自己破産
自己破産で法テラスを利用する場合の費用は?法律事務所との料金比較で安さを確認
2024.10.08
借金を返すため借金を重ねたり、その他の理由でも借金を重ねたりしてしまうと、多重債務状態になり、生活が困難になります。
多重債務状態に陥ると自力で解決することが困難になり、借金を返すことで頭がいっぱいになってしまう方は少なくありません。
そんな多重債務状態を解決するために、自己破産という方法を検討している方もいるでしょう。
自己破産は借金をゼロにする方法ですが、メリットやデメリットも含め、どのような状態になるのかを正確に知っている方は、あまり多くないでしょう。
本記事では、自己破産の特徴やメリット・デメリットを解説し、実際にどのような処理がおこなわれるのかを紹介し、借金問題の解決に役立つ知識を提供します。
なお、早急に借金問題を解決したい場合は、速やかに自己破産の対応を得意とする弁護士に相談しましょう。
収入に見合わない額の借入をして弁済が難しい場合、任意整理・個人再生・自己破産などの債務整理が有効です。
自己破産とは、裁判所の許可を得て、自分の借金を帳消しにしてもらう手続きです。
自己破産が裁判所に認められると、子どもの養育費や税金、罰金などの一部の例外を除き、全ての借金を返済しなくてすみます。
借金で首が回らず、返す方法も見つからない場合には効果的な手段です。
自己破産をおこなうと、基本的に99万円を超える財産を残すことはできませんが、すでに返す財産が尽きている場合や、尽きる見込みのある場合は非常に有効な手段です。
自己破産の手続きは、同時廃止事件・管財事件・少額管財事件の3種類に分類されます。
ここでは、各手続きについて解説します。
同時廃止事件とは、財産管理や清算を担当する「破産管財人」が選出されずに進められる手続きのことです。
同時廃止事件では、破産管財人の選出や債権者への分配などの手続きがおこなわれず、管財事件などに比べると短期間で手続きが終了します。
実際にどの手続きになるのかは裁判所によって判断されますが、同時廃止事件の要件は以下のとおりです。
管財事件とは、裁判所にて破産管財人が選出されて進められる手続きのことです。
管財事件では、破産者が持っている財産を金銭に換えて債権者に分配したりするため、同時廃止事件よりも時間的負担・金銭的負担が大きくなります。
管財事件の要件は以下のとおりです。
少額管財事件とは、管財事件の工程を簡略化した手続きのことです。
管財事件よりもスピーディかつ安価で手続きが進行するのが特徴的で、破産者の財産が少ない場合には少額管財事件として扱われることがあります。
ただし、裁判所によって対応は異なり、なかには少額管財事件を採用していない裁判所などもあります。
自己破産をおこなうためには、基本的に以下のような要件を満たしている必要があります。
ここでは、自己破産をした場合のメリット・デメリットについて解説します。
自己破産の主なメリットとしては以下があります。
自己破産の主なデメリットとしては以下があります。
自己破産をおこなっても持ち続けられる財産のことを自由財産といいます。
自由財産を超える高額な財産は換価されます。
自由財産とは、99万円までの現金や、残高20万円以下の預貯金、生活や仕事に必要な差し押さえ禁止財産などを指します。
自由財産にあたらない財産は換価され、借金の貸し主である債権者に分配されます。
基本的には20万円以上の財産は処分の対象となり、ローンが残っている車や、不動産も対象となります。
20万円以上の価値がある財産は原則換価されます。
換価は、裁判所により選任された破産管財人がおこないます。
自己破産とは借金が免除される制度ですが、無条件で免除されるわけではなく、当然財産を大きく残すことはできません。
財産を残せるのならば、借金の貸し主に可能なかぎり返済をおこなうことが道理だからです。
ローンが残っている車には所有権留保が付いており、所有権がローン会社などの信販会社にある場合が多いため、基本的に車両は引き上げられます。
自身の車の車検証の所有者欄を確認してみましょう。
ローンが残っていない自己所有の車でも、自己破産時の時価が20万円以上であれば、基本的に換価の対象になります。
保険では、解約時に返金される解約返戻金が設定されていることがあります。
