遺失物横領とは?構成要件や問われる罪、占有離脱物横領との違いを解説

遺失物横領とは?構成要件や問われる罪、占有離脱物横領との違いを解説

落とし物の財布や道端に放置された自転車を自分の物にすると遺失物横領が成立してしまいます。

遺失物横領は軽微な犯罪として微罪処分(すぐに釈放され、前科がつかない) となるケースも多いですが、場合によっては逮捕・勾留されることもあります。

遺失物横領で捜査を受けることになった場合には、早期に示談を成立させるなどして処分が軽く済むようにするのが重要です。

この記事では、遺失物横領とは何かについて触れたうえで、捜査の流れや処分の重さを決める判断基準、弁護士に依頼するメリットなどを解説します。

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この記事を監修した弁護士
須賀翔紀
須賀翔紀弁護士(須賀法律事務所)
刑事分野全般に注力しているが、幅広い分野の相談が可能。依頼者に寄り添った迅速丁寧な対応を心がけているほか、オンラインでの面談も可能なため遠方の依頼者でも柔軟に相談を受け付けている。

遺失物横領罪とは

落とし物などを拾って勝手に持ち去ると、遺失物横領罪に問われる可能性があります。

「遺失物」ということですから、他人が置き忘れたりうっかり落としたりしたものを盗む行為と捉えてもよいでしょう。

]遺失物横領罪は構成要件が少しわかりにくいので、以下の解説や具体例をよく理解しておいてください。

遺失物横領は遺失物を自分のものにする犯罪

遺失物横領罪は刑法254条に規定された犯罪であり、占有離脱物横領罪とも呼ばれます。法定刑は1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料となっており、刑罰の軽い犯罪に分類されています。

遺失物は持ち主が落としたものや失くしたものを指しているため、落し物の財布などを拾って自分のものにしたときは、遺失物横領罪になる可能性が高いでしょう。

他人のものを奪うのだから窃盗ではないか?という考え方もできますが、以下のような構成要件があるため、持ち主の占有状態にあったかどうかがポイントになります。

遺失物横領の構成要件

遺失物横領の構成要件は「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領」となっており、基本的には落とし物や忘れ物を勝手に自分のものにすることを指しています。

横領は「他人のものを不法に自分のものにすること」という意味ですが、遺失物横領は意図的に自分のものにしようとする不当領得の意思があることも前提になります。

遺失物横領の時効

遺失物横領罪は、刑事訴訟法第250条の「長期5年未満の懲役もしくは禁錮または罰金にあたる罪」になるため、公訴時効は3年です。

遺失物横領の日から3年経過すると罪には問われなくなりますが、犯人が逃亡しているなど、起訴状などの送達ができなかった期間は時効のカウントが停止しています。

また、親族間の遺失物横領は刑法第244条の規定によって親告罪になるため、被害者が犯人を知った日から6ヵ月以内に告訴しなかった場合、告訴権が時効によって消滅します。

遺失物横領の具体例

遺失物の横領には以下のような具体例があります。

  • 落とし物の財布を拾って自分のものにした
  • 多く受け取ったおつりを自分のものにした
  • 他人が乗り捨てたバイクや自転車を勝手に自分のものにした
  • 誤って配達された郵便や小包を自分のものにした
  • バスや電車内、公園のベンチなどに置き忘れた荷物を自分のものにした
  • 飼い主から逃げ出したペットを勝手に自分のものにした

すべて所有者や飼い主などの占有状態にないことから、遺失物横領罪に問われる可能性が高いでしょう。

なお、拾った財布などを交番に届ける途中であれば、不法領得の意思(所有者の意志を無視して、自分のもののように扱ったり売り払ったりするようなこと)はないため、遺失物横領にはあたりません。

遺失物横領罪と似た犯罪との違い

テレビニュースや新聞では「横領」や「窃盗」などの犯罪名もよく登場します。どちらも他人のものを奪ってしまう犯罪ですが、遺失物横領と混同しやすいので、構成要件などの違いをよく理解しておきましょう。

横領罪との違い

横領罪は以下の犯罪の総称です。

  • 単純横領罪(刑法第252条)
  • 業務上横領罪(刑法第253条)
  • 遺失物等横領罪(刑法第254条)

