子どもの親権・養育費
養育費の差し押さえ方法(強制執行)をわかりやすく解説
2024.11.20
妻と離婚しても、大切な我が子の親権を取りたいと考えている父親もいるはずです。
しかし、以下で紹介している政府の調査によると、離婚後に親権を獲得できた父親は全体の1割程度という結果が出ています。
この調査結果からも、父親が子どもの親権を獲得するのは難しいことだといえるでしょう。
しかし裏を返せば、全体の1割の父親が親権を獲得できているということでもあります。
絶対に親権が取れないというわけではありません。
では、一体どうすれば父親でも親権を獲得できるのでしょうか。
本記事では、なぜ父親が親権を獲得するのが難しいのか、親権を勝ち取るために知っておくべきポイントなどを解説します。
父親だから親権を取るのは無理だと諦める前に、本記事を参考に今できることを実践してみてください。
離婚にあたり夫・妻がそれぞれ親権を獲得する割合(2021年) | ||||
総数 | 夫が全児の親権を獲得 | 妻が全児の親権を獲得 | その他 | |
子ども1人 | 48,979人 | 6,298人(12.9%) | 42,681人(87.1%) | – |
子ども2人 | 39,431人 | 4,270人(10.8%) | 33,105人(84.0%) | 2,056人(5.2%) |
子ども3人以上 | 16,908人 | 1,572人(9.3%) | 13,615人(80.5%) | 1,721人(10.2%) |
【参考元】人口動態統計|親権を行う子の数・親権者(夫-妻)別にみた年次別離婚件数及び百分率|政府統計の総合窓口
未成年の子どもの利益を守るための監護・教育をおこなったり、子の財産を管理したりする義務・権限のことを「親権」といいます。
子どもが、精神的・肉体的に成長するために責任をもって育てるのが「親権者」です。
親権者は、多くの場合、子どもの監護、教育、財産の管理など、子どもの成長に必要なことを全ておこないます。
婚姻中であれば、妻と夫の双方が親権者となりますが、離婚したらどちらか一方が親権者となります。
「親権」と聞くと、子どもを育てることができる権利だと考える方もいるかもしれません。
しかし、親権は権利というよりも、義務の意味合いが強いものになります。
そのため親権者となった親は、子どもの世話や教育を受けさせる機会を与えること等を放棄することはできません。
未成年の子どもが健やかに成長するために、責任をもって養育する必要があります。
なお、一般的には、親権者が子どもを監護する監護権も持つケースが多いですが、親権者と監護者を分けるケースもあります。
たとえば、離婚後、父親が子どもの親権者、母親が監護者となり、子どもは監護者である母親と一緒に暮らし、母親が養育するというケースも中には存在します。
離婚した際、父親が子どもの親権を取るのは一般的に難しいといわれています。
ですが、そもそも父親が親権者となるのがなぜ難しいのでしょうか。
ここからは、父親の親権獲得が難しい4つの理由を解説します。
離婚に際して父親の親権獲得が難しい1つ目の理由は、「母性優先の原則」があるからです。
「母性優先の原則」とは、子どもの養育監護は、母性に委ねることが子どもにとってよいとされる考え方のことです。
特に乳幼児の場合、おむつ替え、授乳、食事補助や寝かしつけなどといった育児が発生します。
これらの育児は多くの家庭において母親が担っており、父親に比べて母親のほうが母性的な役割を果たしているとされているためです。
この原則は、かつては生物学的な母親に対して優先されると考えられていました。
しかし近年では、この考え方が見直され、母親の方が必ずしも優先というわけではなく、母性的な役割をもつ監護者との関係を重視すべきということも指摘されています。
そのため、父親が母性的な役割を果たしているのであれば、その事情も考慮されるようです。
離婚に際して父親の親権獲得が難しい2つ目の理由は、フルタイムで働く父親は、子どもと過ごす時間が限られることが多いからです。
多くの父親はフルタイムで働き、日によっては残業をすることもあるでしょう。
1日の大半が仕事で埋まってしまうと、自宅で子どもと過ごす時間も減ります。
未成年の子どもと離れる時間も多く、しっかり面倒を見られないと判断されてしまうのです。
