薬物事件
大麻所持|初犯で捕まったら?知っておくべき処分と流れ
2024.04.15
大麻を所持、栽培、譲渡などした場合、大麻取締法違反という犯罪で逮捕されます。
大麻は諸外国では合法化されている国もあるため、コカインやヘロイン、覚せい剤などと比べ、危機感が薄いかもしれません。
しかし、常習することで精神障害や情緒不安定などを引き起こす危険な薬物です。
家族が大麻の所持などで逮捕されたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
早期に依頼することで、不起訴処分などの軽い処分で済む可能性が高くなります。
本記事では、大麻取締法違反に該当する行為や刑罰について解説し、弁護士費用の相場についてもお伝えします。
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大麻には依存性があり、強い精神障害を引き起こすなどの理由から、日本では大麻は違法薬物として禁止されています。
大麻の所持、譲渡、譲受または栽培は「大麻取締法」の処罰対象となり、逮捕されると懲役や罰金刑に処せられます。
大麻の栽培や輸入をした場合、7年以下の懲役に処せられます。
執行猶予がつくのは5年以下の懲役までであるため、5年以上の懲役を言い渡された場合には、実刑になるでしょう。
第二十四条
1大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
3前二項の未遂罪は、罰する。
引用元:大麻取締法
また、営利目的で大麻を栽培、輸出入していた場合には、自己使用の罪よりも重い、10年以下の懲役が科せられます。
また、場合によっては懲役に加え、300万円以下の罰金が併科されることもあります。
単に自分が使用する目的のためだけに栽培、輸入していた場合よりも、営利目的のほうがより悪質性が高いとみなされ、重い罪が科せられてしまうのです。
大麻を所持、譲渡、譲り受けした場合、5年以下の懲役に処せられます。
ただし、こちらも営利目的の場合には罪が重く、7年以下の懲役、場合によっては200万円以下の罰金が併科されてしまいます。
第二十四条の二
1大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3前二項の未遂罪は、罰する。
引用元:大麻取締法
栽培、輸出入と同じく、所持、譲渡、譲り受けの罪も、自己使用目的よりも営利目的のほうがより重い罪が予定されています。
これは、営利目的のほうが社会的影響が大きく、多くの大麻常習者を生む可能性が高いからと考えられます。
なお、大麻の「使用」については大麻取締法に明文化されておらず、逮捕要件には当てはまりません。
日本で古来より栽培されていた大麻には、幻覚作用などを引き起こす有害物質「テトラヒドカンナビロール(THC)」の成分がほとんど含まれていないため、都道府県知事の許可を得れば栽培することも可能です。
日本では伝統的に麻で神社のしめ縄を作るなど、大麻を「けがれを祓うもの」として利用してきました。
また、七味唐辛子に大麻の種子が含まれていることもよく知られています。
そのため、「大麻」を使用したという意識がなくても、尿検査などで微量のTHCが検出される可能性もないとはいえません。
大麻の所持、譲渡、譲受、許可のない栽培などが禁止される一方、使用罪が明文化されていないのはそのような事情があるためでしょう。
ただし、大麻使用罪が明文化されていないことは国会でも問題視されており、2023年1月より、通常国会にて審議される見込みとの報道も出ています。
今後は、大麻の使用についても罪に問われるようになるでしょう。
大麻犯罪の起訴率は、ほかの麻薬犯罪と比較すると低い傾向があります。
統計によると、2019年の1年間に大麻取締法違反で逮捕された5,658人のうち、50.6%にあたる2,863人が起訴されています。
俗に「シャブ」、「エス」、「スピード」などと呼ばれる薬物を取り締まる覚せい剤取締法違反の起訴率は75.7%、ヘロイン、コカイン、モルヒネなどを取り締まる麻薬取締法違反の起訴率は59.9%でした。
逮捕人数 | 起訴人数 | 起訴率 | |
