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恐喝罪で逮捕されたらどうなる?無料相談できる窓口と弁護士に依頼するメリット
2024.02.13
「住居侵入罪」とは、他人の住居などに同意なく侵入する罪です。
一般的には「不法侵入」とも呼ばれていますが、これは正式な法律用語ではありません。
しかし、どのような場所に侵入すれば成立するのか、他人の敷地内に一歩でも踏み込んだら適用されるのかなど、曖昧な部分もたくさんあるでしょう。
本記事では、住居侵入罪の定義や、実際にどのようなケースで適用されるのかについて詳しく解説します。
また、万が一住居侵入罪で逮捕されてしまった場合の手続きについてもお伝えします。
住居侵入罪に限らず、刑事事件ではなるべく早く弁護士に依頼し、適切な弁護活動を受けることが結果を大きく左右します。
本記事を参考に、ぜひ刑事事件に精通した弁護士に相談してみてください。
住居侵入罪とは、「他人の住居や寝食する場所などに対し、管理権者の意思に反して立ち入る」ことを指します。
住居侵入罪で処罰されるケースについては、以下で解説します。
住居侵入罪とは、刑法第130条前段に規定されています。
刑法第130条(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入し、または要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法|e-Gov法令検索
刑法第130条前段の「正当な理由がないのに〜侵入し、」までが住居侵入罪に該当し、後段「要求を受けた〜のに退去しなかった」は不退去罪に関する規定です。
不退去罪とは、居住者が退去するよう告げても居座る行為を指します。
住居侵入罪は、以下の3つの要件全てを満たす場合に成立します。
「正当な理由がない」とは、住居への立ち入る行為が違法であるということです。
たとえば、強盗や脅迫、暴行、傷害、殺人、のぞきなどはいずれも違法であり、これらを目的とした立ち入りは正当な理由がないといえます。
「住居」とは、人が寝食する場所のことを指し、一定の構造が必要です。
寝食は一時的なものも含むため、ホテルの部屋なども一時的でもある程度継続的に利用している場合には宿泊者の「住居」とみなされます。
また、マンションの通路やベランダ、庭なども、外界から障壁で囲まれていれば住居に含まれます。
ただし、長期間にわたり居住していたとしても、山の横穴や段ボールハウスなどは含まれません。
「侵入」とは、居住者の意思に反した立ち入りであるかどうか、または法的に正当かどうかで判断されます。
たとえば、居住者の目の前で玄関から堂々と侵入した場合でも、居住者本人の意思に反していないのであれば、住居侵入罪が成立します。
住居侵入罪が成立すると、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられます。
ただし、住居侵入する際は窃盗などをはじめ、別の犯罪も同時に成立するケースが多く見られます。
そのような場合には、どちらか重いほうの刑罰が適用されます。
また、住居侵入罪は未遂でも処罰の対象となる点には注意が必要です(刑法第132条)。
住居侵入罪を発見した場合、警察は犯人を緊急逮捕できます。
「緊急逮捕」とは、一定の条件のもと、警察が裁判所からの令状なしでする逮捕です。
緊急逮捕するためには、以下の条件に当てはまっている必要があります。
緊急逮捕が認められる罪は、「3年以上の懲役または禁錮が適用されるような犯罪」です。
たとえば殺人、傷害、強盗、強制性交罪などの凶悪犯罪のほか、窃盗罪にも適用されます。
緊急逮捕の際には、令状を提示することができないため、口頭で逮捕理由を告知しなければなりません。
逮捕理由を告知しない緊急逮捕は違法です。
住居侵入罪の代表的なものは、以下のようなケースがあります。
住居侵入罪は、侵入した後の行為によっては別の犯罪を構成する可能性があるため、ほかの罪とあわせて処罰されるケースが多い犯罪です。
たとえば、のぞき目的で侵入し、のぞき行為をおこなった場合は迷惑防止条例違反、窃盗目的で侵入し窃盗行為を行ったのであれば、窃盗罪などと併せて処罰されます。
中には、住居侵入とは知らずに入ってしまうケースもあります。
近年では、スマートフォンのゲームをしながら他人の敷地内に知らずに入り込むなどの事件も報告されています。
また、ビラ配りの目的でマンションの敷地内に入り、直接玄関扉の新聞受けにビラを入れるなどの行為にも、住居侵入罪が適用されることがあります。
ここでは、実際にあった住居侵入罪の事例を2件紹介します。
いずれも、裁判によって住居侵入罪が認められたケースです。
【事件の概要】(大阪地裁令和4年12月8日判決)
被告人がa組組長Aを脅迫しようと考え、路上からA宅に車で衝突して門扉などを破壊して侵入。
Aらを脅迫したとして、住居侵入罪、建造物損壊罪、脅迫罪により起訴されたケースです。
【判示】
裁判所は、「住居侵入罪の客体には、住居たる建物自体のほか、当該建物に付属し、周囲に門塀を設けるなどして外部との交通を制限し、外来者がみだりに出入りすることを禁止している土地(囲繞地)も含まれる」(最高裁昭和51年3月4日判決)を引用した上で、本件においても、門扉周辺の外部との通行を制限している等の状況に鑑みれば、「門扉の外側とはいえ外来者がみだりに出入りを許されない場所であることは外観上明らか」であるとして、門扉の内側部分同様に門扉の外側部分の石段に立ち入ったことをもって住居侵入罪が成立することを認めました。
