肖像権侵害にあたる基準とは?慰謝料相場や過去の判例、対処法を解説

肖像権侵害にあたる基準とは?慰謝料相場や過去の判例、対処法を解説

自分のプライベートを無断で撮影されたり、SNSや雑誌などで自分の写真や動画を許可なく公開されたりするのは、誰にとっても不快なものです。

自分の顔や容姿を勝手に撮影・公開された場合は、肖像権の侵害に該当する可能性があります。

肖像権を侵害された場合は、加害者に対して慰謝料請求や、写真や動画の削除請求・差し止め請求などができます。

本記事では、肖像権を侵害された可能性がある人に向けて、肖像権侵害にあたる基準やケース別の慰謝料相場や対処法などを解説します。

【注目】自分の写真を無断で使われた…とお悩みの方へ

SNSの利用が当たり前となっている中、自分の顔などを許可なく公開されてしまい、これって肖像権侵害にあたる?慰謝料を請求できるの?と悩んでいませんか

結論からいうと、肖像権侵害について悩んでいるなら弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。

  • 自分のケースが肖像権侵害にあたるか確認してもらえる
  • 慰謝料を請求できるかや、慰謝料額の相場を教えてもらえる
  • 依頼すれば、削除依頼や慰謝料請求を一任できる

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当社在籍弁護士(株式会社アシロ)
弁護士登録後、地方で一般民事・家事、刑事事件を中心に様々な案件を手掛ける。次第に司法アクセスの改善に課題を感じ、2020年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートをおこなう。

肖像権とは?構成要素と法律上の解釈

肖像権とは、自分の顔や容姿をみだりに撮影・公表されない権利です。

肖像権は法律で明文化されていませんが、憲法第13条「幸福追求権」を根拠に認められるものと解釈されています。

裁判では、肖像権について以下のように言及されています。

二 何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有し、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し許されない。

裁判年月日昭和44年12月24
裁判所名最高裁判所大法廷
裁判種別判決
事件番号昭和40(あ)1187
事件名公務執行妨害、傷害

 

引用元:裁判例結果詳細 | 裁判所

人は,みだりに自己の容姿を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し,また,自己の容姿をみだりに公表されない人格的利益も有している。

引用元:東京地判 令和2年10月13日(Westlaw Japan 文献番号 2020WLJPCA10138005)

肖像権は、「プライバシー権」と「パブリシティ権」という2つの権利から構成されています。

ここでは、肖像権の構成要素・著作権との違い・肖像権侵害の罰則などについて解説します。

プライバシー権とは|他者から個人の情報を守る権利

プライバシー権とは、私生活上の事柄や姿などをみだりに公開されず、自己に関する情報を自らコントロールする権利です。

プライバシー権によって守られる情報としては、名前・住所・電話番号・出身地・職業・病歴・交際歴など、自己に関するあらゆるものが含まれます。

パブリシティ権とは|経済的価値がある人の肖像を利用する権利

パブリシティ権とは、有名人や著名人などの経済的価値がある人の名前や肖像を独占的に利用するための権利です。

ライセンス契約を結んでいない人や企業が、勝手に有名人の名前や写真を使って商品や広告を出すと、パブリシティ権の侵害になる可能性があります。

著作権と肖像権の違い

著作権とは、文章・音楽・絵画などの著作物を作成した著作者の人格的価値と財産的価値を保護するための権利です。

肖像権が「勝手に写真や動画を撮影・使用・公開されない権利」であるのに対し、著作権は「著作物を無断で使用させない権利」です。

たとえば、ある人の写真を撮影した場合、撮影者には写真についての著作権が発生し、被写体には肖像権が発生することになります。

肖像権侵害は罪になる?

