日本学生支援機構の奨学金が返済免除になる条件は?返済負担を軽くする方法も解説

日本学生支援機構の奨学金が返済免除になる条件は?返済負担を軽くする方法も解説

勉学に励みたくても学費の工面が難しい場合に、奨学金は非常にありがたい制度です。

奨学金には、給付型のものと貸与型のものがあります

給付型については返済不要ですが、貸与型については返済が求められます。

ただし、貸与型は、貸与利率が低く設定されているのが特徴です。

しかし、貸与利率がいくら低かったとしても、就職後の給料水準によっては、返済することが難しい状況に陥るケースも少なくありません。

そこで、返済免除ができるのであれば、利用することを考える場面が出てきます。

本記事では、返済免除ができる奨学金制度や日本学生支援機構の奨学金が返済免除になる条件、制度の利用方法などを紹介します。

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この記事を監修した弁護士
春田 藤麿弁護士(弁護士法人春田法律事務所)
「お客様の期待を上回る結果を目指す」「生涯にわたり、お客様のパートナーとなる」ことを理念とし、2016年に設立。現在は全国にオフィスを構え、個人・法人を問わず、ニーズに合わせたサポートを提供。

奨学金の返済免除ができる制度は意外と多い

2019年に日本学生支援機構が実施した調査「奨学事業に関する実態調査報告」によると、奨学金制度の内訳は実績有制度7,784制度のうち、給付型が5,329制度(68.5%)、 貸与型が2,392制度(30.7%)、併用型が63制度(0.8%)となっています。

さらに貸与型のうち、返還免除がある制度数は74.5%であり、約4分の3は状況に応じて返還免除が認められることがわかります。

以下は、各団体が提供する奨学金制度のうち、返済免除の制度が設けられている割合です。

分類返済免除制度がある割合
学校56.0%
地方公共団体76.2%
公益団体74.4%
医療関係機関95.5%
営利法人88.9%
個人・その他88.7%
合計74.5%

【参考元】独立行政法人日本学生支援機構|令和元年度奨学事業に関する実態調査報告

なかでも、医療関係機関は95.5%、営利法人は88.9%、個人・その他は88.9%と、学校・地域公共団体・公益団体よりも返済免除が可能な制度を設けている割合が高い傾向にあります。

日本学生支援機構の奨学金が返済免除になる3つの条件

奨学金が返済免除になるためには、各制度が定める条件を満たす必要があります。

ここでは、多くの方が利用する代表的な奨学金制度である日本学生支援機構を例に、返済免除になる具体的な条件について見ていきましょう。

主な条件としては、以下のとおりです。

  • 死亡による返済免除
  • 精神・身体の障害による返済免除
  • 特に優れた業績による返済免除

では、返済免除となる各条件の詳細について解説します。

1.死亡による返済免除

死亡による返済免除は奨学金制度を利用していた本人が死亡した場合に、利用できる制度です。

利用条件は、次のように定められています。

  • 本人が死亡している
  • 貸与奨学金返還免除願又は給付奨学金返還免除願を用意する
  • 本人死亡の事実を記載した戸籍抄本、個人事項証明又は住民票等の公的証明書(原本)を用意する

奨学金制度の種類によっては、願出用紙が異なります。

そのため、必ず自分が利用している奨学金が人的保証なのか機関保証なのか確認してから、申し込みましょう。

また、死亡による返済免除は貸与奨学金なのか給付奨学金なのかによって記入の仕方が異なります。

2.精神・身体の障害による返済免除

精神・身体の障害による返済免除は、主治医と相談のうえで利用できる返済免除の制度です。

利用条件は、次のように定められています。

  • 症状が固定または回復の見込みがない
  • 労働能力が喪失もしくは高度に制限される
  • 貸与奨学金返還免除願または給付奨学金返還免除願を用意する
  • 返還することができなくなった事情を証明する書類(原本)を用意する
  • 診断書を記載してもらい用意する※開封厳禁

返還することができなくなった事情を証明する書類は「奨学生本人の収入証明書」です。

また、年間収入金額が300万円を超える給与所得者の場合には、上記証明書に加えて「返還できない状況にあることを確認できる書類」に事情などを記入する必要があります。

報告者の署名は、自分自身やその親族が証明するものではありません。

民生委員、公民館長、学校長、福祉事務所長、病院長(診断書を証明した方は除きます)または、精神保健福祉士、介護福祉士、社会福祉士、看護師などの国家資格を保有している方に署名を求める必要があります。

