供述調書とは?作成までの流れや不利にならないための注意点を解説

供述調書とは?作成までの流れや不利にならないための注意点を解説

供述調書とは、警察や検察といった捜査当局が作成した書類で、事情聴取をした内容を記録したものです。

取調べを受けた者は、最後に供述調書の内容を確認し、署名・押印をすると法的な証拠として扱われるようになります。

供述調書によってその後の捜査や裁判の流れが決まることもあり、非常に重要な役割を担っているといえるでしょう。

一方で、一度署名・押印をしてしまうとあとから修正できなかったり、事実とは異なることを証言してしまったばかりに不利な状況になってしまったりするなど、非常に扱いが難しい面もあります。

本記事では、供述調書の法的な役割と作成されるまでの流れ、供述調書に署名する前に注意しなければならない点についてくわしく解説していきます。

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この記事を監修した弁護士
加藤孔明弁護士
加藤 孔明弁護士(神戸カトウ法律事務所)
当事務所はフットワークの軽さを強みとしております。ご相談いただければ、可能な限り迅速に対応させていただきます。ご家族やご自身が刑事事件に関与してしまったら、早期にご相談ください。

供述調書とは?法的な意味と証拠能力

供述調書とは、被疑者や参考人を取調べした際に、その内容を記録した書類のことを指します。

事件の経緯やアリバイ、目撃した内容などを一人称視点で語る形式で記録されています。

裁判における証拠には、物的証拠と供述証拠の2種類があります。

薬物の粉末や犯人の指紋がついた指紋がついた凶器やなどは物的証拠にあたり、被疑者や目撃者の証言などが供述証拠です。

つまり、供述調書はその後の流れを決める重要な証拠といえます。

たとえば、捜査が難航し物的証拠が出てこない場合、捜査当局は供述証拠によって犯人を特定・逮捕しようとするため、より一層供述証拠の重要性は高くなります。

供述調書が作成されるまでの流れ

取調べでは、捜査官(取調官)からの質問に答えます。

その内容を捜査官がメモし、被疑者の一人称視点でストーリーを作成します。

その内容を口頭で話しながら、別の警察官や検察事務官がパソコンに打ち込み、最後に印刷して内容をお互いで確認し、内容に問題がなければ署名・捺印をするという流れです。

警察官が捜査を担当するときは、手書きで書かれることもあります。

ここでは、逮捕された被疑者を想定し、具体的な流れと作成される供述調書の種類について説明します。

はじめに弁解録取書を作成

警察に逮捕されたあと、はじめに作成されるのが弁解録取書です。

弁解録取書とは、逮捕された理由とその内容に対する被疑者の言い分を記録するものです。

まず、警察から逮捕された理由と被疑事実の確認がされたあと、弁護士を選任できることの説明を受けます。

そのうえで、被疑者は被疑事実に対して弁解をする時間が設けられます。

なお、手続きは10〜15分と短い時間でおこなわれることが一般的です。

弁解録取書は供述調書ではないため、犯罪事実の核心となるような内容の記載はしません。

しかし、過去の判例では被疑者の弁解録取書も署名などの一定の要件を満たせば証拠として扱えると判断されています。

そのため、弁解録取書の作成においても慎重に回答する必要があります。

もし不安なのであれば、弁護士を呼んでから作成に応じるのもよいでしょう。

取調べで供述調書を作成

次に、警察による取調べで事件の詳しい経緯などが聴取されます。

その際作成される供述調書は、次のふたつです。

犯罪に関する事実の調書

犯罪に関する事実の調書とは、その犯罪の内容や経緯・事実確認などをまとめた調書です。

犯罪の事実や動機、事件後の行動など段階に応じて分けて作成されることが一般的で、ひとつの事件に対して複数作成されます。

犯罪に関する事実の調書は、起こした犯罪の内容、犯罪を起こした原因、事件後の行動など、事件内容に応じて、分けて録取をおこなうことが一般的です。

