国選弁護人は離婚裁判でも依頼できる?刑事事件以外での依頼可否を解説

国選弁護人は離婚裁判でも依頼できる?刑事事件以外での依頼可否を解説

国選弁護人は費用を国が負担してくれる制度です。

離婚裁判や調停で弁護士への依頼するとき、国選弁護人を利用できたらと思う人もいるかもしれません。

しかし、離婚裁判や調停で国選弁護人への依頼はできないのです。

なぜなら、国選弁護人は刑事事件に限り認められた制度だからです。

第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
引用元:日本国憲法

それでは、離婚に向けて弁護士に依頼したいけれどお金の捻出が難しい場合どうすれば良いのでしょうか。

今回、離婚成立に向けて弁護士を利用するための方法についてご紹介します。

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この記事を監修した弁護士
梅澤 康二
梅澤 康二弁護士(弁護士法人プラム綜合法律事務所)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

国選弁護人とは|離婚裁判で依頼できない理由と私選弁護人との違い

はじめにお伝えしたとおり、離婚裁判や調停で国選弁護人への依頼はできません

ここではその理由や、国選弁護人と私選弁護人の違いについてもお伝えします。

国選弁護人を選任できるのは刑事事件のみ|離婚問題は民事家事に該当する

国選弁護人を選任できるのは刑事事件のみです。

離婚問題は民事事件であり国選弁護制度とは一切関係がありません。

したがって、離婚問題について国選弁護人を選任するということはあり得ません。

国選弁護人と私選弁護人の違い

国選弁護人への依頼を検討する際、私選弁護人という言葉を目にすることが多いのではないでしょうか。

どちらも依頼人を守る弁護士ですが、大きな違いがあります。

それは、国家の制度として弁護人が選任されるのか、被疑者・被告人(及びその家族)が私的に弁護人を選任するのかの違いです。

費用はかかりますが、国選弁護人よりも私選弁護人の方が選べる弁護士の幅が広いため、自分と相性の良いかどうか、安心して任せられるかどうか見極めながら依頼できます。

私選弁護人自ら選んだ弁護士のこと。かかる弁護士費用は自己負担。
国選弁護人国が選んだ弁護士のこと。かかる弁護士費用は原則国が負担。

法テラスの法律扶助制度は国選弁護人と似て非なる制度

中には、離婚問題の解決についても国選弁護人は利用できると認識している方がいるようです。

法テラスが運営している法律扶助制度と混同されているのかもしれません。

具体的にどのような違いがあるのか確認しておきましょう。

法テラスの法律扶助制度とは

法テラスとは、弁護士に相談・依頼したいけれど金銭的な余裕がないという方に向けた支援センターのことで、主に法律の無料相談や弁護士費用の立替を行ってくれます

法テラスが行なっている無料の法律相談や弁護士費用の立替などのサービスのことを法律扶助制度と言います。

法テラスの利用条件|収入基準と資産基準

法テラスが設けている収入基準と資産基準を満たしていなければ利用できません

まずは下図の条件を満たしているかどうか確認した上で、利用を検討してみてください。

【収入基準】

人数手取月収額の基準家賃又は住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額
1人18万2,000円以下4万1,000円以下
(20万200円以下)(5万3,000円以下)
2人25万1,000円以下5万3,000円以下
(27万6,100円以下)(6万8,000円以下)
3人27万2,000円以下6万6,000円以下
(29万9,200円以下)(8万5,000円以下)
4人29万9,000円以下7万1,000円以下
(32万8,900円以下)(9万2,000円以下)
※()住居地が東京都の特別地区に該当した場合適用される金額です。

参考元:法テラス

【資産要件】

人数資産合計額の基準
1人180万円以下
2人250万円以下
3人270万円以下
4人以上300万円以下

参考元:法テラス

法テラスの法律扶助制度と国選弁護人の違い

法律扶助制度と国選弁護人の違いとは一体何でしょうか。

国選弁護人の選任も法テラスに登録されている弁護士から行われるため、法律扶助制度と混同しがちですが、2つの違いがあります。

ひとつ目は、対応できる事件の幅が異なることです。

国選弁護人は刑事事件でしか選任されませんが、法律扶助制度は刑事事件だけでなく離婚問題などの民事事件も対応できます

ふたつ目は、費用負担についてです。

国選弁護人は国が費用を負担してくれますが、法律扶助制度は費用の立替のみで負担してくれるといったことはありません。(生活保護を受給している方、案件などによっては費用が免除となることもあります。)

