子どもの親権・養育費
養育費の差し押さえ方法(強制執行)をわかりやすく解説
2024.11.20
元配偶者との養育費については、離婚時の話し合いで支払う金額が決まっているのが一般的でしょう。
しかし、養育費の未払いで悩んでいる方が多いのも事実です。
なかには元配偶者と音信不通になり、催促ができなくなっているようなケースもあります。
本記事では、上記のような養育費の未払いをどこに相談すべきかについて解説します。
具体的な請求の流れについても解説するので、泣き寝入りせずに養育費をしっかりと請求しましょう。
養育費の取り決めをしたのにも関わらず、養育費が支払われずにお困りの方は弁護士への相談がおすすめです。
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元配偶者が未成年の子どもを監護している場合、監護していない親の養育費の支払いは民法上の義務であり、養育費の未払いは法律上の義務違反にあたります。
民法766条1項により、父母は離婚をするときには、養育費の分担について協議で定めなければならないとされています。
未成年の子の親権を有していなかったとしても、養育費の支払い義務がなくなるわけではありません。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第七百六十六条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。引用元:民法|e-GOV法令検索
以下では養育費未払いに対する罰則や、未払いとなっている場合の面会交流について、詳しく見ていきましょう。
養育費の未払いは法律上の義務違反とはいえるものの、未払いに対して罰則があるわけではありません。
しかし、家庭裁判所の調停や審判で決められた養育費の支払いをしない場合において、裁判所から養育費の履行命令を受けたにもかかわらず、正当な理由なく従わなかった場合には10万円以下の過料となる可能性があります(家事事件手続法第290条)。
また養育費の取り決めに従わず未払いが続いている場合には、強制執行によって財産を差し押さえられる可能性もあります。
養育費の未払いがあった場合でも、子どもとの面会交流は可能です。
面会交流とは、離婚や別居で離れて暮らしている親子が面会したり、電話や手紙で交流したりすることを指します。
養育費の支払いと面会交流は別の問題として扱われるため、たとえ養育費が未払いであったとしても、子どもとの面会を拒否する理由にはなりません。
しかし、養育費の未払いは子どもの生活に影響を及ぼす可能性があるため、未払いが続いている状況であれば早急に解決すべきといえるでしょう。
養育費の未払いを相談できる機関として、次の3つが挙げられます。
未払いの状況を改善するために、まず専門機関への相談から検討してみましょう。
各相談機関について、以下で一つずつ解説していきます。
養育費の未払い問題について話を聞いてほしい場合には、養育費相談支援センターの利用をおすすめします。
養育費相談支援センターはこども家庭庁から委託された公益社団法人が運営している機関で、養育費や親子の交流についての相談に対応しています。
各地方自治体のひとり親家庭支援窓口のほか、電話相談やメール相談にも対応しているため気軽に相談しやすいでしょう。
養育費の未払い問題を具体的に解決したいなら、ベンナビを利用した法律相談がおすすめです。
ベンナビとは、居住地域や相談内容を指定して弁護士・法律相談所を検索できるポータルサイトです。
養育費未払いに関する相談であれば、ベンナビ離婚またはベンナビ債権回収から相談内容を養育費で絞って検索すると、最適な弁護士が見つけやすくなります。
弁護士費用を支払う収入がなく、養育費の未払いで困っている場合には、法テラスへの相談を検討するといいでしょう。
法テラスは、国が設立した法的トラブル解決のための総合案内所です。
収入や資産が一定額以下などの条件を満たしていれば、無料の法律相談や弁護士費用の立て替えを利用できます。
養育費の未払いを回収する手続きは、債権名義があるかどうかによって異なります。
以下で、債権名義とはなにか、そしてその有無による回収方法の違いについて具体的に確認していきましょう。
債権名義とは、債権者・債務者・債務範囲・請求権などを公的に証明する文書で、法律によって強制執行をすることが認められているものです。
養育費の未払いについては、以下のような書類が債権名義にあたります。
