お金を取られた証拠がない場合、逮捕や有罪判決の可能性はあるか・警察は動くか解説

お金を取られた証拠がない場合、逮捕や有罪判決の可能性はあるか・警察は動くか解説
  • 「お金を取られた証拠がないのに、逮捕されたり有罪になったりする可能性はある?」
  • 「人からお金を盗んでしまった場合、逮捕・起訴されないためにはどうすればいい?」

他人からお金を盗んでしまった場合、証拠がないだろうと思っても逮捕されたり有罪になったりする不安が残るでしょう。

本記事ではお金が取られた証拠がない状態でも、逮捕や有罪判決の可能性はあり得るかや、お金を取られたことを証明できる有効な証拠、証拠がない状態で警察が動く可能性があるかについて解説します。

自分では「証拠がない」と思っても安心できません

本記事を読めば、証拠がないと想定される際の逮捕・起訴に関するリスクや、どうすれば逮捕・起訴を避けられるかを理解できます。

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お金を取られた証拠がない!そんな状態でも逮捕や有罪判決はあり得る?

お金を取られた証拠がない場合に刑事訴追されるリスクについて解説します。

現行犯であれば証拠がない状態でも逮捕される可能性はある

現行犯による逮捕とは、犯罪行為の最中や直後での逮捕を指します。

お金をとった現行犯であれば、犯行が明白であるためほかの証拠がなくても逮捕される可能性があるのです。

なお現行犯逮捕ができるのは、警察だけではありません。

被害者や現場に居合わせたほかの方でも犯人を逮捕可能です。

警察以外が逮捕した場合は、警察を呼んで犯人が引き渡されることになります。

まったく証拠がない状態なら、あとから逮捕される可能性は低い

現行犯で逮捕されることがなく、まったく証拠がない状態ならあとから逮捕される可能性は低いです。

現行犯逮捕に対し、警察が証拠をそろえて後日に逮捕することを、通常逮捕(後日逮捕)と呼びます。

通常逮捕の場合、裁判所が発付する逮捕令状が必要です。

そうして裁判所が逮捕令状を発行するためには、被疑者が犯罪行為をおこなったと客観的に証明できる証拠が求められます。

ただ自分では証拠がないと思っても、実際には防犯カメラの映像や目撃者証言などの証拠が存在するケースも少なくありません。

有効な証拠がみつかれば、当然ながら通常逮捕の可能性は高まります。

状況証拠だけでもあれば、逮捕される可能性はあり得る

防犯カメラの映像や自白のような直接的な証拠がなくても、お金を取ったことを示す状況証拠があれば逮捕される可能性はあり得ます

状況証拠とは犯行の事実を間接的に推測させる事実のことです。

状況証拠が複数集まることで犯人であろう人物が見つかり、逮捕に至る可能性は否定できません。

<状況証拠の例>

  • 犯行現場に残された指紋やDNA
  • 犯行時刻に犯行現場の近くにいたという目撃証言
  • 犯行時刻前に、正当な理由なく現場周辺にいたという目撃証言(犯行の下調べが疑われる)

有効な証拠が見つからなければ、逮捕されても起訴されない可能性が高い

逮捕されたとしても、お金をとったという有効な証拠がなければ起訴されない(不起訴となる)可能性が高いです。

不起訴になれば刑事裁判とはならず刑罰を受けることもありませんし、前科がつくこともありません。

有効な証拠が見つからず、不起訴となるケースとして以下2つがあげられます。

嫌疑なし犯罪行為をおこなった疑いがないとして不起訴処分になることです。有効な証拠が一切ないか、捜査を進める過程で真犯人が見つかったケースなどが該当します。
嫌疑不十分被疑者が事件を起こした疑いは残るが、犯行の事実を証明できる有効な証拠が発見されなかった場合のケースです。嫌疑不十分でも、嫌疑なしと同様に不起訴処分になります。

お金を取られたことを証明できる有効な証拠とは?