そのため、ひとつの事件につき、複数の調書で構成されるのが通常です。

作成が終わるとその内容を取調官が読み上げ、さらに被疑者も実際に調書を見て中身を確認したのちに署名・押印をして作成が完了します。

身上調書

身上調書とは、被疑者の職業やこれまでの生い立ち、家族構成や生活の様態などが記載された履歴書のようなものです。

一見するとそこまで重要ではないように思えますが、身上調書も裁判ではほぼ必ず証拠となります。

また、捜査においてはその人の交友関係や活動範囲などそこから重要な手がかりをつかめる可能性があるため、やはり重要な役割を担っているといっていいでしょう。

送致後は検察官も供述調書を作成

警察は逮捕から48時間以内に身柄を検察に送る必要があります。

これを送致といい、送致されたあとは検察による取り調べを受けることになります。

検察でも同様に供述調書を作成します。

検察の取り調べでは、警察がおこなった事実確認のチェックだけでなく、法律家として起訴すべきかどうかを判断するために取調べをおこないます。

検察が作成した供述調書も署名・押印後に訂正することはできず、証拠として扱われるため注意が必要です。

供述調書に署名する前に確認すべきこと

供述調書の作成後は、内容を確認したあとに署名・押印を求められます。

前述のとおり、供述調書は裁判やその後の捜査の流れを決める重要な証拠となるため、慎重な扱いが必要です。

そのため、署名・押印をする前に気をつけてほしいポイントを4つ紹介します。

供述調書に不備や不自然な点がないかチェックする

供述調書は一度署名・押印をしてしまうと、原則としてあとから修正することができません。

そのため、供述調書の内容は隅から隅まで必ず確認してください。

自分の話したことと記載されていることのニュアンスが違うということもあります。

そういったことがないかまで、しっかりと確認するようにしてください。

供述調書に訂正や追加を求めることができる

供述調書の内容を確認し、誤りがある場合は必ず訂正を求めましょう。

明らかな誤りではなくニュアンスの違いであっても、納得のいくまで訂正を求めるのがおすすめです。

また、場合によっては訂正を後回しにされるような発言であったり、ニュアンス違いだから訂正が不要であるかのような発言をされることもあります。

しかし、訂正した内容を確認するまで署名・押印はすべきではありません。

繰り返しになりますが、供述調書は重要な証拠であり、一度内容に合意してしまうとあとから訂正することができないため、署名・押印をするからには内容をはっきりと確認しておく必要があります。

黙秘権を行使することができる

話しにくい内容やまだ頭のなかで整理ができない内容に触れる質問であれば黙秘権を使って答えないという選択肢もあります。

黙秘権は冤罪を防いだり、不当な取り調べを受けて人権を侵害されることを防いだりするための正当な権利です。

とくに自分でも記憶が曖昧で事実関係が把握できていない内容については、不用意な発言は控えるべきです。

もし対応に困る質問を受けた場合は、弁護士に相談のうえ対処するのがよいでしょう。

嘘や虚偽の供述をしないこと

いうまでもありませんが、嘘や虚偽の発言をするのは控えましょう。

事情聴取で嘘の発言をしても罪に問われるわけではありません。

ただ、供述調書を作成されている時点である程度疑いの目を向けられている状況であり、その後の捜査で矛盾が発覚すると捜査当局からさらに疑いの目をかけられてしまいます。

逃亡や隠ぺいのおそれがあると判断されればその後の勾留の判断にも影響するため、質問に答えるのであれば嘘を言わないようにしましょう。

署名をしても供述調書が証拠にならない場合がある

実は、供述調書に署名をしても証拠にならない場合もあります。

具体的には次のようなケースです。

長時間や深夜におよぶ取調べだった場合

長時間におよぶ取調べは「取調べから解放されたい」という気持ちが働き、正常な判断ができないまま署名をしてしまう可能性があるため、証拠として扱われない場合があります。