遺失物横領罪についてはすでに触れたところですが、単純横領罪は他人のものを勝手に自分のものにした場合に成立する犯罪です。

法律的には「委託信任関係があること」「自己が占有する他人の物を横領すること」が構成要件になっており、管理などを託されたものを横領する行為が該当します。

例えば、一時的に預かっているお金を勝手に使い込んだり、借りているものを返さない行為が単純横領となり、有罪になった場合は5年以下の懲役刑に処されます。

また、業務として預かっているお金などを勝手に自分のものにした場合は、業務上横領罪に問われます。

例えば、経理担当者がその立場を利用して会社のお金を横領し、プライベートな旅行や遊びに使い込んだときは業務上横領罪が成立するでしょう。

お金の管理を任せた委託者に対する裏切り行為になるため、業務上横領罪が有罪となった場合は10年以下の懲役刑に処されます。

窃盗罪との違い

窃盗罪とは、他人が占有しているものやお金を奪ってしまう犯罪です。

刑法235条に規定された犯罪であり、有罪になると10年以下の懲役または50万円以下の罰金刑に処されます。

占有状態にあったかどうかが横領罪との違いになるため、以下のようなケースが窃盗罪に該当します。

  • 万引き
  • スリやひったくり
  • 空き巣
  • 盗電(お店などのコンセントから勝手にスマホやパソコンに充電する行為)
  • 野荒らし(他人の畑から作物を盗む行為)
  • 車上荒らし
  • ゴルフ場のロストボールを勝手に自分のものにする
  • 自販機からの盗み
  • 自転車・バイク・自動車泥棒

ゴルフ場のロストボールは遺失物ともいえますが、ゴルフ場の管理者の占有下にあるため、勝手に持ち去ると遺失物横領罪ではなく窃盗罪が成立します。

遺失物横領の捜査・逮捕の流れ

遺失物横領罪は通常逮捕になるケースが多く、裁判所が発付した逮捕状をもとに犯人が逮捕されます。

通常逮捕の場合、被害者からの事情聴取や防犯カメラなどの映像で犯人が特定されているため、警察署に連行されて以下のように取調べを受けることになります。

遺失物横領は微罪処分となるケースも

遺失物横領の疑いで警察署に連行された場合、まず被疑者として警察官の取調べを受けます。

ただし、遺失物横領の被害額が小さく、被疑者が十分に反省しているようであれば、警察の判断によって微罪処分になるケースもあります。

微罪処分はすぐに釈放されるので前科は付きませんが、顔写真の撮影や指紋の採取がおこなわれるため、警察のデータベースには残ってしまうでしょう。

なお、状況によっては以下のように在宅事件になる場合もあります。

在宅での手続

逮捕や勾留は身柄拘束の必要がある場合におこなわれるので、以下のような状況であれば在宅事件になる可能性が高いでしょう。

  • 被疑者の住所が特定されている
  • 被疑者に逃亡の恐れがない
  • 被疑者に証拠隠滅の恐れがない

在宅事件になると留置場に入ることはありませんが、警察から要請があれば必ず出頭しなければなりません。

あくまでも身柄を拘束されているか・いないかの違いなので、被疑者として扱われていることを理解しておきましょう。

逮捕・勾留された場合の手続

被疑者が横領した遺失物を隠してしまう、または逃亡の恐れなどがあるときは、逮捕や勾留によって身柄を拘束されます。

被害額が小さくても、前科があれば逮捕される可能性が高いでしょう。

逮捕後は警察署の留置場に入れられますが、事件を検察官に引き継ぐ必要性があれば、逮捕から48時間以内に検察官へ送致されます。

また、検察官は24時間以内に起訴・不起訴を決定しますが、通常は裁判所へ勾留請求されるケースが多いため、勾留が決定すると原則10日間の身柄拘束になります。

証拠不十分などの理由で勾留中に起訴・不起訴が確定しなかったときは、さらに最長10日間の勾留延長になる可能性もあるでしょう。

なお、遺失物横領罪は軽微な犯罪として扱われるため、検察官による起訴も「略式起訴」になる場合が多く、書面のみで審理される略式裁判により罰金刑になるケースが一般的です。

