名誉毀損
名誉毀損の証拠には何が必要?訴訟を起こすために用意すべきものとは
2024.08.01
SNSやインターネットの発展により、誰でも自由に世界に向けて発信できるようになりました。
一方で、誰しもが誹謗中傷や名誉毀損などの被害に遭う可能性があります。
「名誉毀損」とは、端的にいえば「他人に対して社会的評価を害する恐れのある状態を生じさせる行為」です。
自尊心などの名誉感情を害するだけでは名誉毀損の対象とはいえません。
ただし、一言で名誉毀損といっても、刑事上の名誉毀損罪と民事上の名誉毀損は異なるうえ、成立要件や責任追及のために必要な手続きも異なります。
インターネット上でいわれもない内容を発信されてしまい、名誉毀損などの被害に遭っている方はたくさんいます。
本記事では、名誉毀損の被害に遭っている方へ向けて、刑事・民事の法律的な側面から、名誉毀損が成立するケースや被害時の対処法などを解説します。
ネット上での誹謗中傷に対して、名誉棄損で慰謝料を請求したくても、そもそも慰謝料を請求できるのかわからず悩んでいませんか?
結論からいうと名誉毀損でお悩みなら、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、名誉毀損にあたるかの判断や慰謝料請求の手続きにも対応してくれます。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
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まず、名誉毀損された方が考えるのが名誉毀損罪などによる刑事上の責任追及でしょう。
名誉毀損罪については刑法230条1項において「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。
同条の構成要件として重要なのは、「公然」「事実を摘示」「人の名誉を毀損」の3点です。
公然とは、不特定または多数の者が認識しうる状態のことを指すと定義されています。
簡単にいえば、噂として広がっていくような状態になることで、「公然」にあたるということになります。
過去の裁判例では、8人が出席した消防組役員会で列席者には秘密を保つ義務があることから、同役員会での事実摘示行為は公然におこなわれたといえないとして否定されています。
一方、人の名誉を毀損する文書を特定の人に郵送した場合、その内容において秘密にすることを要求したり、ほかに発表したりすることを厳禁したのではないかぎり、その文書が転々して多数の人が知る恐れがあるため、同文書の送付は公然性が肯定されるとした裁判例などもあります。
こうした裁判例を踏まえると、情報が広がっていく可能性がある状態で事実摘示がおこなわれたときは「公然」にあたるといえます。
インターネット上での書き込みは、不特定多数の人が閲覧できることになるため、「公然」にあたります。
「事実の摘示」とは、人の社会的評価を害するに足りる事実を摘示することであると定義されています。
摘示の方法・手段には制限がないものと解釈されているため、公衆の面前での発言・書簡の送付・SNSなどのインターネット上での投稿も含まれます。
問題は「人の社会的評価を害するに足りる事実かどうか」という点ですが、特定の人の名誉が害される程度に具体的であることが必要とされています。
過去の裁判例では、「巨額の借金をした」ということだけではただちに社会上の地位を侵害するものではないとして、名誉毀損罪は成立しないとされたケースもあります。
一方、前科などの過去の犯罪歴を摘示することは社会的評価を害するものとして事実の摘示にあたるとされたケースなどもあります。
「人の名誉を毀損」とは、社会的評価を害する恐れのある状態を生じさせたということを指し、実際に社会的評価が低下していなくても認められるとされています。
たとえば、新聞に名誉毀損するような記事を掲載した場合には、新聞が配布・販売されたことをもって名誉を毀損したことになり、その記事によって現実的な被害が出たことまでは必要ないということです。
つまり、インターネット上でも、特定の人の名誉を侵害する内容を発信すれば、その時点で人の名誉を毀損したことになり、その発信内容によって現実的な被害が出たかどうかは名誉毀損罪の成立には影響しないということになります。
