器物損壊罪でも逮捕されるのか? 統計データを基に解説

器物損壊罪でも逮捕されるのか? 統計データを基に解説

器物損壊罪は、他人の物を故意に破壊する行為や、使えない状態にする行為などに成立する犯罪です。

器物損壊は、傷害や窃盗などに比べると軽い犯罪に位置づけられます。

しかし、器物損壊罪でも法的に逮捕は可能であり、実際に逮捕された例も少なからずあります。

もし警察から器物損壊の疑いをかけられたら、早い段階で弁護士に相談しましょう。

今回は、器物損壊罪でも逮捕されることはあるのかどうかについて、統計データを引用しながら解説します。

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この記事を監修した弁護士
阿部 由羅
阿部 由羅弁護士(ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

器物損壊罪とは

「器物損壊罪」とは、他人の物を損壊し、または動物を傷害する行為に成立する犯罪です(刑法第261条)。

器物損壊罪の構成要件

器物損壊罪は、以下の構成要件をすべて満たす行為について成立します。

他人の物を

器物損壊罪の客体となるのは、以下のものを除く他人の所有物です。

  • 公務所の用に供する文書または電磁的記録(公用文書等毀棄罪が成立)
  • 権利または義務に関する他人の文書または電磁的記録(私用文書等毀棄罪が成立)
  • 他人の建造物または艦船(建造物等損壊罪が成立)

ただし自己の所有物であっても、以下のいずれかに該当する場合には器物損壊罪の客体となります(刑法第262条)。

  • 差押えを受けたもの
  • 物権(担保権など)を負担しているもの
  • 賃貸しているもの
  • 配偶者居住権が設定されたもの

損壊し、または傷害したこと

「損壊」とは、物の物理的な破壊に限らず、物の効用を害する一切の行為をいいます。

(例)

  • 花瓶を叩き割る
  • 食器に放尿する
  • 掛け軸に落書きする など

「傷害」は動物が客体である場合に用いられ、その意義は損壊と同様です。

動物を殺傷する行為のほか、動物を逃がす行為も「傷害」に当たると解されています。

なお、器物損壊罪は故意犯であるため、他人の物を損壊すること等に関する認識・認容が必要です。

過失によって他人の物を壊してしまったに過ぎない場合は、器物損壊罪は成立しません。

器物損壊は親告罪|起訴には被害者などの告訴が必要

器物損壊罪は「親告罪」とされています(刑法第264条)。

親告罪とは、告訴が検察官による公訴提起(起訴)の要件とされている犯罪です。

告訴は原則として、被害者またはその法定代理人が行うことができます(刑事訴訟法230条、231条1項)。

被害者が死亡した場合には、その配偶者・直系の親族・兄弟姉妹による告訴も可能となります(刑事訴訟法231条2項)。

親告罪について告訴できる者がいない場合には、利害関係人の申立てにより、検察官が告訴権者を指定することがあります(刑事訴訟法234条)。

器物損壊罪は親告罪であるため、上記の規定によって被害者などの告訴がなされなければ、検察官は被疑者を起訴できません。

器物損壊罪の法定刑

器物損壊罪の法定刑は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」です。

他人の物を領得する窃盗罪・詐欺罪・横領罪などに比べると、他人の物の効用を害するにとどまる器物損壊罪の法定刑は軽く設定されています。

器物損壊罪で逮捕されることはあるのか?

器物損壊罪で逮捕されることはあり得ますが、実際に逮捕されるケースは比較的少数となっています。

他の犯罪と同様に、逮捕は可能

刑事訴訟法の規定上、器物損壊罪については、おおむね他の犯罪と同様の要件によって逮捕が可能とされています。

刑事訴訟法によって認められている逮捕の種類は、以下の3つです。

通常逮捕(刑事訴訟法第199条

罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある被疑者を、裁判官のあらかじめ発行する逮捕状に基づいて、検察官・検察事務官・司法警察職員が逮捕します。

現行犯逮捕(刑事訴訟法第212条、213条

現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者を、逮捕状なくして逮捕します。

現行犯逮捕は、検察官・検察事務官・司法警察職員以外の人にも認められています。

緊急逮捕(刑事訴訟法第210条

死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮に当たる犯罪につき、罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し裁判官の逮捕状を事前に求めることができないときに行われます。

検察官・検察事務官・司法警察職員が緊急逮捕をする際には、被疑者に対してその理由を告げた上で、逮捕後直ちに裁判官の逮捕状を求める手続きをしなければなりません。

器物損壊罪については、通常逮捕と現行犯逮捕が認められるほか、法定刑の長期(=上限)が3年であるため緊急逮捕も認められる余地があります。

統計データに見る器物損壊罪の検挙率・逮捕率

器物損壊罪を理由とする逮捕は法的に可能であり、実際に逮捕されているケースもありますが、その数は比較的少数となっています。

器物損壊罪の検挙率・逮捕率について、犯罪白書や検察統計のデータを見てみましょう。

 認知件数に対する検挙率は14.9%

令和4年版犯罪白書によると、2021年における器物損壊罪の認知件数は5万6925件で、そのうち検挙されたのは8463件(14.9%)でした(検挙人員は4563人)。