また、子どもが幼い場合、毎日の保育園や学童などへのお迎えも発生します。
フルタイムで残業ありきの仕事をしているとその対応が難しく、親権者の決定に際して、裁判所から子どもを十分に養育できないと判断されてしまう可能性があります。
一方、女性は出産を機に時短勤務やパート勤務に切り替えたり、専業主婦になったりするなど、一般的に、仕事を調整して、子どもと過ごす時間を確保する傾向があります。
母親が子どもと過ごす時間が長く、主たる監護者としての実績がある場合には、フルタイム勤務の父親に比べて、親権が取りやすいといえるでしょう。
離婚に際して父親の親権獲得が難しい3つ目の理由は、子どもが親権者に母親を選ぶ傾向にあるからです。
子どもが自分の意思を伝えることができる年齢である場合、子どもが両親のうちどちらと一緒に暮らしたいかという子どもの意思も、親権を決めるうえでのポイントになるでしょう。
先ほどもお伝えしたとおり、父親がフルタイムで働き、母親が専業主婦などの場合、自然と子どもは母親と過ごす時間が長くなります。
そのため子どもは母親の方に強い愛着が湧きやすく、親権者として母親を選ぶ傾向にあるといえるのです。
しかし、現代では共働きも増えています。
必ずしも、全ての家庭にこの事情が当てはまるとも言い切れません。
とはいえ、意思疎通ができる年齢以上の子どもであれば、子どもの意思はある程度重要視されます。
父親が育児にあまり参加できず、子どもとコミュニケーションを取れなかったといった状況であれば、母親が選ばれる可能性の方が高いといえるでしょう。
親権を決める際には、ベースとなる考え方があります。
ここでは、父親が親権を勝ち取るために知っておくべきポイント紹介します。
1つ目は、子どもの利益になるかどうかが重要だということです。
子どもが安心して幸せに暮らすには、どちらを親権者にすべきなのか。
いわゆる子の利益が、親権を決めるうえで最重要視されます。
子の利益は、過去の判例に則って作り上げられた4つの原則に基づいて判断されるようです。
4つの原則を、ひとつずつ解説しましょう。
今まで子どもを監護してきた親(主たる監護者)が、離婚後も引き続き監護を続ける方が望ましいといった考えのことです。
裁判所は、夫婦が同居していた時にどちらが子どもを主に監護していたかという状況を確認し、主たる監護者が健康で子どもを監護する能力があり、かつ主たる監護者のこれまでの監護・養育の状況に特に問題がない場合(子どもを虐待していたといった事情がない場合)には、子どもは離婚後も引き続き主たる監護者のもとで養育された方が良いと判断します。
これまで監護を担ってきた実績がある親の方が今後も安定して子どもを養育できる可能性が高いことに加え、主たる監護者と離れる精神的な負担は子の利益に反するため、現状維持を心がけるべきだとされているのです。
意思疎通がとれる年齢の子どもであれば、本人の意思も尊重するのが子の利益になるという考えのことです。
子どもの意思で全てが決まるというわけではありませんが、おおむね10歳以上の子どもであれば、ある程度考慮されるといえるでしょう。
また裁判手続きになった場合、15歳以上の子どもについては、法律上、子の陳述を聴かなければならないことになっており(家事事件手続法第169条2項、人事訴訟法第32条4項)、家庭裁判所の調査官による子どもの意思確認もおこなわれます。
実務上は、10歳以上の子どもに対しては意思確認が行われることが多いようです。
未成年の兄弟姉妹が2人以上いる場合、兄弟姉妹ごとに親権者を定めるのではなく、基本的に一人の親が親権者となります。
これが、兄弟姉妹不分離の原則です。
離婚は、子どもにとって精神的にも大きな負担になる可能性があります。
そのうえ兄弟姉妹までもがバラバラになったら子どもに与える影響は大きいため、原則として分離すべきではないとされているのです。
先ほどもお伝えしましたが、子どもの利益のためには、母性的な役割を果たす親が親権者となるのが望ましいとされる考えのことです。
以上の4つの原則に基づいて親権者を決めることが、子の利益に繋がると考えられています。
そのほか、面会交流に対して寛容な親かどうか、近くに祖父母が居住しており監護をサポートしてもらえる体制があるかどうかといった事情も考慮されます。
