財産分与
離婚で不動産を分与するときのポイント|家やマンションの財産分与をわかりやすく解説
2024.10.04
夫婦が離婚する際には、いろいろと決めなければならないことがありますが、財産分与もそのひとつです。
対象となるのかどうか判断に迷って、なかなか話が決着しないことも多いでしょう。
親などから相続した遺産も同様に迷う方も少なくありません。
最初に結論をお伝えすると、相続によって取得した財産は離婚時の財産分与の対象にはなりません。
財産分与の対象となる財産とは、婚姻期間中に夫婦二人で築いた「共有財産」であり、遺産はその定義から外れる「特有財産」に分類されます。
特有財産は基本的には財産分与の対象となりません。
この記事では、財産分与における遺産の扱い方や相続によって取得した財産以外の財産分与の対象とならない財産、財産分与の対象となる財産について解説します。
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そもそも財産分与とはどのようなことをいうのでしょうか。
遺産分割と混同している方もいらっしゃるようですが、別物です。
まずは財産分与の意味を正しく知っておきましょう。
財産分与については民法第768条1項で以下のように規定されています。
夫婦の一方が他方に対して請求できる権利のことです。
第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
引用元:民法|e-Gov 法令検索
その性質としては、以下が挙げられます。
このうち基本となるのは「1.夫婦が婚姻生活中に共同で形成した財産の清算」という性質です。
夫婦が婚姻生活中に共同で形成した財産を2分の1ずつ分配することを基本としながら、2や3の要素も加味して分配の仕方を決めることになるでしょう。
遺産を分けることを「財産分与」という方もいらっしゃいますが、これは「遺産分割」の間違いです。
両者とも何らかの財産を分ける点では同じですが、対象となる財産やおこなうタイミング、分ける相手が次のように異なります。
対象となる財産 | タイミング | 分ける相手 | |
---|---|---|---|
財産分与 | 夫婦で築いた財産 | 離婚時・離婚後 | 配偶者 |
遺産分割 | 被相続人が所有していた財産 | 被相続人の死亡後 | 相続人 |
多くの場合、言い間違えても意味は通じるかもしれませんが、正しい知識をつけておくのに越したことはありません。
違いを知っておくとよいでしょう。
自分の親などから相続した遺産は、基本的に離婚時の財産分与の対象とはなりません。
ただし、例外もあるので注意しましょう。
夫婦の財産は「共有財産」と「特有財産」の2種類に分けられます。
定義 | 例 | |
---|---|---|
共有財産 | 夫婦で協力して築いた財産 | 結婚後に形成した預貯金や現金、自宅などの不動産、保険など |
特有財産 | 夫婦の協力とは関係なく築いた財産 | 親族から相続した遺産、贈与を受けた財産、結婚前から所有している預貯金や現金、不動産など |
財産分与の対象となるのは共有財産のみです。
自分の親族から相続した遺産は特有財産に分類されるため、財産分与の対象にはなりません。
婚姻期間中に相続が起こったとしても、相続によって取得した財産は基本的に財産分与の対象にはなりません。
しかし、例外的に財産分与の対象となるケースもあります。
それは、配偶者の協力や貢献によって、財産の価値が維持されたり上昇したりした場合です。
たとえば、不動産を相続し、その建物のリフォームを夫婦の共有財産を使っておこなった結果、その価値が上がった場合などが該当します。
この場合には、価値が維持されたり上がったりした部分について、財産分与の対象となる可能性があります。
特有財産であれば、財産分与の対象にはなりません。
相続によって取得した財産のほかに特有財産に分類される財産には以下のようなものが挙げられます。
親や祖父母などの親族から贈与を受けた財産も特有財産です。
贈与されたのが婚姻中であっても、財産分与の対象にはなりません。
結婚前から保有していた財産は、夫婦が共同で築いた財産ではないので財産分与の対象にはなりません。
洋服やバッグ、アクセサリーなど身の回りのものは、原則として本人の特有財産とされ、財産分与の対象とはなりません。
婚姻中に夫が妻にプレゼントした高額なブランド品やアクセサリーが財産分与の対象となるかどうかで争われることもありますが、対象外とされるケースが多いでしょう。
婚姻中に事故に遭うなどして支払われた損害賠償金や保険金のうち、慰謝料については財産分与の対象になりません。
一方、逸失利益は財産分与の対象となります。
逸失利益とは、事故に遭わなければ労働によって本来得られたはずの将来の収入です。
この逸失利益は夫婦共同で築くはずだった財産であると考えられます。
同様に、病気によって医療保険が支払われた場合の逸失利益も財産分与の対象となります。
共有財産は財産分与の対象となります。
共有財産とは夫婦の協力によって築いた財産のことですが、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
以下にいくつかの具体例を紹介します。
婚姻後に得た預貯金は口座の名義がどちらであっても財産分与の対象となります。
ただし、相続や親族による贈与によって得た預貯金や結婚前の貯蓄などは財産分与の対象となりません。
夫婦で購入した不動産は共有財産であり、財産分与の対象です。
一方、どちらかが相続したり贈与を受けたりした不動産は、原則として特有財産とされ、財産分与の対象となりません。
また、しばしば問題となるのは住宅ローンが残っている場合です。
住宅ローンの扱いは不動産を売却するか、どちらかが引き続き居住するかで異なります。
売却する場合、不動産の評価額に対してローンの残高が下回る「アンダーローン」の状態なのか、評価額よりもローンの残高が上回る「オーバーローン」の状態にあるかで対応が異なります。