解約返戻金が20万円以上の場合は、原則的に生命保険を解約する必要があります。
解約後は自身のお金になるわけではなく、債権者への分配に使用されます。
自己破産では、上記のとおり自由財産を除いた20万円以上の財産は、原則として債権者への分配に充てなければいけません。
しかし、自由財産の拡張を裁判所に認めてもらえれば、財産を処分せず、残せることもあります。
法律上認められている自由財産以外にも、生活に必要な財産は自動車や預貯金、保険など多岐にわたります。
原則として自己破産で処分される財産でも、生活に必要であると認められれば維持できます。
各裁判所では、自由財産の拡張を認める基準を設けていることが大半であるため、残したい財産がある場合は弁護士へ相談しましょう。
一般的に、現金などとあわせて総額99万円以下であれば認められるケースが多く、経験豊富な弁護士であれば、ある程度の見立てをしてくれるでしょう。
自己破産をおこなう場合、住居が心配な方は少なくないでしょう。
持ち家だと原則として処分が必要ですが、賃貸物件であれば住み続けられます。
ケースごとに対応が異なるため、持ち家の場合と賃貸物件の場合で解説します。
持ち家に住んでいる場合は、原則として処分されます。
車の場合はローンの有無により処分対象になるかどうかが変わりますが、持ち家の場合においてはローンの有無は関係ありません。
不動産は高価な財産とされているため処分の対象となり、債権者へ分配されます。
どうしても不動産を残したい場合は、個人再生を検討しましょう。
個人再生は、自己破産と同じ債務整理の一種ですが、自己破産とは違って不動産の処分は絶対条件ではありません。
詳細は弁護士に相談しましょう。
自己破産をおこなったからといって、それだけを理由に賃貸物件から追い出すことはできません。
そのため、住んでいる家が持ち家でなく賃貸物件であれば、そのまま住み続けることができます。
賃貸物件に住んでおり、自己破産をおこなうときに注意すべきケースは、家賃を滞納している場合と家賃が高額すぎる場合です。
金銭的に厳しいからこそ自己破産を検討しているという状態であるため、家賃を滞納してしまっている方は少なくないでしょう。
家賃の滞納は賃貸借契約を解除する理由となるため、そのまま住めなくなる可能性があります。
また、家賃が高額すぎる場合は、家計の見直しを理由に、賃貸契約の解除を求められることもあります。
自己破産の手続き中の引っ越しは制限されます。
ただし、手続きが完了すれば引っ越しは可能です。
自己破産をおこなったからといって、何年も引っ越しが制限されるわけではありません。
同時廃止事件なのか管財事件なのかによって、引っ越しの制限が異なります。
同時廃止事件の場合は基本的に引っ越しの制限は受けませんが、免責許可決定が確定するまでの間に引っ越しをしたときには、裁判所に報告する義務があります。
管財事件では、自己破産の手続き中の引っ越しには、裁判所の許可が必要です。
つまり、引っ越しに制限を受けるということです。
自己破産をしていても、賃貸物件の契約に制限は受けません。
つまり、賃貸物件を借りること自体は可能です。
しかし、賃貸物件に入居する際は、入居審査がおこなわれます。
入居審査では、自己破産が影響する可能性があるため、入居審査に落ちやすく、賃貸物件が借りにくいといったことが想定されます。
賃貸物件では家賃保証会社を入れることがあり、この保証会社が信用情報機関の情報を参照します。
自己破産をおこなうと、信用情報機関に事故情報として記録され、支払能力がないと判断され、審査落ちすることが多いでしょう。
自己破産の影響が家族にまで及ぶのではないか、と心配をする方もいるでしょう。
しかし、家族であるからという理由だけで自己破産の影響を受けることはありません。
ただし、借金の保証人になっている場合では状況が異なるため、注意が必要です。
自己破産は本人だけの手続きであり、原則として家族は自己破産の影響を受けません。
そのため、家族が職業や引っ越しの制限を受けることや、家族が所有する財産の処分をおこなう必要はなく、法律上は影響が存在しません。
なお、家族名義の借金は自己破産をおこなっても解消されるわけではないという点には注意が必要です。
