不倫・離婚慰謝料
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2024.11.14
有責配偶者とは、離婚原因を作った人を指します。
離婚原因を作った側であるため、離婚請求や慰謝料請求においては不利な立場にあります。
しかし、具体的に有責配偶者についての詳細や離婚への影響について理解している方は少ないでしょう。
本記事では、有責配偶者とされる行為や課せられる責任、裁判になった場合の判決について解説します。
「有責配偶者」とは、婚姻関係を破綻させ離婚の原因を作った配偶者のことで、代表的な原因として「不倫」や「DV(暴力)」が挙げられます。
裁判で離婚を争う場合、民法で定められた「法的離婚事由」に該当する行為があった者が有責配偶者となります。
原則として、有責配偶者からの離婚請求は認められません。
逆に、離婚の原因を作ったことに対し、慰謝料を請求される可能性があります。
一般的によくある「性格の不一致」や「価値観の相違」など有責性を伴わない離婚も多く、離婚の際に必ず有責配偶者がいるとは限りません。
民法第770条で定められている「法定離婚事由」には、以下の5つの行為があります。
これらに当てはまる行為があった者が、有責配偶者と判断されます。
法律上の「不貞行為」とは、配偶者以外の相手と肉体関係をもつことを指します。
不倫や浮気により一定期間・複数回継続して相手との肉体関係があると証明できれば「不貞行為」と認定され、有責配偶者となります。
一度限りの肉体関係であったり、期間や回数が少なかったりする場合には、離婚原因として認められない場合があるため注意が必要です。
配偶者の不貞行為を立証するため、相手とラブホテルに出入りする写真や、性行為があったとわかる音声や動画の収集に努めましょう。
個人でおこなうのに限界がある場合には、プロの探偵に依頼するのも確実な方法です。
「悪意の義務」とは正当な理由なく、民法第752条によって夫婦間に定められている「同居の義務・協力の義務・扶助の義務」を果たさない場合を指し、該当する者は有責配偶者となります。
具体的には以下のような例が挙げられます。
悪意の遺棄だけで離婚を認めてもらうことは難しいため、不貞行為などほかの理由と併せて可能性を高めましょう。
また、後述する「婚姻を継続しがたい重大な事由」があることも有利になります。
「3年以上の生死不明」とは、配偶者が音信不通の行方不明であり、生死も不明の状態が3年以上続いている場合を指します。
行方不明になっている配偶者は有責配偶者となり、残された無関配偶者は離婚の請求が可能です。
ただし配偶者が生死不明であること及び、残された配偶者が手を尽くして捜索したことを証明するため、裁判所に証拠として以下のような書類を提出する必要があります。
また行方不明中の配偶者から一度でもコンタクトがあったり、生存の確認が取れたりしている場合は「生存不明」でなく、先述の「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
「回復が見込めない強度の精神病」とは重度の精神疾患で回復の見込みがなく、婚姻生活の継続が困難である状態を指します。
具体的な病気として「統合失調症」「若年認知症」「双極性障害」などが挙げられますが、これらの疾患のある配偶者を「有責」として離婚できるケースは極めて稀です。
精神病患者を有責配偶者に当たるとするこの要件は人権に関わる問題であり、裁判所も慎重な判断をするため、客観的事実を証明する必要があります。
これらの準備を整えることで、裁判によって離婚を認められる可能性が出てきます。
民法第770条1項5号「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、上記4つに匹敵する重大な事情を指し、該当する行為があった者は有責配偶者になる可能性があります。
具体的には、以下のような行為・状態が挙げられます。
これらの原因により相手を有責配偶者と主張するためには、行為を証明する証拠を残すようにしましょう。
暴力の証明なら、怪我の写真や診断書が必要です。
モラハラや暴力なら、録音データや精神科への通院記録が有効といえます。
日記やメモにも証拠能力はあるので、こまめに残すようにしましょう。
「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」を有責として離婚を認めてもらうには、第三者からみて「夫婦関係が完全に破綻している」とわかる事実を証明することが重要です。
離婚の際には、子どもの親権や養育費・財産分与などについて話し合う必要がありますが、有責配偶者の行為はどのように影響してくるのでしょうか。
この章では有責配偶者との離婚協議の前に、知っておくべき影響の範囲について解説します。
基本的に、子どもの親権に親の有責性は影響しません。
「有責」は夫婦間での責任を指すものであり、子育てについて適性があると判断されれば、有責配偶者が親権を獲得する場合もあります。
ただし有責配偶者が不倫相手との交際を優先して子どもの面倒をみなかったり、子どもの前で無関配偶者に暴力をふるったりする事情があるなど、子どもに悪影響を与えている場合は親権争いで不利になる可能性も否めません。
親権と同様に、養育費についても親の有責性は影響しません。
