債務整理
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2024.03.28
過払い金請求権の消滅時効は、最後の取引(完済など)から一定期間が経過すると完成します。時効完成後に債務者が時効を援用すると、過払い金を回収できなくなってしまうので注意が必要です。
ただし、完済等から10年以上経過していても、依然として過払い金請求ができるケースもあります。過払い金の回収が可能かどうかを確認するため、また過払い金請求権の時効消滅を阻止するためにも、早い段階で弁護士にご相談ください。
万が一、過払い金の回収に問題が発生した時のためにも、請求の時効について正しく把握しておくべきでしょう。
本記事では、過払い金請求権の消滅時効に関するルールや、完済から10年以上経過していても過払い金を回収できる場合などを解説します。
弁護士であれば安心して十分なサポートを受けられる可能性が高いためです。弁護士に相談するメリットは以下の通りです。
・漏れのない正確な請求ができる
・債権者と対等に交渉を進められる
・訴訟に発展した場合もスムーズに対応できる
・債務整理もセットで依頼できる(過払い金返還請求をしても債務が残る場合)
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過払い金請求権は、金融機関などとの最後の取引から一定期間が経過すると、時効により消滅してしまいます。
「消滅時効」とは、一定期間が経過すると、債権者が権利を行使できなくなる制度です。
長期間にわたり請求がなかったにもかかわらず、突然債務の履行(支払いなど)を求められた場合、債務者にとっては不意打ちとなる側面があります。一方債権者については、債権回収に着手しない怠惰な状態を長年続けていたのであれば、権利を失ってもやむを得ないという価値判断が働きます(このような状態を「権利の上に眠る」と表現することがあります)。
このような事情から、早期に法律関係を安定させるために、消滅時効によって債権を行使できる期間が制限されているのです。
消滅時効期間が経過しても、直ちに債権が消滅するわけではありません。債権が時効消滅するのは、債務者が消滅時効を「援用」した場合です。
「援用」とは、時効完成によって利益を受ける者が、消滅時効が完成したと主張することを意味します(民法145条)。援用の方法は法定されていませんが、実務上は内容証明郵便や訴状によって援用を行うのが一般的です。
消滅時効を援用するかどうかは、債務者の自由な判断に委ねられています。あくまでも消滅時効の完成を主張するのか、道義的な観点から債務を任意に支払うのかは、債務者が決めるべき事柄です。
【関連記事】消滅時効の援用とは? やり方や時効援用通知書の書き方を解説
過払い金請求権も、時効完成によって消滅してしまうことがあります。そのため、過払い金が発生していると思われる場合には、早めに計算・請求などに着手することが大切です。
過払い金請求権の消滅時効期間は、金融機関などと最後の取引をした時期によって、以下のとおり異なります。消滅時効期間が異なるのは、2020年4月1日付で施行された改正民法により、消滅時効のルールが変更されたためです。
金融機関などとの最後の取引が2020年3月31日以前に行われた場合、最後の取引日から10年が経過することにより、過払い金請求権の消滅時効が完成します。
金融機関などとの最後の取引が2020年4月1日以降に行われた場合、最後の取引日から5年が経過することにより、過払い金請求権の消滅時効が完成します(民法166条1項1号)。
過払い金請求権の消滅時効期間は、金融機関などとの「最後の取引日」となります。「最後の取引日」とは、債務を完済済みであれば完済日、未完済であれば最後の入出金(返済or借入れ)が行われた日です。
たとえば、2009年4月1日に借り入れた金銭を2014年4月1日に完済し、その後は取引を行っていないとします。この場合、完済日である2014年4月1日を起算点として、10年が経過することにより過払い金請求権の消滅時効が完成します。具体的には、2024年4月1日が経過すると、過払い金を請求できなくなってしまいます。
ただし同じ金融機関などから完済・借入れを繰り返した場合には、取引の一連性(後述)の有無によって、消滅時効の起算点が変化することがある点に注意が必要です。
前述のとおり、借金の完済が2020年3月31日以前の場合でも、過払い金請求権は完済後10年で時効消滅します(2020年4月1日以降の場合は5年)。
