- 「女性に対し、無理やり性行為をしてしまった」
- 「その場では何も言われなかったが、あとから警察に通報されるのではないかと不安だ」
このような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
強姦は、相手の同意がなかったと判断されれば重大な性犯罪として扱われ、逮捕・起訴・実刑といった厳しい処分を受ける可能性があります。
処分を受ける中で仕事を失ったり、家族に事件が知られたりするなど、社会的な不利益を被ることも少なくありません。
だからこそ、ひとりで抱え込まず、早めに弁護士に相談することが重要です。
本記事では、強姦で逮捕された場合に適用される罪の内容や法定刑、逮捕率や起訴率、逮捕から裁判までの流れや、少しでも処分を軽くするために取るべき方法について解説します。
今後の生活を踏まえ適切な行動を取れるようになるためにも、ぜひ最後まで目を通してみてください。
強姦で逮捕された場合に成立する可能性がある罪の種類・刑罰
まず、強姦で逮捕された場合に適用される代表的な罪名と、刑罰の重さについて確認しておきましょう。
不同意性交等罪|5年以上の有期拘禁刑
不同意性交等罪は、相手の同意がないまま性交等をおこなった場合に成立する犯罪です。
不同意性交等罪は、被害者の年齢によって以下のように成立要件が異なります。
被害者の年齢 | 加害者との年齢差 | 被害者の同意の有無 |
13歳未満 | 不問 | 不問 (被害者の同意があっても、性交等をすれば不同意性交等罪が成立) |
13歳以上16歳未満 | 5歳以上 | 不問 (被害者の同意があっても、性交等をすれば不同意性交等罪が成立) |
13歳以上16歳未満 | 5歳未満 | 問われる (被害者の同意があれば、不同意性交等罪が成立しない) |
16歳以上 | 不問 | 問われる (被害者の同意があれば、不同意性交等罪が成立しない) |
対象となる「性交等」は、いわゆる性行為に限られず、以下のような行為も含まれます。
- 肛門性交
- 口腔性交
- 膣や肛門への指や器具などの挿入
また、「同意がない」と判断されるのは、明確に拒否の言葉があった場合だけに限られません。
以下のような状況があれば、「同意がなかった」と判断される可能性があります。
状況 | 具体例 |
暴行・脅迫 | 殴られる脅されるなどして、拒否や抵抗ができなかった |
心身の障害 | 身体傷害、知的傷害、発達障害、精神障害などを有しており、拒否や抵抗ができなかった |
飲酒・薬物 | 酒や薬の影響で、同意や拒否の判断を正常にできない状態だった |
睡眠その他の意識不明瞭 | 寝ていたり気を失っていたため、拒否の意思を示せなかった |
同意しない意思を形成、表明、全うする暇の不存在 | 相手の不意をつくような行動で、拒否の意思を示す暇がなかった |
予想と異なる事態との直面に起因する恐怖または驚愕 | 予期しない状況に驚き、恐怖で固まってしまい、明確に拒否できなかった |
虐待に起因する心理的反応 | 日常的にDVを受けており、恐怖心から拒否できなかった |
経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮 | 上司など社会的地位のある相手からの要求に対し、拒否すると生活や評価に影響すると考えて断れなかった |
法定刑は、「5年以上の有期拘禁刑」です。
有期拘禁刑とは、刑務所に一定期間拘禁される刑罰をいいます。
不同意性交致死傷罪|無期または6年以上の拘禁刑
不同意性交致死傷罪は、不同意性交などをおこなった結果、人を死傷させた場合に成立する犯罪です。
本罪は、性交そのものによって傷害を負わせた場合に限らず、性交に至る過程で傷害を負わせた場合や、性交の機会に付随して傷害を負わせた場合であっても成立します。