つまり有責配偶者が親権を獲得した場合、無関配偶者に対して養育費を請求できます。
また相手が有責配偶者であっても、養育費増額や減額の理由にはなりません。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で形成した財産を、離婚の際に夫婦の寄与度に応じて分与する制度です(民法第768条1項)。
有責配偶者であっても原則的に1/2の割合で分けられ、有責を理由に比率が変わることはありません。
ただし後述のとおり、有責配偶者には慰謝料支払いの義務が生じる場合があり、慰謝料分を財産分与額で調整することで、結果的に夫婦が受け取る額に相違があるケースは起こり得ます。
有責配偶者としての扱いにいつまでという期限や時効の定めはなく、有責行為から何年経っていても、有責配偶者でなくなることはありません。
ただし有責行為から時間が経っていると夫婦関係は修復されたと判断されるため、過去の有責行為を理由に離婚を求めても、裁判所が認めないおそれがあるので注意が必要です。
またこちらも後述しますが、有責配偶者に対する慰謝料請求には「不法行為を知った時点から3年」「不法行為が始まった時点から20年」という時効があります。
相手が有責配偶者であることを理由に裁判所へ離婚を認めてもらうためには、有責行為を示す証拠が必要となります。
<証拠として有益なもの>
離婚理由 | 必要な証拠 |
不貞行為 | ・ラブホテルに出入りする写真や動画 ・性交渉をしているときの写真や動画 ・ラブホテルの領収書 ・肉体関係があったと推測できるメールなどでのやり取り ・不倫を認める誓約書や録音データ ・探偵事務所の調査報告書 |
悪意の遺棄 | ・生活費の入金がないことがわかる通帳のコピー ・一方的な別居がわかるメールなどのメッセージ、録音データ |
暴力(DV)・モラハラ | ・怪我の画像や医師の診断書、通院履歴 ・暴力で破壊された物の現物や写真 ・DVやモラハラ時の録音データ ・DVやモラハラを受けた際の状況や心境が書かれた日記 ・警察などへの相談記録 |
その他(セックスレスなど) | ・性行為を拒否された日を記録したメモや日記 ・夫婦で話し合った際の会話の録音データ |
現場の写真や動画・録音データは、遡って集めることはできません。
離婚の意思が具体化する前からでも、できるだけ早い段階から証拠を残しておくようにしましょう。
離婚の原因を作り婚姻関係を破綻させた有責配偶者には、慰謝料の支払い義務が課せられます。
この章では、有責配偶者に義務付けられている慰謝料の詳細や相場・有責配偶者に慰謝料を請求する際の注意点などについて解説します。
有責配偶者に対する慰謝料は、民法第709条・第710条の定める不法行為による損害賠償として請求します。
ここでいう不法行為とは、相手の権利や法的な利益が害されることを認識しながら、意識的に侵害する行為です。
あくまで目安ですが、一般的な慰謝料の相場は以下のとおりです。
慰謝料の金額はさまざまな要因を考慮して算出されるため、明確に決めることができません。
慰謝料の金額に影響する主な要因には、以下のようなものがあります。
慰謝料のおおよその金額について知りたい場合は、具体的な状況を弁護士に相談してみるとよいでしょう。
無責配偶者が有責配偶者に慰謝料を請求する際の主な請求方法は、以下の5つです。
夫婦お互いの話し合いで合意に至れば解決しますが、和解できない場合には、調停・裁判と段階を踏んでいくことになります。
先述のとおり、慰謝料請求(不法行為による損害賠償請求権)には時効があります。
「不法行為を知った時点から3年」または「不法行為が始まった時点から20年」で時効により権利が消滅するので、注意が必要です。
有責配偶者が離婚請求を申し立てること自体は可能ですが、原則として裁判で離婚が認められることはありません。
ただし、有責配偶者による離婚請求が裁判では認められていないだけで、夫婦間での同意が得られれば協議により離婚は成立します。
裁判所は公正中立な立場であり、不法行為により離婚原因を作った本人から「離婚したい」と求めるのは、あまりに身勝手と判断されます。
過去の最高裁判所の判例においても、有責配偶者からの離婚請求は全面的に否定されています。
【参考】最高裁判所 / 最高裁昭和36年(オ)第985号 昭和38年10月15日第三小法廷判決
無責配偶者も離婚を望んでいる場合には、夫婦間の話し合いにより同意が得られれば離婚は可能です。
必要なのは、無責配偶者の同意ということです。
話し合いによる協議離婚に至らなかった際は、有責配偶者からでも離婚調停を申し立てられます。
調停においても無責配偶者が離婚に応じてくれない場合は、慰謝料の支払いや、無責配偶者に有利な割合で財産分与をするなど、無責配偶者が納得してくれる条件の提示により離婚が合意に至る可能性は多々あります。
前述のとおり、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められませんが、一定の要件を満たすことで例外的に認められる可能性があることを、最高裁が示しました。
ただしあくまで例外的な扱いであり、有責配偶者からの離婚請求には厳しい離婚条件が求められます。
それぞれについて以下で解説します。
【参考】最高裁判所 / 最高裁昭和61年(オ)第260号 昭和62年9月2日大法廷判決
