過払い金の返還請求は、法律で定められた上限を超えて払いすぎた利息を返還してもらう手続きなので、原則としてリスクはありません。
過払い金請求が認められれば、差し引きして現在の債務を減額することも可能ですし、債務以上の金額が戻ってくればこれ以上返済する必要がなくなります。
とはいえ、大きなメリットがある一方、過払い金の請求に何かデメリットがあるのではないかと心配になる人もいるでしょう。
この記事では、過払い金に関する基礎知識や過払い金請求をするメリット・デメリット、過払い金請求の流れなどを紹介します。
【無料相談】過払い金請求の時効は刻一刻と迫っています
まずは弁護士に無料相談して、具体的な金額や請求方法を聞いてみましょう!
借金がある方で以下の条件に該当している人は、過払い金を請求できる可能性があります。
・2010年6月17日以前に借り入れを開始している
・借金を完済もしくは最終取引から10年以内
※例えば、2012年4月1日に借金を完済したのであれば、時効が成立するのは2022年4月1日です。
もし過払い金に当てはまりそうな借入の経験があるのであれば、過払い金問題に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。
過払い金には期限があり、一刻一刻と迫っています!
この記事を監修した弁護士
福田 圭志弁護士(船橋リバティ法律事務所)
船橋で長年弁護士業をしている地元密着の弁護士。借金問題、離婚問題、相続問題、企業法務に注力。依頼者の納得のいくゴールを目指し、依頼者と二人三脚で事件に挑む。司法書士、税理士等の他士業との連携も武器。
過払い金とは?過払い金が発生する仕組み
過払い金(かばらいきん)とは、消費者金融などに対し利息制限法で定められた上限金利を超えて払いすぎていた利息のことです。
このような利息はグレーゾーン金利とも呼ばれ、過払い金請求によって返金を求めることができます。
以下の条件に該当している人は、もしかしたら過払い金を請求できるかもしれません。
- 2010年6月17日以前に借り入れを開始している
- 借金を完済もしくは最終取引から10年以内
まずは、過払い金が発生する仕組みである「グレーゾーン金利」と、過払い金が発生する期間について解説します。
グレーゾーン金利とは
グレーゾーン金利とは、「出資法」で定められた上限金利 年29.2%と、「利息制限法」で定められた上限金利 年20.0%の間の金利のことです。
改正貸金業法が完全施行される2010年6月までの出資法では、上限金利が29.2%と非常に高いものでした。
しかし、29.2%を超えた場合に課せられる「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」という刑事罰は、利息制限法の上限を超えていても、出資法の上限金利を超えなければ科せられませんでした。
つまり利息制限法と出資法の間にある金利については、刑事罰はなく、グレーな部分の金利という意味で、「グレーゾーン金利」と呼ばれるようになったのです。
そして、出資法が改正される前は、多くの貸金業者がグレーゾーン金利の間で利息を設定していました。
過払い金請求とは、これまでに払い過ぎたグレーゾーン金利について、貸金業者に請求して、返還してもらう手続きのことです。
過払い金が発生する期間
借入の状況や毎月の返済額により異なりますので、「何年取引をすれば過払い金が発生するのか」は一概には言えません。
もっとも、おおよそ取引年数が5年以上になると、約半数の方に過払い金が発生する可能性があります。
過払い金請求ができる条件とは?過払い金の対象者と請求できる期間
ここからは、どういった場合に過払い金が発生している可能性が高いのかを確認してみましょう。
【対象者1】2010年6月17日以前に借り入れを開始した場合
過払い金の請求ができる可能性があるケースの1つ目は、2010年(平成22年)6月17日以前に借り入れを開始していた場合です。
前述のとおり、過払い金が発生する仕組みは、利息制限法と出資法の上限金利に違いがあるからです。
しかし2010年6月18日に出資法の上限金利が引き下げられたため、これ以降はグレーゾーン金利が発生することはなくなりました。
ただし、出資法が改正されたとしても、2010年6月17日以前のグレーゾーン金利は支払ったままになっています。
貸金業者がグレーゾーン金利分を差し引いて請求してくれるということはありません。
つまり、2010年6月17日以前に返済した借金にはグレーゾーン金利があり、過払い金の請求ができるわけなのです。
【対象者2】借金を完済してから10年以内の場合
過払い金の請求ができる可能性がある2つ目のケースは、借金を完済してから10年以内の場合です。
過払い金請求は、最後に返済した日から10年で時効となります。
なお、未完済の場合でも、最後に取引をしてから10年以内の場合には過払い金請求の対象になる可能性がありますので注意してください。
仮に完済していない場合でも、10年以内に借り入れをしているケースや、返済を途中でやめて放置しているケースも過払い金請求ができる可能性があります。
加えて、10年以上前に完済していた借金であっても、同じ貸金業者から続けて借金をし、その間隔が短い場合には、2つの取引が連続しているとみなされて、10年以上前に完済した借金も過払い金請求ができる可能性があります。
また、2020年4月に施行された改正民法により、2020年4月以降に完済するローンの時効は5年。と変更されました。
2020年4月以降に完済予定のローンについては、「過払い金請求をできると知った日」から5年が時効となりますので、注意が必要です。
過払い金返還請求ができる業者・できない業者
過払い金が発生するのは、過去にグレーゾーン金利を設定していた業者に限られ、代表的な貸金業者では次のような会社が挙げられます。
アコム、プロミス、アイフル、レイク、シンキ(ノーローン)、ニコス、CFJ、セゾン、オリコ、セディナ、イオン、ジャックス、JCB |
一方、次のような業者は出資法が改正される以前からグレーゾーン金利を設定していないため、過払い金は発生していない可能性が非常に高いです。
オリックス、モビット、キャッシュワン、アットローン(現在はSMBC(プロミス)に吸収)、ダイレクトワン、銀行のカードローン、公庫からの借入 |
過払い金請求の時効はいつまで?