原則といってもこれらを画一的にあてはめて親権者が決定されるものではなく、裁判所は、各家庭の個別・具体的な事情を考慮したうえで判断するため、原則どおりにならない場合ももちろんあるでしょう。
2つ目は、婚姻関係の破綻を招いた有責配偶者であるかどうかと、親権者としてふさわしいかどうかとは別の問題であるということです。
親権者は、子どもの利益を最優先して決められるものです。
妻側の落ち度で離婚に至ったとしても、それが直ちに親権者にふさわしくないと判断されるわけではありません。
たとえば妻の不倫が離婚理由だとしても、妻が親権者になることは十分にありえるのです。
しかし、有責の内容によっては親権者としてふさわしくないと判断されることもあります。
上記のような状況であれば、妻を親権者にすると子の利益が損なわれるかもしれません。
婚姻関係の破綻責任と親権の直接的な関係はありませんが、状況によっては考慮されることもあるといえるでしょう。
では、親権者を決めるときはどのような流れで進めればよいのでしょうか。
ここからは、離婚時に親権者を決めるまでの具体的な流れを解説します。
まずは夫婦間での話し合いから始めましょう。
裁判手続きになると、どうしても時間がかかってしまいます。
話し合いができる状況であれば、まずは交渉から始めましょう。
子を愛する親であれば、お互いに親権が欲しいと考えているかもしれません。
そうなると感情的になり、話し合いがスムーズに進まない可能性もあります。
話し合いをする際は、中立的な立場の第三者に同席してもらう、話し合いの様子を録音してメモをとるなど、お互いが冷静に話し合える環境を作るとようにしましょう。
話し合いで決まらなければ、次のステップは調停手続きです。
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に、「夫婦関係調整調停」を申し立てましょう。
「夫婦関係調整調停」では、離婚にまつわる全ての決め事を話し合うことができます。
申し立てが受理されると、1ヵ月~2ヵ月に1回程度、調停期日が入ります。
指定された日時に、裁判所へ出廷しましょう。
調停期日では、裁判所から選ばれた調停委員同席のもと、離婚についての話し合いが進められます。
妻と夫で時間を分けて呼び出されるため、お互いに顔を合わせる機会はほとんどないまま解決できるかもしれません。
調停が無事に成立すれば、期日間で取り決めた内容を盛り込んだ調停調書が作成されます。
調停調書をもとに離婚届を提出し、手続き完了です。
調停でも話し合いがまとまらなければ、訴訟へ移行します。
当事者(ご自身又は相手方)の住所地を管轄する家庭裁判所に「離婚訴訟」を提訴しましょう。
受理されると、1ヵ月~2ヵ月に1回程度の訴訟期日が入ります。
裁判では主張書面や証拠などを提出する必要があるため、手続きに慣れている弁護士への依頼がおすすめです。
期日で出された書面や証拠、調停での話し合いを基に、最終的に裁判官が判決を下します。
解決までには、1年~1年半程度の時間がかかると考えておきましょう。
一般的に、父親が親権を取るのは難しいといわれていますが、不可能なことではありません。
では、どうすれば父親が親権を獲得できるのでしょうか。
ここでは、父親が親権を勝ち取るためにできる9つのことを解説します。
父親が親権を勝ち取るためにできること1つ目は、父親が安定して養育をしているという実績を作ることです。
親権を決めるうえで、子どもを安定して養育しているという実績は重要視されます。
これまでに子どもをしっかりと養育してきたのであれば、この先も同様に養育できるとみなされるからです。
また、安定して養育ができるということは、子の利益にもつながります。
たとえば、以下のようなものは具体的な養育実績として扱われるでしょう。
母親や祖父母に任せっきりにし、週末だけ育児に参加するなどでは、子を安定して養育しているとはいえません。
上記のような育児を、母親と同様に日常的におこなっている実績を作る必要があります。
父親が親権を勝ち取るためにできること2つ目は、離婚後も子どもの環境が変わらないように配慮することです。
離婚して転居することになったら、子どもの学校や交友関係も変わる可能性があります。
家庭環境に加えて生活環境までも変わったら、子どもにとって大きなストレスになるかもしれません。
なるべく離婚後も現在の環境を維持するのが、子どもの利益になるといえるでしょう。
