- 「事件から時間が経っているのに、なぜ今さら逮捕されるの?」
- 「後日逮捕って、どんなケースでおこなわれるの?」
このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
ニュースなどで見聞きする「後日逮捕」とは、事件発生の当日ではなく、数日~数週間後におこなわれる逮捕のことを指します。
これは、その場での現行犯逮捕とは異なり、捜査の進展や証拠の収集を経て、改めて容疑が固まった段階でおこなわれる手続きです。
本記事では、後日逮捕の定義や意味、通常逮捕との違い、逮捕の要件、そして逮捕されたあとの流れについて、法律の専門知識がない方でも理解しやすいように丁寧に解説します。
ご自身やご家族の身に関わる可能性がある方も、ぜひ参考にしてみてください。
後日逮捕とは?一般的には「通常逮捕」を意味する俗称のこと
後日逮捕とは、法律上の正式な用語ではなく、日常的に使われる俗称です。
一般的に、警察が事件の捜査を進めたうえで、後日になってから逮捕状を取得し、容疑者の自宅などに出向いて逮捕するようなケースで使われます。
犯罪が発生した直後ではなく、ある程度時間が経ってから逮捕されることから、「後日逮捕」と呼ばれているのです。
逮捕状が発行されるまでの期間は、捜査の進行状況や証拠の収集状況によって異なります。
事件当日に逮捕状が出ることもあれば、請求までに数ヵ月から1年以上かかることもあります。
後日逮捕される可能性が高いケース|2つの犯罪について解説
ここでは、後日逮捕される可能性が高い代表的な犯罪である「万引き」と「痴漢」の2つを取り上げ、それぞれの特徴や注意点について解説します。
1.万引きの場合|防犯カメラなどに証拠が残っている
万引きは、後日逮捕される可能性が高い犯罪のひとつです。
なぜなら、防犯カメラの映像などに犯行の様子が記録されているケースが多く、あとからでも犯人が特定されやすいためです。
たとえば、スーパーやコンビニ、書店などには、万引き防止のため店内の各所に防犯カメラが設置されており、商品を手に取って隠したり、不審な行動をしたりしている人物の映像が記録されます。
通常、防犯カメラの映像に顔が映っただけでは、被疑者の名前や住所を特定できません。
しかし警察は、映像に映った人物の顔、服装、体格、歩き方などの特徴を確認し、店員や目撃者の証言と照らし合わせながら容疑者を絞り込みます。
そして、犯人を特定し、証拠が十分にそろった段階で、裁判所に逮捕状を請求し、許可が出れば後日逮捕に踏み切ります。
また、近年は防犯カメラの性能が向上しており、店内だけでなく周辺の街頭カメラや駐車場の監視映像などを組み合わせて、逃走経路や移動手段をたどることが可能です。
たとえば、車で来店していた場合、駐車場のカメラに写っていたナンバープレートをもとに、車の所有者情報から容疑者を特定するケースもあります。
このように、現行犯でなくても、あとから証拠が積み上げられて逮捕される可能性があることを理解しておきましょう。
2.痴漢|被害者や目撃者の証言があり証拠が残っている
痴漢は、その場で現行犯逮捕されるイメージが強いかもしれませんが、状況によっては後日逮捕に至ることもあります。
万引きと同様、防犯カメラに容疑者の顔や服装がはっきりと映っていた場合、映像をもとに本人が特定されることがあるほか、同じ駅を頻繁に利用している人物であれば、警察や駅員が張り込み捜査をおこない、身元が判明するケースもあります。
また、被害者や目撃者の証言が決め手となることも少なくありません。
とくに通勤や通学などでよく見かける人物として記憶されている場合、その証言が捜査の手がかりになることがあります。
そのほか、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードの乗車履歴や、被害者の衣類に付着したDNAや繊維といった科学的証拠から犯人が特定されることもあります。
そのため、「その場から逃げ切れたから大丈夫」と安易に考えるのは非常に危険です。
後日逮捕(通常逮捕)をするには2つの要件を満たす必要がある
後日逮捕は無条件に認められるわけではありません。
ここで紹介する2つの要件を満たす場合に限り、後日逮捕が認められます。
1.逮捕する理由があること
ひとつ目の要件は「逮捕する理由」があることです。
刑事訴訟法では「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と表現されます。
たとえば、以下のような事情があれば、逮捕する理由があると判断されます。
- 防犯カメラに犯行の様子が映っていた
- 目撃者の証言と容貌が一致していた
- 犯人の指紋が現場のものと一致した
2.逮捕する必要性があること
2つ目の要件は「逮捕する必要性」です。
逮捕の必要性とは、「逃亡または罪証隠滅のおそれ」を意味します。
たとえば、以下のような事情があれば、逮捕する必要性が高いと判断されます。
- 身元や住居が明らかでない
- 定職についていない
- 被疑者が捜査機関の取調べに真摯に対応していない
- 重大な事件(殺人・強盗など)で実刑判決になる可能性が高い
- 共犯者がいるなど、組織的な犯行に及んだ
捜査機関に後日逮捕をされたあとの基本的な刑事手続きの流れ
後日逮捕された場合、刑事手続きは以下の流れで進むのが一般的です。
- 警察で取り調べを受ける
- 送致されて検察で取り調べを受ける