過払い金の請求が可能となる期間は最後の弁済から10年以内です。
過払い金請求の消滅時効が10年だからです。
また、基本的には2006年頃より前におこなった借り入れが過払い金請求の対象となります。
なぜなら、この時期以降、貸金業者は利息制限法に適合するように金利の見直しをおこなったからです。
例えば、2000年頃に貸金業者の借り入れをおこない、これを2020年3月に完済した場合、2006年より前に借り入れをしていて、かつ完済から10年以上経過していないため、過払い金請求ができる可能性があるということです。
どんなメリットがあるの?過払い金請求をおこなう5つのメリット
過払い金返還請求をおこなうメリットは次の5つがあります。
1.ブラックリストに載らない
ブラックリストに載るとは、個人信用情報機関に「事故情報」が載ることです。
一度ブラックリストに載ると、一定期間クレジットカードの新規作成やローンを組むことができなくなります。
しかし、過払い金請求をおこなっても、すでに借金を完済していたり、請求した過払い金で借金の残債務を全額返済できたりした場合には、ブラックリストに載ることはありません。
ただし例外もありますので、詳しくは【過払い金請求のデメリットは少ない!デメリットと注意点を解説】で解説します。
また、かつては過払い金請求で信用情報に「契約見直し」や「弁護士介入」などの情報が登録されていましたが、現在はこれらもありません。
ただし、過払い金請求した債権者(お金を貸す側)から、今後借入れできなくなる可能性があるので注意してください。
2.払いすぎた利息が戻ってくる
過払い金は貸金業者に対して発生している債権であるため、過払い金が発生している債務者は、貸金業者に対して過払金返還請求債権を有していることになります。
そして、過払い金請求の裁判で勝訴すれば、過払い金発生時から支払い済みまでの金額に法定利息分(5%)をつけた金額も請求することが可能です。
3.裁判なしで交渉できるため負担が軽い
過払い金は「個人再生」や「自己破産」とは異なり、裁判所を経由する手続きではありませんので、時間や手間などの負担が軽いのが通常です。
過払い金返還請求は個人でおこなうこともできますが、弁護士や司法書士など法律の専門家に依頼して、貸金業者と過払い金返還に関する交渉を代行してもらう方が絶対に良いでしょう。
個人でおこなった場合と比べ、専門家が窓口になるだけで返還される金額の割合が高額になるといったメリットもありますし、日常的に多忙な人にとって、手続きの負担が軽いということも依頼しておきたいポイントです。
なお前述したように、過払い金に利息をつけて請求したい場合には、基本的に裁判が必要となります。
裁判を起こすべきかどうか判断できない方は、まずは弁護士に相談してみてください。
4.訴訟を提起すれば高額な返還が期待できる
高額な過払い金返還を期待するのであれば、訴訟をおこなうのが有効です。
訴訟提起の知らせが貸金業者側へ郵送されると、裁判まで持ち越しになるのを嫌がる貸金業者も多いため、初回の交渉と比べ高額な過払い金の返還が期待できます。
なお、過払い金請求の裁判で尋問をおこなわれることは稀なので、原告本人の負担は少ないでしょう。
5.裁判所を通さなければ周囲に知られない
過払い金請求は、貸金業者との直接の交渉になるので、原則として裁判所を介しません。
そのため、周囲に知られることもなく、面倒な手続きやかかる期間などを最小限に抑えられます。
また、専門家に依頼すると、手続き・交渉も専門家がほとんどやってくれますので、「あとは結果を待つのみ」と言っても過言ではありません。
過払い金請求のデメリットは少ない!デメリットと注意点を解説
冒頭でもお伝えしたとおり、過払い金請求にはリスクはありませんが、いくつかのデメリット及び注意点があります。
ここでは、どういったデメリット・注意点があるのか確認しておきましょう。
過払い金の満額が返還されるとは限らない
発生している過払い金に対して、全額の過払い金が返還されるわけではありません。
交渉する企業の経営状態が大きく影響しますが、1回目の交渉において返還される金額は、過払い金返還に対応のいい貸金業者でも70〜80%ぐらいでしょう。
一方、弁護士に依頼すれば、初回の交渉であっても争点がなければ100%の満額回収をすることが出来る場合もあります。
個人信用情報に事故情報が載ることがある
過払い金請求をすると、例外的にブラックリストに載る、つまり、信用情報に事故情報が載ってしまうケースがあります。