ただし、被疑者に前科があり、被害額も大きい場合は正式裁判が開かれ、懲役刑の実刑判決が下される可能性も十分にあります。

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遺失物横領の事件で処分の重さを判断する基準

遺失物横領の罪で逮捕された場合、以下のような判断基準で処分の重さが決定されます。

微罪処分になればその場で釈放ですが、有罪判決になると罰金刑または懲役刑になるため、遺失物を横領したあと、どう対処したかも処分に影響します。

横領した物の価値

遺失物横領の処分には横領物の価値が影響するため、多額の現金が入っている財布や高級ブランド品、バイクなどの横領であれば起訴される可能性が高いでしょう。

価値が低い場合は微罪処分になるケースもありますが、被害額が2万円を超えるかどうかがボーダーラインになっているようです。

ただし、明確な根拠はなく、あくまでも警察の判断次第です。

犯行の態様

遺失物横領の処分には犯行の態様も考慮されるので、偶然見つけた財布などを出来心で横領したようなケースであれば、微罪処分になる可能性もあります。

ただし、計画的に狙っておこなった犯行であったり、共犯者がいたりすると、微罪処分というわけにはいかないでしょう。

例えば、放置自転車などを立て続けに横領した場合や、人が密集する場所でカバンなどの置き忘れを狙った犯行であれば、悪質性の高さから重い処分になる場合があります。

被害弁償

遺失物横領をおこなった場合でも、すぐに被害を弁償すれば軽い処分にしてもらえるでしょう。

横領したものをすぐに返す、または使い込んだお金と同額を返金すれば、「刑罰を与えなくても更生できる」と判断してもらえる場合があります。

被害者の処罰感情

被害者の処罰感情も遺失物横領罪の量刑に影響します。横領したものをすぐに返して謝罪すれば、警察への通報は踏みとどまってもらえる可能性があります。

ただし、被害額や被害による影響が大きかった場合は、横領物を弁償しても処罰感情は簡単に収まらないでしょう。

例えば、財布やスマートフォンが入ったカバンを横領された場合、クレジットカードの支払いや重要な連絡に支障が出るため、横領物の価値以上の損害になるかもしれません。

告訴された場合は勾留や起訴の可能性が高くなるので、できるだけ早めに示談を成立させる必要があります。

犯人の前科・前歴

遺失物横領の犯人に前科や前歴がある場合、起訴される確率がかなり高くなります。

本人に反省の態度がみられず、犯行の常習性も考慮されるので、一般社会から切り離さなければ更生できないと判断されるでしょう。

また、前回が微罪処分でも前歴は付いているので、次に逮捕されたときは再犯扱いになります。

遺失物横領の事件のQ&A

遺失物横領の法定刑は窃盗罪などに比べて軽いため、本当に逮捕されるのか?といった疑問が生じます。

また、現行犯しか逮捕されないのでは?と思われているケースもあるので、以下のQ&Aを参考にしてください。

初犯で逮捕・勾留されることはありますか?

初犯の遺失物横領であれば、逮捕・勾留されるケースは少ないようです。

犯人に前科・前歴や余罪がなく、罪を認めて十分に反省している場合は、逮捕・勾留の必要なしと判断してもらえるケースがあります。

ただし、被害者の処罰感情も逮捕・勾留に影響するため、被害弁償を早く済ませておくことが重要です。

遺失物横領はバレないというのは本当ですか?

遺失物横領は高確率でバレるため、現行犯逮捕されなかったからといって安心はできません。

警察庁が公表する令和3年の犯罪統計書によると、遺失物横領の認知件数1万1,746件に対して検挙件数は9,056件になっており、検挙率は約77.1%です。

防犯カメラの性能が向上し、設置台数も増えたことから、バレないと思って横領しても犯行の状況がしっかり撮影されているケースがあるでしょう。

また、被害届が提出されると警察は遺失物の情報を記録し、盗品が出回りやすいリサイクルショップや質屋などに情報提供しています。

カメラのような工業製品やブランド時計の場合、保証書から個体番号やシリアルナンバーがわかるため、ネットオークションなどに出品しても盗品であることがすぐにわかります。

スマートフォンを横領した場合は、GPSで犯人の自宅を特定される可能性が高いでしょう。

引用元:犯罪統計書「令和3年の犯罪」F-32 占有離脱物横領罪(警察庁)

