虚偽申告の罪とその対策|刑事事件から民事訴訟まで知っておくべきこと

虚偽申告の罪とその対策|刑事事件から民事訴訟まで知っておくべきこと

警察官の前で白い粉末をわざと落とし、その様子をネット上に公開した動画配信者が、偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されました。

虚偽の申告には虚構申告罪や虚偽告訴罪、偽計業務妨害罪などさまざまな種類があります。

虚偽の申告をする相手や状況によって罪の重さが変わり、場合によっては逮捕・起訴され、実刑判決を受けるケースもあります。

被害者だけでなく、加害者にならないためにも、違法になる行為や、処罰の内容を理解しておくとよいでしょう。

本記事では、虚偽申告に関する犯罪の種類や量刑、どのような場合に成立するのかについてわかりやすく解説していきます。

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この記事を監修した弁護士
加藤孔明弁護士
加藤 孔明弁護士(神戸カトウ法律事務所)
当事務所はフットワークの軽さを強みとしております。ご相談いただければ、可能な限り迅速に対応させていただきます。ご家族やご自身が刑事事件に関与してしまったら、早期にご相談ください。

虚偽申告に関する罪名と具体例

ひとくちに虚偽申告といっても、さまざまな犯罪が存在します。

代表的な例を挙げると、虚構申告罪、虚偽申告罪、偽証罪、偽計業務妨害罪の4つがあります。

ここでは、虚偽申告に関連する罪名と具体例について、以下の表でまとめています。

罪名概要具体例量刑
虚構申告罪虚構の犯罪や災害の事実を公務員に申告すること消防に嘘の災害被害を通報する1日以上30日未満の身体拘束

又は1,000円以上1万円未満の金銭納付

虚偽告訴罪相手に刑事処分・懲役処分を受けさせる目的で、故意に捜査機関や懲戒処分権者に対し事実と異なる虚偽の告訴をおこなうこと相手を貶めるつもりで痴漢被害をでっちあげる3ヵ月以上10年以下の懲役
偽証罪民事訴訟や刑事訴訟で偽りのない証言を宣誓したにもかかわらず、虚偽の証言をおこなう裁判で意図的に記憶と異なる証言をする3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
偽計業務妨害罪虚偽の情報を流し、故意に他人の業務を妨害すること利用する意志がないのに飲食店を予約して無断でキャンセルする3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

それぞれどのような違いがあり、どういった際に成立するのかについては、以下で詳しく解説していきます。

虚構申告罪とは?

虚構申告罪とは、事実ではない犯罪や災害を公務員に申告した場合に成立する犯罪で、軽犯罪法で定められています。

たとえば、「2丁目のコンビニで人が刺された」「角のアパートで火災が起きている」といった虚偽の通報を行う事例が該当します。

法定刑は拘留または科料とされています。拘留とは1日以上30日未満の身体拘束のことをいい、科料とは1,000円以上1万円未満の金銭納付のことをいいます。

イメージとしては、拘留は短期の禁錮懲役、科料は低額の罰金です。

なお、未遂処罰規定がないため、未遂で終わった場合には処罰されません。

虚偽告訴罪とは?

虚偽告訴罪とは、人に刑事・懲戒処分を受けさせる目的で虚偽の申告をおこなうと成立する犯罪のことです(刑法第172条)。

虚偽の申告によって警察や検察の捜査、裁判所による適正な公務が脅かされることがないようにすることが目的です。

また、二次的には虚偽の告訴によって被害を受ける個人を守る役割もあります。

虚偽告訴罪で有罪となった場合は、3ヵ月以上10年以下の懲役刑が科されます。

虚偽告訴罪の具体的な例

具体的には、以下のような事例が虚偽告訴罪に該当します。

  • 示談金目当てで痴漢被害をでっちあげる
  • 周りに気にかけてほしく、ストーカー被害を捏造する
  • 交通事故において、損害賠償目当てで人身事故を装い噓の通報をする
  • 報復目的で隣人を通報する

