スーパーなどで万引きをしてしまい、「その場で見つからなかったから大丈夫だろう」と考えていても、時間が経つにつれて「防犯カメラに映っているかもしれない」「警察が突然自宅に来るのではないか」と不安な気持ちが大きくなっていませんか。
万引きをしたときに現行犯で逮捕されなかったとしても、防犯カメラの映像や店員の証言をもとにあとから身元が特定され、後日逮捕されるケースは少なくありません。
逮捕されるか不安を感じる場合は、ひとりで悩まずに、できるだけ早く弁護士に相談して適切な対応をとることが大切です。
本記事では、万引き犯が後日逮捕される可能性や逮捕までの流れ、逮捕を回避するための対処法について解説します。
万引きは現行犯以外でも捕まる可能性はある!通常逮捕の2つの要件とは?
万引きは、店内で警備員や店員に見つかって「現行犯逮捕」されるイメージが強いかもしれません。
しかし、犯行の瞬間を捉えられていなくとも、後日「通常逮捕」という形で逮捕される可能性があります。
通常逮捕とは、捜査によって証拠が集まり、犯人と疑われる人物が特定されたあとにおこなわれる逮捕です。
警察が通常逮捕をするためには、次の2つの要件を満たす必要があります。
【通常逮捕(後日逮捕)をする際の2つの要件】
- 逮捕の理由があること(被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること)
- 逮捕の必要性があること(逃亡や証拠隠滅のおそれがないこと)
たとえば、店内の防犯カメラに犯行の様子から、警察は犯人や犯行日時、手口などを正確に特定されると、「逮捕の理由」があると判断されます。
また、警察や店舗からの呼び出しに応じない場合や、前科がある場合などは「逮捕の必要性」も認められます。
そのため、たとえ犯行から時間が経っていたとしても、後日逮捕される可能性は十分にあるのです。
実際に、警察庁が公表している「令和5年 刑法犯に関する統計資料」によれば、2014年から2023年までの10年間における万引き事件の検挙率は常に70%前後と、高い水準で推移しています。
年次 | 認知件数(件) | 検挙件数(件) | 検挙率(%) |
2014年(平成26年) | 121,143 | 86,784 | 71.6 |
2015年(平成27年) | 117,333 | 82,557 | 70.4 |
2016年(平成28年) | 112,702 | 78,131 | 69.3 |
2017年(平成29年) | 108,009 | 75,257 | 69.7 |
2018年(平成30年) | 99,692 | 71,330 | 71.6 |
2019年(令和元年) | 93,812 | 65,814 | 70.2 |
2020年(令和2年) | 87,280 | 62,609 | 71.7 |
2021年(令和3年) | 86,237 | 63,493 | 73.6 |
2022年(令和4年) | 83,598 | 58,283 | 69.7 |
2023年(令和5年) | 93,168 | 62,675 | 67.3 |
このように、万引きで逮捕される可能性は高いことを認識しておきましょう。
万引きが現行犯以外で逮捕された事例
2025年1月20日、滋賀県愛荘町に住む23歳の会社員を含む男性3人が、大型会員制量販店「コストコ東近江倉庫店」で、家庭用ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」1台を万引きした容疑で、滋賀県警東近江警察署に逮捕されました。
2025年1月9日午後8時ごろ、3人は共謀して、PS5をほかの商品で隠して店の外へ持ち出しました。
盗まれたPS5は、その日のうちに県内のリサイクルショップに持ち込まれ、売却されていました。
今回の事件では、店側が入店時に提示が必要な「会員カード」の情報などをもとに、関係者の身元を特定しました。
そして、事件発生から5日後の1月14日に、店側が該当人物を呼び出したところ、ほかの共犯者と一緒に来店したため警察へ通報し、3人の逮捕につながりました。
【参考元】滋賀県東近江市:コストコでPS5盗んだ疑い…店側が会員カード情報などで特定、5日後に店に呼び出し通報 : 読売新聞
万引きが現行犯以外で逮捕される場合の基本的な流れ|3ステップ
万引きが後日逮捕に至るケースでは、次のような流れで手続きが進みます。
- 被害者が警察に被害届を提出する
- 警察が捜査を開始して犯人を特定する
- 逮捕状が請求されて警察に逮捕される
ここでは、それぞれのステップについて詳しく解説します。
1.被害者が警察に被害届を提出する
万引きをしたあと、被害者であるお店が被害に気づくと、警察に被害届を提出します。