どういったケースが該当するかといえば、借入残高の方が過払い金の発生金額を上回っていた場合です。
過払い金と借り入れ残高の大小 |
手続き |
ブラックリスト掲載 |
過払い金 ≧ 借入残高 |
過払い金返還請求 |
× |
過払い金 < 借入残高 |
任意整理 |
〇 |
上記のとおり、過払い金の額よりも借入残高の方が多い場合には、任意整理という債務整理手続きのうちの1つをおこなうことになります。
そのため、信用情報に事故情報が載る、つまり一般的に「ブラックリスト掲載」と言われる状態になるのです。
ブラックリストに掲載されると、掲載が消えるまで、新たなローンの借り入れやクレジットカード契約の審査に影響を与え、通常は審査が通らず契約ができません。
専門家に依頼すればお金がかかる
過払い金を請求することにデメリットはありませんが、強いて挙げるのであれば、専門家へ支払う費用がかかることでしょう。
もっとも、過払い金の請求のみの依頼であれば、相談料や着手金を無料としている事務所も多数あります。
そのような事務所に依頼すれば、かかる費用は報酬と実費等のみとなります。
さらに、同費用については回収した過払い金から支払うことになるので、出費なく依頼が可能です。
請求した業者から借り入れできなくなる
過払い金請求をした場合、その相手方である貸金業者から、再度借り入れをおこなうことはできなくなることもありますが、これは相手方の対応次第です。
過払い金請求から実際に過払い金が返還されるまでには数ヶ月の期間を要するため、同じ貸金業者から追加の借り入れを考えているような場合には、過払い金請求をおこなうタイミングについて、慎重に検討する必要があります。
過払い金請求でローンにどのような影響がある?
過払い金の金額よりも借入残高の方が高い、つまり、過払い金で残りの借金をすべて返済できなかった場合に、任意整理手続きをすると個人信用情報機関に事故情報が載ることは、すでにお伝えしたとおりです。
再度、過払い金と借入残高の関係について、表でおさらいしておきましょう。
過払い金と借り入れ残高の大小 |
手続き |
ブラックリスト掲載 |
過払い金 ≧ 借入残高 |
過払い金返還請求 |
× |
過払い金 < 借入残高 |
任意整理 |
〇 |
そして、個人信用情報機関に事故情報が載ると一定の制限がかかります。
よくある懸念点が、ローン審査に通らなくなるということでしょう。
そこでここでは、ケースごとに、過払い金請求が住宅ローンや車のローンなどにどういった影響を与えるかについて確認しておきましょう。
過払い金請求が将来のローン審査に与える影響
まずは、過払い金請求が将来のローン審査にどういった影響を与えるかについて見ておきましょう。
借金完済後の過払い金請求が将来のローンに与える影響
借金完済後に過払い金請求をした場合には、「任意整理」ではなく「過払い金請求」の手続きとなるため、信用情報に事故情報が載ることはありません。
そのため、将来的なローン審査に影響はないと言えるでしょう。
借金返済中の過払い金請求が将来のローンに与える影響
借金返済中の過払い金請求の場合で、手続きが「任意整理」ではなく「過払い金請求」だった場合には、同じく過払い金請求後に信用情報に事故情報が載ることはありませんので、ローン審査に影響を与えることもありません。
しかし、貸金業者によっては、「過払い金請求」の手続き中に限り、一時的に「債務整理(コード32)」という情報が信用情報に記載されることがあります。
ただし、過払い金の返還を受けた上で借金が無くなれば、「債務整理(コード32)」は抹消され「完済」という情報が登録されることになるので、将来のローン審査に影響を与えることはありません。
一方、借金返済中の過払い金請求の場合で、過払い金の金額より借金残高の方が多く、「任意整理」手続きを取った場合には、信用情報に「異動」という事故情報が載ります。
信用情報に事故情報が載っている間は、住宅ローンやマイカーローンのほか、ショッピングローン、キャッシングなどの審査に影響を与え、通常は新たにローンが組めなくなってしまいます。
事故情報が登録されている期間は信用情報会社によってまちまちで、おおよそ次のとおりです。
信用情報機関 |
事故情報が登録されている期間 |
全国銀行個人信用情報センター(KSC) |
5年間(※) |
株式会社日本信用情報機構(JICC) |
5年間 |
株式会社CIC |
5年間(※) |
※保証会社による代位弁済がおこなわれた場合
過払い金請求が現在のローンに与える影響
