名誉毀損で相手を訴えるための条件 | 誹謗中傷や悪口による訴訟の要件とは

名誉毀損で相手を訴えるための条件 | 誹謗中傷や悪口による訴訟の要件とは

SNSやインターネットの発展により、誰でも自由に世界に向けて発信できるようになりました。しかし、誰でも自由に発信できる副作用として、誰しもが誹謗中傷や名誉毀損などの被害に遭う可能性があります。

「名誉毀損」とは、端的に言えば「他人に対して社会的評価を害するおそれのある状態を生じさせる」行為です。自尊心等の名誉感情を害するだけでは名誉毀損の対象とは言えません。ただし、一言で名誉毀損と言っても、刑事上の名誉毀損罪と民事上の名誉毀損は少し違います。また、その責任追及のために必要な手続きも異なります。

ネット上で言われもない内容を発信されてしまい、名誉毀損などの被害に遭っている人はたくさんいます。ここでは、名誉毀損の被害に遭っている方へ向けて、刑事・民事の法律的な側面から、名誉毀損に対する対処法を解説します。

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この記事を監修した弁護士
南 陽輔 弁護士
一歩法律事務所
大阪大学法学部卒業。法律事務所に12年勤務した後、2021年3月独立開業。いわゆる「町弁」として、労働トラブルや、離婚トラブル等の一般民事事件全般、刑事事件トラブルなどを主に取り扱っている

名誉毀損罪で訴えるための3つの条件

まず、名誉毀損された人が考えるのが名誉毀損罪等による刑事上の責任追及でしょう。

名誉毀損罪については刑法230条1項において、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。同条の構成要件として重要なのは、「公然」、「事実を摘示」、「人の名誉を毀損」の3点です。

1.公然

公然とは、不特定又は多数の者が認識しうる状態のことを指すと定義されています。簡単に言えば噂として広がっていくような状態になることで、「公然」にあたるということになります。過去の裁判例では、8人が出席した消防組役員会で列席者に秘密を保つ義務があることから同役員会での事実摘示行為は公然に行われたと言えないとして否定されています。

他方、人の名誉を毀損する文書を特定の人に郵送した場合、その内容において秘密にすることを要求したり、他に発表したりすることを厳禁したのでない限りは、その文書が転々して多数人が知るに至るおそれがあるから、同文書の送付は公然性が肯定されるとした判例があります。

こうした裁判例を踏まえると、情報が広がっていく可能性がある状態で事実摘示が行われたときは「公然」にあたると言えます。インターネット上での書き込みは、不特定多数の人が閲覧できることになりますので、「公然」にあたります。

2.事実を摘示

「事実の摘示」とは、人の社会的評価を害するに足りる事実を摘示することであるとされています。摘示の方法・手段には制限がないものと解釈されていますので、公衆の面前での発言や書簡の送付、SNS等のインターネット上での投稿も含まれます。

問題は、人の社会的評価を害するに足りる事実かどうかという点ですが、特定人の名誉が害される程度に具体的であることが必要とされています。過去の裁判例では、「巨額の借金をした」ということだけでは直ちに社会上の地位を侵害するものではないとして、名誉毀損罪が成立しないとされたものがあります。他方で、前科などの過去の犯罪歴を摘示することは社会的評価を害するものとして事実の摘示に当たるとされています。

3.人の名誉を毀損

「人の名誉を毀損した」とは、社会的評価を害するおそれのある状態を生じさせたということを指し、現実に社会的評価が低下していなくても認められるとされています。たとえば、新聞紙に名誉毀損記事を掲載した場合には、新聞紙が配布(販売)されたことを以って名誉を毀損したことになり、その記事によって現実的な被害が出たことまでは必要ないということです。

つまり、インターネット上においても、特定の人の名誉を侵害する内容を発信すれば、その時点で人の名誉を棄損したことになり、その発信内容によって現実的な被害が出たかどうかは名誉毀損罪の成立には影響しないことになります。

名誉毀損罪と認められないケース

上記の「公然と」、「事実を摘示し」、「人の名誉を棄損した」という各要件を満たす場合には原則として名誉毀損罪が成立することになります。これらの要件で最も問題となるのが「事実を摘示」という要件です。具体的な事実の摘示が必要になりますので、例えば「あいつは馬鹿だ」等の侮辱的表現のみでは名誉毀損罪は認められません。