肖像権侵害は犯罪行為ではないため、加害者が逮捕されたり、刑事罰を科されたりすることはありません。

しかし、民事上の責任は発生するため、肖像権侵害の被害者は、加害者に対して公開された写真や動画の差し止め請求や損害賠償請求ができます。

なお、肖像権侵害に伴い名誉毀損や侮辱などがあった場合は、刑事事件になる可能性があります。

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用元:民法第709条

肖像権侵害の判断基準と具体例

肖像権は法律で明文化されていないため、権利侵害に関する明確な判断基準はありません。

しかし、最高裁判所では「被撮影者の社会的地位、撮影された活動内容、撮影場所、撮影目的、撮影態様、撮影の必要性などを総合的に考慮し、人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えているかを判断して決めるべき」としています(最高裁判所第一小法廷平成17年11月10日)。

ここでは、肖像権侵害の判断基準や具体例などを解説します。

①画像や動画から個人を特定できる

撮影された画像や動画から個人を特定できる場合は、肖像権侵害として認められる可能性があります。

一方、写り込みが小さい場合やピントがぼけている場合など、個人の特定が難しい場合は肖像権侵害として認められない可能性があります。

肖像権侵害の可能性が高いケース肖像権侵害の可能性が低いケース
・個人の顔にピントが合っており、はっきりと認識できる

・写真の中で、自分や家族などがメインで撮影されている

・小さく写り込んでいたり、ぼけていたりして個人が特定できない

・メインの被写体とは別に、偶然写り込んでしまった

・個人が大きく写っているが、モザイクなどの加工がされている

②撮影場所が自宅内などの私的領域である

撮影場所が、自宅・ホテルの個室・病室・葬儀場などの私的領域の場合は、肖像権侵害として認められる可能性があります。

一方、道路・公園・イベント会場などの他人が入り込む場所の場合は、肖像権侵害として認められない可能性があるでしょう。

肖像権侵害の可能性が高いケース肖像権侵害の可能性が低いケース
・自宅・ホテルの個室・病室・葬儀場などで撮影されている・道路や公園などの公共の場で撮影されている

・カメラ撮影が予定されている会場や施設などで撮影されている

ただし、公共の場でも、女性のスカートの中を盗撮した場合などは、肖像権侵害とともに迷惑防止条例違反にもなりえます。

③本人の許可なく公開された

肖像権は、撮影された写真や動画を公表されないための権利であるため、撮影された本人の許可なく公開された場合は肖像権侵害になる可能性があります。

一方、事前に本人から許可を得ている場合は肖像権侵害になりません。

なお、撮影について本人の許可を得ていても、公開する際は別途本人から許可を得る必要があります。

肖像権侵害の可能性が高いケース肖像権侵害の可能性が低いケース
・撮影された本人が撮影を許可したが、公開については許可していない

・撮影された本人の許可なく、自撮り写真を公開された

・撮影された本人が事前に公開を許可している

・黙示的に撮影などを承諾したと解釈できる状況である(スポーツ大会など)