自己破産をおこなっても、法律上は家族に影響は無いため、もし不当な扱いを受けた場合には弁護士に相談しましょう。
自己破産は、本人の借金・債務が免除される制度です。
借金には保証人が設定されている場合が多く、債務者が自己破産をした場合は、保証人に借金を返済する義務が生じます。
そのため、家族が自身の借金や債務の連帯保証人になっている場合は、自身の借金がそのまま家族へ請求されます。
保証人となった家族も支払いが難しい場合は、同時に自己破産などの債務整理をおこなう必要性が生じます。
自己破産をおこなうことで仕事がなくなるのではないか、と心配をする方もいるでしょう。
金銭的に苦しい中で、リストラなどの心配事もあると、さらに焦ってしまうでしょう。
自己破産をおこなうと、いくつかの職業では就業が制限されますが、それ以外の職業では自己破産を理由に解雇することはできません。
心配な場合は、自分の職業が制限対象になるかどうかを一度調べたり、弁護士に相談したりしましょう。
会社は自己破産を理由にして解雇をおこなうことができません。
つまり、自己破産が原因でクビにはなりません。
自己破産は会社の業務上の問題ではなく私生活の問題であるため、解雇の理由にはできず、仮に自己破産だけを理由に懲戒解雇をすると、不当解雇にあたるでしょう。
自己破産を理由に解雇をおこなうことはできませんが、自己破産を理由に就業に制限を受ける職業もあります。
こちらは会社の問題ではなく、法律上での決まりごとです。
ただし、就業に制限を受けても、自己破産手続きが完了して一定期間が経過し、復権したあとは再び制限されていた職種に就けます。
資格が必要な職業でも、改めて資格を取り直す必要はありません。
自己破産で制限を受ける職業は、宅地建物取引士や公認会計士、税理士、警備員、保険の外交員などがあります。
自分の職業が制限対象か気になる方は、職業名と制限職種などで調べましょう。
なお、詳細な条件に応じて制限が異なるため、安易に検索結果だけで事態を判断せず、弁護士などの専門家に一度相談することをおすすめします。
破産者は成年後見人や遺言執行者の欠格理由にあたるため、成年後見人や遺言執行者などにはなれません。
成年後見人は、知的障害や認知症などによって判断能力が不十分な方に代わり、契約や財産管理などをおこないます。
自身の財産管理に失敗した破産者は、他人の財産管理をおこなうには不適切とされています。
また、同じような理由で、遺言により財産の管理をおこなう遺言執行者にもなることができません。
基本的に自己破産後は借り入れをおこなうことはできません。
もし自己破産をして間もない時期であるにもかかわらず借り入れができそうな場合、それは貸金業者がヤミ金業者である可能性があります。
ここでは、自己破産をおこなうと、どの借り入れ方法が、どの程度の期間難しくなるのかを解説します。
借り入れをおこなう際に、貸金業者は信用情報機関に情報を照会して、貸し付けの可否を判断します。
自己破産をおこなうと、信用情報機関に「自己破産をおこなった」という事故情報が信用情報機関に登録されます(所謂「ブラックリスト」)。
事故情報がある人は「返済能力が無い」と判断され、新規の借り入れは難しくなります。
この状態が5年~10年程度は続くでしょう。
自己破産をおこなうとブラックリストに登録されてしまうため、クレジットカードの新規作成や利用などもできなくなります。
クレジットカード会社も信用情報機関の情報を参照し、支払能力の有無を調査するため、自己破産をおこなった人には、基本的に貸し付けをおこないません。
そのため、数年間はクレジットカードの新規契約が困難になるでしょう。
住宅ローンの貸し付けでも、信用情報機関の情報が参照されます。
金融機関や貸金業者の大半はブラックリストを見ているため、住宅ローンも同様に組めないでしょう。
住宅ローンにかぎらず、ローン全てが難しくなる<といわれており、自動車ローンやカードローンも困難になり、場合によっては携帯電話の分割購入も難しくなります。
自己破産をおこなうと借金ができない状態になりますが、なかにはそれでも借金をせざるを得ないケースも少なくありません。
そこに目をつけて、ヤミ金業者などが勧誘をしてくることもあります。
