養育費は扶養控除の対象!条件や確定申告・年末調整・税金対策について解説

養育費は扶養控除の対象!条件や確定申告・年末調整・税金対策について解説

養育費の支払いは、「扶養義務の履行として」「成人に達するまで」は扶養控除の対象として扱うことができます。

ただし、「一括で養育費を支払った」場合や、「扶養の重複」が起こる場合には扶養控除対象外となるので注意が必要です。

今回の記事では、養育費の扶養控除の仕組みや確定申告・年末調整などの手続きについて詳しく解説していきます。

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この記事を監修した弁護士
大隅愛友弁護士(弁護士法人ベストロイヤーズ法律事務所)
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扶養控除とは

扶養控除とは、所得税・住民税を計算する際に使用する所得控除の一つで、納税者本人に扶養親族がいる場合に受けることができる所得控除を指します。

一定の条件を満たすと「扶養親族」としてカウントされ、人数や属性によって課税所得を減額することができます。

「扶養親族」とみなされるための条件は下記5項目です。

  • 本人との続柄が6親等内の血族または、3親等内の親族・里子・養護を委託された老人であること
  • 生計を一にしていること
  • 年間の所得金額が48万円以下であること
  • 年齢が16歳以上であること(控除対象扶養親族)
  • 職業が青色申告者・白色申告者といった自営業者でないこと

【参考】国税庁|No.1180 扶養控除

扶養控除の減税額

扶養控除で控除できる金額は、対象となる扶養親族の年齢によって異なります。

扶養親族の年齢扶養控除額
控除対象扶養親族(16歳以上)38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満)63万円
老人扶養親族(70歳以上)同居老人等以外48万円
同居老人等58万円

【参考】国税庁|No.1180 扶養控除

16歳未満の子どもは「控除対象扶養親族」に当たらないので、養育費を支払っても扶養控除できません。扶養控除が発生するのは16歳以上からです。基本的に親から生活の援助を受けているようなケースでは大人になっても扶養控除を受けることができます。

養育費を扶養控除できないケースを解説

養育費は、扶養控除の要件を満たせば、扶養控除の対象とすることができますが、中には養育費を扶養控除できないケースもあります。

子どもが16歳未満の場合

16歳未満の子どもへの養育費の支払いは、扶養控除の対象とはなりません。「控除対象扶養親族」の年齢要件を満たさないためです。

ただし、16歳未満の子どもは児童手当(旧子ども手当)が給付されます。養育費を受け取る側に児童手当の利用を促すことで、養育費の減額を交渉できる可能性もあるので、当てはまる方は利用を検討してみましょう。

一括で養育費を支払った場合

養育費は毎月支払うことで扶養控除として認められます。離婚した際に、慰謝料などと共に一括して養育費を払ってしまうと、扶養控除を受けることはできないので気を付けましょう。

これは、「生活を一にする」ための条件である「生活の原資を共にする」という形式から外れてしまうためです。

ただし、一括で養育費を支払っても扶養控除対象とする方法はあります。それは、信託銀行などと「信託契約」を結ぶ方法です。

信託契約とは、契約した委託先に財産の管理・運用を任せることをいいます。運用を任せられた機関によって、毎月継続的な利益を子どもが受け取れれば、「生活を一にする」条件を満たしているとみなされます。

しかし、信託契約により発生した利益は、子ども自身の所得として扱われます。信託による養育費以外の所得状況によっては扶養と認められない可能性もあるので注意しましょう。

扶養が重複した場合

扶養の重複とは、1人の子どもに対して両親が2人とも扶養控除を申請している状態です。扶養控除は、両親のうちどちらかしか申請することはできません。なお、子どもが2人いる場合については、1人を父・もう片方を母が申請することもできます。

離婚時によくトラブルになるので、事前にどちらが申請するか決めておきましょう。

養育費で損をしないために知っておきたい制度

扶養の重複などのように、養育費はその制度のことをよく知り、対策を立てておかなければ後々のトラブルにつながるほか、税制上のメリットを享受できず損をしてしまうことも多くあります。養育費を支払う・貰うにあたって損をしないように知っておきたい制度について紹介していきます。

