自己破産
自己破産できる金額はいくら?借金額以外の条件や手続き費用の目安額などを解説
2024.11.12
自己破産は、多額の借金を抱えてしまった方にとって、再スタートのチャンスとなり得ます。
しかし、反対に自己破産は債権者の権利を奪うものでもあるため、裁判所による慎重な判断が必要です。
この記事では、自己破産ができない条件や自己破産をおすすめできない方の特徴、自己破産をするとできなくなることなどについて解説します。
記事を読むことで、自分が自己破産できるかどうかがわかるでしょう。
ただし、自己破産できないケースはそれほど多くはありません。
また、それに該当したからといって、自己破産が認められないわけではありません。
記事の後半では、自己破産できない条件に該当してしまった場合の対処法も解説するので、参考にしてみてください。
自己破産以外にも借金問題を解決する方法は存在します。
従ってあなたの状況次第では、自己破産をせずに、借金の負担を減らせる事ができかもしれません。
借金問題で苦しんでいる方は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼するメリットは、以下の通りです。
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自己破産は、以下の条件に当てはまる場合には申し立てができないか、申し立てても免責許可決定を受けられない可能性があります。
以下で、ひとつずつ解説します。
「支払い不能状態」ではない、つまり「借金の返済が可能」と判断されれば、自己破産の申し立てはできません。
自己破産が認められなかった場合は、任意整理や個人再生など、ほかの債務整理手段を検討する必要があります。
破産法第2条第11項では、支払い不能の概念を以下のように定義しています。
11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。
引用元:破産法第2条第11項
つまり、以下の3点を満たす場合には、支払い不能状態だといえます。
たとえば、失業などにより収入がゼロになった場合でも、預貯金などの財産から返済が可能なら「資力がある」と考えられるため、支払い不能状態とはいえません。
また、今現在返済が可能なら、将来的に返済が難しくなることが見込まれる場合でも、支払い不能とまではいえず、自己破産はできません。
目安として、債務の残元金を36回(3年)で割った金額を毎月返済できない場合は、支払い不能状態にあるといえるでしょう。
債務を負った原因が「免責不許可事由」に該当する場合、自己破産によって免責されない可能性があります。
破産法では、返済責任の免除を認めない破産原因を「免責不許可事由」として、以下のように規定しています(破産法第252条第1項)。
ギャンブルなどの賭博行為だけでなく、株の信用取引やFX、暗号資産などによって借金を負った場合も、免責不許可事由に該当するので注意が必要です。
また、破産を申し立てると、過去2年間に保有していた預貯金口座の入出金履歴を裁判所に提出しなければいけません。
そこで財産隠しや一部の債権者に優先的に返済する「偏頗(へんぱ)弁済」が発覚すると、免責許可が下りない可能性があります。
しかし、免責不許可事由があるからといって、必ず免責許可が下りないわけではありません。
該当する場合は真摯にその旨を伝え、裁判所や管財人に協力する姿勢を見せましょう。
自己破産は、お金がないことを原因として支払いの免除を申し立てる手続きですが、その手続きをとるためにもお金が必要です。
自己破産をするには、あらかじめ裁判所に「予納金」と「官報公告費」を納める必要があります。
自己破産を申し立てると、裁判所は「同時廃止事件」「管財事件」のどちらの手続きを適用するか判断します。
予納金を支払うだけの十分な財産があると判断される場合は「管財事件」、換価できる財産がなく、予納金が支払えないことが明らかな場合には「同時廃止事件」が適用されるのが一般的です。
また、一部の裁判所では、個人の自己破産に限って、簡易的な手続きで済む「少額管財事件」を適用することもあります。
どの手続きをとるかは裁判所が判断するため、破産者が選ぶことはできません。
管財事件、または少額管財事件が適用されると、「破産管財人」が選任され、破産者の財産を調査・管理・換価して、債権者に配当する役割を担います。
予納金とは、この「破産管財人」がついた場合の費用や管財人報酬のために納めるものです。
一方、官報公告費とは、国が発行する広報誌である「官報」に破産の事実を掲載する際、必要な掲載料を指します。
裁判所に申し立てる際に必要な金額の目安は、以下のとおりです。
【自己破産の予納金・官報公告費】
適用される事件 | 合計 | 内訳 |
同時廃止事件 | 2万円程度 |
|
管財事件 | 52万円以上 |
|
少額管財事件 | 22万円以上 |
|
【参考元】
ただし、費用は裁判所によって異なるうえ、事件の複雑さや借金総額によっても変わります。
申立代理人弁護士の費用であれば、法テラスを利用して一時的に立て替えを受け、のちに分割払いをすることもできます。
しかし、生活保護を受けている方を除き、予納金や官報公告費は法テラスでも貸与されないので、自分で用意しなければなりません。
破産法に規定されている免責不許可事由に該当したとしても、全てのケースが免責許可決定を受けられないわけではありません。
