カード破産で借金問題を解決する方法と注意点|弁護士費用や勤務先への影響なども解説

カード破産で借金問題を解決する方法と注意点|弁護士費用や勤務先への影響なども解説

ネットショッピングの利便性が格段に上がり、クレジットカードで簡単にショッピングが楽しめるようになりました。

便利さがゆえに、つい使いすぎてしまうこともあるかもしれませんが、一方で気がつけば請求日には返済に追われて、支払が滞ってしまうリスクもあります。

「クレジットカードを使いすぎてしまい、返済に手が回らなくなってしまった」「リボ払いを多用したら利息分の返済が困難になってしまった」など、クレジットカードによって破産をしてしまう方が増えています

利用方法を間違えれば、誰でも簡単に破産に追い込まれてしまうでしょう。

そこで、本記事では「カード破産」について詳しく触れていきます

メリットとデメリットをきちんと理解すれば、自分が本当に自己破産をすべきか分かります。

また、クレジットカードの使い過ぎを予防したい方も参考にしてください。

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この記事を監修した弁護士
佐々木 光嗣弁護士(札幌パシフィック法律事務所)
2018年2月に札幌パシフィック法律事務所を設立。スタッフも一丸となり「身近なリーガルパートナー」として迅速な問題解決を目指す。

カード破産とは|支払ができずに自己破産に至ること

カード破産とは、クレジットカードを使いすぎて、カード利用額の請求日において支払が不能になり、自己破産をすることです。

ここでは、カード破産の意味や種類について確認していきます。

カード破産と自己破産は同じもの

カード破産は、前述のとおり、専らクレジットカードの使いすぎが原因で自己破産をすることを指すため、世間一般でいう「自己破産」とほぼ同じ意味で使われています。

裁判所に申立てをすれば、財産が換価処分される場合もありますが、返済義務がある借金は免責されます。

日本弁護士連合会が報告した「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、クレジットカードを原因とする破産事件は、9.35%でした。