児童手当|受け取る側が利用すれば、養育費減額のきっかけに

児童手当とは、中学校卒業までの子どもに対して支給される助成金の一種です。子どもの年齢ごとに貰える金額が下記のように変わります。

子どもの年齢もらえる金額
0~3歳15,000円
3歳~小学校修了前第一子・二子10,000円
第三子15,000円
中学生10,000円

ただし、児童手当には所得制限が設けられています。所得制限は、前年末の扶養親族の人数によって変動します。変動額は下記のとおりです。

扶養親族の人数所得制限額
0人622万円
1人660万円
2人698万円
3人736万円
4人774万円
5人812万円

扶養親族人数は子どもだけでなく、前述の老人扶養親族等すべての親族を含みます。

たとえば、パートの給与所得103万未満の配偶者1名と3歳未満の子どもが1人いる場合、課税所得698万円までなら児童手当をもらうことができます。離婚後は配偶者がいなくなるので、660万円が上限です。

児童手当は一般的に子どもと同居している方に優先して支給されます。基本的に養育費を支払う側は別居することが多いので、児童手当はもらえません。

もし養育費の負担で生活が苦しくなる場合、相手に児童手当を申請するように助言し、養育費の減額を交渉するなどしてみましょう。

【参考】内閣府|児童手当Q&A

特定扶養親族|成人後も養育費を扶養控除できる

養育費は一般的に子どもが成人するまで支払うことが多い傾向にあります。しかし近年は大学に行く子どもの人数も増え、22歳まで扶養に入るケースも増えています。

子どもが大学進学を望んでおり、養育費を支払うことも検討している場合、「特定扶養親族」として申請すれば、扶養控除が可能です。

特定扶養親族とは19歳以上23歳未満の子どもを指します。12月31日の年齢を基準としているので、申請時点で18歳でも問題ありません。子どもが大学に通う4年間の養育費は扶養控除ができます。

寡婦控除(かふこうじょ)|ひとり親なら16歳未満でも扶養控除できる

寡婦控除とは条件を満たしたひとり親を対象に、16歳未満の子どもでも扶養控除を可能にする制度です。寡婦控除を受けるための条件は下記のとおりです。

  • 夫と離婚又は死別後に再婚していない
  • 合計所得金額が500万以下

寡婦控除による控除額は27万円です。

なお、条件が「夫」と離婚もしくは死別とありますので、寡婦控除は女性しか受けることはできません。

男性が親権を獲得した場合、「ひとり親控除」と呼ばれる控除が利用できます。一人親の控除額は35万円です。

【参考】国税庁|No.1170 寡婦控除

養育費の扶養控除手続き

養育費の支払いで扶養控除を受けるための手続きは、サラリーマンの方がおこなう年末調整と、フリーランス・自営業の方がおこなう確定申告があります。それぞれ見ていきましょう。

サラリーマンが年末調整で扶養控除手続きをおこなう場合

サラリーマンが会社の年末調整の際に養育費の扶養控除手続きをおこなう場合は、「給与所得者の扶養控除等申告書」に、子どもの氏名・住所・個人番号等を記載し、申告することで扶養控除を受けることができます。

離婚していると扶養控除を受けるのに特別な手続きが必要に感じますが、基本的には通常の扶養控除と手続きの内容は同じなので、記載方法がわからなければ、勤め先に確認するなどしてみましょう。

【参考】
国税庁|令和4年分年末調整のしかた(手順などの説明)
令和4年分 給与所得者の扶養控除等(異動 ) 申 告 書

自営業・フリーランスが確定申告で扶養控除手続きをおこなう場合

自営業やフリーランスの方が、養育費の扶養控除を受けるには、確定申告の際に申告が必要になります。確定申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」の扶養控除の箇所と、第二表の「配偶者や親族に関する事項」の2か所で記載が必要になるので、それぞれ解説していきます。

