国選弁護人とは?利用できる条件とメリット・デメリットを解説

国選弁護人とは?利用できる条件とメリット・デメリットを解説

犯罪の容疑をかけられている人にとって、味方として法的なサポートを尽してくれる唯一の存在が「弁護士」です。

しかし、弁護士に弁護活動を依頼すると、決して安くはない弁護士費用が発生するので、依頼をためらってしまう方も多いでしょう。

なかには、依頼したいとは考えているものの、経済的な事情から「どうやっても高額な費用を負担できない」といった方も少なくありません。

このような方でも弁護士に法的サポートを求めることができるために用意されているのが「国選弁護人制度」です。

この記事では、国選弁護人とはどのような制度なのか、利用条件やサポートできる内容、気になる費用や制度を活用するメリット・デメリットを解説します。

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この記事を監修した弁護士
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当社在籍弁護士(株式会社アシロ)
弁護士登録後、地方で一般民事・家事、刑事事件を中心に様々な案件を手掛ける。次第に司法アクセスの改善に課題を感じ、2020年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

国選弁護人制度とは

まずは「国選弁護人制度」の概要を確認していきましょう。

国選弁護人制度は国が費用を負担して弁護人を選任する制度

国選弁護人制度は、経済的な貧困などを理由にみずから弁護人を選任できない刑事事件の被疑者・被告人に対して、国が弁護人を選任する制度です。

国選弁護人が選任できる最初のタイミングは勾留後です。

勾留請求後に行われる勾留質問(裁判官による被疑者に対する質問)の際、私選弁護人が選任されていないと、「国選弁護人制度を利用するかどうか」について確認されます。

国選弁護人選任請求の要件を満たし、制度の利用を希望すれば、所定の手続きを経て国選弁護人が選任されます。

つまり、国選弁護人は好きなタイミングで選任できるというわけではないので注意が必要です。

「被疑者」段階と「被告人」段階の2種類がある

国選弁護人には大きく分けて2つの種類があります。

被疑者とは、捜査機関から犯罪の疑いをかけられている人のうち、起訴される前の加害者のことです。

一方の被告人とは、検察によって起訴された人を言います。

つまり、これらの違いは起訴前か、起訴後かと整理できます。

前述の通り、国選弁護人は勾留の段階で選任が可能で、これを「被疑者国選弁護人」といいます。

一方、起訴後に選任された国選弁護人を「被告人国選弁護人」と呼びます。

2006年9月以前は被告人段階の国選弁護人制度しか存在しませんでしたが、その後は段階的に被疑者にも拡充され、2018年1月からは被疑者が勾留されている全事件が対象になりました。

国選弁護人制度の利用状況

日本弁護士連合会が公表している2020年の「弁護士白書」によると、2019年中に全国の地方裁判所で扱われた事件のうち、60.5%が被疑者段階から国選弁護人が選任されていました。

地方裁判所における刑事弁護人選任状況

引用元:2020年版弁護士白書|日本弁護士連合会

一方で、被疑者・被告人がみずから費用を負担して選任する「私選弁護人」が占める割合は10.8%にとどまっています。

国選弁護人制度が拡充されたことで、より多くの被疑者・被告人が弁護士によるサポートを受けられるようになったといえるでしょう。

国選弁護人制度を利用できる条件

国選弁護人制度は、広く誰もが弁護人による法的サポートを受けられるように整えられた制度です。

ただし、制度を利用するには一定の条件を満たす必要があります。

資力要件を満たしていること

国選弁護人制度を利用できるのは、原則的には、貧困などの理由でみずから弁護人を選任できない被疑者・被告人です。

具体的には、資力が50万円以上ある場合は、ただちには国選弁護人の選任を求めることはできません。

ここでいう「資力」には預貯金などの流動資産が含まれます。

不動産などのように売却すればお金にはなるが現金化に時間がかかってしまうような資産は資力に含みません。

ただし、資力要件を満たさない場合であっても、弁護士会に対して弁護人選任の申出をし、弁護士会から紹介された弁護士が私選の依頼を拒否した場合には、国選弁護人の選任を求めることができます。

また、弁護人を就けなければならない必要的弁護事件について、私選弁護人が就いていない場合には、資力要件に関係なく国選弁護人が付されることになります。

勾留状が発せられていること

刑事事件を起こして逮捕されると、警察・検察官の取り調べを経たうえで、検察官による勾留請求がおこなわれます。

裁判官がこれを認めると「勾留状」が発付され、被疑者の身柄は原則10日間、延長によってさらに10日間、合計20日間にわたって拘束されます。

国選弁護人制度のもうひとつの利用条件が「勾留状が発せられていること」です。

つまり、逮捕を経て勾留が決定した段階に至っていれば、本制度の対象となります。

なお、2018年6月以前は「死刑、無期もしくは長期3年を超える懲役・禁錮にあたる事件」に限られていましたが、現在は被疑者が勾留されている全事件に対象が拡大されています。

国選弁護人がサポートできる内容

国選弁護人を選任した場合、どのような弁護活動が期待できるのでしょうか?