現在支払い中の住宅ローンやカーローンについては、過払い金請求の手続きが「過払い金請求」であっても「任意整理」であっても、影響を与えることはありません。
ローンの支払い方法の変更や一括での返済、契約条件の見直しなどを迫られることはありませんので、安心して過払い金を請求できます。
過払い金請求とローン審査を同時にするのは避けよう
お伝えしたとおり、過払い金請求をすると、貸金業者によっては信用情報に「債務整理(コード32)」という事故情報が載ることがあります。
つまり、過払い金請求の期間中に限って事故情報が載りますので、過払い金請求とローン審査を同時におこなった場合には、ローン審査に影響を与える可能性があるからです。
そのため、まずは過払い金請求を完了し、その後ローン審査を受けるようにしてください。
人によっては、過払い金請求が「債務整理」手続きを経ることで、将来のローン審査に影響を与えることを懸念されるかもしれません。
しかし、現在借金返済中の場合には、新たにローンを組むよりも先に借金を返済する方が経済的には健全です。
先に過払い金請求をして現在の借金を減らし、早期の返済を目指すようにしましょう。
過払い金請求は自分でできるの?|自分で手続きをおこなう場合のリスク
過払い金請求は弁護士に依頼するのが通常ですが、自分自身でおこなうことも不可能ではありません。
この場合、専門家への依頼費用を抑えられるといったメリットもあります。
しかし、不慣れな手続きに手間取り、余計な時間と労力がかかってしまうだけでなく、次のようなリスクも考えられます。
取引履歴の取り寄せでつまずくリスク
過払い金請求をおこなう前提として、まず取引状況を正確に把握しなければなりません。
これは、貸金業者から取引履歴を取り寄せておこなうのが通常です。
しかし、過払い金請求の経験が一切ない場合、まず何から始めればいいかわからない、取引履歴の開示請求をするためにどこにどのように連絡すればよいかわからない、という人もいるでしょう。
取寄せ自体は全く難しいことではありませんが、ここで行き詰まり「面倒」と考えて何もしないというケースは少なくないかもしれません。
引き直し計算でつまずくリスク
過払い金の金額を算定するためには、取引履歴に基づいて引直し計算をおこなう必要があります。
引直し計算とは、取引を利息制限法の上限金利に基づいて計算し直すことをいいます。
この引直し計算が正確にできなければ、過払い金の正しい金額を算定することはできません。
引直し計算をするための専用のエクセルフォーム等がインターネット上にありますので、計算自体はそれほど難しいものではありませんが、それでも素人には面倒、煩雑と感じてしまうことはやむを得ません。
この引き直し計算でつまずき、過払い金請求を諦めてしまう方も少なくないでしょう。
貸金業者との交渉でつまずくリスク
貸金業者との交渉は、必ずしも弁護士・司法書士を通しておこなう必要はありません。
しかし、貸金業者との交渉力や知識・経験の格差から、自力での示談は難しい場合も多々あります。
例えば、貸金業者から何かしら反論があった場合にその反論の当否を判断できませんし、貸金業者から提案された解決案が妥当かどうかも素人にはわかりません。
このような交渉でつまずいたり、不安に感じたりする方も多いでしょう。
家族に借金を知られるリスク
独自に貸金業者と協議する場合、業者から自宅あてに取引履歴や書面通知等が届く可能性があります。
そうなると家族に借金が知られてしまうかもしれません。
これまでご紹介したように、自力での過払い金請求は不可能ではありませんが、複数のリスクが考えられます。
もし、上記のようなリスクを避けたいのであれば、弁護士・司法書士に依頼することをおすすめします。
弁護士・司法書士に依頼した場合、すべての処理を一任できますので、自身で対応しなければならないことはほとんどありません。
また、貸金業者からの連絡や郵便物の送付も、事務所が窓口になってくれますので、家族などに知られてしまうリスクも避けられるでしょう。
過払い金請求をおこなう7つの流れとかかる期間
過払い金請求を自分でおこなった場合と、専門家に依頼した場合、さらに訴訟になった場合のおおよその期間は次のとおりです。
- 自分でおこなった場合|約3ヶ月〜6ヶ月
- 専門家に依頼した場合|約1ヶ月〜3ヶ月
- 訴訟になった場合|約3ヶ月~1年
もっとも、自分で過払い金を取り戻そうとした場合、計算や請求、交渉など全てを自力でおこなわないといけません。
専門知識も必要な上、書類などの作成にかかる手間などもあり、時間的・精神的な負担がかかるでしょう。