たとえば、以下のケースが該当します。
- 不同意の膣性交によって、被害者が膣裂傷などの身体的損傷を負った場合
- 性交等を強行する目的で、被害者に暴行を加えた結果、骨折や打撲などのけがを負わせた場合
- 被害者が性交から逃れようとして、建物から転落し負傷した場合
法定刑は、「無期または6年以上の拘禁刑」です。
犯行が2023年7月12日以前だった場合は、別の罪が適用される
性犯罪に関する刑事事件では、どの法律が適用されるかは「犯行時点の法律」によって決まります。
そのため、同じ行為でも、犯行の時期によって罪名や処罰内容が異なります。
以下の表で、犯行時期ごとに適用される主な罪名とその特徴をまとめました。
犯行時期 | 適用される罪名 | 処罰の対象 | 被害者の性別 | 法定刑 |
2017年7月11日 | 強姦罪 | 暴行または脅迫による性交 | 女性のみ | 3年以上の懲役刑 |
2017年7月12日~2023年7月11日 | 強制性交等罪 | 暴行または脅迫による性交等 | 男女とも対象 | 5年以上の懲役刑 |
2023年7月12日以降 | 不同意性交等罪 | 相手の同意がない性交等 | 男女とも対象 | 5年以上の拘禁刑 |
かつての「強姦罪」では、被害者が女性に限定されていました。
また、処罰対象も性交に限られていたため、口腔性交や肛門性交といったほかの性行為は処罰対象に含まれていませんでした。
そのため、たとえば男性が肛門性交や口腔性交などの被害を受けた場合であっても、処罰されないケースがあったのです。
そのほか、暴行や脅迫を受けたケース以外でも、「本当は嫌だったが、それをはっきり伝えられる状況ではなかったケース」や、「断ることが実質的に不可能だったケース」が、処罰の対象とされていませんでした。
こうした不公平を解消するため、法律が段階的に改正されてきたのです。
2017年の改正では、性別を問わず処罰対象とする「強制性交等罪」が新設され、2023年の改正では、同意の有無に焦点を当てた「不同意性交等罪」が新設されました。
これにより現在では、被害者の性別や暴力の有無にかかわらず、「相手の同意がなかった性行為」が処罰される運用に変更されています。
強姦(不同意性交等罪)で逮捕・起訴される可能性は高い?逮捕までの期間はどの程度?
不同意性交等罪で逮捕・起訴されるかどうかについては、証拠の内容、被害者の供述、加害者の態度など、さまざまな要素が総合的に判断されます。
ここでは、一般的な逮捕率や起訴率・逮捕までにかかる期間について、実際の傾向を踏まえて解説します。
強姦(不同意性交等罪)の逮捕率は?
不同意性交等罪の逮捕率は、ほかの犯罪と比べて高い傾向にあります。
逮捕率が高くなる理由は以下のとおりです。
- 性犯罪は被害者の心身に深い傷を残す重大な犯罪として扱われるため、警察や検察が優先的に捜査を進めることが多い
- 被害者を保護する目的で、加害者を逮捕して物理的に接触できないようにする措置が取られやすい。
- 余罪があると判断されやすい
法務省が発表した「令和6年版 犯罪白書」によると、2023年の不同意性交等罪の逮捕率は56.7%にのぼります。
刑法犯全体の逮捕率が34.8% であることと比較しても、非常に高い数値といえます。
引用元:令和6年版 犯罪白書|法務省
不同意性交等の容疑で逮捕されてしまうと、仕事を失ったり、家族や友人との関係が壊れたりと、生活のあらゆる場面に深刻な影響が出る可能性があります。
逮捕のリスクを避けるためには、疑いをかけられた段階で速やかに弁護士へ相談し、逮捕を回避するための適切な行動を取ることが非常に重要です。
強姦(不同意性交等罪)で逮捕されるまでの期間は?
