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2024.10.08
勉学に励みたくても学費の工面が難しい場合に、奨学金は非常にありがたい制度です。
代表的なものには、独立行政法人日本学生支援機構が提供している奨学金などがあり、実際に利用している人も多いのではないでしょうか。
しかし、奨学金の貸与利率は基本的に低く設定されているものの、就職後の給料で払うのが難しくなるケースも少なくありません。
そこで本記事では、独立行政法人日本学生支援機構の奨学金制度における返済免除の条件や手続きの流れなどを紹介します。
2019年に独立行政法人日本学生支援機構が実施した調査「奨学事業に関する実態調査報告」によると、支給実績のある7,784制度のうち、給付型は5,329制度、貸与型は2,392制度、併用型は63制度です。
そして、貸与型のうち、返還免除がある制度数は74.5%であり、約4分の3は条件次第で返還免除が認められる制度設計になっています。
分類 | 返済免除制度がある割合 |
---|---|
学校 | 56.0% |
地方公共団体 | 76.2% |
公益団体 | 74.4% |
医療関係機関 | 95.5% |
営利法人 | 88.9% |
個人・その他 | 88.7% |
合計 | 74.5% |
【参考元】独立行政法人日本学生支援機構|令和元年度奨学事業に関する実態調査報告
なかでも、医療関係機関は95.5%、営利法人は88.9%、個人・その他は88.9%と、学校・地域公共団体・公益団体よりも優位に高い割合で、返済免除が可能な制度を設けています。
特に多くの人が利用している独立行政法人日本学生支援機構を例に見ていきましょう。
日本学生支援機構の奨学金制度では、以下の条件を満たしている場合、返済を免除してもらうことができます。
返済免除の利用条件について、より詳しく解説していきます。
死亡による返済免除の利用条件は、「本人が死亡している」ことです。
返済免除を希望する場合は、以下の書類を用意する必要があります。
奨学金制度の種類によって返還免除願の様式が異なるため、必ず自分が利用している奨学金が人的保証なのか機関保証なのか確認して申し込みましょう。
また、死亡による返済免除をおこなうのが、貸与奨学金なのか給付奨学金なのかでも記入の仕方が異なります。
精神・身体の障害を患った場合も、主治医と相談のうえで返済免除の制度を利用できないか検討してみましょう。
精神・身体の障害による返済免除の利用条件は、以下のとおりです。
「返還することができなくなった事情を証明する書類」には、奨学生本人の収入証明書を用いるようにしましょう。
給与所得者であって、年間収入金額が300万円を超える場合は、上記証明書に加え「返還できない状況にあることを確認できる書類」に事情等を記入する必要があります。
報告者の署名が必要ですが、自分自身や親族による署名は認められません。
民生委員、公民館長、学校長、福祉事務所長、病院長または精神保健福祉士、介護福祉士、社会福祉士、看護師などの医療もしくは福祉に関する国家資格をもつ人物に署名してもらう必要があります。
また、診断書を入れた封筒が開封されている場合は、再取得を求められるので注意してください。
必ず密封されていることを確認し、開封していない状態で提出しましょう。
大学や独立行政法人日本学生支援機構に大学院での業績が認められれば、返済免除を受けることができます。
なお、優れた業績を理由とする返還免除の場合は、必ずしも全額免除になるとは限りません。
業績により、全額もしくは半額の返済免除が可能です。
「優れた業績」には、具体的に以下のような業績が該当します。
次に、日本学生支援機構の奨学金を返済免除する際の流れを解説します。
「死亡または精神・身体の障害による返済免除の場合」と「大学院第一種奨学金の特に優れた業績による返済免除の場合」で手続きの流れが異なるので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
「死亡による返済免除」「精神・身体の障害による返済免除」をおこなう場合は、以下の書類を日本学生支援機構に提出しましょう。
返還免除願は、日本学生支援機構のホームページからダウンロードできます。
ただし、奨学金制度の種類によって、願出用紙が異なるので注意してください。
【送付先】 〒104-8112 東京都中央区銀座6丁目18番2号 野村不動産銀座ビル 独立行政法人 日本学生支援機構 返還総務課 返還免除係 |
書類を提出したあとは、日本学生支援機構による審査がおこなわれ、返済免除の可否が決定します。
【参考】死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除|JASSO
大学院第一種奨学金の特に優れた業績による返済免除の場合は、まず大学の審査に通過する必要があるため、手続きも少し複雑になっています。
毎年12月になると独立行政法人学生支援機構が各大学に対して、4月から翌年3月に貸与終了となる奨学生を対象とする業績優秀者返還免除候補者の推薦依頼をおこなっています。