【事件の概要】(最高裁判所平成20年4月11日判決)
公務員宿舎の集合住宅1階出入口から、各部屋の玄関扉に設置された新聞受けに、政治的意見を記載したビラを直接投函する目的で、集合住宅の敷地に立ち入ったケースです。
【判示】
公務員宿舎の集合住宅1階出入口から各部屋の玄関前までには、管理者が外部との境界線として囲障を設置してありました。
このように建物の利用のために供されていることを明示している敷地内に侵入した場合は、刑法第130条にいう「人の看守する邸宅」にあたり、住居侵入罪に該当すると判示しました。
1件目のケースでは、「牽連犯」として住居侵入罪が認められました。
牽連犯とは、「ある犯罪行為を達成するために、ほかの犯罪行為を実行すること」をいいます。
この場合、Aを脅迫するという犯罪行為のために、建造物を損壊して住宅に侵入したため、脅迫罪、建造物損壊罪、住居侵入罪が適用されました。
牽連犯では、最も重い刑罰が適用されます。
2件目の事件は、ビラ配布目的でマンション敷地内に立ち入ったことが住居侵入罪に問われたケースです。
ただし、ビラ配布行為自体が常に住居侵入罪に該当するわけではありません。
あくまでも一例に過ぎませんが、以上のようなケースでは管理権者の意思に反する立ち入りであるとして住居侵入罪に問われる可能性が高くなるでしょう。
住居侵入罪で逮捕されると、最長で23日間留置施設に身柄を拘束されてしまいます。
以下で、逮捕されたあとの一般的な流れについて解説します。
逮捕されてから48時間は、警察の留置施設に勾留され、警察から取り調べを受けます。
取り調べの結果、警察署がさらに調査が必要だと判断した場合、48時間以内に身柄と捜査資料が検察庁に送られます。
これを「送検」といいます。
送検されたあとは、検察庁でさらに取り調べを受けることになります。
検察庁に事件が送られると、今度は検察官から取り調べを受けます。
検察官は24時間以内に、さらに取り調べ等の捜査が必要かどうかを判断します。
必要と判断されたケースでは、検察官は裁判所に対し、勾留請求をします。
裁判所の勾留決定が出て勾留が決まると、原則10日間は身柄を勾留されて検察官による取り調べを受けます。
検察はさらに取り調べが必要だと判断した場合、最長10日間勾留を延長できます。
そして、最長20日間の取り調べのあと、検察官は起訴、不起訴を判断するのです。
起訴が決まると、1ヵ月程度で1回目の裁判が開始されます。
起訴後は、保釈金を準備したうえで裁判所に対して保釈申請ができます。
裁判所から保釈決定が出れば、身柄の拘束が解かれます。
保釈は、裁判所が以上のような条件を総合的に判断し、また検察官からの意見も参考に決定を下します。
ただし、保釈申請は自分から申し立てなければなりません。
保釈が許可されなければ、判決が出るまで身柄拘束を受けることになります。
住居侵入罪に限らず、刑事事件で逮捕されてしまった場合には、弁護士に依頼することで大きなメリットを受けられます。
弁護士に依頼することで、被害者との示談を進められます。
刑事事件の場合、加害者と被害者が直接話し合いを進めることは難しいでしょう。
第三者の弁護士が入って交渉することで、示談が成立しやすくなります。
示談が成立すれば、当事者同士の話し合いで事件が解決しているとみなされ、不起訴になる可能性も高くなるでしょう。
刑事事件は、不起訴で終わらせることが重要です。
日本の裁判では、起訴されてしまった場合の有罪率は99.9%といわれています。
そのため、起訴されれば有罪となり、前科がつくことはほとんど避けられないでしょう。
逮捕されるのが初めてなら、今後何があるのかわからず不安ばかりが募ってしまうでしょう。
警察官や検察官の取調べに対し、自分に不利な発言をしてしまう可能性もあります。
弁護士がいれば、今後何が起こるのかを伝え、起こり得ることに備えることができるでしょう。
また、家族や会社などに対して自分の状況を報告してもらうこともできます。
万が一起訴されてしまった場合、自分から保釈申請をしなければ、判決が出るまで身柄を拘束され続けることになります。
保釈を許可してもらうためには、「保釈請求書」を提出する必要があります。
しかし、保釈申請は、保釈金を準備したうえで、以下の条件を満たすように請求書を作成しなければなりません。
勾留されたまま、法的な要件を満たすような書面を自分で作成するのは難しいでしょう。
しかし、保釈が許可されなければ、刑事裁判が終わるまで身柄を拘束され続けてしまいます。
弁護士に依頼することで、要件を満たすよう保釈請求書を作成してもらえるため、保釈許可が出やすくなるでしょう。
弁護士の弁護活動によって、処分が軽くなる可能性があります。
起訴されてしまったとしても、執行猶予がつくことや、罰金で済むこともあるでしょう。
また、被害者との示談が成立し、不起訴処分で終わる可能性も高くなります。
住居侵入罪は、起訴されれば3年以下の懲役に処せられる可能性もある犯罪です。
ただし、弁護士に依頼し、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分で済むこともあります。
日本の裁判では、起訴されればほぼ確実に有罪となり、前科がついてしまいます。
そのため、逮捕されたらすぐに刑事弁護に精通した弁護士に依頼し、事件の早期解決を目指しましょう。