ここでは、どのような場合に名誉毀損罪として認められないのかを解説します。
名誉毀損罪(刑法230条)は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合」に成立すると定められています。
「公然」「事実を摘示」「人の名誉を毀損」という各要件を一つでも満たさない場合には、名誉毀損罪は成立しません。
なお、上記のうち特に問題となるのが「事実を摘示」という要件です。
具体的な事実の摘示が必要になるので、たとえば「あいつは馬鹿だ」などの侮辱的表現のみでは名誉毀損罪は認められません。
また、名誉毀損罪の成立については、その相手が誰であるか、被害者が具体的にわかるかどうかもひとつのポイントとなります。
たとえば、「Aには前科がある」などと「A」が誰を指すのかわからない状態で事実の摘示がおこなわれた場合には、被害者が特定できず名誉毀損罪は成立しません。
ただし、その文書などを全体として見たときに、「A」が誰を指すのか読んだ人が容易にわかるような場合には名誉毀損罪が成立する可能性があります。
名誉毀損罪(刑法230条)の成立要件を満たしていても、名誉毀損罪で罰せられないケースがあります。
それは、刑法230条の2に該当する場合です。
刑法230条の2第1項では、「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない」としています。
ここでの「公共の利害に関する事実」とは、事実の摘示が公共の利益増進に役立つという意味で、典型例としては国会議員などの公職にある人の汚職問題などが該当します。
公職にない私人に関する事項であっても、その私人が社会に及ぼす影響力の程度などによっては公共の利益増進に役立つものとされる場合もあります。
また、目的の公益性は、事実摘示の動機が公共の利益を増進させることにある場合に認められ、単なる私怨を動機としておこなう場合は目的の公益性がありません。
ただし、目的の公益性は「専ら」であり、私怨の動機を兼ねていても公共の利益増進の目的がある場合には目的の公共性が認められることになります。
摘示した事実の真実性については、真実であることが証明できなくても、真実と信じるに足りるだけの相当な資料・根拠をもっておこなった場合には罰せられないとされています。
名誉毀損は、大別すると刑事上の名誉毀損罪と、民事上の不法行為としての名誉毀損に分けられます。
刑事上の責任とは、名誉毀損をおこなった人に対して、懲役刑や罰金刑などの刑事罰を科すことです。
名誉毀損罪で訴えるためには、警察・検察に対して告訴の手続きを取る必要があります。
また、民事事件として責任を追及する方法としては、慰謝料などの損害賠償請求や、記事の削除・謝罪文の掲載といった名誉回復処分を求める方法などがあります。
これらは、名誉毀損する行為をおこなった者と直接交渉するか、裁判所に訴訟を起こすなどの法的手続きを取る必要があります。
刑事・民事のどちらの手続きを取るべきか、そのためにはどうすればよいかなどは、法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。
【関連記事】ネットに強い弁護士の特徴や探し方|相談前の準備も解説
名誉毀損で訴える場合、まずは何を目標にするのか明確にする必要があります。
とにかく刑事罰を科してほしいというのであれば、被害者が警察・検察へ告訴手続きを取る必要があります。
損害賠償や謝罪などを求めたいというのであれば相手方と交渉し、交渉で解決できないときには裁判所に民事訴訟を提起するか、刑事告訴するか検討します。
こうした示談交渉・訴訟提起・告訴などの法的手続きについて、弁護士は法律の専門家として知見を有しています。
弁護士に相談すれば、どの方法が最善かアドバイスしてくれるでしょう。
弁護士費用については、各法律事務所で自由に決められるため、具体的な費用は依頼する弁護士によって異なりますが、おおよその目安としては以下のとおりです。
あとは解決結果により報酬が必要となります。
弁護士に依頼する際には、弁護士費用がどれくらいになるかを事前に確認してから、契約書を作成してもらいましょう。
名誉毀損罪は刑法230条に定められている犯罪類型です。
