発信者情報開示請求とは?手続きの流れ・費用・期間を解説

発信者情報開示請求とは?手続きの流れ・費用・期間を解説

ツイッターやブログなど、SNSの種類は多岐にわたります。SNSを利用して個人が自由に発信できるようになった反面、見知らぬ人から誹謗中傷を受けたり、危害を加える旨を告げられたりなど、不快な思いや恐怖感情を抱かされることも増えてしまいました。

悪質な誹謗中傷・名誉毀損などに対して、慰謝料等の損害賠償等を請求するためには、そうした誹謗中傷の投稿を行った人物(発信者)を特定する必要があります。誹謗中傷した投稿者(発信者)の特定のために必要となるのが「発信者情報開示」という手続きです。ここでは、発信者情報開示とはどのような手続きで、どのように行っていくのかについて、弁護士の視点で解説します。

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この記事を監修した弁護士
南 陽輔 弁護士
一歩法律事務所
大阪大学法学部卒業。法律事務所に12年勤務した後、2021年3月独立開業。いわゆる「町弁」として、労働トラブルや、離婚トラブル等の一般民事事件全般、刑事事件トラブルなどを主に取り扱っている

「発信者情報開示請求」とは

発信者情報開示請求とは、インターネット上で個人の名誉を侵害するなどの権利侵害を内容とする発信が行われた場合に、インターネット事業者などのプロバイダに対して、その発信者を特定するために発信者情報の開示を求める裁判所での手続きを指します。いわゆるプロバイダ責任制限法(正式名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」です)によって、発信者情報開示請求の手続きが認められています。

2021年12月時点における現行プロバイダ責任制限法のもとでは、まずサイト管理者に対して発信者のIPアドレスの開示を求め、次に開示されたIPアドレスをもとにプロバイダ事業者に対して発信者情報の開示を求めるという二段階の裁判上の手続きが必要となってしまいます。しかし、手続きをより簡易かつ迅速に行えるようにすべく、2021年4月に国会で改正プロバイダ責任制限法が成立しました。改正法は2022年9月までに施行される予定ですが、同改正プロバイダ責任制限法では、この二段階の手続きを一つの裁判手続きで対応できるようになります。

参考:LIBRA

発信者情報開示請求するための7つの要件

発信者情報開示請求を裁判所で認めてもらうためには、以下の7つの要件を満たす必要があります。この要件は、現行プロバイダ責任制限法4条(改正法では5条)に定められています。

特定電気通信による情報の流通

「特定電気通信」は、プロバイダ責任制限法上の法律用語です。同法では、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」と定義されています。これを端的に示せば、ウェブサイトなどのインターネット上での送信を指します。インターネット上のウェブサイトへの書き込み(投稿)は、ネット上において情報を流通させる(送信する)行為にあたりますので、ネット上での誹謗中傷は「特定電気通信による情報の流通」という要件を満たすことになります。

自己の権利を侵害されたとする者

「自己の権利を侵害された者」とは、端的には被害者を指します。ネット上で誹謗中傷されたことにより名誉を侵害・毀損された人、恐怖感情を与えられた人などの直接の被害者を指します。発信者情報開示は、被害を受けた人のみが手続きを行えます。ネット上での誹謗中傷・名誉毀損を見かけただけの人は発信者情報開示の手続きを取ることができません。

権利侵害が明らかであること

ネット上での誹謗中傷などにより権利が侵害されたこと(違法性)が明らかであることが必要です。例えば、「○○を殺す」等の殺害予告により生命・身体の安全が脅かされたことや、「○○には前科がある」との情報が送信・投稿されたことにより名誉・プライバシーが侵害されたというように、権利侵害が明白であることが必要です。「バカ」などの単なる侮辱的表現では権利侵害が認められない可能性もあります。

正当な理由が存在すること

情報発信者に対して、損害賠償請求する目的や削除・謝罪を求める目的があることなど、情報開示を求めることについて正当な理由が必要です。興味本位で知りたいだけとか、報復目的など目的が違法である等の場合には発信者情報開示は認められません。