しかし借金の完済から10年以上経過していても、以下のいずれかに該当する場合には消滅時効が完成せず、依然として過払い金を請求できる可能性があります。
消滅時効は、一定の手続きをとることにより、その完成を一時的に阻止することができます。これを旧民法では「時効の停止」、現行民法では「時効の完成猶予」と言います。
時効の停止または完成猶予の効果が生じているうちは、消滅時効が完成しないため、完済から10年以上経過していたとしても過払い金請求を行うことが可能です。
時効の停止・完成猶予の効果を生じさせる具体的な事由については、後述します。
請求に関する法的手続きを講ずる方法などにより、消滅時効をリセットしてゼロに戻すことができます。これを旧民法では「時効の中断」、新民法では「時効の更新」と言います。
消滅時効が中断または更新されると、その時点から時効期間はカウントし直しです。したがって、完済から10年以上が経過していても、依然として過払い金請求を行うことができます。
時効の中断・更新の効果を生じさせる具体的な事由については、後述します。
同じ金融機関との間で何度も完済・借入れを繰り返していた場合、過払い金請求権の消滅時効の起算点については、以下の2つの考え方があり得ます。
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法的にどちらの考え方が採用されるかについては、各借入れが「1個の連続した貸付取引である」と評価できるかどうかによって決まるというのが、最高裁判例の立場です。
最高裁は以下の事情を考慮したうえで、各借入れが「1個の連続した貸付取引である」と評価できる場合には、前の取引の過払い金を後の取引の返済に充当する合意が存在するとしています(最高裁平成20年1月18日判決)。
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そして複数の借入れから成る一連の取引が、過払い金充当合意を含む基本契約に基づく継続的取引であれば、すべての取引が終了した時点から過払い金請求権の消滅時効が進行すると判示されています(最高裁平成21年1月22日判決)。
したがって完済・借入れが繰り返されていても、各借入れが1個の連続した貸付取引であると評価されれば、完済後10年以上経過しても過払い金請求権が時効消滅していない可能性があるのです。
過払い金の請求先である相手方から、請求を行わないように脅迫されていた場合には、消滅時効期間は進行しないと考えられます。
民法上、消滅時効の起算点は「権利を行使することができることを知った時」または「権利を行使することができる時」とされています(民法166条1項)。いずれについても権利行使が可能な状態を前提としていますが、相手方から脅迫されている状態では、過払い金請求権を行使することは期待できません。
そのため、相手から脅迫を受けているうちは「権利を行使することができる」と評価されず、消滅時効が完成することはないと考えるべきでしょう。
今後、過払い金請求権の時効消滅を阻止するには、時効の「完成猶予」または「更新」のいずれかの措置を講ずる必要があります。
また2020年3月31日以前であれば、時効の「停止」または「中断」事由の発生をもって、消滅時効が完成していないことを主張できます。
以下のいずれかの事由が発生した場合、時効の完成猶予の効果が生じます。
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簡易的に時効の完成猶予の効果を生じさせたい場合は、内容証明郵便を送付する方法が一般的です(民法150条1項)。ただし、完成猶予の効果は6か月間しか続かないため、訴訟の提起など次の準備を進めましょう。
以下のいずれかの事由が発生した場合、時効の更新の効果が生じます。
・裁判上の請求
・強制執行
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2020年3月31日以前に適用されていた旧民法では、以下の時効の停止・中断事由が定められていました。
【時効の停止事由】 ・天災地変など ・内容証明郵便などによる履行の催告(6か月間のみ) |
【時効の中断事由】 ・裁判上の請求 ・差押え、仮差押え、仮処分 ・債務の承認 |
民法改正附則10条2項により、2020年3月31日以前に時効の停止または中断の事由が発生した場合、停止・中断の効力が有効に生じます。