④公開先がSNSなどの拡散性の高い媒体である

肖像権侵害になるかどうかの判断では、公開先の拡散性の高さなども影響します。

不特定多数が閲覧できるSNSやインターネット掲示板などに掲載されている場合は、拡散性が高いと判断されて肖像権侵害として認められる可能性があります。

一方、写真や画像を家族や友達などに見せる程度の場合は、肖像権侵害として認められない可能性があります。

肖像権侵害の可能性が高いケース肖像権侵害の可能性が低いケース
・TwitterやInstagramなどのSNSに無断で投稿されている

・インターネット掲示板に無断で投稿されている

・スマートフォン上の写真や動画などを見せ合う

・家族や友達などの少人数にだけ見せている

【ケース別】肖像権侵害の慰謝料相場

肖像権を侵害された被害者は、加害者に対して慰謝料などの損害賠償を請求できる可能性があります。

ここでは、プライバシー権を侵害された場合とパブリシティ権を侵害された場合の慰謝料相場を解説します。

プライバシー権を侵害された場合

個別的な事情によっても異なりますが、肖像権侵害に伴いプライバシー権を侵害された場合の慰謝料相場は10万~50万円程度です。

パブリシティ権を侵害された場合

パブリシティ権を侵害された場合、慰謝料を請求できるケースもありますが、基本的には財産的損害のみを請求します。

パブリシティ権の侵害による財産的損害額は、被害状況や評価方法などによって大きく異なりますが、中には数百万円以上になるケースもあります。

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肖像権侵害の裁判例

ここでは、肖像権侵害に関する裁判例を解説します。

Twitterで破廉恥な写真を無断公開されたケース

プライベートで撮影された緊縛状態の写真を無断で複製され、被害者の許可なくTwitterに投稿されたという事件です。

被害者は「著作権・肖像権・プライバシー権を侵害している」と主張し、裁判所はプライバシー権などの侵害であるとして合計47万1,500円の損害が認められました。

【参考記事】東京地判 平成30年9月27日(Westlaw Japan 文献番号 2018WLJPCA09279002)

漫画で自分と外見が酷似するキャラクターを無断掲載されたケース

漫画雑誌で、被害者の外見と酷似するキャラクターが暴力的な発言とともに無許可で掲載されたという事件です。

本件は写真ではなくイラストでしたが、裁判所は肖像権侵害であるとして合計55万円の損害が認められました。

【参考記事】東京地判 平成22年7月28日(Westlaw Japan 文献番号 2010WLJPCA07288003)

Twitterで娘の写真を無断転載されたケース

Twitterで、虚偽の内容とともに自分の娘の写真を無断転載され、Twitter社から開示されたIPアドレスをもとにプロバイダに投稿者の情報開示を求めたという事件です。

新潟地裁は「肖像権が侵害されていることは明らか」としたうえで、プロバイダに対して投稿者の情報開示をするように命じました。

【参考記事】新潟地判 平成28年9月30日(Westlaw Japan 文献番号 2016WLJPCA09306008)

肖像権侵害の被害に遭った場合の対処法

掲載媒体や被害内容などによっても異なりますが、肖像権を侵害された場合の対処法は以下のとおりです。

ここでは、各対処法の具体的な内容や、慰謝料請求の流れなどを解説します。

肖像権侵害に対する対処法メリットデメリット
投稿者に削除依頼を出す写真や動画を早く削除できる可能性がある投稿者が削除に応じない可能性がある
運営会社に削除依頼を出す専用フォームから手軽に申請できる

写真や動画を早く削除できる可能性がある

削除申請が認められない可能性がある
裁判所を通じて削除請求や慰謝料請求などをする慰謝料を受け取れる可能性がある

請求が認められれば確実に写真や動画を削除できる

削除や慰謝料請求までに時間がかかる

ひとりでおこなう場合は負担が大きい

媒体の運営会社に任意の削除依頼を出す

Twitter・Instagram・FacebookなどのSNSやインターネット掲示板などに掲載された写真や動画を削除したい場合は、運営会社に削除依頼を出すのが有効です。

各会社の専用フォームなどを使って、肖像権侵害に関する削除依頼を出しましょう。

【主なWebサービスの削除フォーム】

弁護士に慰謝料請求を依頼する際の流れ

肖像権侵害の被害に遭っている場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、投稿者や運営会社への任意の削除依頼だけでなく、裁判所を通じた慰謝料請求や削除請求などの手続きも一任できます。

以下では、弁護士に依頼して肖像権侵害の慰謝料請求をするまでの流れを解説します。

【関連記事】ネットに強い弁護士の特徴や探し方|相談前の準備も解説

①肖像権侵害に該当するか確認する

弁護士に相談する前に、まずは「肖像権侵害の判断基準と具体例」を参考に、本当に肖像権を侵害されているかどうかを確認しましょう。

また、加害者に対して慰謝料請求を考えている場合は、写真や動画が掲載されているページをスクリーンショットで保存するなどして、肖像権が侵害されている証拠を残しておきましょう。