ストレスなくスムーズに過払い請求を進めるためには、専門家に相談・依頼することをおすすめします。
ここでは、どうしても自分で請求したいという人に向けて、自分でおこなう場合の流れと期間を解説します。
1.取引履歴開示請求(約1週間~1ヶ月)
引き直し計算をして過払い金がいくらあるのかを確定させるには、まず貸金業者に対して取引履歴の開示請求をしなくてはなりません。
貸金業者によっては、法律事務所からの開示請求にはすぐに対応するのにもかかわらず、個人からの請求に対してはなかなか開示しないことが多々ありますので、注意が必要です。
取引履歴開示請求から実際に送られてくるまでの期間は、長くても1ヶ月以内でしょう。
請求から開示されるまでの期間は業者によってまちまちですが、1ヶ月以上経っても取引履歴が送られてこないようなら、開示を拒否されている可能性もあります。
しかし、これは法令の開示義務を怠っていると言えます。
最初の段階からこのようなトラブルにならないように、郵便物の内容を記録として残せる「内容証明郵便」を使って請求するか、弁護士・司法書士に依頼すると、未然に防ぐこともできるでしょう。
2.過払い金の引き直し計算
取引履歴を取得後、過払い金の引き直し計算をします。
自力で引き直し計算をおこなうことは面倒ではありますが、時間はそれほど要さないはずです。
3.貸金業者へ過払い金返還請求書を送付
引き直し計算が終わったら、貸金業者へ過払い金返還請求書と引き直し計算書を送付します。
過払い金返還請求書に決まったフォーマットはありませんが、相手先業者名や自分の住所・名前・連絡先、過払い金の金額や振込先口座などを記載します。
送付の方法は電話やFAX、郵便などがよいでしょう。
万全を期すのであれば、内容証明郵便で送るのもいいかもしれません。
4.貸金業者との和解交渉(約1~3ヶ月)
貸金業者が過払い金請求をおこなう意思表示をしたら、まずは担当者と電話などでやり取りし、返還される過払い金の金額や支払い方法などを話し合います。
もし時効が迫っている場合、両者の間で揉める可能性がありますので、交渉がうまく進まなければその分だけ期間は長引くことになります。
また、こちらが弁護士や司法書士などの専門家がいないとわかると足元を見てくる可能性もありますので、こちらも強気の姿勢を崩してはいけません。
こちらの態度次第で交渉期間も大きく変わってきますので、もし1ヶ月以内などの短期で終わらせたいのであれば、専門家の意見を聞くことをおすすめします。
5.訴訟を提起する
もし交渉だけでは納得いく過払い金の返還ができない場合、過払い金返還請求訴訟を起こすのがおすすめです。
ただ、自分で訴訟を起こす場合はそれなりに知識をつける必要があるため、弁護士や司法書士などに相談・依頼した方が格段に手間を減らせるでしょう。
6.途中で和解交渉に入るケースもある
訴訟を起こしても貸金業者から和解を申し込まれるケースもあります。
訴訟はやはり時間がかかりますので、業者としてもいつまでも時間をかけたくないというのが本音でしょう。
その際、自分が納得できればいいのですが、どうしても満額に近い額の返還を望むのであれば、専門家の力を借りるのがおすすめです。
7.過払い金が返還される(判決・締結から約2~4ヶ月)
裁判の勝訴あるいは和解がまとまれば、勝訴判決や和解成立後数週間〜4ヶ月後には過払い金が返還されます。
過払い金は、過払い金返還請求書に記載した振込先口座に振り込まれます。
過払い金請求をおこなう上での注意点
過払い金請求をおこなうには、次のような注意点があります。
過払い金の返還金額は会社の経営状態により変動する
過払い金請求ブームにより経営が傾いた会社、または倒産した会社が多数存在します。
賃金業者側も利用者から数多の過払い金請求を受けているため、会社によっては返還できるだけの余裕がない場合もあります。
貸金業者の経営状態によって、返還金額が変動する可能性がある点には注意しておきましょう。
過払い金には時効がある
何度もお伝えしていますが、過払い金には時効があります。
もしも時効が過ぎてしまったら、請求しても返還してもらえません。
一方、過去の借金でも完済や最後の取引から10年以内であれば、過払い金が発生している可能性があります。
昔の借金だからといって諦めず、最後の取引が何年前であったか確認するとよいでしょう。
請求先へ借入残高がある場合の注意点
再度の案内になりますが、過払い金の請求先貸金業者に現在も返済中で、過払い金で借金の残債が返済できなかった場合には、過払い金請求ではなく「任意整理」として扱われる点には注意が必要です。