明確な基準はありませんが、8時間を超えた場合は長時間といってよいでしょう。

そのほか、深夜に発生した事件で逮捕されるなどやむを得ない事情がある場合を除き、深夜の事情聴取は制限されています。

そのため、長時間におよぶ取調べと同様の理由から、証拠として認められない可能性があります。

自白の強要や暴力などがあった場合

自白の強要や取調べで暴力があった場合の供述調書も、証拠とは認められません。

長時間におよぶ取調べ同様、内容に合意することが難しい状況で作られた供述調書であれば、内容の信ぴょう性に疑いが残るためです。

このような取調べを受けた場合は、すみやかに弁護士を通じて抗議をするのがよいでしょう。

供述調書作成時に弁護士に相談するメリット

供述調書を作成されるということは、何かしらの形で捜査当局から事情聴取を受けている状況です。

そのようなケースではまず弁護士に相談して、どのように対応したらよいのか方針を決めることが重要です。

逮捕されたあとであれば、警察を通じて当番弁護士と接見できるよう依頼するのがおすすめです。

ここでは、弁護士に相談するメリットを2つ紹介します。

弁護士は取調べに関するアドバイスや指導ができる

取り調べをした内容は供述調書に記録されるため、不用意な発言や事実があいまいなまま証言をするのはとても危険です。

かえって不利になることもあります。

弁護士であれば今後の方針をもとにどのように取調べに応じればよいのかのアドバイスをもらえるため、減刑や保釈といったよい結果につながりやすくなります。

弁護士は被疑者の利益を守るために活動する

場合によっては、自白を強要や長時間拘束など、不当な取調べによって証拠を作ろうとしてくるケースがあります。

そのような取調べを受けた際には、弁護士を通じて警察署長や検察庁に対して抗議する必要があります。

取調べの録画義務がある事件はいまだ全体の3%程度で、ほとんどの取調べは密室でおこなわれています。

また、逮捕直後は家族や友人と面会することもできず、頼りになるのは弁護士だけです。

供述調書はその後の流れを決める重要な証拠のため、取調べを受ける場合はすみやかに弁護士に相談するのがおすすめです。

供述調書の作成で困ったら弁護士に相談するのがおすすめ

当番弁護士であれば逮捕後にすぐ依頼できる

逮捕されたあとであれば、当番弁護士を呼ぶことが可能です。

当番弁護士とは、刑事事件で逮捕された被疑者のために待機している弁護士のことで、逮捕後に一度だけ無料で相談することができます。

今後の取調べにはどう対応すればよいのか、不利な状況を避けるためにはどうしたらよいのかについてのアドバイスをもらえます。

不当な判決を回避したいなら私選弁護人へ依頼がおすすめ

当番弁護士は、一度しか相談に乗ってもらうことができません。

そのため、本格的にサポートを受けたいのであれば、私選弁護士に依頼するのがおすすめです。

当番弁護士との相性がよさそうであれば、当番弁護士をそのまま私選弁護人として雇うことも可能です。

私選弁護人を依頼するだけのお金がないという場合は、国選弁護人に依頼するのも手です。

国選弁護人であれば弁護士費用は国が負担してくれます。

ただし、銀行の預金などの資産が50万円以下でないと利用できないことと、弁護士を選ぶことはできないという点には注意してください。

さいごに

供述調書は今後の流れを決める重要な証拠のひとつです。

そのため、取調べを受ける際は発言の一つひとつに注意を払い、作成された供述調書は必ず内容を確認する必要があります。

ただ、慣れない取調べでうまく対処する自信がないという方も多くいるでしょう。

その場合は、まず弁護士に相談するのが賢明です。

逮捕後であっても、当番弁護士であればすぐに面会できますし、希望すればその後のサポートまでお願いすることも可能です。

不当な取調べを受けたり、冤罪になったりすることを避けるためにも、弁護士に相談してアドバイスをもらうのがよいでしょう。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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