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恐喝罪で逮捕されたらどうなる?無料相談できる窓口と弁護士に依頼するメリット
2024.02.13
保護責任者遺棄罪は、自分が保護すべき老年者・幼年者・身体障害者・病者を遺棄し、または生存に必要な保護をしなかった場合に成立する犯罪です。
保護責任者遺棄は懲役刑の対象とされており、逮捕・起訴されて有罪判決を受ける可能性があります。
重い刑事処分を避けるためには、早い段階で弁護士に相談しましょう。
今回は保護責任者遺棄罪について、構成要件・該当行為の例・逮捕後の手続きなどを解説します。
「保護責任者遺棄罪」とは、老年者・幼年者・身体障害者・病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、またはその生存に必要な保護をしなかった場合に成立する犯罪です(刑法第218条)。
保護責任者遺棄罪の保護法益については、生命・身体に対する危険犯とする学説と、生命に対する危険犯とする学説が対立しています。
いずれにしても保護責任者遺棄罪は、保護すべき者を遺棄する(または保護しない)行為が、その者の生命(または身体)を危険にさらす行為であることに注目して設けられた犯罪類型といえます。
保護責任者遺棄罪の法定刑は「3か月以上5年以下の懲役」です。
保護責任者遺棄罪は危険犯※であるため、傷害罪(刑法第204条)などの侵害犯※よりも法定刑が軽く設定されています。
危険犯:現実に法益侵害が発生していなくても成立する犯罪
侵害犯:法益侵害の発生が要件とされている犯罪
なお、遺棄・不保護によって現実に被害者の生命・身体が害された場合には「保護責任者遺棄等致死傷罪」が成立し、法定刑が加重されます(後述)。
保護責任者遺棄罪は、以下の構成要件をいずれも満たす場合に成立します。
保護責任者遺棄罪に当たるのは、老年者・幼年者・身体障害者・病者を遺棄し、またはその生存に必要な保護をしない行為です(本記事では、不保護も保護責任者遺棄罪に含めて解説します)。
老年者・幼年者・身体障害者・病者のいずれについても、単純遺棄罪(刑法第217条)と同様に、保護責任者遺棄罪の客体となるには「扶助を必要とする者」であることが必要と解されています。
「扶助を必要とする」とは、他人の扶持助力がなければ自ら日常生活を営むべき動作をできない状態と解するのが古い判例の立場です(大審院大正4年5月21日判決)。
その一方で、処罰範囲を限定する観点から、自分一人では生命に対する危険に対処できない状態とする見解もあります。
いずれにしても扶助の必要性は、年齢や障害・病気の名称などによって単純に判断されるのではなく、本人の知的能力や運動能力などを総合的に考慮して判断されます。
なお病者については、身体的・精神的に健康状態が害されている状態にある者を意味します。
慢性的な疾病状態にある者のほか、以下の者も病者に含まれると解されています。
「遺棄」とは、保護すべき者を場所的に隔離することによって、保護のない状態に置くことをいいます。
たとえば、以下のような行為は「遺棄」に当たり、保護責任者遺棄罪が成立する可能性があります。
「生存に必要な保護をしなかった」とは、場所的隔離によらずに保護すべき者を保護しないことを意味します。
たとえば以下のような場合には、保護すべき者の生存に必要な保護をしなかったと認められ、保護責任者遺棄罪が成立する可能性があります。
保護責任者遺棄罪は、老年者・幼年者・身体障害者・病者を保護する責任のある者(=保護責任者)についてのみ成立する身分犯です。
保護責任者たる地位は判例上、法令・契約・事務管理・慣習・先行行為を含む条理などを根拠として、幅広く肯定される傾向にあります※。
※一例として、
ただし不作為に対しても重い刑罰を科すことを考慮して、処罰範囲を限定するために、排他性などより強度の支配関係を要求する見解もあります。