開示関係役務提供者に対して行われること

発信者情報開示請求の相手方は、誹謗中傷などの当該送信行為が行われたウェブサイトの管理者、同サイトへの送信を管理するプロバイダ等の開示関係役務提供者です。

例えば、発信者がある通信会社のスマホを使用して特定のウェブサイトにアクセスし、同サイトで誹謗中傷する書き込み(投稿)を行った場合、同サイトの運営者と通信会社が開示関係役務提供者に当たります。現行法では、まず同サイト運営者に対して発信者情報開示を行い、IPアドレスなどの開示を受けた発信者情報をもとに、通信会社に対して同IPアドレス所持者の情報開示を求めるという二段階の手続きを別個の裁判手続きで行う必要があります。

発信者情報に該当すること

開示を求めることができるのは、「発信者情報」に該当する部分だけです。「発信者情報」とは、プロバイダ責任制限法では、「氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令でさだめるもの」と定義されています。総務省令では、発信者の電話番号、メールアドレス、IPアドレス等が発信者情報に該当すると定められています。

参考:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第四条第一項の発信者情報を定める省令 | e-Gov法令検索

開示関係役務提供者が保有していること

サイト運営者や通信会社等のプロバイダ事業者が発信者情報を保有していることが必要です。ただし、プロバイダ事業者が発信者情報の管理を第三者に委託している場合であっても、事実上はプロバイダ事業者が発信者情報を保有しているものと考えられ、プロバイダ事業者(開示関係役務提供者)への発信者情報開示請求が認められる可能性があります。

発信者情報開示請求の手続きの流れ

発信者情報開示請求は、裁判所を通して行われますが、概ね以下の流れで進めていくことになります。

1.誹謗中傷の証拠を保管する

まず、誹謗中傷された証拠を残しておく必要があります。ツイッターのストーリーズなど、一定の時間が経過したら自動的に消去されてしまうものもありますので、誹謗中傷などの権利侵害が行われた場合には、その画面をスクリーンショットするなどして、まずは誹謗中傷されたことを証明するための証拠を残し、保管するようにしましょう。

2.サイト運営元にIPアドレスやタイムスタンプの開示請求を行う

誹謗中傷された証拠をもとに、裁判所に対して発信者情報開示を行います。一般的には、発信者は特定の通信会社を介してインターネット上のサイト等にアクセスし、同サイトで誹謗中傷を行うという事例が多いです。こうした場合、まずは誹謗中傷が行われたサイトを管理するサイト運営元に対して発信者情報開示を行います。

サイト運営元が保有している情報は、同誹謗中傷を行った者のIPアドレスとタイムスタンプ(改ざんされたおそれがないことを電子上で証明するもの)を保有していますので、これらの開示を求めることになります。

3.IPアドレスから発信者のプロバイダを特定する

上記2で裁判所から発信者情報開示の命令が出され、サイト運営元から発信者のIPアドレス等の開示を受けます。開示されたIPアドレスをもとに発信者がどの通信会社など(プロバイダ)を利用しているかを特定します。

4.プロバイダに情報開示請求とアクセスログの保存を申請する

IPアドレスをもとにプロバイダを特定したら、次はそのプロバイダ事業者に対して、同IPアドレスの保有者(発信者)の情報の開示を求めます。併せて、同IPアドレス保有者(発信者)がサイトにアクセスした記録(アクセスログ)の保存も申請する必要があります。アクセスログは一定期間(概ね3か月程度と言われています)経過すると消去されてしまうからです。

5.プロバイダから発信者の個人情報を開示してもらう

プロバイダ事業者から、IPアドレスをもとにIPアドレス保有者(発信者)の氏名、住所、メールアドレスなど、プロバイダ事業者が保有する発信者の個人情報の開示を受けます。

こうした一連の流れを経て、ようやく発信者がどこの誰であるかの特定ができることになります。

発信者情報開示請求にかかる費用と所要期間

発信者情報開示請求は、現行のプロバイダ責任制限法のもとでは、上記の通りに概ね二段階の裁判手続き(サイト運営元とプロバイダ事業者への各開示手続き)を経なければならないため、時間がかかります。発信者の氏名、住所などの発信者を特定できるだけの情報を取得できるに至るまで、個別の事案内容にもよりますが、概ね9~10カ月を要すると言われています。