虚偽告訴罪の成立条件

虚偽告訴罪が成立するための条件は、次の3つがあります。

成立条件①:人に刑事または懲戒の処分を受けさせることが目的であること

ここでいう人とは、個人と法人のどちらも含まれます。

虚偽申告罪では、貶めようとしている相手がいることが条件です。

この点が、虚構申告罪と異なる点といえます。

刑事の処分とは、罰金や懲役などいわゆる刑事罰のことを指します。

次に、懲戒の処分とは、人事的な制裁を指します。

一例として、「あの人を刑務所に入れてやる」「あの人を懲戒解雇させてやろう」といった意図がこれに該当します。

さらに、こういった目的は「もしかしすると、刑事罰や懲戒処分を受けるかもしれない」といった程度でも成立するため、注意が必要です。

さらに、実際に逮捕や懲戒処分されたことは関係なく、捜査当局や懲戒処分者のもとに申告が到達した時点で、虚偽告訴罪が成立します。

成立条件②:虚偽の告訴・告発・その他の申告であること

虚偽とは、客観的事実に反することを指します。

たとえば、虚偽申告のつもりでAを犯人に仕立てようとしても、Aが本当に犯人だった場合は客観的事実と反していないため、虚偽告訴罪は成立しません。

また、告訴・告発とは、警察や検察に犯罪を申告し、犯人の処罰を求めることを指します。

そして、その他の申告とは、告訴・告発以外の方法で刑事処分や懲戒処分を求めることです。

たとえば、虚偽の被害届を提出した場合、告訴・告発には該当しませんが、その他の申告には該当します。

成立条件③:故意であること

虚偽の申告に故意の有無も条件の1つです。

そのため、本当に犯人だと思い込み告訴した場合は、虚偽告訴罪は成立しません。

一方で、たとえば殺人事件で「もしかしたらAは犯人ではないかもしれないが、それでもいいから告訴しよう」と思っているようなケースがあったとします。

この場合、意図的にAを陥れているわけではありません。

Aが犯人ではない可能性を認識していながらも告訴した場合にも、虚偽告訴罪が成立する可能性があります。

これは「未必の故意」といって、犯罪は必ずしもはっきりとした意図がなくても成立するケースがあるため注意が必要です。

偽証罪とは?

偽証罪は、裁判など法律により宣誓した証人が虚偽の証言をすることです。

刑法第169条には、以下のとおり定められています。

第百六十九条 法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。

引用:刑法 | e-Gov 法令検索

それでは、具体例とともに、偽証罪の成立条件について詳しく見ていきましょう。

偽証罪の具体的な例

裁判において、実際には殺人現場でAを目撃していない証人が、意図的に「Aが殺人現場にいた」などと証言するケースなどが偽証罪に該当します。

つまり、宣誓の趣旨を理解し宣誓したにもかかわらず、記憶に反した証言をしたり、虚偽の申告をおこなったりした場合に適用されます。

偽証罪の成立条件

偽証罪が成り立つための条件は、次の2つです。

成立条件①:法律により宣誓した証人であること

偽証罪の対象となるのは、裁判における「証人」のみです。

また、法律による宣誓とは、裁判において証人尋問を始める前に、真実を述べることを宣言する行為を指します。

そのため、警察による取調べなどは、法律による宣誓をおこなっていないため、偽証罪の対象とはなりません。

成立条件②:虚偽の陳述をおこなうこと

ここでいう虚偽とは、自分の記憶とは反することを指します。

そのため、思い違いをしていて虚偽の陳述をしていた意識がないのであれば、偽証罪には問われません。

偽計業務妨害罪とは?