有効な証拠の有無で、逮捕や起訴がおこなわれる可能性についてみてきました。

それでは、お金を取られたことを証明できる有効な証拠とは具体的にどのようなものでしょうか。

以下、お金が取られたことを示す有効な証拠として、考えられるものをみていきましょう。

お金が入っていた財布などの盗品を持っていたという事実

お金が入っていた財布やバッグごと盗み、それを所持していたのであれば有効な証拠になります。

犯行現場から近い場所、犯行時刻から近い時間に所持していたことが発見されると、より有効な証拠として扱われるでしょう。

一方で「盗んだのでない」とすれば、なぜその物品を所持していたか入手方法・経路を説明できると考えられます。

その合理的な説明ができないのであれば、お金を盗んだ犯人であると推測されるのです。

なお財布やレジからお金を抜いたというケースでは、お金を所持していても直ちに有効な証拠とはいえません。

所持していたお金と盗んだお金が同一であると、見た目で証明できる可能性が低いためです。

犯行を裏付けることができる防犯カメラ映像

防犯カメラの映像に、お金を取った瞬間が映されていれば有効な証拠になります。

防犯カメラ映像は証言と違い記憶違いや見間違いはあり得ません。

そのため有効な証拠として扱われるわけです。

一方で防犯カメラが映していた角度や解像度などで、犯行の様子が鮮明に映っていないのであれば有効な証拠として扱えない可能性はあります。

犯行を目撃したという証言

お金をとった瞬間を目撃していたという証言も、有効な証拠として扱われます。

たとえば電車のなかで、乗客のポケットからお金の入った財布を盗んだ瞬間を目撃したといった証言です。

一方で犯行の瞬間以外を目撃したとしても、それだけで有効な証拠にはなりません。

たとえば犯行現場から逃げ出す姿を見たという証言は、場合によっては証拠のひとつとして扱われることはあるでしょう。

しかし、それだけで犯行の裏付けとはならず、犯人の逮捕に至るような有力な証拠とはならないわけです。

また目撃証言は記憶違い・見間違いも考えられ、防犯カメラの映像などと比べると信憑性は低いと考えられます。

警察や検察がその信ぴょう性を慎重に調査して、信じるに足ると判断されたときに有効な証拠として扱われるのです。

犯人自身の自白

犯人自身による自白は「証拠の王様」と言われるほど有力な証拠です。

自白は警察の捜査や判決に大きく影響すると考えられます。

一方で自白が特に有効な証拠であることから、警察が不法な取り調べにより無理やり自白を引き出すこともないとはいえません。

そこで憲法や刑事訴訟法では、強要された自白については証拠として扱えないとしています。

また自白だけで、被告人を有罪とすることはできません

お金をとったことで犯人を有罪とするには、自白を補強するための証拠が必要です。

この点についても刑事訴訟法で定められています。

第三百十九条 強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。
② 被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。
③ 前二項の自白には、起訴された犯罪について有罪であることを自認する場合を含む。
引用元:刑事訴訟法 | e-Gov 法令検索

窃盗事件では、自白に加えて窃盗の被害届が信ぴょう性を補強する証拠として必要とされます。

犯行現場に残された指紋やDNA

犯行現場に犯人の指紋や頭髪・皮膚などが残されている場合、お金を取った行為を推認する間接証拠・状況証拠として扱われる可能性があります。

たとえば、被害者の財布から被疑者の指紋が検出された場合や、被害者の自宅内で犯人の頭髪が見つかった場合などが挙げられます。

ただし、同居人の財布からお金を取った事案のように、犯行現場から被害者の指紋やDNAが検出されて当たり前の状況なら、証拠能力は否定されます。

盗難・窃盗事件で証拠がないと警察は動かない?捜査もされない?

お金を取られた証拠がなければ警察は動かないのでしょうか。

ここでは、お金を取られた証拠が不足している状況で、警察がどのような対応をするのかについて解説します。

被害届が提出されれば、警察が捜査を開始する可能性はある

お金を取られた被害者が、警察に被害届を提出することがあります。

被害届とは、捜査機関に対して犯罪被害にあった事実を申告する書類のことです。

被害届が提出されると捜査機関は犯罪事実があったことを把握して、捜査活動を開始する可能性があります。

ただし、後述の告訴状とは異なり、被害届が受理されたからといって、必ずしも捜査活動が開始されるわけではありません

被害届を受理した捜査機関が被害者などから事情を聴取したうえで、捜査活動を展開する必要性があると判断したときに限り、捜査活動が開始されます。

告訴状を受理した場合、警察は捜査を開始しなくてはならない

被害届とは異なり、被害者などの告訴権者が告訴状を提出してこれが受理されると、警察がお金を取られた件について捜査活動を展開します。

告訴状とは、被害者などが捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示をするための書面のことです。