出典:令和4年版犯罪白書 p4|法務省

※検挙件数:警察等が検挙した事件の数をいい、検察官に送致・送付した件数のほか、微罪処分にした件数等を含む

※検挙人員:警察等が検挙した事件の被疑者の数

器物損壊がなされたことが発覚しても、実際に刑事手続きへと発展するのは7件に1件程度と、比較的少数となっている状況です。

検挙事件数に占める逮捕率は37.8%

2021年の検察統計によると、同年中の検察庁における毀棄・隠匿の既済事件は7654件で、逮捕の有無等に関する分布は以下のとおりです。

検察庁逮捕3件(0.0%)
警察から身柄送致2513件(32.8%)
警察で身柄釈放378件(4.9%)
逮捕されないもの4760件(62.2%)
合計7654件

※毀棄・隠匿に含まれる犯罪

  • 公用文書毀棄罪
  • 私用文書毀棄罪
  • 建造物損壊罪
  • 建造物損壊致死傷罪
  • 器物損壊罪
  • 信書隠匿罪
  • 境界毀棄罪
  • 公電磁的記録毀棄罪
  • 私電磁的記録毀棄罪

出典:検察統計(2021年)罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員|e-Stat

検察庁が取り扱った毀棄・隠匿に関する事件のうち、逮捕がなされたものは37.8%です。

検察庁に来る事件は検挙件数の一部であることを踏まえると、器物損壊罪の認知件数に占める逮捕率は5%未満と推測されます。

器物損壊罪で逮捕される可能性が高いケースの例

統計データに鑑みると、器物損壊罪で逮捕されるケースは比較的少数と思われます。

しかし以下のようなケースでは、器物損壊罪によって逮捕される可能性が高まるので要注意です。

  • 連続的に複数の物を損壊した場合
  • 非常に価値の高い物を損壊した場合
  • 他に余罪があると疑われる場合(窃盗や住居侵入など)

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器物損壊罪で逮捕された場合の手続き

器物損壊罪で逮捕された場合、以下の流れで刑事手続きが進行します。

  1. 逮捕による身柄拘束|最長72時間
  2. 検察官による勾留請求
  3. 勾留による身柄拘束|最長20日間
  4. 検察官による起訴・不起訴の判断
  5. 起訴後の手続き|公判手続き・略式手続き
  6. 刑の確定・執行(または執行猶予)

逮捕による身柄拘束|最長72時間

逮捕による身柄拘束は、最長で72時間です(刑事訴訟法第205条2項)。

逮捕段階では、警察官や検察官による取調べが行われます。

被疑者には黙秘権があるため、答えたくない質問には答えなくて構いません。

ずっと黙っていることもできます。

検察官による勾留請求

逮捕期間の満了後も、罪証隠滅や逃亡を防ぐために引き続き身柄を拘束する必要があると判断した場合、検察官は裁判官に被疑者の勾留を請求します。

2021年に検察庁逮捕または検察官送致が行われた2516件の毀棄・隠匿に関する既済事件につき、勾留請求の有無の分布は以下のとおりです。

逮捕されたケースの中では、勾留が認められる例が多数となっています(77.1%)。

勾留請求がなされ、勾留許可1941件(77.1%)
勾留請求がなされたものの、勾留却下258件(10.3%)
勾留請求をせず、検察官が釈放296件(15.7%)
その他21件(0.8%)
合計2516件

出典:検察統計(2021年)罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員|e-Stat

勾留による身柄拘束|最長20日間

裁判官により勾留状が発せられた場合、勾留による身柄拘束は最長20日間です(刑事訴訟法第208条)。

勾留期間中は、逮捕期間に引き続いて警察官・検察官による取調べが行われます。

また、その間に捜査が進行し、被疑者を起訴するか否かの判断材料が集められます。

検察官による起訴・不起訴の判断

検察官は捜査の結果を踏まえて、被疑者を起訴するか否かを決定します。

被疑者に対する検察官の処分には、以下の3種類があります。

公判請求(正式起訴)

裁判所に対して公訴を提起し、正式な刑事裁判によって被疑者に刑罰を科すことを求めます。

略式命令請求(略式起訴)

簡易裁判所の略式命令により、簡略化された手続きによって被疑者に刑罰を科すことを求めます刑事訴訟法461条)。

100万円以下の罰金または科料を求刑する場合に限って認められており、かつ被疑者の同意が必要です。

不起訴

公訴を提起せず、被疑者に対する科刑を求めない処分です。

嫌疑なし・嫌疑不十分の場合のほか、嫌疑が確実でも社会における更生を促すべきと検察官が判断した場合は、不起訴処分がなされることがあります(起訴猶予)。

2021年の毀棄・隠匿に関する既済事件のうち勾留がなされた1941件につき、被疑者に対する処分状況の分布は以下のとおりです。

公判請求(正式起訴)386件(19.9%)
略式命令請求(略式起訴)220件(11.3%)
釈放1294件(66.7%)
その他41件(2.1%)
合計1941件

