- 検察や警察から取り調べを受けることになった
- 取り調べで供述調書を取られたけど、どんな効力があるの?
供述調書とは、警察や検察が取り調べの際に作成する供述内容を記録した書面です。
供述調書は、事件捜査や裁判の結果を左右するほどの効力がある法的証拠なので、何も知らずに供述調書を書かれてしまった場合、あなたは思わぬ不利益を被る可能性があります。
本記事では、供述調書の概要や作成の流れ、注意点やその後の流れなどを解説します。
また、供述調書の作成を拒否した場合のメリット・デメリットや押印(サイン)してしまった後の対処法についても触れていきます。
供述調書について正しく理解すれば、今後の人生は大きく左右するかもしれません。
これから後悔のない人生を歩むためにも、ぜひ参考にしてみてくださいね。
供述調書とは
供述調書とは、警察や検察といった捜査機関が被疑者や参考人から事情聴取を行った内容を記録した書類です。
取り調べを受けた者が内容を確認し、署名・押印をした段階で、その調書は法的な証拠として扱われます。
供述調書はその後の捜査方針を決定したり、裁判で有罪・無罪を判断したりする上で、非常に重要な役割を担っています。
なお、供述調書と似たものに「陳述書」があります。
陳述書は、当事者や証人が自らの経験や意見を記載した書面であり、裁判所に対して事実関係を伝えるために作成されます。
供述調書は主に刑事事件で、陳述書は主に民事事件で使用される点が大きな違いです。
供述調書の重要性と法的根拠
供述調書とは、被疑者、被害者、参考人等が取り調べで供述した内容を警察や検察官がまとめた書面です。
例えば、「自白」をした際は供述調書に記載され、検察官が起訴・不起訴の判断をする際の重要な証拠になります。
後に裁判へ発展した際も、供述調書に書かれている内容は証拠のひとつとして扱われます。
供述調書について、刑事訴訟法第198条では以下のように定められています。
刑事訴訟法
第百九十八条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
② 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
③ 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
④ 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
⑤ 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りではない。
一方、日本国憲法第38条では、被疑者や被告人には自己の意思に反したことは言わなくてもよい権利(黙秘権)が保障されています。
黙秘権とは、供述調書作成時にも適用される権利です。
また、もし違法な取り調べや自白の強要によって作成された供述調書があった場合、その調書は証拠として認められない可能性があります。
供述調書を作成する流れ
供述調書を作成する時は、一般的に以下のような流れに沿って進められます。
- 取り調べの実施
- 取調官による供述調書の作成
- 調書の読み聞かせ
- 内容の確認・訂正要望の有無
- 署名・押印(サイン)
一つひとつ解説します。
1.取り調べの実施
まず、警察官や検察官などの取調官が、被疑者や被害者、参考人から、事件に関する詳しい事情を聴取します。
通常は、取調室と呼ばれる個室で事件の経緯や動機、アリバイ、関係者などについて質問がおこなわれます。
取り調べでは、自身の記憶や認識をふまえて正直に話すことが求められます。
この場でのやり取り(供述)をもとに、供述調書が作成されます。
2.供述調書の作成
取り調べで得られた供述内容をもとに、捜査官が正式な書類として「供述調書」を作成します。
書面は、取り調べのやり取りを文章としてまとめた形式で作成されます。
供述調書は、後の捜査や裁判で重要な証拠となり得るので、作成する時は客観性と正確性が求められます。
なお、供述調書は以下のような2種類に分けられます。
犯罪に関する事実の調書
犯罪に関する事実の調書とは、警察などの捜査機関が作成する犯罪の内容や経緯、事実確認などをまとめた書類です。
この調書は、被疑者の供述や証拠資料を基に捜査官が作成します。
犯罪に関する事実の調書は、裁判において、被疑者の関与を立証するための重要な証拠となります。
身上調書
身上調書とは、被疑者の生い立ちや家族構成、職業、生活環境などの個人的な背景情報をまとめた調書です。