大麻取締法違反 | 5,658 | 2,863 | 50.6% |
覚せい剤取締法違反 | 13,142 | 9,942 | 75.7% |
麻薬取締法違反 | 962 | 576 | 59.9% |
起訴後に大麻取締法違反の裁判で懲役刑に処せられた人数は1,778人、そのうち執行猶予のつかない実刑判決を受けたのは、12.0%でした。
これは、同年の覚せい剤取締法違反の懲役刑6,824人のうち、実刑判決を受けた割合が44.9%だったのと比べ、低い傾向にあるといえるでしょう。
ただし、大麻取締法違反の検挙率は、2017年以降増加を続けています。
ほかの薬物犯罪と比較すると、2019年の検挙率は、覚せい剤取締法違反の63%の次に多い33%という結果になりました。
検挙人数も過去最高の4,570人で、そのうち1,950人が20歳から29歳までの若者に集中しています。
【参考】第7編 特集_薬物犯罪
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大麻事件を弁護士に依頼する場合、総額で100万円程度の弁護士費用がかかるでしょう。
そのほか、逮捕されたのが家族であれば、保釈保証金やその後の更生施設入所費用なども考えておかなければなりません。
弁護士費用は、以下のように区分されます。
法律相談料は、1回でおよそ1時間で、費用は1万円程度です。
弁護士に依頼する前の相談する段階で発生しますが、中には初回法律相談料を無料としている事務所も多くあります。
法律相談をしてみて、この弁護士に依頼したいと思ったら、委任契約を締結して着手金を支払うことになります。
着手金は、実際に弁護士が事件に着手する前に必要となる費用で、20万円~40万円程度が相場でしょう。
成功報酬金は、弁護活動によって不起訴処分や減刑された場合などに請求される金額で、こちらも20万円~40万円が相場です。
そのほか、一度の接見ごとに日当を定めているケースもあります。
この場合は、接見のたびに料金が発生します。
すでに大麻事件で逮捕されているケースでは接見回数が多くなり、その分弁護士費用も増えてしまうため、事前に契約書の内容をよく確認しましょう。
なお、弁護士によっては、日当を着手金や報酬金に含む契約もあります。
また、着手金を低く抑えた分、報酬金を高く設定していたり、細かく成功報酬の追加項目を設けていたりするなど、料金設定は事務所によって異なります。
そのため、弁護士費用は全体を見て判断すべきです。
契約内容に不明な点や不安な箇所があれば、契約締結前にあらかじめ弁護士に確認しましょう。
大麻事件で弁護士費用が増える原因としては、以下の点が挙げられます。
適切な弁護活動によって不起訴処分で終わった場合や、起訴された後保釈請求をして認められた場合、または再犯にも関わらず減刑が認められた場合などには、成功報酬が一部追加される可能性があります。
大麻事件のような薬物犯罪では通常被害者が存在しないため、ほかの刑事事件のように被害者と示談して被害届や告訴状を取り下げてもらうことができません。
そのため弁護士は、本人に反省を促したり、身柄釈放後に本人の更生をしっかり支えられる身元引受人を見つけたりするなど、本人が再び薬物に手を出さないことを示さなければなりません。
また、起訴されたあとに本人の希望により弁護士が保釈請求をし、認められた場合には、成功報酬が加算されるケースも多いでしょう。
どのようなケースで追加報酬が請求されるかは、あらかじめ契約書の内容を確認しておく必要があります。
大麻事件では、弁護士費用以外にも必要になる費用があります。
たとえば、起訴後に身柄を一時的に釈放してもらいたい場合には保釈保証金を準備しなければなりません。
大麻事件の保釈保証金の相場は150万円程度ですが、保釈保証金額は本人の経済状況や社会的地位などによって、裁判所が個別に判断します。
ただし、被告人が逃亡などをせず、裁判が無事に終結すれば、納付した保釈保証金は全額返還されます。
また、薬物依存に陥っていた場合には、薬物依存症回復施設などの入所費用や治療費なども考えておかなければならないでしょう。