有責配偶者からの離婚請求には、まず「長期間の別居」が要求されます。
夫婦の別居期間が長期にわたることは、つまり婚姻生活が既に破綻し、修復の可能性もないと判断される可能性があるためです。
ただし「長期間の別居」には実際に何年という定めはありません。
裁判では同居期間と別居期間の相対的な対比など、さまざまな要因が考慮されます。
また、有責配偶者からの離婚請求に必要な要件はほかにもあるため、別居期間のみを理由に離婚は認められません。
社会的・経済的に自立しておらず、自分の力で生活できない未成熟な子どもがいる場合には、有責配偶者からの離婚請求は認められません。
ここでいう「子ども」には未成年だけでなく、成人していても学生であったり障害をもっていたりで、独立できていない者も該当します。
ただし未成熟の子がある場合でも、別居期間の長さや養育費が十分に支払われているとの総合的な理由から、有責配偶者からの離婚が認められたケースもあります。
【参考】最高裁判所 /最高裁平成5年(オ)第950号 平成6年2月8日第三小法廷判決
「過酷な状況」とは、離婚により無責配偶者が経済的・精神的・社会的に大きなダメージを受けることを指します。
「過酷な状況」についても明確な規定はありませんが、有責配偶者からの慰謝料や養育費・財産分与などによって無責配偶者が離婚後も無理なく生活できる状態の維持が求められます。
これら3つの要件を総合的に考慮したうえで、有責配偶者からの離婚請求はようやく認められる可能性が出てくるのです。
ここまでは、有責配偶者が離婚裁判を起こす場合の条件や実情の話でした。
しかし離婚するために、すべて裁判を起こす必要はありません。
無責配偶者が同意すれば、有責配偶者側から離婚できます。
同意を得られない場合にも、調停申し立てという方法があります。
離婚の基本は協議離婚です。
夫婦で話し合い、相手が同意すれば離婚は成立します。
有責配偶者の場合、離婚の原因が明確なため、無条件で無責配偶者が話し合いに応じるのは難しいでしょう。
相手の言い分や希望に真摯に向き合い、慰謝料や養育費をきちんと支払う姿勢が必要です。
夫婦だけでの冷静な話し合いが難しい場合には、事情をよく知る第三者や、弁護士に立ち会ってもらうのも有効な手段です。
夫婦間の話し合いで相手の同意を得られなかった場合は、まず別居をして距離をおき、離婚調停を目指す方法もあります。
認められるかはともかく、有責配偶者が調停を申し立てること自体は可能です。
距離と時間を取っているうちに相手も冷静になり、話し合いに応じてくれる可能性もあります。
また別居期間が長く続けば、前述の有責配偶者の離婚請求のために必要な要件のひとつである「長期間の別居」の条件を満たすかもしれません。
ただし、別居期間中の生活費や養育費は、有責配偶者が支払う必要があります。
最後に、有責配偶者との離婚に際し、多く寄せられる疑問に対して回答します。
夫婦双方に有責性がある場合、責任の割合が大きい方が有責配偶者となり、その者からの離婚請求は原則として認められません。
このケースでは、責任の小さい配偶者からの離婚請求を認めた判例があります。
また責任の割合が夫婦で同程度の場合は、有責性が相殺され、通常の離婚請求と同じ扱いになります。
夫婦のいずれにも不貞行為があったなど、婚姻関係の破綻が認められれば、離婚が成立する可能性もあるでしょう。
【参考】最高裁判所 / 最高裁昭和30年(オ)第559号 昭和30年11月24日第一小法廷判決
どちらが有責配偶者であるのか夫婦間に争いがある場合は、最終的には裁判所が決定します。
具体的には双方が主張する内容を証拠をもとに確認し、夫婦それぞれの有責性と婚姻関係を破綻させた主たる原因について精査したうえで、主な原因になった行為のあった者を有責配偶者として判断します。
モラハラ(モラルハラスメント)は身体的暴力ではなく、暴言や侮辱など言葉や行動・態度で相手の心を傷つける行為です。
モラハラが「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められれば、離婚原因となり、モラハラをおこなっていた者が有責配偶者となる可能性があります。
ただし、モラハラの著しさが離婚原因であると立証できなければ、一般的には有責配偶者としては認められません。
借金があるだけでは、有責配偶者にはなりません。
たとえば住宅・自動車ローンや子どもの養育に関するローンのように、夫婦の生活のために負った借金は有責事由に当たりません。
夫婦の一方が相手の了承を得ずに、ギャンブルや高級ブランド品の購入など自分の利益のために借金を負い、信頼関係の破綻や経済的理由で離婚に至ったとします。
その場合、借金を有責事由に無責配偶者から離婚や慰謝料請求をできる可能性があります。
有責配偶者をともなう離婚には、証拠集めや慰謝料の問題など個人で進めるには難題も多いため、早い段階で弁護士への相談をおすすめします。
協議離婚で終わらせるのか、調停や裁判に持ち込むのか、いずれにしても弁護士のサポートがあることで精神的・身体的な負担を減らせます。
有責性の主張や立証は、専門家である弁護士に任せるのが得策でしょう。
相手が有責配偶者の場合だけでなく、自分が有責配偶者の場合も、相手方に対抗できる準備が大切です。
難しい話し合いを有利に進めるため、弁護士のサポートに頼ってみましょう。