不同意性交等罪で逮捕されるまでの期間は、一般的には数日から数週間程度とされています。
ただし、これはあくまでも目安で、実際の期間は事件の内容や証拠の有無によって大きく異なります。
捜査機関は、被害者の申告内容や証拠の状況、加害者と被害者の関係性、逃亡や証拠隠滅の可能性などを総合的に判断し、逮捕のタイミングを慎重に決定します。
たとえば、事件直後に被害者が通報し、証拠がそろっている場合は、発生から数日~1週間以内に逮捕されることもあります。
一方で、被害届の提出が遅れた場合や、加害者を特定できていない場合には、数ヵ月あるいは数年経ってから逮捕されることもあるのです。
時間がどれだけ経過していても、逮捕される可能性は残り続けると考えておきましょう。
強姦(不同意性交等罪)の起訴率は?
不同意性交等罪で逮捕された場合でも、必ずしも起訴されるとは限りません。
実際には、不起訴処分になるケースのほうが多く見られます。
法務省が発表した「検察統計 2023年(e-Stat)」によると、2023年の不同意性交等罪に関する処理状況は、以下のとおりです。
処理区分 | 人数 | 割合 |
起訴処分 | 653人 | 約33% |
不起訴処分 | 1,303人 | 約67% |
└起訴猶予(証拠はあるが反省や示談により起訴を見送り) | 396人 | └不起訴処分のうち約30% |
└嫌疑不十分(証拠が不十分で立件できず) | 880人 | └不起訴処分のうち約68% |
└嫌疑なし(犯罪そのものがなかったと判断) | 6人 | └不起訴処分のうち約0.5% |
また、不同意性交等致死傷罪に関しても、以下のようなデータがあります。
処理区分 | 人数 | 割合 |
起訴 | 19人 | 約53% |
不起訴 | 17人 | 約47% |
└ 起訴猶予 | 5人 | └不起訴処分のうち約29% |
└ 嫌疑不十分 | 12人 | └不起訴処分のうち約71% |
これらの統計からわかるとおり、不起訴になる可能性は決して低くはありません。
とくに、不同意性交等罪では、3人に2人が不起訴処分となっています。
不起訴処分となった場合、その時点で刑事手続は終了し、釈放されるうえに前科もつきません。
一方で、起訴されてしまった場合は、たとえ最終的に無罪や執行猶予の判決となっても、被告人として長期間にわたり刑事手続きに関わる負担を強いられます。
起訴をできるだけ回避するためには、できる限り早期に弁護士へ相談して適切な対応を取ることが、現実的かつ合理的な判断といえるでしょう。
強姦で逮捕されたあとの流れ
強姦(不同意性交等罪)で逮捕されると、手続きの流れは以下のように進みます。
- 被疑者勾留(身柄事件の場合)
- 警察での取り調べ
- 検察への送致
- 起訴・不起訴の判断
- 被告人勾留
- 刑事裁判
ここから、それぞれ順に解説します。
1.警察での取り調べ
逮捕されると、まず警察署に連行され、取り調べを受けるために警察署内の留置場に身柄を拘束されます。
取り調べでは、事件の経緯や関与の有無などについて詳細に質問されます。
取り調べでの発言は弁解録取書や供述調書に記録され、発言の内容が今後の手続きに大きな影響を与える可能性があるので注意が必要です。
2.検察への送致
警察での取り調べが終わると、事件は検察に送致されます。
送致は逮捕から48時間以内におこなわれる必要があり、また送致を受けた検察官は24時間以内に勾留請求をするかどうかを判断しなければなりません。
つまり、逮捕から最長72時間(3日間)は、留置場や拘置所にて身柄を拘束されます。
3.勾留(留置場での身柄拘束)
検察官が勾留を請求し、裁判所が勾留を認めると、被疑者は最長10日間勾留されます。
また、必要があると判断されれば勾留はさらに10日間延長されます、つまり、逮捕後の勾留期間は合計で20日間に及ぶ可能性があるということです。
なお、勾留期間中は取り調べが続き、接見禁止の処分が付いていなければ家族との面会は可能ですが、警察職員が立ち会うなどの制限が課されます。
一方、弁護士との面会は原則として自由におこなえます。
4.起訴・不起訴の判断