名誉毀損罪と犯行態様が似たものとしては、侮辱罪・信用毀損罪・偽計業務妨害罪などがあり、以下ではそれぞれの違いを解説します。
侮辱罪(刑法231条)は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した場合」に成立します。
事実の摘示があるかどうかが、名誉毀損罪との大きな違いです。
たとえば、「バカ」などの侮辱的表現は事実を摘示するものではないため名誉毀損罪には該当しませんが、他人の人格を蔑視する価値判断を表示する行為として侮辱罪にあたる可能性があります。
信用毀損罪(刑法233条前段)は、「虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人の信用を毀損した場合」に成立します。
真実でない事実を不特定または多数の者に広めて、経済面での社会的信頼を低下させる恐れのある状態を作ることで成立します。
名誉毀損罪との大きな違いとして、信用毀損罪では「真実でない事実」の摘示が必要とされます。
名誉毀損罪は、摘示した事実が真実であったとしても成立しますが、信用毀損罪は摘示した事実が真実ではないことが必要となります。
摘示した事実が真実でなかった場合には、名誉毀損罪と信用毀損罪の両方に該当することになります。
偽計業務妨害罪(刑法33条後段)は、「虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、その業務を妨害した場合」に成立します。
名誉毀損罪との違いは、信用毀損罪と同様で、偽計業務妨害罪で「摘示した事実が真実ではないこと」が必要とされます。
また、名誉毀損罪は人の社会的評価を低下させる恐れのある行為があった場合に成立しますが、偽計業務妨害罪では、人が反復的・継続的におこなう事務を妨げる行為があった場合に成立するという点でも異なります。
ここでは、名誉毀損に関する事例を3つ紹介します。
近年の有名な事例としては、お笑い芸人が過去に大学に裏口入学していたと週刊誌で報じられたことに対して、出版社を相手に損害賠償請求した事例があげられます。
この裁判では、裁判所は週刊誌による名誉毀損を認め、440万円の損害賠償を命じました。
【参考記事】太田光、“裏口入学”訴訟の勝訴が確定 新潮側は上告せず440万円支払い「裏口ネタは今後も続ける」|中日新聞
社員Aが同僚Bに関して、「Bは過去に窃盗罪で逮捕された」などの内容を記載したメールを社員全員に故意に送信・転送し、これに対してBがAに損害賠償を求めたという事例です。
裁判所は、Aの行為はBの名誉を毀損するものであり、また単に私利を図る目的でなされたもので目的の公益性は認められないとして、Aに対して50万円の慰謝料の支払いを命じる判決を下しました。
【参考】東京地判 2017年4月13日(Westlaw Japan 文献番号 2017WLJPCA04138002)
テレビなどのメディア媒体にも多数出演し有名人となっていた弁護士が、ブログ上で誹謗中傷のコメントを多数受けたことに対して、発信者情報開示請求の手続きを取るなどして当該コメントの発信者を特定し、刑事告訴したという事例です。
この事例では、裁判所は名誉毀損罪が成立すると認定し、誹謗中傷をおこなった者に対して罰金10万円の刑事罰を科しました。
インターネット上での誹謗中傷や職場での名誉毀損など、名誉毀損の被害を受ける場面は多数あります。
名誉毀損の被害に遭ったときは弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談するメリットは以下のとおりです。
悪質な誹謗中傷・名誉毀損であれば警察が動いてくれますが、警察は民事不介入の原則のもと基本的には動いてもらえません。
刑事上の責任追及が難しい場合でも、損害賠償請求・慰謝料請求・謝罪要求などの民事上の責任追及は別の問題であり、刑事上の責任が問えなくても民事上の責任は問える可能性があります。
弁護士に依頼すれば、損害賠償請求や、名誉毀損する内容の記事や投稿の削除、謝罪文の掲載などの名誉回復処分に向けて動いてもらえます。
相手方と直接示談交渉したり、裁判所に訴訟提起したりするなど、弁護士に依頼すれば、民事上の責任追及にむけて法的手続きを進めてもらえます。