また、名誉毀損罪が成立するのは、その相手が誰であるか、被害者が具体的に分かるかどうかも一つのポイントとなります。例えば、「Aには前科がある」など、「A」が誰を指すか分からない状態で事実の摘示が行われた場合には、被害者が特定できず名誉毀損罪は成立しません。ただ、その文書等を全体としてみた時に「A」が誰を指すか、読んだ人が容易に分かるような場合には名誉毀損罪が成立する可能性があります。

名誉毀損で訴えを起こすなら弁護士へ相談を

名誉毀損は、大別すると刑事上の名誉毀損罪と、民事上の名誉毀損(不法行為)の二つに分けられます。刑事上の責任とは、名誉毀損を行った人に対して、懲役や罰金などの刑事罰を科すことです。名誉毀損罪で訴えるためには、警察・検察に対して告訴の手続きを取る必要があります。

また、民事事件としての責任を問う方法は、慰謝料などの損害賠償の請求と、記事の削除や謝罪文の掲載を内容とする名誉回復処分を求めるということが挙げられます。これらは、名誉毀損行為を行った者と直接交渉するか、裁判所に訴訟を起こすなどの法的手続きを取る必要があります。刑事、民事のいずれの手続きを取るべきか、そのためにはどうすれば良いかなどは、法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。

名誉毀損で訴える場合の費用や進め方

名誉毀損で訴える場合、まずは何を目標にするかという点を明確にする必要があります。とにかく刑事罰で処罰を科してほしいというのであれば、被害者が警察、検察への告訴手続を取る必要があります。損害賠償や謝罪などを求めたいというのであれば、相手方と交渉し、交渉で解決できないときには裁判所に民事訴訟を提起するか、刑事告訴するかなどを検討することになります。

こうした示談交渉・訴訟提起・告訴などの法的手続について、弁護士は専門家としての知見を有しています。弁護士に相談すれば、どの方法で行くのが最善かアドバイスしてくれるでしょう。

弁護士費用については、各法律事務所で自由に決められますので、具体的な費用は依頼する弁護士によって異なりますが、おおよその目安として、刑事告訴を依頼した場合は着手金30万円前後、示談交渉を依頼した場合は着手金10万円、民事訴訟を依頼した場合の着手金は20~30万円でしょう。後は解決結果により報酬が必要となります。

弁護士に依頼する際には、弁護士費用がどれくらいになるかも予め尋ね、契約書を作成してもらうようにしましょう。

「名誉毀損罪」とは

名誉毀損罪は刑法230条に定められている犯罪類型です。名誉毀損罪と犯行態様が似た犯罪類型として、侮辱罪、信用毀棄罪、偽計業務妨害罪などが挙げられます。

名誉毀損罪と「侮辱罪」の違い

侮辱罪(刑法231条)は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した」場合に成立します。事実の摘示があるかどうかが、名誉毀損罪との大きな違いです。例えば、「バカ」等の侮辱的表現を用いるは、事実を摘示するものではありませんので、名誉毀損罪には該当しませんが、他人の人格を蔑視する価値判断を表示する行為にあたり、侮辱罪に当たる可能性があります。

名誉毀損罪と「信用棄損罪」の違い

信用毀棄罪(刑法233条前段)は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて人の信用を棄損」することにより成立します。真実でない事実を不特定又は多数の者に伝播させ、人の経済面での社会的信頼を低下させるおそれのある状態を作出することで成立します。

名誉毀損罪との大きな違いとしては、信用毀棄罪では、「真実でない事実」の摘示が必要とされる点です。名誉毀損罪は、摘示した事実が真実であったとしても成立しますが、信用毀棄罪は摘示した事実が真実ではないことが必要となります。摘示した事実が真実でなかった場合には名誉毀損罪と信用毀棄罪との両方に該当することになります。

名誉毀損罪と「偽計業務妨害罪」との違い

偽計業務妨害罪(233条後段)は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、その業務を妨害」することにより成立します。名誉毀損罪との違いとしては、信用毀棄罪と同様に偽計業務妨害罪は、摘示した事実が真実でないことが必要であることが挙げられます。

また、名誉毀損罪は人の社会的評価を低下させるおそれのある行為を指しますが、偽計業務妨害罪では、業務という人が反復的・継続的に行う事務を妨げる行為であることが該当するという点でも異なります。

名誉毀損罪と認められないケースはある?