なお2020年3月31日以前に成立した債権(過払い金請求権など)であっても、今後の手続きによって時効の完成を阻止したい場合には、完成猶予または更新の手続きを取ることが必要です。
過払い金請求は、大まかに以下の流れで行います。消滅時効期間にも注意しつつ、早めに請求の手続きへと着手しましょう。
過払い金請求を行う際には、まず弁護士に相談するのが安心です。弁護士は、過払い金を正確に計算してくれるほか、実際の請求手続きも全面的に代行してくれます。適正額の過払い金を回収したい場合には、弁護士に請求を依頼するのがよいでしょう。
また借金が未完済の状態であれば、弁護士が金融機関などに受任通知を発送することで、取り立てを止められるメリットもあります。
無料相談を実施している弁護士も多いので、一度弁護士に相談してみましょう。
消滅時効の完成が迫っている場合には、ひとまず相手方に内容証明郵便による請求書を送付し、消滅時効の完成を猶予するのがよいでしょう(民法150条1項)。正確な過払い金額がわかっていなくても、債権者・債務者・借入日などを記載すれば、過払い金請求権を特定できます。
なお弁護士に依頼している場合には、受任通知と請求書を兼ねた内容証明郵便を発送することも多いです。
前述のとおり、内容証明郵便による時効の完成猶予の効果は、6か月間に限定されています。そのため、弁護士とコミュニケーションを取りながら、法的手続きを通じた請求の準備を迅速に進めましょう。
実際に請求する過払い金額は、「引き直し計算」を行うことで算出します。
まず利息制限法の上限金利が適用されたと仮定して、本来支払うべき債務の金額を求めます。その金額と実際に支払った債務の金額を比較して、後者が上回っていれば、その金額が過払い金です。
引き直し計算の方法は複雑ですが、最近では計算ツールを公開するウェブサイトもあります。また弁護士に相談すれば、引き直し計算によって正確な過払い金を算出してもらえます。
過払い金請求をスムーズに行うためには、引き直し計算を正しく行うことが大切です。ご自身での対応に不安がある場合には、弁護士へご相談ください。
引き直し計算が完了したら、過払い金額を記載した正式な請求書を相手方に送付し、和解交渉を提案します。和解交渉では、過払い金額や支払方法について、当事者が話し合いにより調整を行います。和解が成立すれば、早期かつ低コストで過払い金を獲得できる点が大きなメリットです。
一方、当事者間の意見の対立が激しく、和解が不成立となるケースもあります。その場合は、過払い金請求訴訟を提起し、裁判所に場を移して請求を続けましょう。
弁護士に依頼すれば、和解交渉・訴訟による請求のいずれについても、手続きを全面的に任せられます。法的に根拠のある主張を展開できることに加えて、債権者対応や裁判所対応の手間が省けることも大きなメリットです。
訴訟を提起すると、判決が確定するまでの間は、過払い金請求権の消滅時効の完成は猶予されます(民法147条1項1号)。
訴訟の判決が確定すると、時効の更新の効果が生じ、過払い金請求権の消滅時効期間がリセットされます(同条2項)。
過払い金の支払いを命ずる判決が確定した場合、その後の過払い金請求権の消滅時効期間は、判決確定日から10年です(民法169条1項)。
和解交渉が成立した場合には、和解の内容に従い、過払い金の精算を行います。
また訴訟で過払い金の支払いを命ずる判決が確定した場合、相手方は確定判決の内容に従い、過払い金を精算する義務を負います。
もし相手方が確定判決を無視して、過払い金を支払おうとしない場合には、裁判所に強制執行を申し立てましょう。裁判所が相手方の財産(預貯金・売掛金・不動産など)を差し押さえたうえで、その換価・処分等を行うことにより過払い金を回収できます。
強制執行を申し立てたい場合には、弁護士に依頼するのがスムーズです。
過払い金請求権は、完済日から5年または10年が経過すると時効消滅してしまいます(完済日がどの時期かによって、消滅時効期間が変わります)。
過払い金があることが疑われる場合には、権利の時効消滅を阻止するため、早めに検討へと着手することが大切です。
弁護士に依頼すれば、過払い金の計算から実際の請求まで、必要な手続きを一任できます。過払い金請求を行いたい場合には、お早めに弁護士までご相談ください。
【関連記事】過払い金請求を無料相談はできる?おすすめの相談先や弁護士費用の目安も解説
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