基本的には私選弁護人と同じ

国選弁護人が行う弁護活動は、私選弁護人と同じです。

国選弁護人・私選弁護人の違いで弁護活動に差が生じることはありません。

勾留の回避は依頼できない

国選弁護人は、被疑者として勾留状が発せられたあとのタイミングで選任されることになります。

つまり、逮捕直後のサポートは期待できないため、逮捕直後から迅速にアクションを起こして勾留を回避するといった弁護活動は想定されません。

とくに注意すべきなのが、逮捕直後の取り調べのアドバイスを受けられないという点です。

取り調べという普段とは違う状況がプレッシャーになり、被疑者が事実とは違う内容を発言してしまう可能性も考えられます。

取り調べでの対応によって、勾留されるかどうかを含め、被疑者の今後が大きく変わる可能性があります。

特に、勾留の回避は、最長で20日間という長い身柄拘束を避けて社会生活への影響を最小限に抑えるという意味できわめて重要です。

この点、私選弁護人であれば、依頼すれば逮捕直後から弁護活動を行ってもらうことが可能です。

国選弁護人は費用が発生しない?

国選弁護人制度は国が弁護士費用を負担してくれる制度ですが、本当に被疑者・被告人が費用を負担せずに済むのでしょうか?

基本的には国が負担するので無料

国選弁護人の費用は国が負担し、基本的には無料です。

しかし、場合によっては、例外的に裁判所から費用の負担を命じられる場合もあります。

なお、一般的に懲役・禁固などの場合、国選弁護人費用を負担することはあまりありません。

一方、執行猶予つきの判決の場合には、支払いを命じられることがあります。

国選弁護人制度を利用するメリット

国選弁護人制度を利用すると、次のようなメリットが得られます。

弁護士費用の負担を気にする必要がない

国選弁護人の弁護士費用は、原則としてすべて国が負担します。

刑事事件の弁護活動を私選弁護人に依頼した場合の弁護士費用は、60~100万円が相場です。

これだけの費用を簡単に支払える方は多くないでしょう。

弁護士費用の負担を気にすることなく弁護士の法的サポートが得られるのは、国選弁護人制度の最大のメリットです。

弁護士を探す必要がない

国選弁護人は、国が弁護人を選任します。

被疑者・被告人がみずから弁護士を探して選任する必要がないので、弁護士に心当たりがなくても選任が可能です。

国選弁護人制度を利用するデメリット

国選弁護人制度は被疑者・被告人の権利を守るうえで非常に有意義な制度ですが、一定のデメリットも存在します。

弁護士を選べない

国選弁護人の選任はすべて国に委ねることになるため、被疑者・被告人は弁護士を選べないというデメリットがあります。

たとえば「心当たりの弁護士はいるが、費用の負担は難しいのでその弁護士を国選弁護人として選任したい」といった希望は通りません。

なお弁護士にはそれぞれ特に力を入れている分野があります。

国選弁護人に選ばれた弁護士が、すべて刑事事件に力を入れていて解決実績も豊富というわけではありません。

弁護士は、研修を受けただけで国選弁護人名簿に登録できることも少なくありません(各弁護士会によって運用は異なります)。

そのため、刑事事件についてあまり経験がない弁護士が国選弁護人になる可能性もあるのです。

刑事事件はほとんど経験がない、弁護士としての経験が少ないといった弁護士が選任される可能性があることも覚悟しなければならないと心得ておきましょう。

逮捕直後の弁護活動ができない

また、逮捕直後の弁護活動ができないことも、デメリットと言えるでしょう。

国選弁護人選任のタイミングが遅いため、逮捕直後の段階における弁護活動が得られません。

熱心ではない弁護士が選任されることもある

国選弁護人に選任される弁護士のなかには、残念ながら熱心な弁護活動を尽してくれない弁護士もわずかながら存在します。

もちろん、大部分の弁護士は被疑者・被告人の利益のために誠実に尽してくれますが、被疑者・被告人が弁護士を選べないため、必ずしも熱心な弁護士が選任されるとは限らないという点もデメリットのひとつでしょう。