このような勧誘をしてくる業者は、全て詐欺や違法行為に加担していると考えてよいでしょう。
自己破産で辛い状況にある中でヤミ金業者と関わると、さらに金銭的に厳しい状況に追い込まれます。
電話や手紙などのさまざまな方法で営業や勧誘がおこなわれますが、絶対に関わらないように気をつけてください。
自己破産をおこなう場合、基本的には以下のような流れで手続きが進行します。
ここでは、自己破産の手順を解説します。
自己破産の手続きは複雑で、裁判所とのやり取りなども必要になるため、弁護士に依頼するのが一般的です。
「ベンナビ債務整理」では自己破産の対応が得意な全国の弁護士を掲載しているので、まずはここで弁護士を探しましょう。
初回相談無料の法律事務所も多く掲載しており、費用が気になる方も安心して利用できます。
自己破産をおこなうためには、以下のような書類を集めて「申立人の住所地を管轄する地方裁判所」に提出します。
裁判所の管轄先については「裁判所の管轄区域」から確認できます。
必要書類 | 入手先 |
破産手続開始および免責申立書 | 裁判所(ダウンロード先) |
陳述書 | 裁判所(ダウンロード先) |
債権者一覧表 | 裁判所 |
資産目録 | 裁判所 |
1ヵ月ごとの家計状況をまとめたもの | 本人が作成 |
住民票 | 市区町村役場 |
過去1年分~2年分の通帳の写し(全貯金口座が対象) | 金融機関またはインターネット |
過去1年分の源泉徴収票 | 会社 |
給料明細書 | 会社 |
その他資産状況がわかるもの(自動車の車検証や不動産登記簿など) | – |
※状況によっては追加書類の提出が必要な場合もあります。
なお、弁護士に依頼すれば、これらの書類収集なども代行してくれます。
申立てが受理されると、「破産事件受理証明書」が発行されたのち、裁判官による債務者審尋がおこなわれます。※裁判所によって運用が異なります。
債務者審尋とは裁判官との面接のことで、「提出書類の記載内容に間違いはないか」「なぜ自己破産することになったのか」など、さまざまな質問がされます。
次に、裁判所にて破産手続開始決定が出されます。
同時廃止事件と管財事件のどちらになるのかによって、その後の手続きの流れが異なります。
同時廃止事件の場合、裁判所での免責審尋がおこなわれ、免責を許可するかどうかが判断されます。
管財事件の場合は同時廃止事件よりも複雑で、手続きの流れは以下のとおりです。
問題なく手続きが進めば、裁判所にて免責許可決定・免責不許可決定が出されます。
免責許可決定が出された場合、官報に破産者の個人情報が掲載され、2週間以内に債権者からの不服申立てがなければ免責確定となります。
自己破産をおこなううえでは、心配事が山積みでしょう。
少しでも不安が和らぐように、自己破産でよくある質問をまとめているため、参考にしてみてください。
自己破産をおこなうと、官報に氏名や住所とともに、自己破産したことが記載されます。
官報は誰でも見ることができますが、官報を見る人はまれです。
官報に掲載されたからといって、近所の人や職場の人が自己破産をしたことに気付くことは滅多にないといえるでしょう。
自己破産をしたからといって、選挙権がなくなることはありません。
投票はもちろん、自身が立候補する被選挙権も消失しません。
自己破産をしてもパスポートを所持することはできます。
破産手続き中は移動が制限されますが、破産後は制限されないため、パスポートも問題なく使うことができます。
また、手続き中であっても、裁判所の許可が下りれば、パスポートを利用して海外出張などに行くことも可能です。
自己破産をしても年金の受給額には影響ありません。
また、生活保護などの公的扶助も受けることができます。
自己破産後に生活に困窮した場合は、生活保護などを活用しましょう。
自己破産は、自身の借金を帳消しにして生活の再建をおこなえる前向きな制度です。
しかし、デメリットや制限されることも多く存在します。
場合によっては、自身の希望を実現する手続きが自己破産ではない可能性もあります。
自己破産を検討しているなら、まずは弁護士に相談しましょう。
自己破産などの借金問題の解決経験が豊富な弁護士に相談すれば、これまで培ったノウハウなどをもとに良い解決策をアドバイスしてくれる可能性が高いといえるでしょう。