2017年調査結果から比較すると割合は6.46%から9.35%と、2.89%増加しています。

インターネットの急速な進化により、インターネットショッピング市場が拡大しています。

今では誰でもカード破産する可能性があり、日頃から計画的にクレジットカードを利用するなどの注意が必要です。

カード破産の2つの種類

カード破産は、借入れの状況や財産の保有状況によって「管財事件」と「同時廃止事件」に分けられ、裁判所の判断で決定します。

手続きの必要期間や、費用が異なりますから、裁判所がどちらをに振り分けるかは、非常に重要です。

弁護士や裁判所との今後のやり取りをスムーズにするためにも、どのような制度か、知っておいてください。

管財事件|一定以上の財産が残っている場合の手続き

一定以上の財産がある場合には、裁判所によって選任された破産管財人が、債務者の財産調査、換価処分・債権者への配当といった手続きをおこないます。

手続きに要する時間も長く、個別の事案にもよりますが、3か月~1年程度、あるいは1年以上になる場合もあるようです。

管財事件にかかる費用として、裁判所に予納金を納めなくてはいけません。

一般的には、総額で40万~100万円程度かかるといわれています。

個人でカード破産を申し立てると、財産や負債の状況を正確に把握できない場合も多いです。

そうすると、裁判所の判断により、管財事件になってしまう可能性もあります。

なお、管財事件の中には、少額管財という、通常の管財よりも手続きが簡略化した形でおこなわれるものがあります。

少額管財の場合は、裁判所への予納金は、20万円程度と少なくなります。

弁護士費用が30万~50万円程度かかりますから、実際にかかる費用は、50万~70万円程度です。

同時廃止|財産が残っていない場合の手続き

債務者において、換価処分できる財産がない場合には、同時廃止事件として取り扱われます。

管財事件と異なり、債権者に配当する財産がそもそもないため、破産管財人による調査や配当手続きが必要ありません。

そのため、破産管財人の選任もなされず、裁判所に納める予納金も官報公告費用のほかにありません。

同時廃止事件は、その名のとおり、破産手続きの開始と終了が同時におこなわれます。

そのため、申立てから開始決定されるまで1~3ヵ月程度と短く済むことがメリットでしょう。

カード破産したら起こること

カード破産をおこなうと、借金の返済義務が免除される、借金の督促を止められるなど、多くのメリットがあります。

しかし、クレジットカードが作れなくなる、職業に制限がかかるなどのデメリットも多く存在します。

ここでは、メリットとデメリットについて確認していきましょう。

借金をゼロにできる

カード破産のもっとも大きなメリットは、返済義務が免除されることです。

今まで悩んでいた借金問題から解放されますから、精神的負担がなくなることで気分はだいぶ軽くなるはずです。

また、収入を貯蓄に回せますから、経済的な安定も図れます。

財産を処分する必要がある

カード破産のデメリットは、自由財産以外の財産は処分されてしまうおそれがあることがあげられます。

自由財産とは、自己破産の手続き後も手許に残すことのできる財産です。

持家や車などの高額財産は換価処分対象になることが多いです。

一般的に、換価処分されてしまう財産の具体例として、下記のものがあります。

  • 99万円以上の現金
  • 20万円以上の預貯金
  • 20万円以上の生命保険等の解約返戻金
  • 8分の1にした金額が20万円以上の退職金

クレジットカードを5年以上利用できなくなる

自己破産を行う際は、信用情報機関に、事故情報として登録されます。

事故情報とは俗にいうブラックリストのことで、破産手続き終了後約5~10年は借入れやクレジットカードの審査が通らなくなります。

住宅ローンや教育ローンを組めませんから、注意してください。

なお、デビットカード、PayPayなどのQRコード決済・電子マネーの利用は可能です。

一部の職業や資格に制限がかかる

破産手続き中は、一部の職業や資格に制限がかかります。

一時的に仕事を辞めるか、資格を使わずに仕事をしなくてはいけません。

具体的な職業の一例は下記です。

  • 弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士などの士業
  • 質屋、古物商
  • 生命保険募集人
  • 宅地建物取引士
  • 警備員

なお、会社はカード破産によって従業員を解雇できません

しかし、保険販売員や証券会社の外交員など、資格を使わないと仕事ができない職業の場合には別部署への異動や停職処分が課せられる場合があります。

官報で公告される

官報とは、日本政府が発行する機関紙です。

紙媒体のほか、国立印刷局のホームページにあるインターネット版官報で読めます。

カード破産をおこなうと、官報に、氏名や住所が載ってしまいます。

会社で経営者が官報を読む習慣があれば、知られてしまう可能性はあるでしょう。

しかし、一般的には、官報の存在自体を知らない方や目にする機会のない方が大半です。

そのため、官報から家族・友人・同僚に知られる心配はあまりないでしょう。

免責されない借金もある

自己破産をおこなっても免責されない借金があり、注意が必要です。主に税金や罰金などが該当します。

具体的なものは下記です。

  • 税金、社会保険料
  • 罰金等
  • 養育費
  • 故意に債権者名簿に記載しなかった請求権
  • 悪質な不法行為によって生じた損害賠償請求権

カード破産を申し立てたい場合の手続きの流れ

カード破産をするか迷っているときは、精神的に疲弊している可能性があります。

慌てずに落ち着いて、カード破産をおこなう流れを確認していきましょう。

弁護士に相談・依頼する

まずは、借金問題に注力している弁護士に相談してください。

カード破産をおこなう場合、自己破産以外にも、任意整理、個人再生の方法があります。

相談時に、現在の経済状況や、財産、借金の額などを詳しく伝えてください。

状況にあった方法をアドバイスしてくれます。

一般的に、初回相談時間は、30分~1時間程度で、費用は5000円~1万円程度の法律事務所が多いようです。

費用は、法律事務所によって異なります。

また、事務所によっては初回無料のところもあります。

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破産手続きの申立て

信頼できる弁護士と契約して、自己破産手続きをおこなってください。契約には身分証明書と印鑑が必要です。

自己破産手続きの依頼をおこなうと、弁護士から債権者に「受任通知」が送られます。

この段階で、債権者からの取立てが止まります。精神的な不安や負担が大幅に低減されるでしょう。

裁判所での審査

自己破産を申し立てたあと、裁判所により、申立書類に不備がないかなどの書類審査がおこなわれます。

弁護士に依頼していれば、裁判所からの連絡は、弁護士を通じて伝えられますから、アドバイスをもとに対応してください。

審査の結果、同時事件か管財事件のどちらかに判断され、破産手続きが開始します。

同時廃止事件になれば、破産手続きの開始と同時に終了します。

また、弁護士に依頼した場合の管財事件は、少額管財事件として取り扱われることがほとんどです。

同時廃止事件での流れと、かかる日数・時間は、下記です。

  • 免責審尋:免責審尋まで約2か月程度、免責審尋は5~10分程度
  • 免責許可決定確定:約1か月程度

また、管財事件の場合の流れは、同時廃止事件よりも複雑です。

かかる日数・時間も併せて確認してください。

  • 破産管財人との面接:問題がなければ30分~1時間程度
  • 破産管財人による財産の処分:約3か月
  • 債権者集会:5分~1時間程度
  • 免責審尋:5~10分程度