被害届とは異なり、告訴状が受理されると、捜査機関は必ず捜査活動を開始します。

被害届に比べ告訴状提出のハードルは高い

告訴状が受理されると警察は必ず捜査活動を開始しますが、被害届に比べ告訴状の提出は難易度が高いです。

被害届であれば、警察署にある書式に必要事項を記入して提出するだけでもすみます。

一方で告訴状の場合、どのような犯罪がおこなわれどの罪に該当するかなど法律的な要件の記載も必要です。

また告訴状にあわせ十分な証拠を持参しないと、警察は「犯罪事実がはっきりしない」として受理してくれないケースもあります。

そのため弁護士などの専門家に、告訴状の作成を依頼する場合もあるのです。

捜査が開始されれば、事情聴取や証拠探しがおこなわれる

事件性があると警察が判断し被害届・告訴状が受理された場合、その時点で証拠がなくても事情聴取や証拠探しがおこなわれることになります。

被害者が証拠を見つけられなかった場合も、実際は周辺の防犯カメラが犯行の瞬間を映していたり目撃者がいたりするケースは多いです。

警察の捜査によって証拠が発見され、被疑者が事情聴取に呼ばれる可能性は十分にあります。

お金を盗んだ場合に科せられる刑罰は?

他人の財布からお金を抜き取るといったようなかたちでお金を盗んだ場合、窃盗罪に問われます。

窃盗罪に問われた場合の法定刑は、10年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金です。

拘禁刑と罰金刑のどちらが科せられるかは、被害の大きさや犯行の悪質性、同様の犯罪に関する前科の有無などによって決まります。

初犯であっても、被害の大きさなどによっては実刑判決もあり得る

他人の財布からお金を抜き取ったなど、窃盗の初犯であっても実刑判決になる可能性は十分にあります

初犯の場合に処分が軽くなる傾向があるのは事実ですが、必ず実刑判決にならないわけではありません。

窃盗罪の初犯であれば、拘禁刑が科されたとしても執行猶予がつくことが多いです。

ただし、罪が重くなる要因(以下)が積み重なると、初犯でも実刑判決になる可能性が高くなります

【窃盗事件の罪が重くなる要因の例】

  • 窃盗した額が100万円を超えるなど被害が大きい
  • 被害が弁済されていない
  • 犯行が悪質(組織的な犯行で計画性が高いなど)
  • 被告人がまったく反省していない
  • 窃盗の際に凶器を使った

お金を取ってしまった場合、逮捕や起訴を免れるためにすべきこととは?

お金を取ってしまった場合、事案の状況次第では、逮捕・勾留によって長期間身柄拘束されたり、有罪判決が下されて刑事罰を科されたりしかねません。

これでは、社会生活にさまざまな支障が生じますし、今後の社会復帰も困難になってしまうでしょう。

ここではお金を取ってしまった場合に、逮捕や起訴を免れるためどうすべきかを解説します。

まず被害者に謝罪し、お金を返す

お金を取るなどの窃盗事件を起こしたときには、できるだけ早いタイミングで被害者に謝罪をして、取ったお金を返してください

謝罪や被害弁償をすませれば、被害者が被害届の提出を思いとどまったり提出済みの被害届を取り下げたりしてくれる可能性も十分にあります。

仮に被害者が許してくれなかったとしても、謝罪や被害弁償をしているか否かが検察や裁判所の判断に影響する点はいうまでもありません。

これによって逮捕や起訴を回避できる可能性が高まるわけです。

弁護士に相談することも検討する

お金をとってしまったときは弁護士に相談することも検討しましょう。

弁護士に相談すれば、逮捕されないためや刑を軽くするためにはどうすればいいか個別の事案にあわせ適切なアドバイスをしてくれます。

また弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉を代行してもらうことも可能です。

自分で被害者に謝罪を試みて許してもらえない場合も、弁護士が示談交渉をすれば合意できるケースも少なくありません。

これらの活動により刑事事件化するのを防いだり、不起訴処分を獲得できたりする可能性が高まるのです。

被害届が提出され、警察から事情聴取のための出頭を命じられた際は、速やかに相談しましょう。

警察の捜査が開始され、逮捕・拘束されてしまった場合、スマートフォンなどの所持品は警察に預けることになります。

そうなると、自分で希望に合う弁護士を探せなくなってしまうのです。

また取り調べ前に弁護士へ相談すれば、取り調べでどう供述すればよいかもアドバイスしてもらえます。

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さいごに | お金を取ってしまったら、弁護士に相談を!

お金を取ってしまったら、警察から問い合わせがあるかどうかにかかわらず、念のために一度は弁護士に相談するべきだと考えられます。

弁護士に相談すれば、窃盗事件の状況を丁寧に聞き取ったうえで、今後どのように捜査機関や被害者に対応するべきかについてアドバイスをもらえるでしょう。

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監修記事
川崎さくら法律事務所
木村 洋平 (神奈川県弁護士会)
性犯罪・ストーカー・窃盗・薬物事件に豊富な解決実績をもつ。迅速なサポートを心掛けており、即日の接見も可能。家族が逮捕されてしまった方の相談にも対応している。
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アシロ編集部
編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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