インターネット上での誹謗中傷では、誹謗中傷をおこなった発信者を特定する発信者情報開示請求の手続きが必要ですが、弁護士に依頼すればこうした手続きも進めてもらえます。
名誉毀損に関して、裁判所が認定する賠償額は低額になる恐れがあります。
弁護士に相談すれば、民事裁判になった場合に裁判所が認定するであろう賠償額の見込みを示してもらえます。
また、弁護士は賠償額の見込みも踏まえたうえで、相手方と示談交渉します。
事案によっては、相手方も「裁判になるのは避けたい」と考えて高額の慰謝料を提示してくる可能性があります。
弁護士に相談すれば、相手方との交渉内容を踏まえて「示談で解決するほうがよい」という選択肢なども示してもらえます。
名誉毀損罪に該当する可能性がある場合、警察に被害相談するのもひとつの手段ですが、なかなか捜査してくれない場合もあります。
また、名誉毀損罪は親告罪であり、被害届では足りず、告訴手続きを取ることが必要です。
弁護士であれば、名誉毀損について告訴状を作成したり、証拠を準備したり、告訴状の受理に向けて警察・検察と協議してくれたりなど、刑事事件についてもサポートしてくれます。
ここでは、名誉毀損で訴訟を起こす際のよくある質問について解説します。
悪口の程度にもよりますが、一般的には悪口などの侮辱的表現のみで名誉毀損罪で訴えることは困難です。
内容が悪質であったり継続的に何度も言われ続けたりして精神的損害を負ったといえる場合には、名誉毀損まではいえなくても、損害賠償請求・慰謝料請求などの民事上の責任追及はできる可能性があります。
ただし、裁判所が認める慰謝料の相場は数万円~数十万円程度と、決して高くはありません。
悪口の内容にもよりますが、言いふらすということは社会的評価を下げる行為にあたるため、状況によっては名誉毀損にあたる可能性はあります。
単に「あいつはバカだ」というだけでは難しいかもしれませんが、「あいつは不倫している」「あいつには前科がある」などの事実摘示がある場合には、名誉毀損罪で告訴や損害賠償請求できる可能性があります。
インターネットやメールで名誉毀損の内容を送信するケースでは電子記録として残るため、その記録を保存しましょう。
名誉毀損の内容を吹聴するなど、口頭でおこなっている場合には、それを聞いていた人に「いつ・どこで・どのような内容を言っていたか」を正確に聞き取って書面に書き起こし、可能であれば聞いていた人に署名捺印してもらいましょう。
名誉毀損罪は親告罪であり、告訴手続きが必要です(刑法232条)。
告訴手続きは、犯人を知った日から6ヵ月以内におこなわなければなりません(刑事訴訟法235条)。
また、犯人がわからなくても、名誉毀損罪は犯罪行為のときから3年で公訴時効が完成してしまいます(刑事訴訟法250条6号)。
名誉毀損に対する損害賠償責任や名誉回復処分の請求については、損害の発生と加害者を知ったときから3年以内に請求しないと消滅時効にかかります(民法724条1項)。
また、加害者がわからないときでも行為のときから20年経過すると同様に消滅します(民法724条2項)。
過去の名誉毀損で訴える場合には、刑事・民事の上記期間に注意が必要です。
名誉毀損への対応策は、大きく分けると以下の2つです。
インターネット上での誹謗中傷などで相手方がわからない場合には、まず相手方を特定するための発信者情報開示請求をおこなう必要があります。
名誉毀損の被害に遭った場合の対応策については、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、トラブル解決に向けて適切なアドバイスをしてもらえるでしょう。
ネット上での誹謗中傷に対して、名誉棄損で慰謝料を請求したくても、そもそも慰謝料を請求できるのかわからず悩んでいませんか?
結論からいうと名誉毀損でお悩みなら、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、名誉毀損にあたるかの判断や慰謝料請求の手続きにも対応してくれます。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
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