つまり、個人信用情報機関に事故情報が載りますので、カードローンなどの審査が通らなくなるなど、任意整理のデメリットが発生します。
過払い金請求を専門家に依頼するメリットと注意点
過払い金請求は、複雑な手続きや戦略的な交渉が必要となるため、法的知識や経験が豊富な専門家に依頼することをおすすめします。
依頼できる専門家には弁護士・司法書士の2種類がありますが、どちらに依頼するか迷ってしまうこともあるでしょう。
ここでは、専門家のサポートを受けることで得られるメリットを紹介した後に、弁護士と司法書士のどちらに依頼すべきかを解説します。
専門家のサポートを受けるメリット
専門家のサポートを受けるメリットは、主に次の3つがあります。
メリット1.自分でやるより正確に過払い金の金額を計算してもらえる
過払い金の引き直し計算では細かい計算を要するので、計算に誤りが生じることがあります。
経験豊富な専門家に依頼することで、計算を正確に進めることができ、正しい数値が担保されます。
メリット2.手続きを一任できる
過払い金の請求には上で説明した引き直し計算のほか、貸金業者との交渉などさまざまな手続きが必要になります。
弁護士に依頼することで、手続きを一任できるようになりますので、時間や手間を抑えられるほか、精神的負担も減らせます。
メリット3.有利な条件で和解できる可能性が高まる
和解に応じるかは貸金業者の自由ですので、過払い金を請求したとしても必ず和解に応じてもらえるとは限りません。
また、応じてもらえたとしても、債務者自身での交渉では不利な条件で和解させられてしまうことも考えられます。
過去の判例について適切な知識をもち、和解に応じない場合には訴訟手続きも可能である専門家が交渉することで、あなたに有利な条件の和解を勝ち取ることにつながるのです。
過払い金請求は弁護士と司法書士どちらに依頼するべきか
過払い金請求は弁護士と司法書士のどちらにも依頼できますが、結論としては弁護士への依頼をおすすめします。
というのも、弁護士の場合は、貸金業者との和解交渉のみならず、過払い金返還請求訴訟も提起でき、業者1件当たりの借入額がどれだけ高額な案件でも取り扱うことができるからです。
一方、司法書士は代理人として扱える金額が司法書士法によって限定されており、業者1件あたりの借入額が140万円以下の案件しか扱うことができません。
さらに、すべての司法書士が和解交渉の代理をおこなえるわけではなく、一定の条件を満たした「認定司法書士」に限り、訴訟や裁判外の和解をおこなうことができます。
また、司法書士は簡易裁判所の訴訟代理人にしかなれないため、上訴することになれば控訴審や上告審では、弁護士に依頼するほかありません。
もし司法書士に過払い金請求を依頼する場合は、上記のような点に注意してください。
弁護士か司法書士に依頼する場合の比較
弁護士と司法書士に依頼できる内容について表で比較すると、次のようになります。
|
業務内容 |
弁護士 |
司法書士 |
過払い金が140万円超える案件 |
相談・書類作成 |
〇 |
× |
交渉・訴訟 |
〇 |
× |
過払い金が140万円以下の案件 |
相談・書類作成 |
〇 |
〇 |
交渉・訴訟 |
〇 |
△(※) |
※認定司法書士に限られる
現在、過払い金請求を弁護士と司法書士のどちらに依頼するか検討中の方は、下記3つの基準で判断してみてください。
もし、3つのうちのどれか1つでも該当するなら、弁護士への相談をおすすめします。
- 1つの貸金業者につき、借金額が140万円を超えている
- 請求先の経営が傾いている
- 満額回収を希望する(裁判をする)
費用面には注意
過払い金請求を弁護士に依頼したいと思っていても、着手金や報酬金といった費用に不安のある方は少なくないでしょう。
過払い金請求の弁護士費用はそれほど高額ではありませんが、事務所によって異なるため、無料相談や電話などを利用して、まずは一度相談してみることをおすすめします。
なお、過払い金の請求のみの依頼であれば、着手金0円で受けている事務所が多数ありますので、そのような事務所に依頼すれば、かかる費用は報酬と実費等のみとなります。
さらに、同費用は回収した過払い金から支払うことになりますので、負担にはならないでしょう。
過払い金請求を依頼する弁護士を選ぶ6つのポイント
過払い金請求を依頼する弁護士を決めるためのポイントは、大きく6つあります。
1.解決実績が多いこと