偽計業務妨害罪とは、刑法第233条で次のように定められています。

二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用元:刑法 | e-Gov 法令検索

刑法第233条では、偽計業務妨害罪と信用毀損罪の2つの犯罪について規定しており、偽計業務妨害罪に該当するのは「偽計を用いて人の業務を妨害した」という部分です。

虚偽によって誰かの業務を妨げたりする行為ことをいいます。

偽計業務妨害罪の具体的な例と、その成立条件を解説します。

偽計業務妨害罪の具体的な例

偽計業務妨害罪に該当するのは、以下のようなケースです。

  • 営業しているお店に「休業」と書かれた札をかける
  • 飲食店に対して偽の注文を大量にいれる
  • いたずら電話によって業務を妨害する

偽計業務妨害罪の成立条件

偽計業務妨害罪が成り立つための条件は、次の2つです。

成立条件①:虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いていること

虚偽の風説を流布するとは、真実に反する噂や情報を不特定多数の人に広めることを言います。

偽計を用いるとは、人を欺くことや人の誤解や不知を利用することを言います。

そのため、単純に嘘をついたりするだけでなく、相手が知らないことを利用するといった行為も含まれるのが偽計業務妨害罪です。

また、偽計には直接騙すことのみでなく、人が業務に用いる機械や商品などに不正な工作を加えることも含まれます。

たとえば、パチンコ台にいかさまを施し、不当に利益を得ようとするような行為も該当します。

成立条件②:業務を妨害していること

ここでいう業務とは、一般的にイメージされる仕事に限らず、職業や社会的地位に基づいて反復継続しておこなわれる行為も含みます。

そのため、NPOやサークル、町内会の運営といった非営利目的の活動まで幅広く含まれます。

また、妨害とは業務の執行を妨げるようなおそれのある状態が発生させる行為を指し、現実的に妨害されたことまでは要求されていないとされています。

そのため、たとえば、いたずら電話を繰り返しかけて相手が電話で応じなかった場合、実際には業務を妨げられていなくとも、偽計業務妨害罪が成立する場合があります。

虚偽の申告をしてしまった場合は弁護士に相談するのがおすすめ

日本における刑事裁判の有罪率は99%を超えます。

そのため、仮に虚偽の申告で起訴されてしまった場合は、ほぼ確実に有罪になるといっても過言ではありません。

罪を犯してしまった場合は、すみやかに弁護士に相談するのがおすすめです。

その理由は、次のとおりです。

被害者との示談が成立しやすくなる

まず大事なのは、裁判に発展させないことです。

そのためには、被害者と示談を済ませておくことが重要です。

示談自体は弁護士がいなくても可能ですが、当事者同士の話し合いだけではなかなか解決しません。

直接交渉することで、かえって相手を刺激してしまうことも考えられます。

そのため、法律の専門家である弁護士に依頼し、双方が納得できるような話し合いをすることが重要です。

自首に同行してもらえる

警察を相手に虚偽申告をしてしまった場合は、そもそも示談ができません。

そのため、平和的に解決するには警察に出頭する必要があります。

もし一人で自首する勇気がないのであれば、弁護士と一緒に出頭するのも手です。

弁護士の協力を得て、準備を整えてから出頭することで、逮捕を避けられる場合もあります。

また、自ら罪を申し出ることによって起訴された場合の量刑を下げられる可能性があります。

第一の目的は罪への償いであり、逮捕の確率や量刑を下げることだけが目的ではありませんが、場合によっては弁護士と一緒に自首することも有効といえます。

まとめ

虚偽の申告に関する犯罪は、罪が軽いものから非常に重たいものまでさまざまな種類があります。

最も重要なことは、意図して嘘をつかないことです。

噓をつかれた被害者だけなく、自分自身の将来まで大きく傾けてしまう可能性があります。

仮に、虚偽の申告をしてしまった場合は弁護士に依頼して、その後の対応を相談するのがよいでしょう。

まずは被害者や相手機関に真摯に謝罪し、いかにして罪を償っていくかを考えることが重要です。

弁護士であれば、できるだけ穏便に済むようサポートしてくれるだけなく、双方がより納得できる結果に近づけてくれるため、弁護士に相談することをおすすめします。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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