子どもの親権・養育費
養育費の差し押さえ方法(強制執行)をわかりやすく解説
2024.11.20
夫婦が離婚するときは財産分与をおこない、双方で築いた財産を分け合いますが、将来的には遺産相続も発生します。
婚姻関係のない男女にお互いの相続権はありませんが、子どもは父母の相続人になるため、両親のどちらが亡くなっても一定割合の財産を相続できます。
離婚後に別居することとなった親が再婚した場合や、親と再婚相手の間に子どもが生まれると、相続トラブルが発生しやすいので注意が必要です。
本記事では、元配偶者と別居している子どもの相続権や、離婚後の相続トラブルの回避策などをわかりやすく解説します。
民法では被相続人の配偶者を「常に相続人となる」と定めていますが、死亡時まで婚姻関係にあったことが条件です。
配偶者の死亡時に別居していた場合でも、婚姻関係を解消していない限り、妻や夫はそれぞれ配偶者の相続人になれます。
なお、死亡時までに離婚していた場合、お互いが赤の他人になってしまうため、元配偶者の相続人にはなれません。
夫婦が離婚しても、親子の血縁には影響がないため、元配偶者との間に生まれた子どもは相続人になれます。
民法では相続人になれる人を「法定相続人」としており、以下のように親族の範囲が決まっています。
上位の相続人がいる場合、下位の親族は相続人になれません。
離婚した夫婦に子どもがいる場合、父母のどちらが亡くなっても第一順位の法定相続人になります。
相続権を失うことは基本的にありませんが、親が再婚すると相続割合が変わる場合があります。
親の再婚と子どもの相続割合については、以下を参考にしてください。
元配偶者が再婚しないまま亡くなった場合、前妻や前夫の子どもが親の財産をすべて相続します。
たとえば、離婚時に母親が親権者となって子どもを引き取り、父親は再婚しないまま亡くなったとします。
父親は独身で亡くなったため、法定相続人は母親が引き取った子どもしかいない状況です。
父親の両親や兄弟姉妹が健在であっても、被相続人の子どもがいるときは相続順位が下位になるため、下位の人たちは相続人にはなれません。
したがって、相続権のある親族は前妻・前夫の子どものみとなります。
元配偶者が再婚後に亡くなった場合、再婚相手との子どもがいなければ、前妻・前夫の子と再婚相手のみが相続人になります。
たとえば、父親と後妻との間に子どもはおらず、離婚時に前妻が子どもを引き取っていた場合、父親の相続人は後妻と前妻の子どもです。
前妻・前夫の子が一人であれば、相続割合は後妻と前妻・前夫の子が2分の1ずつになります。
前妻・前夫の子が複数いるときは、相続割合を子どもの人数で割ってください。
元配偶者が再婚後に亡くなり、再婚相手との間に子どもが生まれていた場合、それぞれの相続割合は以下のようになります。
前妻・前夫の子と再婚相手の子はどちらも親の法定相続人ですが、複数いるときは相続分を人数で割ります。
前妻・前夫の子が二人、再婚相手の子が一人であれば、相続割合はそれぞれ6分の1ずつです。
元配偶者が亡くなっても相続人にはなれませんが、連れ子と一緒に再婚したときや、養子縁組があると、相続が数パターンに分かれます。
再婚したときの相続バターンや、相続分については以下を参考にしてください。
再婚相手は配偶者になるため、亡くなった夫や妻の相続権があります。
配偶者には贈与税や相続税の軽減措置があり、相続割合も大きいので、特別扱いといえる存在でしょう。
一方、元配偶者には相続権がなく、遺言書で受遺者に指定されない限り、元夫や元妻の財産は1円も相続できません。
再婚相手の連れ子は血縁関係がないため、相続権はありません。
たとえば、父親が連れ子のいる相手と再婚し、実子と変わらぬ愛情を連れ子に注いでいたとしても、法律上の親子関係にはなれません。
なお、父親の財産を後妻が相続し、後妻の死亡で連れ子が相続すると、母親を介して父親名義だった不動産などを取得できる可能性はあります。
連れ子が元配偶者と養子縁組した場合、元配偶者が亡くなったときの法定相続人になります。
たとえば、離婚後に母親が親権者となり、父親が連れ子のいる相手と再婚したとしましょう。
父親が連れ子を養子にすると、法律上の血縁関係になるため、連れ子にも父親の相続権が発生します。
