう。
借金減額制度を利用する際の弁護士費用の目安
ここでは、借金減額制度を利用する際の弁護士費用の目安についてそれぞれ解説していきます。
弁護士費用は法律事務所ごとに設定されているため一概に示すことはできませんが、目安としては以下のとおりです。
借金が500万円程度ある状況で、債務整理や過払い金請求を依頼するケースを想定しています。
費用項目 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | 過払い金請求 |
---|---|---|---|---|
着手金 | 2万円~10万円 | 30万円~50万円 | 20万円~60万円 | 0円~2万円 |
報酬金 | 0円~3万円 | 0円~10万円 | 0円~40万円 | 回収額の20%~25% |
実費など | 書類作成料・交通費・裁判費用 | 2万円〜3万円(予納金が必要な地域あり) | 予納金(1万円〜50万円。管財予納金により変動) | 書類作成料・交通費・裁判費用 |
合計額 | 社数による | 30万円~70万円 | 30万円~150万円 | 過払い金の金額による |
着手金とは、弁護士に依頼する際に支払う初期費用のことです。
一般的には、事件の類型や難易度、必要とされる弁護士の労力などを考慮して決められます。
たとえ自身が望む結果にならなくても着手金は支払わなければならないため、依頼する弁護士は慎重に選ぶ必要があるでしょう。
報酬金とは、借金の減額に成功した場合に発生する費用です。
着手金と報酬金の両方の費用がかかる法律事務所と、報酬金はなく着手金のみの法律事務所があります。
どちらが得なのかは一概にいえませんが、最終的にかかる総額の見積りを事前に確認することが重要です。
実費とは、依頼後に発生した書類作成料、交通費、裁判費用などの実際にかかった費用です。
また、裁判所を通す個人再生・自己破産では官報に掲載するための費用もかかります。
実費は着手金に含まれている場合と含まれていない場合があるため、依頼する前に費用内訳をよく確認するようにしましょう。
借金問題は弁護士と司法書士のどちらに相談するべき?
借金減額制度を利用した借金問題の解決は、弁護士または司法書士に依頼するケースが一般的です。
しかし、司法書士は債権者1社あたり140万円超の借金を扱うことはできません。
そのため、借金の金額が大きい場合は、はじめから弁護士に依頼するのがおすすめです。
一方、依頼費用は司法書士のほうが安い傾向にあります。
1社あたりの借金が140万円以下であれば、司法書士への依頼も検討してもよいですが、統一した方針が立てられないため抱えている債務をバラバラに複数の事務所に依頼することはおすすめできません。
さいごに|借金減額制度の利用は弁護士に相談を
借金問題に悩んでいる方は、借金減額制度を利用することで負担を軽減できる可能性があります。
ただし、債務整理や過払い金請求にはそれぞれデメリットもあるため、自身が置かれている状況に合った方法を選択することが重要です。
安易に自分だけで判断しようとせず、弁護士に相談して助言を仰ぐことをおすすめします。
いきなり弁護士へ相談することに抵抗を覚える方は、まず「借金減額診断シミュレーター」を活用してみましょう。
減額できる金額の大まかな見通しを把握できれば、債務整理をするべきかどうかを検討しやすくなるはずです。
ただし、パソコンやスマートフォンで入力した簡単な情報だけで、正確な結果を予測することはできません。
機械的な予想に過ぎないため、あくまで参考程度に理解しておいてください。
より正確なアドバイスを希望する場合は、債務整理問題を得意とする弁護士に相談する必要があります。
債務整理について相談できる弁護士を探す際は、ぜひ「ベンナビ債務整理」を活用してみてください。
「ベンナビ債務整理」には債務整理が得意な全国の弁護士が登録されており、細かく検索条件を選択できるので、希望に合った弁護士を効率よく探し出すことができます。