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大麻事件で逮捕されてしまった場合には、なるべく早く弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士を依頼するには費用がかかりますが、その代わり以下のようなメリットがあります。
大麻で逮捕されるのが初めてなら、これから身柄を拘束されてどんなことが起こるのかがまったくわからず不安になるでしょう。
警察や検察の取り調べで誘導され、知らないうちに自分にとって不利な証言をしてしまう場合もあります。
弁護士に依頼すれば、取り調べに対してどのように対応すべきか、どのような点に注意すべきかをアドバイスしてもらえます。
また、このあとどんな流れで手続きが進むかも教えてもらえるため、不安も軽くなるでしょう。
弁護士に早めに依頼することで、適切な弁護活動によって想定していたよりも軽い処分で終わる可能性があります。
身元引受人などを探し、更生の可能性を示せば、不起訴で終わらせることもあるでしょう。
また、たとえ起訴されてしまったとしても、減刑されて執行猶予がつく可能性も高くなります。
弁護士に依頼することで、裁判所に対して保釈の請求をしてもらえます。
保釈が認められれば、身柄拘束を解かれ、自宅から取り調べや裁判に出頭することもできます。
保釈請求は、保釈の請求権者が保釈金を準備したうえで、裁判所に対して身柄拘束の必要がないことを示して請求します。
保釈の請求権者は、被告人本人またはその弁護人、法定代理人や配偶者、親、兄弟姉妹などです。
弁護士に依頼すれば、親族に保釈保証金を準備してもらうよう手配したり、要件どおりに請求書を作成したりと、保釈請求が通るように手配してもらえるでしょう。
なお、保釈請求は起訴後のみ認められ、起訴前の処分が決まっていない段階では認められません。
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大麻事件で逮捕されたあとは、以下のような流れで刑事事件の手続きは進みます。
大麻事件で逮捕されると、警察署の留置施設に身柄を勾留され、警察での取り調べを受けます。
警察はさらに取り調べが必要だと判断した場合、48時間以内に検察庁に事件とともに被疑者の身柄を送致します。
これを「送検」といいます。
警察署での取り調べ内容は、調書として記録に残されるため、発言には注意が必要です。
場合によっては、弁護士と話をするまでは黙秘することもできるでしょう。
被疑者には、自分の不利になる質問には回答を拒否する権利も保障されています。
警察から事件が送検されると、検察官が24時間以内にさらに勾留して取り調べる必要があるかどうかを判断します。
必要と判断した場合には、裁判所に勾留状を請求します。
裁判所から勾留決定が出ると、検察は原則10日間、被疑者を勾留して取り調べます。
10日で十分取り調べられなかった場合には、さらに追加で10日間まで勾留を延長されてしまいます。
勾留日の数え方は、初日算入でカウントされます。
たとえば、7月1日に勾留請求され、最長20日間勾留された場合、勾留の満了日は7月20日です。
検察官の取り調べでは、警察での取り調べと重なる部分もあるでしょう。
しかし、検察官側は、以前の証言と矛盾がないか確認するために同じ質問を繰り返している場合もあります。
一度答えた内容でもしっかり回答しましょう。
最長20日間の勾留後、検察は起訴、不起訴の判断をします。
起訴された場合には、1ヵ月程度で初回の裁判が始まります。
なお、起訴後は保釈請求が認められれば身柄は釈放され、自宅から取り調べや裁判に出頭することも可能です。
大麻の栽培、輸出入、所持、譲受および譲り渡しは、大麻取締法違反により処罰されます。
営利目的でおこなった場合には、自己使用目的よりも厳しく処罰されます。
大麻事件で逮捕されたら、早期に弁護士に依頼することで処分結果を大きく左右するでしょう。
できるだけ早く、刑事事件に詳しく、薬物事件の実績豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
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