カード破産したくても弁護士費用が払えない場合の3つの対処法

カード破産の解決を弁護士に依頼した場合は、多くの費用がかかります。

弁護士費用は下記です。

  • 同時廃止事件:約30万円程度
  • 管財事件:約50万~80万円程度
  • 少額管財事件:約40万~60万円程度

カード破産をしている状態で、上記の資金を手に入れるのは困難です。

ここでは、弁護士費用が払えない場合の方法を3つ紹介します。

法テラスを利用する

法テラス(日本司法支援センター)は、国によって設立された法律の相談機関で、借金や離婚、相続などの法的トラブル解決のための支援をおこなっています。

経済的に余裕がない人を対象に法律相談を実施しています。

無料の法律相談は、1回30分程度で、同じ問題は3回まで相談可能です。

収入や資産が一定額以下といった要件を満たす必要はありますが、弁護士や司法書士に依頼をした際の費用等の立替えをおこなっています。

費用や返済方法は、審査をして決定しています。

弁護士費用を分割払または後払いにしてもらう

弁護士費用は、一括払いである場合がほとんどです。しかし、事務所によって分割払いや、後払いに対応している場合もあります。

弁護士費用を不安に感じる場合には、相談時に費用について質問してみましょう。

自分で手続きをおこなう

自分で自己破産の手続きをおこなえば、安い費用で自己破産が可能です。

しかしながら、借金問題の解決は複雑で、専門的な書類を間違えることなく揃えなくてはいけません。

さらに、裁判官との面接もなされる場合があり、適切に回答する必要があります。

そのため、素人では裁判所へ借金の正確な情報が伝えられません。

その結果、個人で自己破産申立てをおこなうと、多くは「管財事件」として取り扱われます

管財事件になれば、予納金などで費用が高額になり、弁護士に依頼したときと金額がたいして変わらなくなってしまいます。

トラブルなく、カード破産を解決したい場合は、借金問題に注力している弁護士に頼るのが、時間もお金も無駄にしない方法でしょう。

カード破産を申し立てる前に考えるべき2つのポイント

借金解決の方法は、カード破産(自己破産)以外にも、任意整理や個人再生という方法があります。

どの方法にもメリットとデメリットがあり、適さない方法を選んでしまうと今後も返済を続けなくてはいけません。

また、生活状況によってはカード破産自体ができない可能性もあります。

ここでは、申し立てる前のポイントを2つ紹介します。

本当にカード破産が適切か十分に検討する

借金問題の解決方法はカード破産だけではありません。

例えば、個人再生手続きでは、借金をゼロにはできませんが、借金を大きく減額できます。

しかし、決められた金額の返済を続けなくてはいけません。

任意整理|業者と交渉して債務を減らす手続き

任意整理は、今までに発生してしまった遅延損害金や利息のカット、返済期間の延長を債権者と交渉する方法です。

弁護士などが債権者と直接交渉します。

裁判所を通さないため、融通が効きやすいこともメリットといえます。

持家や自動車など、換価処分したくない財産がある場合は、任意整理はおすすめできます。

しかし、完済するまで返済を続ける必要がありますから、収入が安定していることが条件でしょう。

個人再生|裁判所を通じて債務の支払義務を減額する手続き

任意整理は裁判所を通さない方法ですが、個人再生は裁判所を通して借金を減額させる方法です。

減額した借金は基本的に3年かけて分割して支払います。

借金額に応じて減額度合いが異なりますが、最大で負債総額の10分の1まで減額されます。

任意整理よりも大きく借金が減額できることがメリットです。

しかし、個人再生を申し立てるには、3年程度の分割弁済を確実に実行できる収入が必要です。

給与所得などの安定したの収入がなければ難しいといわれています。

カード破産できるかどうか確認する

カード破産をおこなうにしても、免責不許可事由に該当していると免責を受けられない可能性があります。

免責不許可事由とは、裁判所が原則として免責を認めないと法律が規定する事由のことです。。

具体的には下記が挙げられます。

  • 債権者名簿の虚偽記載
  • クレジットカードの現金化
  • 自己破産直前の財産隠匿
  • 自己破産手続き中の借入れ
  • ギャンブルやショッピングなどの浪費による借金
  • 一部の債権者にだけ特別な利益を与える目的で弁済した
  • 裁判所に対する虚偽申告
  • 過去の免責申し立てから7年以内に免責申立てする
  • 裁判所などがおこなう調査へ非協力的な行為をする