被害が発覚する端緒には、以下のケースが挙げられます。
- 万引きの目撃者が店員に知らせた
- 店舗が実施する棚卸の際に、実際の在庫数と記録にずれが生じていた
- 防犯カメラの映像に万引きの様子が記録されていた
とくに、棚卸の際に万引きが発覚するケースは少なくありません。
万引きはその場ではバレていなくても、あとでバレる可能性が高いことを覚えておきましょう。
2.警察が捜査を開始して犯人を特定する
万引きに遭ったお店から被害届が出されると、警察は事件の捜査を開始します。
警察は、監視カメラの映像や目撃者の証言をもとに、警察は犯人の顔や服装、行動パターンなどを詳しく調べます。
会員制の店舗であれば、入店時のカード情報や購買履歴、防犯タグの記録などから身元特定の手がかりを得る可能性もあるでしょう。
場合によっては、ほかの防犯カメラ映像と照合し、犯行前後の足取りを追跡することもあります。
3.逮捕状が請求されて警察に逮捕される
捜査の結果、犯人が特定され、万引きの証拠が揃った場合には、警察は裁判所に逮捕状の発行を請求します。
裁判所に「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があると判断されれば、逮捕状が発行され、警察は正式に逮捕に踏み切ります。
【関連記事】万引きで逮捕されるとどうなる?問われる罪や逮捕後の流れを解説
万引き犯が逮捕を回避するためにできる3つの対処法
万引きが発覚すると逮捕される可能性がありますが、逮捕のリスクを下げる方法もあります。
ここでは、主な対処法を3つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1.被害者に十分謝罪して弁償をする
まず大切なのは、被害者に対して心から謝罪し、被害をしっかりと弁償することです。
警察や検察が犯人を逮捕すべきか判断する際は、被害者の処罰感情の有無が重視されます。
そのため、加害者が謝罪と弁償をおこない、被害者との示談が成立していれば、逮捕を避けられる可能性が高まります。
たとえば、加害者本人や家族が謝罪の手紙を送ったり、直接会って謝罪したりすることで、被害者の気持ちが和らぐことがあります。
盗んだ商品の代金や損害分をきちんと支払えば、示談の成立に近づくでしょう。
2.できる限り早く自首・出頭をおこなう
逮捕を回避するためには、自首や出頭を早めにおこなうのも有効です。
「自首」とは、捜査機関が犯人を特定する前に犯人が自発的に罪を認めることをいいます。
自首することで、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが低いと判断されるので、逮捕の可能性が下がります。
一方で、「出頭」とは、被疑者としてすでに特定されている犯人が捜査機関に出向くことです。
自首とは認められませんが、出頭した姿勢が評価され、処分が軽くなる可能性があります。
3.弁護士に依頼して働きかけをしてもらう
万引きによって後日逮捕されるのが不安な場合は、弁護士に依頼して警察へ働きかけてもらうのもおすすめです。
逮捕が認められるための条件は、「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」があることです。
たとえば、「定職についている」「家族と同居している」といった事情があれば、逃亡のおそれが低いと判断されやすくなります。
また、被疑者が事実を素直に認めている場合は、証拠を隠滅する可能性も低いとみなされやすくなるでしょう。
弁護士は、これらの事情を裏付ける証拠を収集して警察に説明したり、上申書を提出したりすることで、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを客観的に説明してくれます。
さいごに|万引き事件が得意な弁護士がベンナビ刑事事件で探せる!
万引き事件で逮捕を回避したいのであれば、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。
とくに、万引き事件の対応経験が豊富な弁護士であれば、警察対応や被害者との示談交渉、自首や出頭のサポートまで、的確に動いてくれます。
万引き事件の対応を得意とする弁護士を探す際には、刑事事件に強い弁護士が多数登録している「ベンナビ刑事事件」を活用すると便利です。
ベンナビ刑事事件では、地域や対応分野、初回の無料相談の有無などの条件で弁護士を絞り込めるため、自分に合った弁護士をスムーズに見つけられます。
軽い気持ちでおこなった万引きでも、有罪判決が下される可能性は十分にあります。
今後の人生を左右しかねない問題だからこそ、早めに弁護士へ相談して、適切な対応を取りましょう。