また、精神・身体の障害による返済免除で提出が必要な診断書は、封筒が密封されていない状態の場合には、診断書の再取得が求められます。

密封されていることを必ず確認し、開封しない状態で提出しましょう。

3.特に優れた業績による返済免除

上記は死亡や病気などの諸事情により、返済免除が認められる条件でした。

しかし、このほかにも本人の努力によって、奨学金の返済免除が認められる場合があります。

それは、奨学金制度を利用している方が学業で優れた業績をあげることが認められるケースです。

利用条件は、次のように定められています。

  • 大学院(修士課程・専門職学位課程・博士課程)で第一種奨学金の貸与を受けた学生
  • 貸与期間中に特に優れた業績をあげている
  • 奨学金の貸与が終了した月が属する年度において、大学に申請し、大学から本機構に推薦される

また対象者は、国内のみならず海外の大学院で学位の取得を目指す第一種奨学金の受給者も含まれます。

なお、令和5年度以降に博士(後期)課程および博士医・歯・薬・獣医学課程で第一種奨学生として採用された方で、博士課程在学中にフェローシップ事業などの支援を受けた場合には、対象者にならないので、注意してください。

日本学生支援機構の奨学金を返済免除する際の流れ

日本学生支援機構の奨学金を返済免除する際の流れは、利用する返済免除の条件によって変わります。

たとえば、「死亡による返済免除」と「精神・身体の障害による返済免除」を利用する場合には、必要書類を以下の住所に提出します。

  • 〒104-8112 東京都中央区銀座6丁目18番2号 野村不動産銀座ビル
    独立行政法人 日本学生支援機構 返還総務課 返還免除係

一方で、「特に優れた業績による返済免除」を利用する場合には、以下のステップを踏むことで奨学金の返済免除を求めることができます。

日本学生支援機構の奨学金を返済免除する際の流れは下記のようになっています。

  1. 必要書類を大学に提出する
  2. 学内選考会と推薦がおこなわれる
  3. 日本学生支援機構による審査がおこなわれる

1.必要書類を大学に提出する

はじめに、必要書類を用意して大学に提出します。

独立行政法人学生支援機構では毎年12月に、4月から翌年3月に貸与終了となる奨学生を対象とした業績優秀者返還免除候補者の推薦依頼をおこなっています。

大学はこれを受けて、学内での申請期間を設けています。

この期間内に、以下の必要書類を用意して大学に提出します。

  • 業績優秀者返還免除申請書
  • 特に優れた業績を証明する資料など

なお、「業績優秀者返還免除申請書」については大学で受け取ります。

各大学が定める申請期間と手続きにしたがって、書類を提出しましょう。

2.学内選考会と推薦がおこなわれる

申請が完了すると、学内選考会がおこなわれます。

この選考会は独立行政法人日本学生支援機構に推薦するに相応しい人物を選ぶために開催されます。

選考会の結果、選ばれた学生は日本学生支援機構に推薦されます。

3.日本学生支援機構による審査がおこなわれる

推薦された学生に対して、日本学生支援機構による審査がおこなわれます。

日本学生支援機構では、明確に評価する業績を定めており、その評価方法にしたがって奨学金を返済免除するかどうか検討されます。

なお、返還免除に有効な業績については、学問分野での顕著な成果や発明・発見だけではなく、以下を含めて評価されます。

  • 専攻分野に関する文化・芸術・スポーツにおけるめざましい活躍
  • ボランティア等での顕著な社会貢献など

詳しくは、以下の独立行政法人日本学生支援機構の公式サイトで詳細に説明されています。

【参考元】特に優れた業績と評価方法 | JASSO

そして、日本学生支援機構の審議を通過すると、返済免除が認められます。

半額もしくは全額免除が可能となります。

日本学生支援機構以外の奨学金制度の返済免除

ここまで、日本学生支援機構の奨学金制度について説明してきましたが、奨学金の返済免除は、当然のことながら日本学生支援機構以外にもあります

ここでは、日本学生支援機構以外の奨学金制度の返済免除について見ていきましょう。

1.自治体の奨学金の場合

各自治体が提供する奨学金制度では、返済免除を利用することができます

たとえば、東京都の港区が提供している奨学金では、以下の要件を全て満たすことで返済免除が可能です。

  • 大学等を卒業、または修了している
  • 定める国家資格を取得し、国家資格を有する業務に通算5年以上従事している、または 、区内に主たる事務所若しくは事業所を有する中小企業者の区内の事務所等で勤務した期間が通算5年以上である
  • 奨学金の返還を怠ったことがない