勾留期間が終了するまでに、検察官は事件を起訴するか、不起訴とするかを判断します。
不同意性交等罪の起訴率は約33%です。
つまり、3件に1件程度の割合で起訴に至っているのが実情です。
5.刑事裁判
起訴されると、刑事裁判が開始されます。
裁判は通常、複数回の公判を経て進行し、最終的に判決が言い渡されます。
判決に不服がある場合には、控訴や上告を通じて争うことも可能です。
なお、刑事裁判全体における有罪率は99.9%と非常に高いです。
そのため、起訴された場合にはほぼ確実に有罪判決が下されてしまいます。
不同意性交等罪の法定刑は「5年以上の有期拘禁刑」であるため、特別な事情がない限り執行猶予が付く可能性は低く、実刑判決となるケースが大半です。
刑が確定すれば、刑務所での服役を余儀なくされます。
強姦で逮捕された場合にやるべきこと
不同意性交等罪で逮捕されたからといって、必ずしも悲観する必要はありません。
適切な対応を取ることで、処分の軽減や不起訴を目指すことも可能です。
ここでは、逮捕されたあとにおこなうべき3つの行動について紹介します。
できるだけ早く刑事事件が得意な弁護士に相談する
強姦で逮捕された場合、できるだけ早く刑事事件が得意な弁護士に相談することが重要です。
刑事事件では、逮捕から起訴・不起訴の判断が下されるまでの期間が非常に短く、初動の対応が処分の行方を大きく左右します。
そのため、弁護士による弁護活動を早期に開始できるかどうかが、不起訴や処分の軽減を実現できるかの分かれ目となるのです。
弁護士に依頼すれば、被疑者本人と接見して事情を聞き取り、取調べへの対応方針を整理してくれます。
また、黙秘権の行使や供述の際の注意点など、取調べを有利に進めるための具体的なアドバイスをもらえるでしょう。
被害者との示談を成立させる
被害者との間で連絡を取ることが可能な状況であれば、できるだけ早い段階で示談交渉を進めることも重要です。
示談が成立し、あわせて被害者が検察官に対して「処分を軽くしてほしい」といった内容の書面を提出した場合、起訴を免れたり、刑罰が軽減されたりする可能性が高まります。
ただし、性犯罪に関する事件では、被害者が示談に応じないケースが多く、交渉が難航することも少なくありません。
なかには、被疑者と直接関わること自体を避けたいと考えている被害者も多いでしょう。
そのため、示談を進める際には、必ず弁護士を通じて交渉することが重要です。
弁護士が間に入ることで、被害者の精神的負担を軽減しながら、適切な条件で示談を成立させやすくなります。
再犯防止に向けた取り組みを進める
起訴を免れるには、再犯防止に向けた具体的な取り組みを進めることも重要です。
たとえば、以下のような取り組みをおこなえば、検察や裁判所から「反省の意思がある」「更生に向けて真剣に努力している」と評価される可能性があります。
- 性犯罪の再発防止プログラムへの参加
- 性的衝動のコントロールに関する専門医のカウンセリング受診
- 心理療法や通院治療の継続
また、再犯防止の努力を見せることは、示談交渉において誠意を伝える材料にもなり、被害者側の心理的ハードルを下げるきっかけとなりえます。
さいごに|強姦事件の解決には弁護士のサポートが必要不可欠
本記事では、不同意性交等罪に該当するケースや逮捕後の流れ、逮捕された場合の対応すべきことなどをわかりやすく解説しました。
不同意性交等罪に該当する行為をしてしまった場合、逮捕・勾留・起訴といった厳しい刑事手続きが進む可能性があります。
また、職場での解雇や社会的信用の失墜など、日常生活にも深刻な影響を及ぼすリスクも高まるでしょう。
このような事態を回避するためには、できるだけ早い段階で刑事事件を得意とする弁護士に相談することが不可欠です。
弁護士のサポートを受けることで、取調べへの準備、被害者との示談交渉、再発防止に向けた取り組みなど、各場面に応じた適切な対応が可能になります。
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適切な対応をスピーディーに進めるためにも、ひとりで抱え込まず、まずは信頼できる弁護士に相談しましょう。