「過払い金請求が得意な弁護士」とはすなわち、過払い金問題に関する案件を受任した経験が豊富であり、かつ多くの解決実績があるということです。
弁護士は「法律のプロ」ではあるものの、扱う分野は相続や離婚、債務整理、交通事故、労働問題、刑事事件、企業法務など多岐にわたるため、必ずしもあらゆる法律に精通しているとは限りません。
弁護士にも得意分野・不得意分野があるのです。
そのため、相続問題や離婚問題に精通している弁護士であっても、過払い金問題についてはあまり扱った経験がないといったケースもよくあります。
経験が少ない弁護士に依頼すれば、満足できる結果にならない可能性は十分にあります。
まずは過払い金請求について数多くの解決実績があり、専門分野としている弁護士・弁護士事務所を探すことから始めましょう。
2.担当の弁護士が直接面談してくれること
過払い金問題の解決を依頼し、その報酬として代金を支払う以上、当然、信頼できる弁護士に任せたいものです。
特に、過払い金などの借金に関する問題はかなりデリケートな案件であるため、担当弁護士が守秘義務を遵守してくれる人であることや、相談しやすい雰囲気であるかも、弁護士選びにおいて重要なポイントとなるでしょう。
事務所によっては、弁護士本人が直接面談するのではなく、事務員が相談の対応に当たることがあります。
これでは依頼者と弁護士との間に信頼関係が構築されていない状態で手続きが進められることになり、今後その弁護士が依頼者の意向に沿った対応をしてくれることは期待できません。
そのため、弁護士選びの際は、担当の弁護士が直接会ってしっかり面談してくれるかどうかを1つの判断要素にしましょう。
3.無料法律相談を活用して相性のいい弁護士を選ぶ
過払い金などの借金問題に関しては、多くの法律事務所で無料相談を実施しています。
弁護士との面談では、自分の借金の状況やどのような解決方法が望ましいかなどを相談することになりますが、その際、担当弁護士と相性が合うかも確認しましょう。
というのも、弁護士に依頼すると、ある程度継続的な関係を持つことになるからです。
弁護士との相性が合わずギクシャクした関係だと、自分の意見を伝えにくく、手続きもスムーズに進みません。
人間的に相性がよいと感じた弁護士に依頼するようにしましょう。
4.弁護士費用を明確にしていること
弁護士に依頼する上で最も気になることの一つは、依頼した際の弁護士費用ではないでしょうか。
費用の内訳は、「着手金」、「報酬」、「実費」が主なものです。
それぞれがどのような費用で、事案の成果次第で料金がどのように変わるかを、委任契約前に説明してくれる事務所がほとんどです。
しかし中には料金体系を示さず、委任事務が終わった後で高額な料金を請求してくるという悪徳事務所もあります。
弁護士に依頼する際には、弁護士費用を明示してくれるかどうかを一つの判断要素にするとよいでしょう。
5.提案内容などをわかりやすく説明してくれる
法律の専門家にとっては当たり前のことでも、一般の人にとっては馴染みのない法律用語や制度などはたくさんあります。
このような専門的な内容を法律に馴染みがない人にわかりやすく説明するためには、相応の技量が必要であり、依頼者の目線に立って考える能力が求められます。
過払い金の問題を相談した際に、提案内容などを依頼者にわかりやすく説明してくれる弁護士であれば、依頼者の目線に立った最善の解決策を提案してくれるものと推測できます。
難しい言葉を並べて一方的な提案をおこなってくる弁護士であれば、依頼者との信頼関係も築きにくいといえるでしょう。
よって、弁護士を選ぶ際は、提案内容などをわかりやすく説明してくれるかどうかも、判断材料にしましょう。
6.和解か裁判どちらがいいかの判断もしてもらえること
過払い金の請求は、交渉による和解か訴訟のいずれかの方法でおこなうことになります。
交渉による和解を選択する場合、当事者双方にとって納得のいく解決が比較的短期間で得られるというメリットがあります。
一方返還金額は、訴訟した場合に比べて少なくなる傾向にあります。
訴訟を選択する場合、返還金額の増額は期待できますが、その分、解決までの時間がかかります。
どちらの方法で請求するかは事案や依頼者の意向により変わってきますが、弁護士に相談した際、複数の選択肢を提案し、それぞれのメリット・デメリットを示してくれるかどうかは、弁護士選びの1つのポイントと言えます。
過払い金請求についてのよくある質問
最後に、過払い金請求を希望される方からよく寄せられる質問について回答しますので、参考にしてください。
過払い金請求ができる借り入れ期間は?