②弁護士に相談して今後の対応を決定する

肖像権を侵害されている可能性がある場合は、弁護士に相談しましょう。

弁護士に相談すれば、肖像権侵害の判断・適切な慰謝料の金額・今後取るべき対応などのアドバイスが望めます。

弁護士に相談した結果、肖像権侵害として投稿削除や慰謝料獲得が望める場合は、事件解決を依頼します。

③写真や動画を削除するための手続きをする

インターネット上に公開された写真や動画を削除するために、弁護士から投稿者や運営会社に対して削除依頼を出してもらいます。

もし削除依頼が拒否された場合は、裁判所に対して写真や動画を削除するための手続きをおこないます。

④プロバイダなどに情報開示請求をおこなう(投稿者がわからない場合)

写真や動画の投稿者がわからない場合は、弁護士から運営会社やプロバイダに対して情報開示請求をしてもらいます。

これによって、投稿者を特定して慰謝料を請求できるようになります。

⑤加害者に対して慰謝料を請求する

被害状況をもとに慰謝料を算定したのち、弁護士から加害者に対して慰謝料を請求してもらいます。

慰謝料の請求方法としては示談交渉・調停・裁判などがあり、一般的には示談交渉から始めて、示談交渉が成立しなかった場合は調停や裁判に移行します。

裁判中には和解が成立する可能性もありますが、最後まで和解できない場合は裁判所から判決が言い渡されます。

警察への相談はケースバイケース

肖像権侵害は犯罪行為ではないため、基本的に警察は捜査してくれません。

しかし、肖像権侵害だけでなく、名誉毀損・侮辱・脅迫・ストーカー・盗撮などの犯罪行為が関わっている場合は、警察が動いてくれる可能性があります。

犯罪行為が疑われる場合は警察に相談し、肖像権侵害だけであれば弁護士に相談しましょう。

最後に|肖像権侵害の慰謝料請求は弁護士に相談を

肖像権とは、無断で写真や動画を撮られたり、許可なく公開されたりしない権利です。

肖像権を侵害された場合は、これ以上被害が大きくなる前に削除依頼を出して、加害者への慰謝料請求なども検討しましょう。

弁護士であれば、問題解決のためのアドバイスだけでなく、削除依頼・裁判所を通じた削除請求・慰謝料請求などの手続きを一任することもできます。

初回相談無料の事務所も多くあるので、まずは一度相談してみることをおすすめします。

【注目】自分の写真を無断で使われた…とお悩みの方へ

SNSの利用が当たり前となっている中、自分の顔などを許可なく公開されてしまい、これって肖像権侵害にあたる?慰謝料を請求できるの?と悩んでいませんか

結論からいうと、肖像権侵害について悩んでいるなら弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。

  • 自分のケースが肖像権侵害にあたるか確認してもらえる
  • 慰謝料を請求できるかや、慰謝料額の相場を教えてもらえる
  • 依頼すれば、削除依頼や慰謝料請求を一任できる

当サイトでは、IT・ネット上のトラブル問題を得意とする弁護士を地域別に検索することができます。
無料相談はもちろん、電話で相談が可能な弁護士も多数掲載していますので、まずはお気軽にご相談ください。

私的情報・画像流出について弁護士に相談する

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北陸・甲信越山梨新潟長野富山石川福井
東海愛知岐阜静岡三重
関西大阪兵庫京都滋賀奈良和歌山
中国・四国鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知
九州・沖縄福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄

参考:他人の車の写真を勝手に撮っても大丈夫?法律ではどのようになっているの?|CarMe

この記事の調査・編集者
みーさん
2017年にライターとしてアシロに入社し、主に交通事故とIT分野の執筆に携わる。2019年によりIT媒体の専任ディレクターになり、コンテンツの執筆・管理などを行っている。
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