自由に解任・変更できない

国選弁護人は、ひとたび選任されれば被疑者・被告人の意思で自由に解任・変更できません。

たとえば「熱心な弁護活動を尽してくれない」「意見や要望を聞き入れてくれない」といった理由で解任・変更を希望しても、裁判所が許可する可能性はきわめて低いでしょう。

国選弁護人の選任に適しているケース

ここで挙げる状況に合致している方は、国選弁護人の選任に適しているといえるでしょう。

弁護士費用を負担できない

国選弁護人制度は、経済的な貧困が理由で弁護士を選任できない被疑者・被告人を援助するための制度です。

収入が少ない、預貯金などの蓄えがないなど、決して安くない弁護士費用の負担が難しい方は、ためらうことなく国選弁護人の選任を求めるべきだといえます。

特定の弁護士に依頼したいという要望がない

特に依頼したい弁護士がいない場合も、国選弁護人の選任を求めて良いでしょう。

国選弁護人は、国が弁護人を選任してくれるので、自分で弁護士を探す手間は省くことができます。

私選弁護人を検討した方がよいケース

ここで挙げるような希望がある方は私選弁護人の選任を検討しましょう。

逮捕直後の段階からサポートを得たい

逮捕・勾留による身柄拘束を早期に解除してすばやく社会復帰したいと望んでいるなら、勾留後でないと選任できない国選弁護人に頼るべきではないでしょう。

早期釈放を期待するなら、逮捕直後の段階から、検察官へのはたらきかけによる勾留の回避、勾留直後の準抗告や勾留理由開示請求などの勾留阻止といった弁護活動が必須です。

逮捕直後のタイミングでこれらのアクションを起こせるのは私選弁護人だけなので、国選弁護人の選任を待っていてはせっかくのチャンスを逃してしまいます。

早期釈放のためには、スピードが命です。

逮捕されてしまったら、できるだけ早く私選弁護人を選任しましょう。

特に依頼したい弁護士がいる

この弁護士に依頼したい、という希望があれば、私選弁護人として依頼するほかありません。

前述の通り、国選弁護人は、国が弁護人を選任するため、被疑者・被告人が弁護士を選べません。

そのため、自分に合わない弁護士が選任される可能性も十分にあり得ます。

弁護士を自分で選びたいという方は、私選弁護人を検討しましょう。

国選弁護人を解任する方法

ひとたび国選弁護人が選任されれば、被疑者・被告人の自由による解任は認められません。

ただし、刑事訴訟法には国選弁護人を解任できる条件が明記されています。

第三十八条の三 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人を解任することができる。
一 第三十条の規定により弁護人が選任されたことその他の事由により弁護人を付する必要がなくなつたとき。
二 被告人と弁護人との利益が相反する状況にあり弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
三 心身の故障その他の事由により、弁護人が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となつたとき。
四 弁護人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。
五 弁護人に対する暴行、脅迫その他の被告人の責めに帰すべき事由により弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。

引用元:刑事訴訟法|e-Gov

条文に明記されている5つの条件のうち、2~5の理由に合致するケースはごくまれです。

もっとも、1に掲げられている「弁護人の選任」があれば、国選弁護人の解任が認められます。

つまり、私選弁護人を選任すれば、国選弁護人の必要はなくなり、国選弁護人は解任されます。

もし国選弁護人の弁護活動では期待した結果が得られないと感じたら、ただちに刑事事件の解決実績が豊富な弁護士を私選弁護人に選任しましょう。

まとめ

国選弁護人は、資力がない被疑者・被告人でも弁護士費用を負担することなく法的サポートが得られる制度です。

ただし、選任できるタイミングが遅いため、逮捕直後の弁護活動は得られません。

また、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が選任されるとは限らない、熱心ではない弁護士が選任されてしまうリスクもあります。

身柄拘束からの早期釈放や不起訴・執行猶予つき判決といった有利な処分を期待するなら弁護人のサポートは欠かせません。

早期にサポートを得たい場合には、国選弁護人の選任を待つことなく、ただちに刑事事件の解決実績が豊富な弁護士を選任しましょう。

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この記事の調査・編集者
みーさん
2017年にライターとしてアシロに入社し、主に交通事故とIT分野の執筆に携わる。2019年によりIT媒体の専任ディレクターになり、コンテンツの執筆・管理などを行っている。