養子縁組がなければ、父親の法定相続人は後妻と前妻の子ですが、連れ子を養子にすると、各自の相続割合が以下のようになります。
養子と養親の関係を「法定血族」といい、相続権や相続割合は実子と変わりません。
離婚した夫婦がどちらも再婚し、再婚相手との間に子どもが生まれると、以下のトラブルが発生しやすくなります。
相続トラブルは長期化する確率が高いため、当事者間で解決できないときは、弁護士への依頼も検討してください。
元配偶者が再婚後に亡くなった場合、再婚相手が親の死亡を前妻・前夫の子に伝えない可能性があります。
連絡先を知らない場合もありますが、再婚相手と前妻・前夫の子は利害が対立するため、意図的に知らせないケースも想定されます。
前妻・前夫の子が参加していない遺産分割協議は無効になるので、以下の方法で連絡を取らなければなりません。
役場で戸籍の附票を取得すると、前妻・前夫の子の住所がわかるため、手紙で父親の死亡を連絡できます。
なお、前妻・前夫の子の住所がわからず、連絡が取れないときは、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てられます。
不在者財産管理人は行方不明者などの財産を管理し、権限外行為許可の申立てが受理されていると、遺産分割協議にも参加できます。
前妻や前夫の子どもがいる場合、元配偶者の再婚相手は相続分が減ってしまうため、お互いが対立関係になりやすいでしょう。
相続人同士が対立すると遺産分割協議がまとまらず、いつまで経っても相続手続きを開始できない可能性があります。
不動産相続や相続税申告には期限があるため、間に合わなかったときの過料や追徴課税に注意しなければなりません。
元配偶者の再婚相手は前妻や前夫の子と利益相反関係になるため、相続財産を隠してしまう恐れがあります。
現預金や株式などを隠したまま遺産分割協議書を作成し、全員の署名捺印をもらったあとに改ざんされると、前妻・前夫の子は一部の財産を相続できません。
遺産分割協議書と財産目録が別々になっており、財産目録に署名捺印欄がないときは、あとで財産目録だけ差し替えられる可能性があるでしょう。
元配偶者が偏った内容の遺言書を作成していると、自分が引き取った子どもの遺留分を侵害する恐れがあります。
遺留分は法定相続人が最低限取得できる割合になっており、子どもの場合は法定相続分の2分の1です。
元配偶者が再婚後の家庭を大事にしている場合、前妻・前夫の子に財産を残さない可能性は十分にあるでしょう。
遺留分は侵害した相手に返還請求できますが、相続開始と遺留分の侵害を知った日から1年経過すると、請求権が消滅します。
相手に請求しても返還に応じないときは、遺留分侵害額の請求調停を検討してください。
前妻・前夫の子は実親の法定相続人となり、遺留分もあるため、一定割合の財産を必ず相続できます。
どうしても前妻・前夫の子に相続させたくないときは、以下の対処法を検討してみましょう。
再婚相手などに生前贈与すると、相続財産が減少します。
生前贈与は財産を受け取る受贈者に制限がないため、親族以外に贈与しても構いません。
ただし、以下の条件に該当すると生前贈与が遺留分を侵害します。
生前贈与で前妻・前夫の子に残す財産を少なくはできますが、ゼロ円というわけにはいかないでしょう。
遺言書を作成する場合、遺留分を侵害しないぎりぎりのラインにすると、前妻・前夫の子が取得する財産を必要最低限にできます。
遺留分は絶対に侵害できないため、ゼロ円は不可能ですが、相続財産を渡したくないときは選択肢の一つになるでしょう。
前妻・前夫の子から虐待を受けるなど、著しい非行がある場合は、相続廃除が認められる可能性があります。
家庭裁判所が相続廃除の申し立てを受理すると、前妻・前夫の子は相続権を失い、遺留分も消滅します。
ただし、「前妻・前夫の子が嫌い」など、安易な理由では申し立てを受理してもらえません。
相続廃除が認められる確率はかなり低いため、前妻・前夫の子から虐待や侮辱などの被害を受けたときは、弁護士に相談してみましょう。
離婚した夫婦に子どもがいる場合、親の死亡時には相続トラブルが発生しやすくなります。
相続トラブルを回避したいときや、トラブルの影響を最小限に抑えたいときは、以下の方法を検討してみましょう。