- 勾留されて最長20日間身柄を拘束される
- 検察が起訴するかどうかについて判断する
- 起訴された場合は刑事裁判がおこなわれる
ここでは、それぞれの段階について詳しく解説します。
1.警察で取り調べを受ける
逮捕されると警察署に連行され、取り調べを受けます。
取り調べでは、犯行内容や動機、当日の行動などについて詳しく質問されるのが通常です。
警察による取り調べは、最長48時間おこなわれます。
2.送致されて検察で取り調べを受ける
警察が取り調べを終えると、事件は検察庁に事件を送致します。
送致により、警察が収集した証拠や調書なども検察官に引き継がれます。
その後に検察官が取り調べをおこない、事件を起訴するかを判断します。
検察による取り調べは、最長24時間おこなわれます。
ただし、犯罪が軽微である場合や、被害者との示談が成立している場合には、検察へ送致されず釈放されることもあります。
3.勾留されて最長20日間身柄を拘束される
検察官が勾留の理由と必要性があると判断すれば、裁判所に勾留請求をおこないます。
勾留請求が認められれば、被疑者は警察署の留置施設などに引き続き身柄を拘束されます。
勾留期間は原則として最長10日間ですが、やむを得ない事由があればさらに最長10日間の延長が認められます。
つまり、勾留期間は原則最長20日間にのぼるということです。
勾留中も、引き続き警察や検察による取り調べがおこなわれ、供述調書や証拠が集められます。
4.検察が起訴するかどうかについて判断する
勾留期間中に、検察官は被疑者を起訴するかどうか最終的に判断します。
証拠が不十分、または再犯の可能性が低いといった理由から、不起訴処分になるケースもあります。
不起訴になれば、事件はその時点で終わり、前科もつきません。
5.起訴された場合は刑事裁判がおこなわれる
起訴された場合は、刑事裁判へと進みます。
刑事裁判では、検察官が集めた証拠や被告人の供述などをもとに、裁判官が判決を下します。
有罪判決が下されれば、懲役や罰金などが科されます。
ただし、事件の内容や被告人の反省の態度などによっては、執行猶予がつくこともあります。
判決に納得がいかない場合は、上訴することも可能です。
【加害者向け】後日逮捕を回避するためにできる3つの対応
たとえ逮捕の可能性が高い事件であっても、適切な対応をとることで後日逮捕を避けられるケースがあります。
ここでは、加害者側がすべき主な3つの対応策を紹介します。
1.自首や出頭をおこなう
後日逮捕を避けるためには、できるだけ早く自首や出頭をするのが効果的です。
「自首」とは、まだ警察が犯人を特定していない段階で、自ら罪を認めて捜査機関に出向くことをいいます。
自首することで、「逃げる心配がない」「証拠を隠すこともない」と警察に判断してもらいやすくなり、逮捕される可能性が低くなります。
一方「出頭」とは、すでに犯人として疑われている人が警察に出向くことを指します。
すでに捜査機関が捜査を開始していれば自首とは認められませんが、出頭して捜査に協力しようとする姿勢が評価され、処分が軽減される可能性が高くなります。
2.被害者に謝罪し示談を成立させる
罪を認めているのであれば、被害者に謝罪し示談を成立させるのも有効です。
示談とは、被害者に対して謝罪をおこない、一定の示談金を支払うなどして被害感情の解消に努める合意を取り付けることをいいます。
示談が成立すれば、被害届が取り下げられる可能性があり、警察や検察からも「当事者間で解決済み」と評価されて、逮捕を免れる可能性が高くなります。
なお、示談を成立させるためには、素直に事実を認め、真摯に反省している態度を相手方に示しましょう。
逮捕を避けたいからといって責任をあいまいにするような態度を取ると、被害者の理解を得るのは難しくなり、示談の成立も困難になります。
3.刑事事件が得意な弁護士に相談する
後日逮捕を避けるためには、刑事事件を得意とする弁護士に相談するのがおすすめです。
逮捕のリスクがある状況で弁護士からアドバイスを受けることで、現在の立場や今後の見通しを冷静に把握できます。
また、自首を検討している場合には、「どのタイミングで、どのように自首すべきか」といった具体的な戦略について助言を受けられます。
警察への連絡や必要書類の準備、場合によっては自首への同行などもサポートしてもらえるでしょう。
被害者との示談交渉についても、弁護士が代理でおこなうことでスムーズに進めやすくなります。
本人が直接交渉するよりも、第三者である弁護士が間に入ることで、被害者に安心感を与え、示談が成立しやすくなる点も大きなメリットです。
さいごに|事件を起こした場合には後日逮捕される可能性がある
本記事では、後日逮捕についてわかりやすく解説しました。
事件を起こした際、その場で逮捕されなかったとしても、後日逮捕される可能性は十分にあります。
とくに、証拠収集に時間を要するような事件では、数ヵ月から1年以上経ってから逮捕されるケースも珍しくありません。
逮捕を避けるためには、自首や出頭によって誠意を示したり、被害者との示談を成立させたりすることが重要です。
ただし、これらの対応を一人で進めるのは精神的にも負担が大きく、不安も多いでしょう。
だからこそ、早い段階で刑事事件に詳しい弁護士に相談することが何よりも大切です。
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逮捕のリスクを少しでも減らすために、ぜひご利用ください。