また、借金の返済能力がある場合でもカード破産は許可されません。

カード破産についてよくある質問

カード破産では、難しい法律用語がたくさんでてきますから、多くの方は理解に苦しみ、焦ってしまいます。

さらに、世間では誤解されている情報もあり、より不安を駆り立てくるでしょう。

ここでは、カード破産をおこなう際によくある質問について答えていきます。

正確な情報を掴んでください。

カード破産した後に得た財産はどうなる?

破産手続き開始後に得た財産を「新得財産」といいます。

例えば、手続き開始決定後に振り込まれた給与がこれにあたります。

新得財産は、自由財産ですから、換価処分されません

そのため、破産人本人が自由に換価処分することができます。

勤務先にバレたら解雇される?

特定の資格を使った仕事ができなくなりますが、カード破産を理由に解雇はできません

個人の借金問題は雇用契約に関係ないからです。

勤務先から借金しているといった理由がなければ問題ないでしょう。

しかし、保険販売員や証券会社の外交員など、特定の資格が必要な職業は、仕事そのものができなくなります。

別部署への異動になるケースもあるでしょう。

また、会社の取締役については、カード破産の手続きをおこなうと会社との委任契約が終了することがあり、その場合は役員としての地位を失います。

カード破産すると携帯電話が契約できなくなる?

カード破産しても、携帯電話を契約可能です。

ただし、信用情報機関に事故情報(ブラックリスト)として登録されてしまうと、携帯電話の分割払の審査が通らない可能性があります。

また、携帯電話料金を滞納している場合には、携帯電話会社から新規契約が拒否される恐れがあります。

パスポートが取得できなくなると聞いたけど?

パスポートは所持できます。

しかし、自己破産手続き中の旅行は制限される場合があり、出国する場合も、管轄裁判所の許可が必要となる場合があります。

仕事の都合などで、どうしても出国しなくてはいけない場合には、事前に弁護士や裁判所に必ず確認してください。

選挙権は無くなるの?

2024年現在、選挙権は18歳以上の日本国民全員に与えられる権利ですから、なくなりません。

年金はもらえなくなる?

年金に制限はありません。通常どおりに受け取れます。

誤解されがちですが、カード破産は、すべての国民に認められた正当な権利です。懲罰の類ではありません。

破産法でもカード破産(自己破産)は「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする」と規定されています。

カード破産を親族は友人、近所の方に知られたくないんだけど?

基本的に、親族や友人や近所の方に知られることはありません。

戸籍や住民票にも記載されませんから、知られる可能性は低いといえるでしょう。

官報掲載によって知られてしまう可能性はゼロではありませんが、一般の方が読む機会はほとんどありません。

ただし、自宅に債権者が取立てに来た場合に、運悪く知られてしまう可能性はあります。

取立てをストップするためには、弁護士に借金問題解決を依頼して「受任通知」を債権者に発送してもらってください。

正規の業者であれば、受任通知を受領することにより、取立てを止めます。

家族が代わりに払わなければならないの?

本人がカードの支払が困難になり、債権者からの取立てに応じられない場合、家族が支払わなければいけないのでしょうか。

そのケースでは、基本的に「家族が連帯保証人になっている場合」に限られます。

本人がカード破産の手続きを始めると、連帯保証人が請求を受けなくてはいけません。

したがって、家族についても債務整理を検討する可能性が出てきます。

カード破産を申立てする場合には、必ず伝えておくようにしましょう。

さいごに

カード破産をおこなえば、返済義務がある借金を免責できる可能性があります。

住宅や自動車などの高価な財産は失ってしまうかもしれませんが、債権者からの取立てに応じる必要がなく、精神的にも大きなメリットがあります。

もっとも、法律を知らない素人が一人でおこなうと、思わぬ出費が発生してしまうおそれがあります。

自身ではカード破産が一番よいと思っていても、それ以外の最適な方法があるかもしれません。

やはり、借金問題に注力している弁護士に相談することが、問題解決の近道ではないでしょうか。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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