また、これらの手続について、迅速に行うためには裁判所に仮処分の申し立てを行うことになりますが、裁判所から仮処分命令を出してもらうためには担保金を求められます。担保金の額は事案に応じて裁判所が決めますが、一般的には20万円程度と言われています。担保金は正当な請求であれば後で還付されるものですが、一時的とはいえ、数十万円のお金を用意しておく必要があります。

さらに、これらの手続きを弁護士に依頼した場合には弁護士への着手金・報酬が必要となります。弁護士費用については各法律事務所により異なりますが、一般的には少なくとも20万円~50万円程度の弁護士費用がかかります。

発信者情報開示請求を自分で行うのが難しい理由

発信者情報開示請求は、弁護士に依頼しなくとも本人でも手続を取ることができます。ただし、実態としては、自分で行うのは以下で紹介する理由によってとても難易度が高いです。

権利侵害の主張をすること自体が難しいから

発信者情報開示請求は、サイト運営元へのプロバイダ事業者に任意での開示を求めることもできます。ただ、その場合でも、プロバイダ事業者に対して、発信者の誹謗中傷によりどのような権利がどのように侵害されたか、違法であるかという点を、法律的に整理して主張し、開示を求める必要があります。どういう主張か分からない内容では、プロバイダ事業者も任意の開示には応じれくれないでしょう。

また、任意開示に応じれくれない場合には、裁判所での手続きすることが必要となります。その場合、まず、裁判所への申立ての段階から、仮処分命令申立書や訴状等の文書を作成しなければなりません。その内容として、任意開示と同様に発信者の誹謗中傷によりどのような権利がどのように侵害されたか、違法であるかという点を、法律的に整理して記載する必要があります。また、その理由を根拠づける証拠も整理して提出する必要があります。

裁判所に命令を出してもらうための手続きですから、法律的に正確な主張・立証を行わなければなりませんので、法律に関する専門的な知見が必要となります。この点で、本人が行うのは非常に難しいと言えます。

裁判が必要になるケースが多いから

発信者情報開示請求は、プロバイダ事業者への任意での開示を求めることもできます。しかし、事業者側からすると、発信者の個人情報に関わることですので、任意の開示に応じるケースはほとんどありません。プロバイダ事業者は、裁判所から命令があれば開示に応じるというスタンスを取る場合が多いです。

したがって、発信者情報開示請求は、仮処分等の裁判が必要となるケースが多いですが、裁判手続は法律の専門的知見が必要となるため、本人で行うのは難しいと言えます。

発信者情報開示請求を検討しているなら弁護士に相談しよう

ネット上で誹謗中傷の被害を受けて「慰謝料を請求したい」「削除や謝罪を求めたい」と考え、そのためにはまず発信者情報の開示を求めたい人は、まずは弁護士に相談しましょう。弁護士に相談することで以下のメリットが得られます。

裁判上の開示請求手続は複雑だから

発信者情報開示請求は、任意でも行えますが、任意開示に応じる事業者やケースは少なく、裁判所を通して手続きをする必要があるケースがほとんどです。裁判所を通じて手続きする場合、裁判所へ法的に整理された主張書面の提出、証拠の選別、裁判期日への出廷し、裁判官と協議する等、法律的な知見が必要となる場面が多々あります。

また、訴訟に先立ち仮処分を申し立てたり、タイムスタンプの取得やアクセスログの保存を求めたりなど、発信者情報開示請求に伴い併せて行うべきことも多数あり、手続きが複雑です。弁護士に依頼すれば、こうした複雑な手続きをすべて弁護士が代理人となって行ってくれます。