離婚問題の解決を法テラスに依頼した場合

離婚問題を法テラスに依頼した場合の流れを確認していきましょう。

まずは、法律相談を申込みます。

その後、法テラスで審査が行われ、認められると援助が開始となります。

夫(妻)と離婚する方法

夫(妻)と離婚する方法にはどのような手段があるのか確認しておきましょう

協議離婚・調停離婚・裁判離婚いずれかの方法で夫(妻)との離婚を成立させることができます。

協議離婚

協議離婚とは、話し合いにより離婚成立を目指す方法です。

日本では、約9割の夫婦がこの方法で離婚しています。

引用元:厚生労働省

調停離婚

調停離婚とは、夫婦の間に調停委員を介入させて離婚成立を目指す方法です。
家庭裁判所に調停の申立てを行い、あなたと夫(妻)の主張を聞いた上で離婚可否を判断してもらいます。

裁判離婚

裁判離婚とは、裁判所に申立てを行い、裁判官に離婚成立の可否を決めてもらう方法です。

流れを下図にまとめました。

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離婚する際にすべき準備とかかる費用

最後に、離婚する際にすべき準備と手続きにかかる費用について確認していきましょう。

弁護士に相談・依頼して今後の対応を決める

今後の流れについての相談や、状況に応じて弁護士に依頼した方が良いかなどの判断については弁護士に確認するのが得策です。

インターネット上では、「調停なら弁護士は不要」「離婚問題は絶対弁護士に依頼すべき」などの書き込みがあります。

しかし、弁護士が本当に必要かどうかはその人が置かれている状況によって全く異なります。

初回相談であれば無料といった弁護士事務所もありますので、あなたの状況を伝えた上で「今後どのように手続きを進めていけば良いか」「弁護士に依頼した方が良いか」判断することをおすすめします。

弁護士へ依頼するタイミングとは

弁護士への依頼は、夫(妻)との話し合いでは離婚に合意できないと判断されたタイミングが良いでしょう。

ただし、DVやモラハラなどあなたの身体に危険が及ぶ場合は、無理に夫(妻)と話し合いで解決しようとせず、証拠が集まった段階で依頼するのがおすすめです。

離婚問題の解決で頼りになる弁護士の選び方

離婚問題の解決で相談・依頼する際に頼れる弁護士は、以下のような特徴を持っているかどうかで判断すると良いでしょう。

  1. 離婚問題の受任経験が豊富である
  2. 提示された解決プランが具体的である
  3. 離婚問題の解決に特化した弁護士事務所である
  4. あなたの話を親身に聞いてくれる
  5. 相性が良いと思える

別居中なら婚姻費用の請求をする

もし、夫(妻)と別居中の場合は、離婚までの間にかかる婚姻費用(生活費や子供の教育費など)を請求しておきましょう。

手続きは、あなたの地域を管轄している家庭裁判所に申立てれば大丈夫です。

【かかる費用と必要書類】

費用収入印紙1,200円分
必要な書類婚姻費用請求の申立書(裁判所で取得可能)

夫婦の戸籍謄本

申立人の収入を示す資料(源泉徴収票や確定申告書などの写しなど)

夫(妻)からの離婚請求を回避したいなら離婚届不受理届を提出する

もし、あなたが離婚を請求されている側であれば、離婚届不受理届を役所に提出しておきましょう。

万が一、夫(妻)が勝手に離婚届を出したとしても、受理されることはありません。

離婚時にかかる費用の相場|弁護士費用や調停などの申立てにかかる費用

離婚時にかかる費用の相場について下図にまとめました。

離婚手続きをする際は、弁護士費用以外にも調停申立て費用や郵便代などの雑費がかかります。

ある程度の費用負担は避けられないと認識しておくと良いでしょう。

申立てなどにかかる費用項目と相場

費用項目費用相場
調停(裁判)申立て費用(1件につき)1,200円
予納切手460円
戸籍謄本450円
交通費地域などにより異なる
郵便代〜1,500円
コピー代数百円
調停調書謄本(1枚につき)150円
送達費用1,072〜1,082円

弁護士に依頼した場合の費用相場

費用項目費用相場
相談料(1時間あたり)0円〜10,000円
着手金0円〜40万円
成功報酬獲得した慰謝料などの総額の約10%
実費(日当や弁護士の交通費など)依頼内容などによる

まとめ

国選弁護人と離婚問題は全く無関係であり、両者は切り離して考える必要があります。

民事事件でお金がないという人は法律扶助制度の利用を検討してみてください。

ただし、法律扶助制度には利用条件があります。

万が一、収入額や資産額が基準に満たない場合は、着手金無料の弁護士や後払いが利用できる弁護士の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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※一部の法律事務所に限り初回相談無料の場合があります
この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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