第一表の「所得から差し引かれる金額」

保険控除や扶養控除など、受けることができる各種控除の金額を「所得から差し引かれる金額」の部分に記載します。子どもの養育費の場合は、38万円もしくは63万円のいずれかを記載しましょう。

そのほか、養育費以外にも利用する扶養控除があれば、控除額を記載する必要があります。

【参考】国税庁|手順3 red triangle所得から差し引かれる金額(所得控除)を計算する

第二表の「配偶者や親族に関する事項」

ここには扶養親族全てを記載します。16歳未満の子どもも記載必須なので注意しましょう。

子どもと別居している場合、「別居」を選択します。また、「住民税・事業税に関する事項」の部分に別居している子どもの氏名・住所を記載する必要があるのでしっかり確認しましょう。

扶養控除でよくあるトラブル

扶養控除でよくあるトラブルについて解説していきます。離婚後に税金に関するトラブルに発展するなどの可能性があるので、しっかり対策を立てておきましょう。

親権者が扶養控除を認めない

よくあるトラブルの一つに、親権を持った元配偶者が扶養控除を認めてくれないことがあります。

扶養控除は所得が一定以上なければメリットを最大限受けることができません。所得の多いほうが扶養控除を受けたほうが全体のメリットが大きくなるため、お互いの状況や拒否される理由を深堀して、手取り額を最大化できるよう協力を持ち掛けましょう。

以下では、親権者が扶養控除を認めてくれないケースの具体例と、それぞれの対処法を解説します。

扶養と親権が混同している

もし元配偶者の所得が一定以下で扶養控除を認めてくれない場合、「扶養=親権」だと捉えている可能性があるので、不要と親権は全く別物であることをしっかり説得しましょう。所得控除を受けられることで養育費の金額を上乗せできるなど、メリットを伝えることで解決できます。

相手が扶養控除をしたがっている

親権者が扶養控除を活用したいと考えていることもあります。

もともと共働きで、元配偶者の所得も一定程度ある場合、寡婦控除も込みで相手の手元に残る金額が大きくなる可能性もあります。そうした場合は相手に控除を譲り、養育費の金額を減額してもらえないか交渉しましょう。

親権者が扶養控除を認めないケースを避けるためには、基本的にしっかりと事前に取り決めをおこなっていることが大切です。お互いの所得の変動によってどちらが控除したほうが得かも変わる場合がありますので、時折生活の状況を確認しあって調整しましょう。

所得税や贈与税がかかると心配している

養育費を受け取る側が、「養育費は所得に相当する」として課税されるのではないかと勘違いして申請や扶養の拒否をしてくるケースもあります。しかし、養育費の金額が子どもの生活・教育をしていくうえで妥当なものであれば、養育費は課税対象になることはありません。

よほど関係がこじれてしまっている場合、弁護士などに相談し、交渉を代行してもらうとよいでしょう。

扶養が重複してしまった

お互い事前に確認をせずどちらも控除申請をしてしまうと、扶養の重複となります。この場合、より早く申請したほうの控除が優先されます。

こちらのケースは、事前に取り決めをおこなっていなかったことが原因となります。関係がこじれていない場合、離婚協議書作成の際にしっかり取り決めをしておきましょう。

もし関係がこじれていて直接の話し合いが不可能な場合、弁護士などの専門家を頼ることをおすすめします。年末調整や確定申告のある1〜2ヵ月前には、専門家に相談して内容証明郵便等で確認の通知をしましょう。

また、このケースに該当する場合、保険控除などのための扶養変更などもされていない可能性が高いでしょう。併せて専門家に相談して変更手続きの催促をおこないましょう。

交渉が難しければ専門家に相談を

養育費は扶養控除の要件を満たす限り、扶養控除の対象となります。しかし、相手が養育費の扶養控除を認めてくれなかったり、扶養控除が重複してしまったりと、トラブルもつきものです。

事前に取り決めができておらず、養育費の扶養控除でトラブルが起きる可能性があるなら、早めに専門家に相談をしましょう。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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