IT問題に注力する弁護士に依頼すればスピーディーな解決が望めるから

弁護士の業務は多岐にわたり、それぞれの分野を専門的に扱っている弁護士もいます。とりわけIT問題は、近年急速に発展・問題化してきている分野であり、ネット上の誹謗中傷などのIT問題を専門的に扱っている弁護士もいます。こうした弁護士に相談すれば、手続きに習熟していますので、スムーズ・スピーディに対応してくれるでしょう。

情報開示後の各種請求まで対応してくれるから

発信者情報開示請求は、誹謗中傷などの発信を誰が行ったか特定するための手段に過ぎません。発信者情報を取得できてようやく、当該発信者に対して、慰謝料請求や名誉回復処分を求めることができるようになります。弁護士に依頼すれば、相談者が最終的に望んでいることは何かを理解したうえで発信者情報開示を行い、発信者情報開示後の慰謝料請求等の手続きも対応してくれます。

SNSで誹謗中傷された場合の開示請求の流れと費用

SNS上で誹謗中傷などの被害に遭った場合には、まずは当該SNSの運営元に対して、運営元が定めるガイドラインに沿って削除請求を行うと同時に、任意での発信者情報の開示や侵害内容の削除などを求めましょう。ここでは、代表的な5つのSNSについて、その手続き方法をご紹介します。

Twitter

ツイッターでは、ヘルプセンターからお問い合わせ窓口を通じて削除請求と発信者情報開示を求めることになります。運営元が外国法人であるため、管轄は東京地裁となります。開示請求が認められるまで時間がかかり、また、手続きが複雑です。

任意での発信者情報開示や投稿の削除を弁護士に依頼した場合には、概ね弁護士費用として10万円前後かかります。以下、任意での削除、発信者情報開示を弁護士に依頼した場合の費用は同様です。

参考:法的請求提出 (twitter.com)

Instagram

インスタグラムでも同様に運営元への削除請求、発信者情報開示請求を行うことになります。現在、インスタグラムとフェイスブックの運営元は同じ会社(メタプラットフォームズ)であり、ツイッター同様に外国法人であるため、発信者情報開示は東京地裁で行う必要があります。

参考:Instagramヘルプセンター

Facebook

フェイスブックの運営会社(メタプラットフォームズ)に対して、投稿の削除や発信者情報開示を求めることができます。

参考:Facebookメッセージを報告するにはどうすればよいですか。 | Facebookヘルプセンター

YouTube

ユーチューブの運営会社はグーグルですので、グーグルに対して、投稿の削除、発信者情報開示を求めることになります。

参考:名誉毀損 – 米国 – YouTube ヘルプ (google.com)

5ch

5ちゃんねるは、ロキテクノロジー社が運営元ですので、同社に対して投稿の削除、発信者情報開示を求めることになります。

参考:削除要請@2ch掲示板 (5ch.net)

まとめ

SNS等を通じてネットを利用する中で、見知らぬ人から悪質な誹謗中傷を受けることがあります。そうした誹謗中傷を発信した者(発信者)に慰謝料請求等を行うには、まずはその発信者がどこの誰であるか、発信者情報開示請求を行う必要があります。発信者情報開示請求が裁判所で認められる主な要件は以下の通りです。

  • 権利侵害が明らかであること
  • 誹謗中傷などの被害を受けた本人が手続きを行うこと
  • 慰謝料請求などの正当な目的があること

発信者情報開示請求は、大きく分けると、発信者が書き込み(投稿)を行ったサイト運営者に対するIPアドレス等の開示請求と、同IPアドレスをもとに通信会社等のプロバイダ事業者への情報開示請求の2段階があります。2022年に施行される予定の改正プロバイダ責任制限法では、これら2段階の手続きを一つの裁判手続の中で行うことができるようになり、従来よりも簡易かつスピーディーに紛争解決できる可能性があります。

ただ、その手続きは複雑であり、法律的な知見が必要になります。発信者情報開示請求を検討されている方は、ぜひ弁護士に相談してみましょう。

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この記事の調査・編集者
梶原美香
法律系SEOライターとして入社。何よりも読者第一であることを掲げ、読みやすく、理解しやすいコンテンツ制作を心がけている。離婚問題に注力している。