父親が親権を勝ち取るためにできること3つ目は、日頃から子どもとしっかりコミュニケーションを取ることです。
どちらの親と過ごしたいのか、子どもの意思も親権を決めるうえで尊重されるポイントになります。
裁判手続きになった場合、目安として10歳以上の子であれば、子ども自身の意向も確認することが多いようです。
しかし、それだけで親権が決まるということはありません。
自我が確立されている15歳以上の子どもであれば、意思が相当程度尊重されるといえるでしょう。
日ごろからコミュニケーションを取り、真剣にわが子と向き合っていれば、父親が親権者にふさわしいと判断してもらえるかもしれません。
子ども自身も、父親との生活を望む可能性があります。
親権者を決める段階で、子どもに無理やり自分を選ばせるのではなく、日頃から良好な関係を築いておくことが大切です。
父親が親権を勝ち取るためにできること4つ目は、子どもの養育について具体的な展望をもっておくことです。
子どもの養育は、家庭環境によってさまざまな方針があるでしょう。
子どもにどのような教育を受けさせるか、どのような生活を送らせるかなど、具体的で現実的な展望をもっておくことが大切です。
ほかにも、非親権者との面会交流をどうするかなども考えておく必要があります。
父親が親権を勝ち取るためにできること5つ目は、母親との面会交流を前向きに検討することです。
子どもが非親権者と交流することも、健全な生育のためには必要だと考えられています。
中にはさまざまな理由から、母親と会わせたくないと考えている方もいるでしょう。
しかし、それはあくまで親の都合で子どもには関係ありません。
子どもにとって望ましい環境を整えるためにも、面会交流を前向きに検討することが大切です。
父親が親権を勝ち取るためにできること6つ目は、母親が虐待や育児放棄をしているなら、その証拠を準備しておくことです。
虐待や育児放棄をしている母親が親権者になることは、望ましくありません。
子どもの健全な成長が、妨げられる可能性があるからです。
虐待や育児放棄があるなら、それを証明する必要があります。
虐待によって子どもがけがをした診断書や、母親が子どもを虐待している音声や動画などを証拠で集めておきましょう。
虐待や育児放棄の証明ができれば、父親が親権者となる可能性も高まるかもしれません。
父親が親権を勝ち取るためにできること7つ目は、周囲のサポート体制を整えておくことです。
フルタイムで働いていると、緊急時でも仕事が休めないことや、急な残業が入ることも考えられます。
それでは子どもに不自由させてしまうため、養育環境が整っているとはいえないでしょう。
しかし、必ずしも父親が単独で子育てする必要はありません。
両親や兄妹に手伝ってもらえるなど、周囲が協力してくれる環境があれば、親権の獲得に有利に働くはずです。
父親が親権を獲得したいなら、子どもが不自由なく生活を送れるような周囲のサポート体制を整えておきましょう。
父親が親権を勝ち取るためにできること8つ目は、別居するときに子どもを連れていくことです。
親権者を決めるには、安定して子どもを養育しているという実績、そして「監護の継続性」が重要視されます。
もし母親が子どもを連れて別居したら、父親は監護に関わることができません。
さらに、継続した監護もできなくなるため、親権を決める際に不利になる可能性があります。
ただし、すべてのケースで子どもを連れて別居することが望ましいとは限らないことには注意が必要です。
あくまで、別居をする場合、別居前から父親であるご自身が主として、あるいは少なくとも母親と同程度に育児に関わっており、子どもを連れていったほうが子どもの利益になるという自負がある場合には、連れていくことも検討しましょう。
仮にご自身がこれまで主として育児に関わっていなかったのであれば、親権を取りたい一心で子どもを連れていくことは、子どもの利益にならないため、慎んだ方が良いでしょう。
たとえば、同居中に母親が主たる監護者として子どもを養育しており、子どもと母親の心理的な結びつきが強い場合には、父親が子どもを連れて別居することは子どもの利益にならない可能性があります。
親の都合で子どもと母親を引き離していいのか、それが本当に子どものためになるのかをよく考える必要があります。