まずは、ご自身の取引が過払い金請求の対象であるかどうか確かめる必要があります。
取引履歴を見るなどして、いつ借り入れをしたか調べてみてください。
借金を返済中でも過払い金請求ができる?
結論から言えば、借金を返済中であっても過払い金請求は可能です。
ただし、返還された過払い金で現在の借金を完済できない場合は、任意整理をする必要があります。
何度もお伝えしていますが、任意整理をすると、クレジットカードの作成・利用やローン契約を基本的に完済するまでできなくなります。
しかし、現在借金を抱えているならば、借金の返済を優先したほうがよいでしょう。
弁護士費用が過払い金より上回ることはないの?
過払い金の金額によっては、弁護士費用の方が上回ってしまうこともあり得ます。
これは一般的に「費用倒れ」といわれている状態です。
費用倒れは、弁護士に依頼して得られる経済的な利益よりも弁護士費用が高いため、金銭的な側面だけを見れば、弁護士に依頼するメリットがありません。
弁護士費用が心配な方は、弁護士に相談した際に、費用倒れにならないかを確認しておきましょう。
なお、過払い金の請求だけの場合には、着手金0円で受けている法律事務所も多数ありますので、そのような事務所であれば費用倒れの心配をする必要はないでしょう。
過払い金は住宅ローンでも発生しますか?
過払い金は住宅ローンでは発生しません。
過払い金が発生する取引はキャッシングに限定されます。
住宅ローンはキャッシング取引ではありませんので、過払い金は発生しません。
また、住宅ローンは一般的に金利が低く、利息制限法の上限金利よりも高い金利を設定していることはありません。
過払い金が発生するのは、15%以上の金利があるときです。
住宅ローンの金利は0.4%~1%程度ですから、過払い金は発生しないと言えるでしょう。
その他、自動車ローンや教育ローンなども金利が15%以上でないローンですから、過払い金が発生することはありません。
銀行のカードローンでも過払い金は発生する?
銀行のカードローンでは過払い金は発生しません。
銀行のカードローンについては、貸金業法や貸金業法ではなく銀行法の適用を受けています。
銀行法にグレーゾーン金利はなく、2010年以前から適切な金利内での貸付しかおこなっていないため、過払い金は発生しません。
エステのローンでも過払い金は発生する?
エステのローンでは過払い金は発生しません。
エステのローンの金利は高いことが通常で、このことから過払い金の対象になるのかもと考える人がいるかもしれませんが、エステローンは「貸付金」ではなく「立替金」に該当します。
つまり、エステのローン契約は割賦で料金を支払っていることになりますので、利息制限法や貸金業法の適用は受けず、当然、グレーゾーン金利が発生することもありません。
まとめ
過払い金が請求できるのは、「2010年6月17日以前に借り入れを開始した」か「借金を完済してから10年以内」のどちらかです。
過払い金の請求には時効がありますので、請求できる可能性がある人は、できるだけ早くに専門家に相談しましょう。
なお、過払い金請求を依頼できる専門家は弁護士と司法書士ですが、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士であれば、貸付業者一件あたりの借金額が140万円を超える場合でも、交渉や訴訟に対応できるからです。
とはいえ、身近に過払い金請求を依頼できる弁護士がいないというケースも少なくないでしょう。
そういったときには、債務整理ナビを利用してください。
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借金がある方で以下の条件に該当している人は、過払い金を請求できる可能性があります。
・2010年6月17日以前に借り入れを開始している
・借金を完済もしくは最終取引から10年以内
※例えば、2012年4月1日に借金を完済したのであれば、時効が成立するのは2022年4月1日です。
もし過払い金に当てはまりそうな借入の経験があるのであれば、過払い金問題に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。
過払い金には期限があり、一刻一刻と迫っています!
この記事の調査・編集者
みーさん
2017年にライターとしてアシロに入社し、主に交通事故とIT分野の執筆に携わる。2019年によりIT媒体の専任ディレクターになり、コンテンツの執筆・管理などを行っている。