出典:検察統計(2021年)罪名別 既済となった事件の被疑者の勾留後の措置、勾留期間別及び勾留期間延長の許可、却下別人員|s-Stat

毀棄・隠匿の場合、起訴されずに釈放されるケースも多くなっています(66.7%)。

略式命令請求と合わせると、8割程度は公判請求がなされず、勾留期間の満了をもって被疑者が釈放されています。

起訴後の手続き

被疑者が起訴された場合は、正式起訴か略式起訴かによって、以下のとおり手続きが分かれます。

正式起訴の場合

起訴後勾留に切り替わり、引き続き身柄が拘束されます。ただし、保釈保証金を裁判所に預けることを条件に、保釈が認められることがあります(刑事訴訟法第89条、90条)。

起訴から約1か月後を目安に、裁判所において公判手続きが開催されます。検察官が犯罪事実を立証し、被告人は必要に応じて反論します。

審理が熟した段階で、裁判所が判決を言い渡します。判決に対しては控訴・上告が認められています。

略式起訴の場合

簡易裁判所において書面審査が行われた後、略式命令によって量刑などが告知されます。

略式命令に対して異議がある場合には、告知日から14日以内に限り正式裁判の請求が可能です(刑事訴訟法第465条1項)。

刑の確定・執行(または執行猶予)

判決または略式命令の確定をもって刑が確定し、執行されます。

ただし、3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金については、執行猶予が付されることがあります刑法第25条1項)。

器物損壊罪を疑われた場合は弁護士に相談すべき

器物損壊罪の疑いで取調べを求められた場合や、家族が器物損壊罪で逮捕された場合は、速やかに弁護士へ相談しましょう。

弁護士に相談すると、刑事手続きの流れや取調べに関する注意点などについてアドバイスを受けられます。

精神的な安定に繋がるとともに、取調べにおいて不本意な供述をするリスクを抑えることができます。

弁護士に対応を依頼すれば、器物損壊罪について重い刑事処分を避けられる可能性が高まります。

ご自身や家族が器物損壊罪を疑われたら、すぐに弁護士へご相談ください。

器物損壊罪の弁護を依頼する場合の弁護士費用

器物損壊罪の弁護を弁護士に依頼する際には、主に以下の費用がかかります。

  1. 相談料
  2. 着手金
  3. 報酬金
  4. 日当

「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)を参考に、各費用の目安額(いずれも税込)を紹介します。

実際の費用は弁護士によって異なるので、相談先の弁護士へ個別にご確認ください。

相談料の目安

相談料は、正式に依頼する前の法律相談について発生します。

30分当たり5,500円程度(税込)が多いですが、無料相談を受け付けている弁護士も多いです。

着手金の目安

着手金は、弁護士へ正式に依頼する際に支払います。原則として一括払いですが、弁護士に相談すれば分割払いが認められることもあります。

<器物損壊罪の刑事弁護に関する着手金額の目安>

起訴前・起訴後の事案簡明な刑事事件

(一審・上訴審)

22万円~55万円
上記以外の起訴前・起訴後の刑事事件(一審・上訴審)

再審事件

22万円~55万円以上

※「事案簡明な刑事事件」とは、以下の①②を満たす刑事事件をいいます。

①特段の事件の複雑さ・困難さ・煩雑さが予想されず、委任事務処理に特段の労力または時間を要しないと見込まれる事件であること

②起訴前については事実関係に争いがない情状事件、起訴後については公開法廷数が2,3回程度と見込まれる情状事件(上告事件を除く)であること

報酬金の目安

報酬金は、弁護士による事件処理の結果に応じて、依頼終了時に支払います。

<器物損壊罪の刑事弁護に関する報酬金額の目安>

起訴前・起訴後の事案簡明な刑事事件

(一審・上訴審)

<起訴前>

不起訴:22万円~55万円

求略式命令:不起訴の報酬金額を超えない額

 

<起訴後>

刑の執行猶予:22万円~55万円

求刑された刑が軽減された場合:刑の執行猶予の報酬金額を超えない額

上記以外の起訴前・起訴後の刑事事件

(一審・上訴審)

再審事件

<起訴前>

不起訴:22万円~55万円以上

求略式命令:22万円~55万円以上

 

<起訴後>

無罪:55万円以上

刑の執行猶予:22万円~55万円以上

求刑された刑が軽減された場合:軽減の程度による相当額

検察官上訴が棄却された場合:22万円~55万円以上

※「事案簡明な刑事事件」とは、以下の①②を満たす刑事事件をいいます。

①特段の事件の複雑さ・困難さ・煩雑さが予想されず、委任事務処理に特段の労力または時間を要しないと見込まれる事件であること

②起訴前については事実関係に争いがない情状事件、起訴後については公開法廷数が2,3回程度と見込まれる情状事件(上告事件を除く)であること

日当の目安

日当は、弁護士による出張(公判手続きへの出廷など)について発生します。

<器物損壊罪の刑事弁護に関する日当額の目安>

半日(往復2時間超4時間以内)3万3,000円以上5万5,000円以下
一日(往復4時間超)5万5,000円以上11万円以下

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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