保護責任者遺棄罪を犯し、それによって人を死傷させた場合には「保護責任者遺棄致死・致傷罪」が成立します(刑法第219条)。
保護責任者遺棄致死・致傷罪が成立する場合、保護責任者遺棄罪と傷害の罪を比較して、重い刑により処断されます。
(例)
保護責任者遺棄罪に当たる行為により、被害者を死亡させた場合
→傷害致死罪(刑法第205条)の「3年以上の有期懲役」が科される保護責任者遺棄罪に当たる行為により、被害者が病気に罹った場合
→傷害罪(刑法第204条)の「15年以下の懲役」が科される
なお被害者が死亡したケースにおいて、遺棄または不保護により被害者が死亡し得る具体的な危険を認識・認容していた場合には、保護責任者遺棄罪に加えて殺人罪(刑法第199条)が成立する可能性があります。
この場合、殺人罪と保護責任者遺棄罪は観念的競合となり(刑法第54条前段)、より重い殺人罪の法定刑(=死刑または無期もしくは5年以上の懲役)により処断されます。
保護責任者遺棄罪で逮捕されると、以下の流れで刑事手続きが進行します。
逮捕による身柄拘束は、最長で72時間続きます(刑事訴訟法第205条2項)。
被疑者は逮捕されている間、警察官と検察官による取調べを受けることになります。
被疑者には黙秘権があるため、取調べに回答するか否かは自由です。
検察官は、罪証隠滅または逃亡のおそれがあるため身柄拘束を継続すべきと判断した場合は、裁判官に対して勾留請求をおこないます。
裁判官は、勾留の理由と必要性がいずれも認められると判断した場合、勾留状を発します(刑事訴訟法第207条1項、60条1項)。
逮捕後72時間以内に勾留状が発せられなければ、被疑者は釈放されます。
裁判官によって勾留状が発せられた場合、被疑者の身柄拘束は逮捕から起訴前勾留に切り替わります。
起訴前勾留の期間は当初10日間、延長により最長20日間です(刑事訴訟法第208条)。
起訴前勾留の期間中は、逮捕期間と同様に取調べがおこなわれます。
逮捕時の取調べと同じく、被疑者には黙秘権が保障されています。
検察官は捜査の結果を踏まえた上で、被疑者に対する処分を決定します。
検察官の被疑者に対する処分は、以下の3種類です。
裁判所に対して、公判手続き(正式裁判)を通じた被疑者(起訴後は被告人)の処罰を求めます。
簡易裁判所に対して、略式命令による被疑者(起訴後は被告人)の処罰を求めます(刑事訴訟法第461条)。
略式起訴は、100万円以下の罰金または科料を求刑する場合であって、かつ被疑者の書面同意があるときに限っておこなうことができます。
被疑者の起訴を断念し、刑事手続きを終了させます。
犯罪事実の立証が困難な場合(=嫌疑なしor嫌疑不十分)のほか、社会における更生を促すべきと検察官が判断した場合にも、不起訴処分となることがあります(起訴猶予)。
保護責任者遺棄罪の法定刑は懲役刑のみであるため、略式起訴の対象外です。
したがって、公判請求(正式起訴)または不起訴処分のいずれかがおこなわれます。
保護責任者遺棄罪で起訴された場合、起訴前勾留から起訴後勾留に切り替わったうえで、引き続き被告人の身柄が拘束されます。
ただし被告人やその弁護人・親族などは、裁判所に対して保釈の請求が可能です。
保釈が認められた場合は、裁判所に保釈保証金を預けることを条件として、一時的に身柄が解放されます。
検察官による正式起訴から1か月程度が経った時期に、裁判所において公判手続きがおこなわれます。
公判手続きは、検察官が犯罪事実を立証し、被告人が反論する形で進行します。
被告人としては、罪を認めて量刑のみを争うか、罪を否認するかのいずれかの方針をとることになります。
公判手続きにおける審理が熟した段階で、裁判所が判決を言い渡します。
判決に対しては、高等裁判所への控訴が認められます。
さらに控訴審判決に対しては、最高裁判所への上告が可能です。
公判手続きにおいて有罪判決が確定した場合は、被告人に対して刑が執行されます。
ただし保護責任者遺棄罪の場合、科された懲役刑の期間が3年以下であれば、執行猶予が付されることもあります(刑法第25条1項)。