2.あしなが育英会の場合

あしなが育英会の奨学金を借りている方は、以下の場合に免除を受けられる場合があります。

  • 本人の死亡
  • 重度の障害

3.新聞奨学金の場合

毎日育英会を例にとると、以下の場合に返済免除を受けられます。

  • 毎日奨学生として1年間(4月1日~翌年3月31日)勤務

3月に学費貸付金が返済免除されます。

ただし、貸付金残高がある場合には、学費の貸付契約書に基づいて一括返済が必要です。

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奨学金の返済負担を軽くする3つの方法

奨学金の返済免除制度について解説しましたが、いずれにも該当しない方は多くいます。

このような場合には負担を軽減する方法として、以下の方法を検討するとよいでしょう。

1.返済期間猶予や減額返還制度を利用する

返済免除制度以外にも、奨学金の返済負担を軽減できる制度があります。

  • 返済期間猶予
  • 減額返還制度

「返済期間猶予」は奨学金の返済期限を一定期間、先延ばしにする制度です。

失業などで経済的に奨学金の返済が難しい場合に利用できる制度であり、奨学金の返還が最大10年間猶予されます。

また、災害や傷病、生活保護受給中の場合にはこの限りではありません。

一方、「減額返還制度」は全額返済することは難しいものの、減額すれば返済できる場合に利用できる制度です。

1回あたり、2分の1もしくは3分の1に減額して返済することができます。

なお、1回の願い出における適用期間は12ヵ月で最長15年(180ヵ月)です。

これら2つの制度の願い出は、スカラネット・パーソナルまたは郵送でおこなえます。

2.自治体などの返済支援制度を利用する

返済の一部を肩代わりしてもらえる、返済支援制度を利用する方法もあります。

自治体などの返済支援制度がないか確認してみましょう。

たとえば、関東圏では条件付きで以下のような返済支援制度があります。

  • 宇都宮市返還免除型育英修学資金
  • 栃木市未来応援奨学金(定住促進奨学金)
  • 佐野市奨学金返済助成事業
  • 新潟県Uターン促進奨学金返還支援事業

「1年以内に市内に居住し、5年間居住を継続」や「特定期間の就労」のような助成金などで見かける条件が多いようです。

3.債務整理をおこなう

これまでのやり方と比べると随分と大がかりになってしまいますが、どうしても困窮に陥った場合には債務整理をおこなう方法があります。

奨学金返済における債務整理には主に「自己破産」「個人再生」「任意整理」のような種類があります。

各手続きの詳細は、以下のとおりです。

自己破産裁判所に申立てをおこない、借金の支払い義務を免除してもらう手続き。

持ち家や99万円を超える現金などは処分されます。

個人再生裁判所を通して、借金を大きく減額できる手続き。返済期間は原則3年。

借金額に応じて5分の1から最大10分の1まで圧縮されますが、会社員程度の収入がなければ許可がおりません。

任意整理裁判所に頼らず、利息部分を支払わずに3年程度で返済します。

返済を続ける必要があるため、収入が安定していることが望ましいです。

奨学金の返済免除に関するよくある質問

以下に、奨学金の返済免除に関して多く寄せられる質問をピックアップします。

Q.奨学金が支払えないときに督促はおこなわれる?

奨学金を返済できないという声が多くありますが、なにもしないままでいると、日本学生支援機構もしくは該当機構が委託した債権回収会社から返還の督促がきます。

本人、連帯保証人、保証人に対して「振替不能通知」や電話がされるため、自分ひとりの問題ではなくなります。

Q.奨学金を滞納した場合にどのようなペナルティがあるの?

3ヵ月以上滞納した場合、個人信用情報機関に個人情報が登録される可能性があります。

また、訴訟提起や支払い督促の申立てがされると、強制執行により財産を差し押さえられるおそれがあります。

Q.教員になった場合は奨学金の返済免除を受けられるの?

返還特別免除を受けられる免除職があります。

しかし、残念なことに現在は廃止されています。

さいごに|奨学金の返済に困ったら弁護士に相談しよう!

奨学金の返済が苦しい方は少なくありません。

このような状況に陥った場合には、奨学金の返済免除制度を利用しましょう。

また、返済免除制度の条件を満たさない方でも、減額返還制度や自治体の返済支援制度を活用することで、返済負担を軽減できます。

また、それでも難しい場合には債務整理を検討するのもひとつの方法です。

奨学金の返済は債務であるため、返済できないと、訴訟提起や支払い督促の申立てがされることで、大ごとになってしまいます。

「どうすればいいかわからない」「債務整理を検討したい」といった場合には、弁護士への相談も視野に入れましょう。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法ナビ債務を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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