大学はこれを受けて、学内での申請期間を設けます。
申請手続きや期間は各大学によって異なるため、指示に従いましょう。
「業績優秀者返還免除申請書」については大学から受け取ってください。
申込みがあった学生のうち、独立行政法人日本学生支援機構に推薦するに相応しい人物を選ぶための学内選考会がおこなわれます。
そして、学内で選ばれた学生だけが、独立行政法人日本学生支援機構に推薦されます。
大学からの推薦を得られた場合は、日本学生支援機構の業績優秀者奨学金返還免除認定委員会による審査を受けることになります。
独立行政法人日本学生支援機構では、明確に評価する業績を定めています。
返還免除に有効な業績は、学問分野での顕著な成果や発明・発見だけではありません。
上述したとおり、以下のような業績も含めて評価されます。
詳しくは、以下の独立行政法人日本学生支援機構の公式サイトで説明がされています。
独立行政法人日本学生支援機構の審査を通過すれば、返還免除が半額もしくは全額可能になります。
なお、令和5年度以降に博士後期課程および博士医・歯・薬・獣医学課程で第一種奨学生として採用され、かつ博士課程在学中にフェローシップ事業等の支援を受けた場合には、業績免除認定の対象外です。
ここまで奨学金の返還免除制度について説明しました。
しかし、いずれにも該当しない人は多いです。
もし、奨学金の返済免除が難しい場合には、負担を軽減する方法を検討しましょう。
返還誓約書に記載された金額を全額返済するのが難しい場合は、減額返還制度や返還期限猶予制度を利用しましょう。
減額返還制度を利用すれば、1回あたりの返済額を2分の1・3分の1・4分の1・3分の2に減額し、返還期間を延長することができます。
返済総額は変わりませんが、毎月の返済額が減るので家計への負担は大幅に抑えられるはずです。
なお、1回の願出につき適用期間は12ヵ月で、最長15年まで延長可能です。
減額返還制度を利用できる収入の目安は、以下のとおりです。
災害・傷病・失業などにより、どうしてもお金を用意できない場合は返還期限猶予制度を利用しましょう。
最長10年間、返済を先送りにすることができます。
返還期限猶予制度を利用できる収入の目安は、以下のとおりです。
なお、審査においては、減額返還制度・返還期限猶予制度ともに、本人の被扶養者1人につき38万円が収入・所得金額から控除されます。
奨学金の返済免除が難しい場合は、自治体などの返済支援制度がないか確認してみましょう。
一定の条件を満たしていれば、自治体に返済の一部を肩代わりしてもらえる可能性があります。
条件は自治体によって異なりますが、「1年以内に市内に居住し、5年間居住を継続」や「特定期間の就労」などとされているケースが多いようです。
どうしても困窮に陥った場合には、個人再生や自己破産といった債務整理をおこなう方法もあります。
債務整理には主に「自己破産」「個人再生」「任意整理」の3種類がありますが、奨学金返済における債務整理の場合には、「自己破産」「個人再生」のいずれかを利用することになるでしょう。
任意整理は債権者との交渉によって利息のカットを目指す方法ですが、奨学金はもともとかなり利息を下げていることもあり、そもそも奨学金を提供している機関が承諾してくれる可能性が極めて低いためです。
自己破産 | 裁判所に申立てをおこない、借金の支払い義務を免除してもらう手続き。 持ち家や99万円を超える現金などは処分されます。 |
---|---|
個人再生 | 裁判所を通して、借金を大きく減額できる手続き。返済期間は原則3年。 借金額に応じ5分の1から最大10分の1まで圧縮されますが、会社員程度の収入がなければ許可がおりません。 |
任意整理 | 債権者との交渉で将来の利息をカットしてもらい、3年程度で返済するための手続き。 返済を続ける必要があるため、収入が安定していることが望ましいです。 |
ただし、個人再生や自己破産をおこなうと、返済義務が保証人に移ってしまう点には十分注意しておきましょう。
以下に、奨学金の返済免除に関して多く寄せられる質問をピックアップします。
奨学金を返済できないという声が多くありますが、なにもしないままでいると、独立行政法人日本学生支援機構や債権回収会社などから返還の督促がきます。
本人だけでなく、連帯保証人・保証人に対しても督促がおこなわれる可能性があるため、自分ひとりの問題ではなくなります。
3ヵ月以上滞納した場合、個人信用情報機関に個人情報が登録される可能性があります。
また、支払い督促などの法的措置がとられ、最終的には強制執行により財産を差し押さえられるおそれもあります。
かつては、返還特別免除を受けられる免除職がありましたが、残念ながら、現在は廃止されています。
しかし、最近では再検討がされているようです。
奨学金の返済に苦しむ人は少なくありません。
困った場合には、返還免除や減額制度の活用を検討しましょう。
何もしないまま返済をストップさせてしまっては、問題を大きくしてしまうだけです。
「どうすればいいかわからない」「債務整理を検討したい」といった場合には、弁護士や司法書士などの専門家への相談も視野に入れましょう。