名誉毀損罪が認められないケースは以下の通りです。

成立要件を一つでも満たさない場合

名誉毀損罪(刑法230条)は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を棄損した」ときに成立すると定められています。上で触れましたように、「公然」、「事実を摘示」「人の名誉を棄損した」という各要件を一つでも満たさない場合には、名誉毀損罪は成立しません。

公共の利害に関する事実であり、かつ、目的の公益性も真実性の証明もあった場合

名誉毀損罪(刑法230条)の成立要件を満たしても、名誉毀損罪で罰せられないケースがあります。それは、刑法230条の2に該当する場合です。同条1項では、「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない」としています。

ここで、「公共の利害に関する事実」とは、事実の摘示が公共の利益増進に役立つという意味で、典型例としては、国会議員等の公職にある人の汚職問題などが挙げられるでしょう。公職にない私人に関する事項であっても、その私人の社会に及ぼす影響力の程度などによっては公共の利益増進に役立つものとされる場合があります。

また、目的の公益性は、事実摘示の動機が公共の利益を増進させることにある場合に認められます。単なる私怨を動機として行う場合は目的の公益性がありません。ただ、目的の公益性は「専ら」であり、私怨の動機を兼ねていても公共利益増進の目的がある場合には目的の公共性が認められることになります。

摘示した事実の真実性については、真実であることが証明できなくても、真実と信じるに足りるだけの相当な資料・根拠を以って行った場合には罰せられないとされています。

名誉毀損で訴えを起こした事例

近年の有名な事例

名誉毀損の裁判の近年の有名事例としては、お笑い芸人が過去に大学に裏口入学していたと週刊誌で報じられたことに対して、そのお笑い芸人が出版社を相手に損害賠償請求した事例が挙げられます。この裁判では、裁判所は週刊誌による名誉毀損を認め、440万円の損害賠償を命じました。

参考:太田光、“裏口入学”訴訟の勝訴が確定 新潮側は上告せず440万円支払い「裏口ネタは今後も続ける」(中日スポーツ) – Yahoo!ニュース

職場で起きた事例

ある社員Aが職場の同僚Bに関して、「Bは過去に窃盗罪で逮捕された」等の内容を記載したメールを社員全員に故意に送信・転送し、これに対してBがAに対して損害賠償を求めた事案で、裁判所は、Aの行為はBの名誉を棄損するものであり、また、単に私利を図る目的でなされたもので目的の公益性は認められないとして、Aに対して50万円の慰謝料の支払いを命じる判決を出しました。

ネット上で起きた事例

テレビなどメディア媒体にも多数出演し有名人となっていた弁護士が、ブログ上で誹謗中傷コメントを多数受けたことに対して、発信者情報開示請求の手続きを取る等して当該コメントの発信者を特定して、刑事告訴しました。この事案では、裁判所は名誉毀損罪が成立すると認定し、誹謗中傷を行った者に対して罰金10万円の刑事罰を科しました。

名誉毀損に関しては弁護士に相談するべき理由

ネット上での誹謗中傷、職場での名誉毀損など、名誉毀損の被害を受ける場面は多数あります。こうした被害に遭ったときは弁護士に相談しましょう。弁護士に相談するメリットは以下の通りです。

民事上の損害賠償請求手続きを進めてくれるから

悪質な誹謗中傷・名誉毀損であれば、警察が動いてくれますが、警察は民事不介入の原則のもと基本的には動いてもらえません。刑事上の責任追及が難しい場合でも、損害賠償、慰謝料請求や謝罪要求等の民事上の責任追及は別の問題であり、刑事上の責任が問えなくても、民事上の責任は問える可能性があります。

弁護士に依頼すれば、損害賠償請求や、名誉毀損する内容の記事や投稿の削除、謝罪文の掲載等の名誉回復処分に向けて動いてもらえます。相手方と直接示談交渉したり、裁判所に訴訟提起したりするなど、弁護士に依頼すれば、民事上の責任追及にむけて法的手続きを進めてもらえます。ネット上での誹謗中傷では、誹謗中傷を行った発信者を特定する発信者情報開示請求手続が必要になりますが、弁護士に依頼すれば、こうした手続きも進めてもらえます。