ギャンブルや浪費など、免責不許可事由に該当することが原因で作った借金でも、免責許可が出る可能性もあります。
借金の理由や額などを包み隠さず説明し、裁判所や破産管財人に協力することで、真摯に反省していることが認められれば、免責決定を得ることは可能です。
また、免責不許可事由が悪質でないと判断され、免責決定が下りるケースもみられます。
実際に、免責不許可事由による破産でも、免責許可決定を受けられることは多いようです。
免責不許可事由があっても、裁判所の判断で許可を出すことを「裁量免責」といいます。
実際には裁量免責が実現されるケースの方が多いのは事実ですが、そもそも裁量免責を得るためには、自分のしたことを隠さず報告し、反省を示すことが重要です。
申立代理人弁護士には、破産者本人に真実を述べさせ、反省を促すことが期待されています。
弁護士に正直に事情を話すことで、反省が伝わりやすいように陳述書を作成してくれるでしょう。
実際の自己破産件数を見てみると、自己破産の申し立てが受理されたケースでは、ほとんどが免責許可決定を受けています。
2021年の司法統計では、年間の自己破産受理件数7万6,321件のうち、棄却または却下された件数は91件のみでした。
個人の自己破産に着目すると、受理件数7万406件のうち、棄却・却下は83件のみで、全体のわずか0.12%程度です。
また、個人の自己破産において、管財事件で終結した件数は5,519件、同時廃止などの廃止事件として破産した件数は6万3,524件で、合計すると全体の96%が免責許可を得ていることがわかります。
この高水準は、2020年、2019年にさかのぼっても大きな変化はありません。
自己破産は、免責許可が出やすい手続きといえそうです。
また、前述した免責不許可事由に該当するケースでも、申立書が受理されてしまえば結果的に免責が許可される可能性は高いといえるでしょう。
ギャンブルや浪費などによって負った借金でも、真摯に反省して裁判所や管財人に協力することで、免責許可を受けられる可能性は十分にあります。
【参考元】破産既済事件数-破産者及び終局区分別-全地方裁判所|裁判所
自己破産できないケースに当てはまらない場合でも、自己破産をおすすめできないケースもあります。
自己破産をすると失うものが大きい方や、自己破産しても効果が薄い方は、自己破産以外の方法を選択すべきでしょう。
以下で、自己破産手続きをおすすめできない方の特徴について、詳しく解説します。
手放したくない大きな財産がある場合は、自己破産はおすすめできません。
自己破産手続きは基本的に、自分の財産と引き換えに、残りの債務を免除してもらう手続きだからです。
なかには、自分名義の持ち家があって、「自宅だけは手放したくない」という方もいるでしょう。
手元に残しておきたい財産があれば、それと同程度の金額を追加で納めて買い取ったり、家族に自宅を購入してもらって名義をうつしたりする方法もあります。
しかし、持ち家の場合、評価額を一括で支払う必要があるため、あまり現実的な方法とはいえないでしょう。
どうしても残したい財産がある場合には、自己破産以外の債務整理方法の検討をおすすめします。
自己破産手続き中は、一定の職業や資格について制限を受けます。
たとえば、以下のような資格や職業です。
主に、一定の責任と倫理観が求められる士業や一部の公務員、金融関係、および現金を直接扱う可能性がある職種などがこれにあたります。
ただし、制限を受けるのは手続き中のみで、免責許可決定が確定すれば、制限は解除されます。
同時廃止事件なら、開始決定と同時に廃止決定が出るため、仕事を制限されるのは免責許可決定が出るまでの3~4ヵ月程度でしょう。
「非免責債権」が借金の大半を占めている場合には、破産しても免責の効果を受けられません。
非免責債権とは、破産しても免除されず、支払いの義務が残る債務を指します。
非免責債権の例(破産法第253条第1項)は、以下のとおりです。
このような債務は、たとえ免責許可決定が出たとしても支払いは免除されないため、自己破産のメリットをあまり受けられないでしょう。
なお、税金や社会保険料の支払いについては自治体の窓口で相談したり、養育費は元配偶者に相談したりすることで、減額や分割払いに応じてもらえる可能性もあります。
自己破産すると返済能力に対する信用を失うため、クレジットカードや携帯電話端末の分割購入など、購入と代金支払いに時間差がある支払い方法は利用できなくなります。
信用を失う期間は5~7年程度です。
また、自己破産後7年間が経過するまでは、再度自己破産することは認められません。
自己破産をすると、クレジットカードを新たに作成することも、現在のカードを利用することもできなくなります。
自己破産をした事実は「信用情報機関」に金融事故として記録され、5~7年程度残り続けるからです。
信用情報機関には、シー・アイ・シー、日本信用情報機構、全国銀行個人信用情報センターの3つがあり、カード会社だけでなく、ほとんどの金融機関はいずれかの信用情報機関に加盟しています。
そして、顧客に貸し付けをおこなう際には、顧客に金融事故がないかを確認するために、信用情報機関に照会をかけるのです。
信用情報機関に破産の事実が登録されている間は、返済能力の低い顧客であるとみなされるため、クレジットカードの利用や新規発行はできません。