万が一、子どもの利益を考えずに子どもを連れて別居を開始した場合、母親側から、子の監護に関する処分(子の監護者指定及び子の引渡し)の審判並びにこれらを本案とする審判前の保全処分(仮の決定を得て子を取り戻す処分)を申し立てられる可能性もあることに注意をしましょう。
父親が親権を勝ち取るためにできること9つ目は、早い段階で弁護士に相談することです。
一般的に、父親が親権を取るのは難しいといわれています。
親権獲得に向けて着実に準備を進めたいなら、なるべく早めに弁護士へ相談しましょう。
弁護士なら、父親が親権を獲得するために必要な証拠収集や取るべき行動のアドバイスをしてくれるはずです。
法的知識がないまま行動すると、思いがけず不利な状況に陥ることもあります。
困難を極める父親の親権獲得は、早い段階で弁護士へ相談するのがおすすめです。
ここからは、父親が親権を獲得するにあたって知っておくべき注意点を紹介します。
1つ目は、母親による子連れ別居に注意することです。
母親が子どもを連れて別居すると、父親は子の監護に関与できなくなります。
監護の継続性も途絶えるため、別居期間が長くなればなるほど親権獲得は不利になってしまうのです。
父親が親権を獲得したいなら、子どもと同居し続ける必要があります。
母親が子どもを連れて出ていき、わが子と離れ離れにならないよう細心の注意が必要です。
2つ目は、家庭裁判所の調査には真摯に対応することです。
離婚調停をおこなっている場合、期日間に家庭裁判所の調査官が家庭訪問をすることがあります。
これは「調査官調査」と呼ばれるもので、子どもの現在の状況を知るために必要な調査なのです。
家庭裁判所の調査には、常識を持って真摯に対応しましょう。
とはいえ、特別によく見せる必要はありません。
たとえば、以下に挙げたような点は気を付けるようにしましょう。
3つ目は、子どもの幸せを第一に考えることです。
父親として、親権者になることが一番の目的かもしれませんが、そこにこだわりすぎてはいけません。
争いが激化すれば、子どもを長期間トラブルに巻き込んでしまうからです。
もし親権が取れなくても、大切なわが子とどのように関わっていくか、なにより子どもの幸せを第一に考えるようにしましょう。
子どもの親権をめぐって父母間で激しく対立するケースの場合、父親あるいは母親の一方が子どもを連れて別居した後、残された側の親が子の監護に関する処分(監護者指定及び子の引渡し)の審判並びにこれらを本案とする審判前の保全処分(仮の決定を得て子を取り戻す処分)を家庭裁判所に申し立てるケースがあります。
これらの審判や保全処分は離婚調停や離婚訴訟に先立って申し立てられることが一般的です。
子の監護者指定及び子の引渡しの審判並びに審判前の保全処分の審理において、家庭裁判所は、父母のいずれが監護者としてふさわしいかを詳細に検討したうえで監護者を指定する(子どもと同居していない親が監護者に指定された場合は子の引渡しも命じられる)ため、家庭裁判所から監護者指定の審判を受けた場合には、その後の離婚訴訟においても、監護者と指定された親が親権者に指定される可能性がきわめて高くなります。
監護者指定の審判においても、父親が監護者に指定されるのは難しいとされていますが、監護権が獲得できたケースももちろんあります。
ここからは、父親が監護権を獲得した事例、できなかった事例をそれぞれ紹介します。
父親が監護権を獲得できた事例として、福岡家庭裁判所平成26年3月14日の審判を紹介します。
こちらは、子どもを連れて別居した母親に対して、父親が子の引き渡しと監護者の指定を求めたケースです。
父親が監護権を獲得できた理由には、以下のような事情がありました。
一方父親はフルタイムで働いていましたが、子どもたちと触れ合う時間を確保して、良好な関係を築いていました。
さらに、父親の子どもたちの養育意識も高かったことも考慮され、監護者を父親とする審判が出されたのです。
父親が監護権を獲得できなかった事例として、京都家庭裁判所平成29年2月17日の審判を紹介します。
こちらは、母親の不貞行為により夫婦関係が悪化したため、子どもを連れて別居した父親に対して、母親が子の引渡しと監護者指定を求めたケースです。
父親が監護権を獲得できなかった理由には、以下のような理由がありました。
一方母親は、自身の不貞行為が別居理由ではあったものの、深く反省しており、また不貞行為が子どもの成育に悪影響を及ぼしていたという事情もありませんでした。