たとえば、以下のような対応が考えられます。
不動産を売却せず、どちらかが居住を続ける場合は、以下のような対応が考えられます。
上記はあくまで一例です。
状況に応じてさまざまな対応が考えられますので、弁護士への相談も検討してみるとよいでしょう。
株式や投資信託なども結婚後に取得したのであれば、財産分与の対象となります。
婚姻前に取得したのであれば、たとえ婚姻中に高騰したとしても特有財産であることに変わりはなく、財産分与の対象にはなりません。
婚姻中に購入したのであれば、自動車も財産分与の対象となります。
売却してその代金を分配するか、どちらか一方が取得し、もう一方に代償金を支払う方法を取るのが一般的です。
ただし、購入してからかなりの年数が経過し、財産的価値がなければ、財産分与の対象とはなりません。
解約返戻金などがない、いわゆる「掛け捨て」の場合は財産分与の対象になりませんが、貯蓄型の場合は財産分与の対象となる可能性があります。
通常、解約返戻金を分配することになるでしょう。
必ずしも保険を解約する必要はなく、離婚時点での解約返戻金額を保険会社に確認のうえ清算してもかまいません。
また、婚姻前に契約した保険でも、婚姻後に保険料を支払った部分については夫婦の共有財産とされるため、解約返戻金のうち婚姻期間中に該当する部分は財産分与の対象になります。
すでに支払われている場合は、退職金も財産分与の対象となります。
しかし、退職金がまだ支払われていない場合については見解が分かれており、離婚の時点で自己都合退職した場合における退職金相当額を財産分与の対象とする見解が有力です。
財産分与の基本的なポイントを紹介してきましたが、まだわからないことがあるという方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、財産分与の対象となる財産についてよくある質問と答えを紹介します。
夫婦の協力によって資産価値が維持されたり上昇したりした場合には、その部分が財産分与の対象となります。
会社名義の財産は原則として財産分与の対象にはなりません。
法律において会社と個人とは別人格であるとされるためです。
相続によって取得した部分を判別できれば、その部分は財産分与の対象にはなりません。
しかし、共有財産と混じりあってしまい、判別困難な状態にあるなら財産分与の対象となる可能性があります。
たとえば、相続した現金を夫婦の共有口座に保管していたとしても、同じ口座に入ってくる給与で生活費を賄えており、相続した現金を使わずに済んでいた場合などは、相続した現金を判別できるため、その部分は財産分与の対象とはなりません。
一方、相続した現金を夫婦の共有口座に保管し、その部分も含めて日常的に使っていた場合は、共有財産との判別は困難であるため、財産分与の対象になる可能性があります。
相続した土地は特有財産になるため財産分与の対象とはならず、建物のみが財産分与の対象となります。
しかし、土地と建物を切り離して扱うことは難しいため、どちらがその建物に住むかに応じて以下のように対処することが考えられます。
法律上、ペットは動産であるため、相続財産のひとつとなります。
特有財産であるため、財産分与の対象にはなりません。
配偶者といくら話し合っても解決できない場合や、公平な分与が難しい場合などは弁護士に相談するのがおすすめです。
特に以下のようなケースでは弁護士に依頼するのが賢明でしょう。
相続によって取得した財産は財産分与の対象にならない旨をいくら相手に説明しても納得してくれない場合は、弁護士に依頼するのが賢明でしょう。
弁護士が法律の知識を交えながら相手に論理的に説明すれば、あなたの説明では理解しようとしなかった相手も受け容れる可能性があります。
まったく進まなかった話し合いが一気に進展するケースも少なくありません。
財産を保有しているはずの相手が、財産分与において自分の財産を明らかにしなかったり、「財産はない」と強固に主張したりして困っている場合も弁護士に相談するのがよいでしょう。
弁護士であれば、弁護士会照会を通して財産を調査することもできますし、裁判所における手続中であれば裁判所に調査嘱託を申し立てて、金融機関等に情報開示を求めることもできます。
相手が隠した財産を発見し、あなたが不利にならない財産分与を実現してくれるはずです。
すでに離婚していても、離婚のときから2年以内であれば財産分与を求められます。
しかし、離婚が成立した時点で夫婦に関する問題は全て解決したと考える人が多く、財産分与の話し合いに応じてもらえないケースも多いでしょう。
慰謝料や養育費を支払っているのだからと拒否されることもあるかもしれません。
しかし、弁護士が説得すれば相手が応じる可能性が高まりますし、場合によっては調停や審判などの法的手続によって支払いを求めてもらえます。
離婚後であってもしかるべき金額の財産分与を受けられる可能性が高まるのです。
相続した財産は特有財産となり、財産分与の対象にはなりません。
しかし、配偶者の貢献によって、その資産価値が維持されたり上昇したりした場合などの例外もあります。
財産分与の対象となるか判別に困る財産が含まれているなら、弁護士に相談することをおすすめします。
財産分与についての話し合いが進まないためになかなか離婚ができないのは辛いものですし、離婚成立後であれば、期間制限の問題があります。
できるだけ早急に決着をつけるためにも、弁護士への依頼を検討しましょう。
結論からいうと、財産分与で悩んでいるなら弁護士へ相談するのをおすすめします。財産分与は、お金が絡むためシビアになりがちなので、法律のプロに相談しておくことで、心強い味方となってくれるでしょう。
弁護士に相談することで以下のようなメリットを得ることができます。
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