場合によっては示談で解決する選択肢を提示してくれるから

名誉毀損に関して、裁判所が認定する賠償額は一般的言うと低い傾向にあります。弁護士に相談すれば、民事裁判になった場合に裁判所が認定するであろう賠償額の見込みを示してもらえます。また、弁護士は、賠償額の見込みも踏まえたうえで、相手方と示談交渉します。事案によっては、相手方も裁判になるのは避けたいと考えて、高額の慰謝料を提示してくるケースもあります。

弁護士に相談すれば、相手方との交渉内容を踏まえ、示談で解決するほうが良いという選択肢を示してもらえます。

刑事事件になった場合にサポートしてもらえるから

名誉毀損罪で警察に被害相談することができますが、警察はなかなか捜査してくれません。また、名誉毀損罪は親告罪であり、被害届では足りず、告訴手続を取ることが必要です。弁護士に相談すれば、名誉毀損罪での告訴について、告訴状を作成したり、証拠を制したり、告訴状の受理に向けて警察・検察と協議してくれたりなど、刑事事件についてもサポートしてくれます。

名誉毀損で訴える場合のQ&A

最後に、名誉毀損で訴訟を起こす際によく寄せられる質問へ回答していきます。

悪口を言った相手を訴えることはできる?

悪口の程度によりますが、一般的には悪口などの侮辱的表現のみでは名誉毀損罪で訴えることは難しいです。内容が悪質であったり継続的に何度も言われ続けたりして、精神的損害を負ったと言える場合には、名誉毀損とまでは言えない場合でも損害賠償請求、慰謝料請求等の民事上の責任追及はできる可能性があります。ただし、裁判所が認める慰謝料金額の相場は数万円~数十万円程度と、決して高くはありません。

悪口を言いふらした相手を訴えることはできる?

悪口の内容にもよりますが言いふらすということは、社会的評価を下げる行為にあたりますので、状況によっては名誉毀損に当たる可能性はあります。単に「あいつはバカだ」というだけでは難しいかもしれませんが、「あいつは不倫している」とか、「あいつには前科がある」などの事実摘示がある場合には名誉毀損罪で告訴、損害賠償請求できる可能性があります。

名誉毀損の証拠はどう残すと良い?

ネットやメールで名誉毀損の内容を送信するケースでは電子記録として残りますので、その記録を保存するようにしましょう。名誉毀損の内容を吹聴するなど、口頭で行っている場合には、それを聞いていた人に、いつ、どこで、どのような内容を言っていたかを正確に聞き取り書面に書き起こし、可能であれば、その聞いていた人に署名捺印してもらうようにしましょう。

過去の名誉毀損を訴えることはできる?

名誉毀損罪(刑法230条)は、親告罪であり、告訴手続が必要です(同法232条)。告訴手続は、犯人を知った日から6カ月以内に行わなければなりません(刑事訴訟法235条)。また、犯人が分からなくても、名誉毀損罪は犯罪行為のときから3年で公訴時効が完成してしまいます(同法250条6号)。

名誉毀損に対する損害賠償責任や名誉回復処分の請求については、損害の発生と加害者を知ったときから3年以内に請求しないと消滅時効にかかります(民法724条1項)。また、加害者が分からないときでも行為の時から20年経過すると同様に消滅します(同条2項)。過去の名誉毀損で訴える場合には、刑事・民事の上記期間に注意が必要です。

名誉毀損について弁護士費用はどのくらい?

弁護士費用については、各法律事務所で自由に決められますので、具体的な費用は依頼する弁護士によって異なります。おおよその目安としては、刑事告訴を依頼した場合は着手金30万円、示談交渉を依頼した場合は着手金10万円、民事訴訟を依頼した場合の着手金は20~30万円です。後は解決結果により報酬が必要となります。

ネット上の匿名での書き込みによる誹謗中傷などで発信者情報開示請求を行う場合には別途の費用がかかります。弁護士に依頼する際には、弁護士費用がどれくらいになるかも予め尋ね、契約書を作成してもらうようにしましょう。

まとめ

名誉毀損されたことへの対応策としては大きく分けると以下の2点となります。

ネット上での誹謗中傷などで相手方が分からない場合には、まず相手方を特定するための発信者情報開示請求を行う必要があります。名誉毀損の被害に遭った場合の対応策については、法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。トラブル解決に向けて適切なアドバイスをしてもらえるでしょう。

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この記事の調査・編集者
梶原美香
法律系SEOライターとして入社。何よりも読者第一であることを掲げ、読みやすく、理解しやすいコンテンツ制作を心がけている。離婚問題に注力している。