これらの書類は相手方が未払いを続けている場合の強制執行に必要となります。
債権名義がある場合は、裁判所に強制執行の申し立てが可能です。
養育費の未払いが起きた際、相手方の資産を差し押さえたり、給与の一部を差し押さえたりして、養育費として受け取れます。
対して債権名義がない場合は、強制執行がおこなえず、過去に支払われていない養育費を請求するのは難しいです。
そのため、早めに手続きを進めて、まずは話し合いや調停などによって養育費を確定させる必要があります。
未払いの養育費を請求する一般的な流れは、以下のとおりです。
いきなり法的手続きをはじめるのではなく、まずは相手との対話で解決を試みましょう。
各ステップでの具体的な行動について、次で詳しく解説していきます。
まずは、相手方に連絡を取り、養育費の支払いを催促しましょう。
支払日を間違えているケースや、忘れてしまっているケースもあるため、感情的にならず冷静に対話する必要があります。
話し合いに応じてもらえなかったり、話し合いでの解決が見込めなかったりする場合には、内容証明郵便の送付を検討してください。
相手方への連絡で解決が見込めない場合、次のステップでおこなうのは内容証明郵便を用いた請求書の送付です。
内容証明郵便とは、日付・差出人・受取人・文書の内容について、郵便局が記録して証明してくれる郵便方法です。
請求した事実の証拠を残せるほか、相手方にプレッシャーを与えて支払いを促す効果も期待できます。
内容証明郵便で請求しても養育費が支払われない場合には、家庭裁判所へ調停を申し立てる手続きを検討しましょう。
債権名義があればそのまま強制執行手続きも可能ですが、ない場合は調停により養育費の金額を協議し、合意した金額が調停調書(債務名義)に記載されます。
離婚前であれば離婚調停、離婚後であれば養育費請求調停で養育費の支払いについて話し合います。
家庭裁判所で調停委員を介して話し合った結果、当事者双方が合意できれば調停が成立し、合意できなければ自動的に審判手続きへ進みます。
調停が不成立となった場合は、審判手続きに移行し、審理の結果に応じて裁判官が判断を下します。
審判に不服がある場合は、高等裁判所に即時抗告も可能ですが、基本的には家庭裁判所の決定がそのまま採用されるケースが多いです。
調停や審判によって決められた内容に沿って相手方へ養育費を請求しましょう。
調停や審判などの手続きを経ても養育費が未払いの場合、次のような法的手段の検討が必要です。
3つの請求方法と、強制執行によって差し押さえできる財産について、以下で詳しく見ていきましょう。
履行勧告とは、調停や審判で決まった支払いなどの義務を守らない人に対して、家庭裁判所が履行状況を調査したうえ、支払いの履行を勧告する手続きです(家事事件手続法第289条)。
調停や審判で養育費の支払いを定めた場合に、家庭裁判所へ申し出ると、履行勧告ができます。
履行勧告は費用をかけずに手続きできるのがメリットですが、あくまでも任意の支払いを促すのみで強制力はありません。
履行勧告に応じなかった場合、次に取るべき手段は履行命令です。
履行命令とは、調停や審判にもとづいて、家庭裁判所が相手方に対して一定期間以内に履行を命じる手続きです(家事事件手続法第290条)。
命令に対して正当な理由なく従わなかった場合には、10万円以下の過料となる可能性があります。
ただし、履行命令は支払いを強制する手続きではないため、命令を無視されてしまった場合には養育費の回収ができません。
強制執行とは、養育費の支払い義務がある人の財産や給与を差し押さえ、強制的に養育費を回収するための手続きです。
強制執行の申し立てには債権名義が必要で、対象となる財産に応じた費用も納めなければなりません。
相手方に差し押さえられる財産がない場合や、行方不明となっている場合には強制執行しても養育費を回収できない可能性もあります。
そのため強制執行は、履行勧告や履行命令に対して誠意ある行動が見られない場合の、最終手段として検討するようにしましょう。
強制執行によって差し押さえできるのは、主に以下の財産です。
養育費の強制執行においては、給与や郵貯金を差し押さえるケースが一般的です。
すべての財産を差し押さえられるわけではなく、給与の場合は原則手取り額の2分の1相当額までなど、一定の基準が定められています。
養育費の未払いについて、よく寄せられる相談内容を紹介します。