不動産の現金一括購入など、高額な出費があったときは資料を残してください。
自分の死亡によって相続が発生すると、法定相続人は預金口座の取引履歴を取得できるため、過去の入出金がわかります。
再婚後に高額な出金があり、相続発生日に近かった場合は、前妻・前夫の子が再婚相手の使い込みを疑うかもしれません。
高額な出費があったときは領収書を保管し、預金通帳の余白にも「○○のため出金」などのメモを残しておくと、相続トラブルを回避できるでしょう。
寄与分とは、無償で被相続人の療養介護に貢献したときや、事業を手伝ったときなどに考慮される相続財産の加算分です。
再婚相手との間に子どもが生まれ、その子が被相続人を介護するため、高額な費用を負担した場合は、寄与分の考慮が必要になるでしょう。
相続の際に再婚相手の子が寄与分を主張しても、証拠がなければ前妻・前夫の子が認めない可能性があります。
介護用に家をリフォームした代金や、介護用ベッドの購入費を再婚相手の子が負担したときは、領収書などの資料を残すように伝えてください。
相続トラブルを回避したいときは、弁護士にも相談してみましょう。
家族構成や相続財産の種類などを弁護士に伝えると、争いが起きにくい遺言書の作成や、遺産分割の方法などを提案してもらえます。
「遺言書を書きたいが、遺留分を侵害するかどうかわからない」といったケースであれば、相続財産の評価や遺留分の計算も依頼できます。
遺言書どおりの遺産分割を実現し、家族にも相続手続きの負担をかけたくないときは、弁護士に遺言執行者を依頼してください。
遺言執行者は遺産相続の中心人物になるため、再婚相手と前妻・前夫の子が対立しても、確実に相続手続きを実行してもらえます。
相続発生後はトラブルの回避策が限られてしまうので、少しでも早く弁護士に相談し、有効な対策を練ってもらいましょう。
離婚や再婚があると、誰に相続権があり、どれだけ相続できるのかわかりにくくなります。
離婚後の相続や、相続権を詳しく知りたい方は、以下のよくある質問も参考にしてください。
被相続人に孫がいると、代襲相続によって子どもの相続権を引き継ぎます。
子どもが親より先に死亡しており、その子どもに子がいた場合、代襲相続が発生します。
代襲相続人となった孫は第一順位の法定相続人に繰り上がるため、祖父母の財産を相続できます。
孫がおらず、被相続人の父母が健在であれば、父母が被相続人の財産を相続します。
なお、相続税がかかる状況で孫が代襲相続人になると、孫の相続税には2割加算が適用されるため、税負担が重くなってしまうでしょう。
同母兄弟や異母兄弟に相続分の差はありません。
たとえば、子どものいる夫婦が離婚し、父親だけが再婚して子どもが生まれたとします。
父親が亡くなったときの相続人は前妻の子と後妻、後妻の子になりますが、前妻の子と後妻の子は父親を同じくしており、同じ相続分を主張できます。
ただし、異母や異父の兄弟間で相続が発生する場合、以下の全血兄弟と半血兄弟では相続割合が異なります。
仮に子どものいる夫婦が離婚し、父親だけが再婚して後妻の子AとBが生まれたと想定します。
すでに父親と後妻が亡くなっており、次に結婚していた後妻の子Aが亡くなったとしましょう。
後妻の子Aの相続人は本人の配偶者と全血兄弟のB、半血兄弟となる前妻の子です。
相続分は「配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1」になるため、一般的な相続では兄弟の相続分を人数割りしますが、半血兄弟の相続分は全血兄弟の2分の1しかありません。
つまり、全血兄弟Bは相続分が6分の1、半血兄弟の前妻の子は相続分が12分の1になります。
子どものいる夫婦が離婚し、その後子どもと別居していた親が再婚すると、遺産相続が複雑になります。
再婚相手は元配偶者の子どもを好意的に受け入れてくれないケースがあるため、遺産分割でもめてしまう確率が高いでしょう。
相続争いが想定される場合、遺言書の作成でトラブルを回避できる場合もありますが、100%確実とはいえません。
離婚後の相続トラブルに備えたいときは弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けておきましょう。