遺失物横領の事件を弁護士に依頼するメリット

遺失物横領罪は軽微な犯罪として扱われますが、有罪になると前科が付くため、職場を解雇されたり、学校から退学処分を下されたりする可能性があります。

しかし、弁護士に事件解決を依頼すると以下のようなメリットがあるため、示談成立や起訴猶予、早期釈放などを期待できます。

被害者との示談交渉を進めやすい

弁護士に依頼すると被害者との示談交渉を進めやすいので、和解によって被害届や告訴を取り下げてくれる可能性が高くなります。逮捕・勾留中は身動きが取れないので、弁護士と接見して示談交渉を依頼しましょう。

逮捕前に示談が成立すると通報される可能性も低くなりますが、加害者が交渉相手では話を聞いてくれないケースが多いので、弁護士に任せることをおすすめします。

被害者との示談が成立していれば、検察官も「勾留や起訴の必要なし」と考えてくれるでしょう。

逮捕・勾留からの早期釈放を目指せる

遺失物横領の事件解決を弁護士に依頼すると、逮捕・勾留からの早期釈放を目指せます。

警察に身柄を拘束されている場合、弁護士会から派遣される当番弁護士や、逮捕前から相談していた私選弁護士と接見できるので、警察に「弁護士を呼びたい」と伝えておきましょう。

弁護士は取り調べにどう対処すべきか教えてくれるので、不利な供述調書を取られるリスクを回避できます。

検察官に送致された場合でも、不当な勾留であれば勾留取消請求や準抗告(裁判官の下した処分に対して、取消もしくは変更を求めること) を申し立ててくれるので、早期釈放を期待できるでしょう。

また、再犯の可能性が低く、十分に更生できる旨の意見書を提出したり、検察官にも罪を軽くするように働きかけてくれます。

勾留取消請求が認められるとすぐに釈放されるので、前科なしで社会復帰を目指すときは必ず弁護士に依頼してください。

起訴猶予を目指せる

起訴猶予とは、遺失物横領の事実が明らかであっても、起訴までは必要ないと検察官が判断した場合に不起訴となる処分です。

以下のような状況であれば、検察官も起訴猶予を考えてくれるでしょう。

  • 刑事裁判が不要である旨の弁護活動をおこなってもらう
  • 被害者に謝罪して示談を成立させる
  • 被害者から許しをもらう
  • 会社の上司などに身元引受人を依頼する
  • 再犯防止策を立てて実行する

留置場ではノートを購入できるので、被害者への謝罪文を書いて弁護士に渡しておけば、示談成立や被害者に許してもらえる可能性が高くなります。

すべて検察官に判断してもらう必要があるので、示談書や身元引受書の作成を弁護士に依頼し、効果的な再犯防止策も考えてもらいましょう。

無料相談できる(依頼すべきかどうか無料で判断できる)

ほとんどの弁護士は初回の相談料を無料にしています。逮捕前に相談していれば、逮捕後も引き続き依頼するかどうか無料で判断できるでしょう。

なお、無料相談の時間を過ぎると料金が発生するので、以下のように要点をまとめ、短時間で相談できるようにしてください。

  • 遺失物横領の詳細(どこで、いつ、何を横領したか)
  • 横領の使い道など(手元にまだある、または売却したなど)
  • 通報されているかどうか
  • 何を依頼したいか(逮捕前の示談など)

逮捕後に弁護士と接見するときも、相談・依頼内容は必ず整理しておきましょう。

まとめ|遺失物横領の事件は弁護士に相談して早期解決を

遺失物横領罪は構成要件が複雑になっており、占有状態になければ1年以下の懲役または10万円以下などの法定刑ですが、占有状態にあると窃盗罪が成立します。

また、逮捕や勾留になると一定期間は外部へ連絡できないため、家族や会社の上司・同僚など、身近な人を混乱させる結果にもなるでしょう。

前科付きになると雇用の継続も難しくなるので、遺失物を横領したときはすぐにでも弁護士に無料相談してください。

刑事事件に詳しい弁護士に相談すると、示談成立による逮捕の阻止、または逮捕後の勾留阻止を期待できます。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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