一つひとつ解説していきますので、養育費に関する疑問がある人はぜひ参考にしてみてください。
養育費未払いの元配偶者が音信不通で、所在もわからない状況では、書面の送付や調停の申し立てができません。
そのため、まず相手方の住所を特定する必要があります。
個人で住所を探るのは難しい場合が多いため、探偵による調査も検討してみるといいでしょう。
養育費の支払いに関して公正証書などで取り決めをしていなくても、請求は可能です。
ただし、まずは相手方と話し合い、養育費について決める必要があります。
直接話し合って合意するのが難しい状況であれば、調停申し立てによる具体的な金額や支払い方法の確定を検討しましょう。
状況によっては、養育費の減額や打ち切りとなる可能性はあります。
たとえば、養育費の支払い義務者が失業して収入が減少し、減額を申し立てられるケースなどが考えられます。
しかし、養育費に関する変更は相手方が一方的に決められるものではないため、話し合いや家庭裁判所の審判等の判断が必要です。
養育費の請求には通常、時効が適用されます。
話し合いによって養育費を決めた場合は5年、調停や裁判によって確定した内容であれば10年で時効となります。
時効が成立すると、その債権を追求する権利が失われてしまうため、未払いが続いている場合は早めに対処しましょう。
あらかじめ養育費の取り決めをおこなっていれば、過去の未払い分をさかのぼって請求可能です。
時効期間にも注意したうえで、請求手続きを進めましょう。
なお、養育費の取り決めをしていない場合には、まず相手方と話し合って養育費を確定させる必要があります。
養育費未払いの問題を弁護士に依頼する場合の費用は、弁護士事務所によって異なります。
また、弁護士費用は相談料・着手金・成功報酬・実費の4つに分類され、着手金や成功報酬は弁護士へ依頼する内容によって金額に大きな差があります。
たとえば、内容証明による催告書の送付を依頼した場合の着手金は1万円~5万円程度、調停手続きの代理を依頼した場合は10万円~20万円程度が目安です。
弁護士費用の体系は各事務所や弁護士によって異なるため、実際にかかる費用は、依頼する弁護士へ直接確認するようにしてください。
養育費の未払いを弁護士に相談するメリットとして、次の3つが挙げられます。
弁護士に相談するメリットを理解しておくと、弁護士がもつ専門知識や経験を有効に活用しやすくなるでしょう。
それぞれのメリットについて、以下で具体的に解説していきます。
養育費の未払いについて弁護士に相談すると、具体的かつ効率的な回収方法の提案をしてもらえるメリットがあります。
養育費が未払いとなっている原因や状況によって、交渉、調停申立て、強制執行申立てなど最適な解決方法は異なります。
豊富な法的知識と経験をもった弁護士によるアドバイスを受けられれば、回収するためにすべき行動が明確になるでしょう。
弁護士に養育費の未払いを相談するメリットの一つとして、交渉の代理をおこなってくれる点が挙げられます。
これによって、相手方と直接交渉する際のストレスや時間・労力が大幅に削減されます。
また、弁護士が交渉を担当すると、心理的なプレッシャーを与えられるため、相手によっては話し合いや支払いに応じる可能性が高まるでしょう。
複雑な手続きを一任できるのも、養育費未払いの問題を弁護士へ相談するメリットの一つです。
催告書の作成・調停や審判の準備など、養育費の請求にかかわる手続きには専門的な内容も含まれます。
養育費問題で悩んでいる人は、子育てしながらの仕事や家事で忙しく、まとまった時間を確保するのが難しいケースも多いでしょう。
弁護士に依頼すると、手続きにかかる負担を軽減でき最適な方法での養育費回収が可能となります。
養育費の未払いは精神的、経済的に大きな負担となりえます。
このような状況では、一人で悩むよりも弁護士の豊富な法的知識と経験を活用すべきです。
弁護士は、複雑な手続きから交渉の代理まで幅広くサポートできるため、未払い問題を解決するプロセスをスムーズに進められるでしょう。
養育費の未払い問題で悩んでいる人は、一度弁護士へ相談し、専門家の観点からアドバイスを受けてみてください。
養育費の取り決めをしたのにも関わらず、元旦那から養育費が支払われず、お困りの方もいらしゃるのではないでしょうか。
未払い養育費問題は、弁護士に依頼をしたら解決するかもしれません。
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