また、新たな借り入れもできないので、ローンを組むこともカードローンを利用することもできません。
なお、キャッシュレス決済の手段として、デビットカードは自己破産後も利用できます。
デビットカードは購入と代金支払いに時間差がないため、信用力は関係ないからです。
自己破産をすると、スマートフォンのように高額な電化製品などを分割払いで購入することもできません。
現在は、スマートフォン端末を購入する際、機種代金を毎月の携帯電話利用料金に上乗せし、分割して支払う方法がよくとられています。
しかし、自己破産をすると分割払いもできません。
返済能力に対する信用がなくなるため、購入時に全額支払う以外の支払い方法がほぼ全てできなくなるからです。
信用情報機関から破産の情報が消えるまで、5~7年程度は分割払いもできません。
一度自己破産をすると、免責許可決定が出た後7年間は再度自己破産することは認められません(破産法第252条第1項10号)。
自己破産は、返済不能におちいった債務者の救済制度です。
しかし、逆の立場から考えれば、破産者にお金を貸した債権者の権利を侵害する制度でもあります。
そのため、頻繁に破産が認められるべきではないと考えられており、7年経過した後でも、再度の申し立ては初回の申し立て以上に厳しく判断されるのが通常です。
このような場合は、免責が認められない可能性もあるでしょう。
また、2回目になると、同時廃止ではなく管財事件になりやすくなるため、多額の予納金が必要になるうえ、時間もかかります。
実際に自己破産による免責許可決定が得られなかった場合、どのような手段をとるべきでしょうか。
自己破産ができなかったとしても、以下のような対処方法があります。
自己破産をしても免責許可決定が下りなかった場合は、不許可決定が届いてから1週間以内に「即時抗告」をすると、異議を申し立てることができます(民事訴訟法第332条)。
即時抗告の申し立て先は、免責不許可を決定した地方裁判所を管轄する高等裁判所です。
ちなみに、破産債権者からも免責許可決定に対する異議申し立ての即時抗告をすることができ、その期間は官報公告の掲載日から2週間以内です(破産法第9条)。
統計データはありませんが、即時抗告によって不許可決定がくつがえる可能性はそれほど高くはないでしょう。
ただし、裁判所は債務者の再起のためにできるだけ免責許可決定を出す方針をとっているため、免責不許可になる可能性は低いと考えられます。
自己破産が難しい場合には、自己破産以外の債務整理を検討しましょう。
債務整理手続きには、自己破産以外にも、「個人再生」と「任意整理」があります。
個人再生とは、裁判所に申し立てることで、借金を5分の1から10分の1程度まで減額できる手続きです。
減額された借金について、原則3年、事情がある場合には5年かけて返済します。
自己破産ではなく個人再生を選ぶことには、以下のようなメリットが考えられます。
特に、自宅を残すために自己破産を選びたくないという方は、住宅ローンの支払いを維持したまま、それ以外の債務を減額できる「住宅ローン特則」の魅力は大きいでしょう。
ただし、個人再生を利用するためには、3年間返済を継続できる、安定した収入があることを証明しなければなりません。
任意整理とは、今後の返済を元金のみの分割返済とし、返済期間も延長してもらうよう、債権者と交渉して和解を目指す方法です。
裁判所を介さず、弁護士が債権者と直接交渉します。
任意整理でカットできるのは、基本的に今までに発生した遅延損害金や、分割弁済で発生する利息分のみです。
任意整理には、整理する債務を自分で選択でき、裁判所に申し立てないため周囲に知られる可能性が低いという利点があります。
自己破産のように職業制限を受けることもありません。
ただし、任意整理で和解後も返済は続くため、最長5年で返済できるだけの継続した収入があることが利用の条件です。
自己破産を申し立てる場合は弁護士に依頼しましょう。
弁護士に申し立てを依頼することで、以下のようなメリットが期待できます。
実際、2020年の日本弁護士連合会の調査では、自己破産した調査対象者のうち、約9割が弁護士に申立代理人を依頼しています。
【参考元】2020年破産事件及び個人再生事件記録調査【データ編①破産事件】|日本弁護士連合会
自己破産の理由が免責不許可事由に該当するとしても、弁護士に依頼すれば、真摯に反省していることを裁判所に伝え、免責許可決定まで導いてくれるでしょう。
また、たとえ自己破産が難しいとしても、債務を軽減できる方法を提案してもらえるはずです。
自己破産ができないかもしれないと悩んでいるなら、一度弁護士に相談してみましょう。
自己破産以外にも借金問題を解決する方法は存在します。
従ってあなたの状況次第では、自己破産をせずに、借金の負担を減らせる事ができかもしれません。
借金問題で苦しんでいる方は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼するメリットは、以下の通りです。
初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しているので、下記よりご相談ください。
自己破産のメリット・デメリットについては、こちらの記事でも詳しく解説されています。あわせてご確認ください。参考:自己破産のメリット・デメリットとは?個人破産の前に検討しよう | 株式会社いちとり