このような理由により、裁判所は、親権者を母親とする審判を出したのです。
どんなに手を尽くしても、母親が監護者・親権者となる場合もあります。
そんなとき、監護者・親権者になれなかった父親は、どうするべきなのでしょうか。
ここからは、父親が監護権・親権を獲得できなかった場合にできることを解説します。
父親が親権者を獲得できなかった場合は、子どもとの面会交流を求めましょう。
面会交流は、実親の権利・義務でもあります。
親権者ではないからといって愛するわが子と会えなくなるというのは、子どもにとっても望ましくありません。
離婚条件を決める際は、必ず面会交流の頻度や方法なども、しっかり決めておくようにしましょう。
父親が親権を獲得できなかった場合は、親権者の変更を求めることも可能です。
離婚後に「親権者変更調停」を家庭裁判所に申し立てましょう。
調査官による子ども・両親との面会などの調査を経て、子どもの利益になると判断された場合は、親権者を変更できる可能性があります。
しかし、一度決めた親権者を変更するのは、一般的に困難です。
家庭裁判所は、親権者を頻繁に変えるのは望ましくないと考えているからです。
母親が子どもの監護をおろそかにしていて子どもの成育に悪影響が生じている、母親が重い病気を患ってしまい子どもを養育できなくなってしまったといった事情がない限り、親権者の変更が認められる可能性は低いといえます。
母親が親権者となることに納得がいかないなら、親権者の変更を求めるのも方法のひとつではありますが、容易ではないと理解しておきましょう。
父親であるご自身が、どうにかして親権を獲得したいと考えている方もいるでしょう。
そんなときは、やはり弁護士への依頼がおすすめです。
ここからは、親権獲得のために弁護士に依頼するメリットや、かかる弁護士費用などを解説します。
父親の親権獲得を弁護士に依頼するメリットは、以下の7つが考えられます。
父親が親権を獲得するには、交渉、調停、裁判の場で効果的に主張を展開する必要があります。
また、日常生活での子どもとの関わり方も非常に重要です。
過去の事例などを照らし合わせて、同居中にどのように子どもと関わって監護すれば親権獲得に有利になるのかといったことは、弁護士でないとわからない部分も多いでしょう。
弁護士に依頼することで、適切な知識を得て、交渉や裁判手続きを有利に進められるかもしれません。
日本では母親が主たる監護者であるケースが多いため、父親が親権を獲得できる確率は低く、ご自身のみで対応しても望むような結果にならない可能性があります。
法律の専門家である弁護士を味方につけると、非常に心強いといえるでしょう。
親権獲得を弁護士に依頼する際の費用目安は、以下のとおりです。
相談料 | 無料~1万円程度(1時間あたり) |
着手金 | 0円~50万円程度 |
報酬金 | 親権が獲得できたら10万円~20万円程度 |
日当 | 1万円~3万円程度(1日あたり。弁護士の拘束時間や事務所によっても異なる) |
実費 | 数万円程度(弁護士の交通費や申し立て費用等。事案によっても異なる) |
※親権者は離婚調停や離婚訴訟の中で決定されるため、その他の請求(離婚、財産分与、慰謝料の請求)とセットで弁護士費用が設定されることもあります。
弁護士費用は、法律事務所によってさまざまです。
相談時に、料金体系をしっかり確認しましょう。
依頼する前に、ある程度の費用目安を計算してもらうと安心です。
母親が主に子どもを育てている家庭が多いため、父親が親権を獲得するのはかなり困難ではあります。
それでも父親が親権を獲得したいなら、以下の2点を理解しておきましょう。
たとえ母親が不貞行為をした有責配偶者であったとしても、子どもの親権を決めるうえではあまり関係はありません。
どんな理由で離婚しようとも、母親が親権者となったほうが子どもの利益になると判断されれば、親権者は母親になります。
しかし、状況によっては父親が親権を獲得することも不可能ではありません。
愛するわが子とこれからも一緒に過ごしたい、そう強く思っているのであれば、早めに弁護士へ相談しましょう。
弁護士に依頼すれば、親権だけでなく離婚全般の手続きを代理で対応してくれます。
父親に有利になるように交渉、調停、裁判手続きに尽力してくれるはずです。
まずは一度、弁護士への相談をおすすめします。