保護責任者遺棄罪の疑いで警察に取調べを求められた場合や、警察に逮捕された場合には、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。
取調べで供述した内容は、検察官による起訴・不起訴の判断や、刑事裁判の判決における考慮要素となります。
そのため、被疑者には黙秘権があることを踏まえたうえで、供述する内容は慎重に吟味しなければなりません。
弁護士に相談すれば、取調べに関するルールや心構えなどについて、具体的なアドバイスを受けられます。
刑事手続きの流れについても説明を受けられるほか、逮捕されている場合には家族との窓口も依頼可能です。
警察・検察による取調べについて適切に対処し、刑事手続きからの早期解放を目指すため、お早めに弁護士へご相談ください。
保護責任者遺棄罪の弁護を弁護士に依頼する場合、主に以下の費用が発生します。
「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)を参考に、各弁護士費用の目安額(いずれも税込)を紹介します。
実際の依頼費用は弁護士によって差があるので、無料相談などの際にご確認ください。
相談料は、弁護士と委任契約書を締結する前の法律相談について発生します。
30分当たり5,500円程度(税込)のケースが多いですが、無料相談を受け付けている場合もあります。
着手金は、弁護士と委任契約書を締結する際に支払います。
一括払いが原則ですが、経済的な事情を相談すれば、着手金の分割払いが認められることもあります。
<保護責任者遺棄罪の刑事弁護に関する着手金額の目安>
起訴前・起訴後の事案簡明な刑事事件 (一審・上訴審) | 22万円~55万円 |
上記以外の起訴前・起訴後の刑事事件 (一審・上訴審) 再審事件 | 22万円~55万円以上 |
※「事案簡明な刑事事件」とは、以下の①②を満たす刑事事件をいいます。
報酬金は、弁護士による対応が完了した段階で、事件処理の結果に応じて支払います。
<保護責任者遺棄罪の刑事弁護に関する報酬金額の目安>
起訴前・起訴後の事案簡明な刑事事件(一審・上訴審) | <起訴前> 不起訴:22万円~55万円 求略式命令:不起訴の報酬金額を超えない額
<起訴後> 刑の執行猶予:22万円~55万円 求刑された刑が軽減された場合:刑の執行猶予の報酬金額を超えない額 |
上記以外の起訴前・起訴後の刑事事件(一審・上訴審) 再審事件 | <起訴前> 不起訴:22万円~55万円以上 求略式命令:22万円~55万円以上
<起訴後> 無罪:55万円以上 刑の執行猶予:22万円~55万円以上 求刑された刑が軽減された場合:軽減の程度による相当額 検察官上訴が棄却された場合:22万円~55万円以上 |
※「事案簡明な刑事事件」とは、以下の①②を満たす刑事事件をいいます。
日当は、弁護士が出張した場合に発生します。
保護責任者遺棄罪の弁護活動について日当が発生するのは、たとえば逮捕された際の接見や、公判手続きへの出席などです。
<保護責任者遺棄罪の刑事弁護に関する日当額の目安>
半日(往復2時間超4時間以内) | 3万3,000円以上5万5,000円以下 |
一日(往復4時間超) | 5万5,000円以上11万円以下 |
保護責任者遺棄罪に関する対応や弁護活動について、相談できる弁護士に心当たりがない方は、「ベンナビ刑事事件」を活用するのが便利です。
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無料相談を受け付けている弁護士も多数登録されており、メールや電話でスムーズに問い合わせが可能です。
保護責任者遺棄罪は重大な犯罪であり、重い刑事罰が科される可能性も否定できません。
厳しい刑事処分を避けるためには、弁護士による適切な弁護活動が必要不可欠です。
保護責任者遺棄罪を理由に取調べを求められた方や、家族が保護責任者遺棄罪の疑いで逮捕された方は、「ベンナビ刑事事件」を通じてお早めに弁護士へご相談ください。