身上調書を作成する目的は、被疑者のパーソナリティを明らかにし、犯行の動機や情状酌量を判断する際の参考にするためです。
3. 調書の読み聞かせ
次に、供述調書の内容が被疑者や被害者、参考人が話した内容と相違がないかを確認します。
捜査官が調書を読み上げて内容を伝える「読み聞かせ」、または供述者自身が調書を読んで内容を確認する「閲読(えつどく)」のいずれか、もしくは両方がおこなわれます。
これは、刑事訴訟法で保障された供述者の権利とされています。文書の内容を正確に把握するために、時間をかけて内容をしっかり確認することが重要です。
4. 内容の確認・訂正要望の有無
作成された供述調書に過不足や誤解を招く表現などがあれば、この段階で具体的に訂正、追加、削除(増減変更)の申し出が可能です。
捜査官には、その申し立てを受け入れ、調書を訂正する義務があります。
5.署名・押印(サイン)
供述調書の内容に誤りがなく、自身の述べた内容通りであれば、署名・押印をします。
署名・押印をした段階で、その調書が本人の確認を経た正式な書面として法的な効力を持ちます。
内容に納得できない場合は、署名・押印を拒否することも可能です。
取り調べでは「弁解録取書」も作成される
取り調べでは、供述調書だけでなく「弁解録取書」が作成されます。
弁解録取書とは、被疑者が逮捕された直後に自己の弁解を述べる機会として作成される書類です。
通常、逮捕後すぐに警察官が被疑者から弁解を聴取し、その内容を弁解録取書として記録します。
主に記載されるのは、「自分の犯行に間違いはない」「自分はその犯罪を犯していない」といった被疑事実に関する内容です。
弁解録取書は、警察署へ連行された後あるいは検察庁へ送致された後短時間の取り調べののち作成されます。
弁解録取書は、被疑者の初期の主張を公式に記録するものであり、後の供述調書や裁判において参考にされる場合があります。
送致後は検察官も供述調書を作成する
警察は、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送る必要があります。この手続きを「送致」といいます。
送致後は、検察官による取り調べや警察から送られてきた捜査記録の確認だけでなく、必要に応じて供述調書を作成します。
警察での取り調べで作成された供述調書の内容に、検察官が疑問を持つケースもあります。
そのため、検察官の取り調べにおいても、自分の主張をしっかりと伝えて事実と異なる点があれば、遠慮なく指摘することが重要です。
供述調書の作成を拒否した場合のデメリット
供述調書は、被疑者の同意を得て作成されるため、被疑者には供述調書作成を拒否する権利があります。
供述調書の作成を拒否すれば、不利な内容の供述調書が作成されずに済むので、裁判の証拠にされなくなるというメリットがあります。
一方で、供述調書の作成を拒否した場合、いくつかのデメリットも生じます。
拒否すべきかどうかは、デメリットを理解した上で慎重に判断する必要があります。
それでは、デメリットを具体的に解説します。
取り調べが長くなる
供述調書の作成を拒否すると、捜査官は供述を得るために取り調べを継続する可能性が高まります。
供述調書の作成は、捜査の重要な部分を占めているので、多くの捜査官はそう簡単に拒否を受け入れてくれません。
その結果、取り調べの時間が延長されてしまい、被疑者にとって精神的・肉体的な負担が増えるおそれがあります。
長時間にわたる取り調べは、集中力や判断力を低下させ、本来であれば言わなくても良いことまで話してしまうリスクがあります。
肉体的・精神的な疲労は、冷静な判断を妨げて不利な状況を招くおそれもあるため、供述調書の拒否をするかの判断は慎重におこなうべきでしょう。
取調官の対応が厳しくなる
供述を拒否すると、取調官に「非協力的」と受け取られる可能性があります。
捜査官は、事件の真相を解明して証拠を集めることが仕事なので、被疑者が供述を拒否すると、「あなたのせいで捜査が難航する」と考え、心証が悪くなるおそれがあります。
その結果、取り調べ時の言葉遣いが荒くなったり、圧迫感のある態度を取られたりするおそれがあります。
しかし、前述したように供述調書の作成は被疑者の同意があって成り立つものです。
そのため、そのような状況に屈することなく、冷静に対応する姿勢が重要です。
身柄拘束の期間が長引く可能性がある
供述調書の作成を拒否し、取り調べが長引くと、勾留期間が延長されるリスクがあります。
日本においては、逮捕後最大で23日間の身体拘束が認められています。
供述調書の作成を拒否した場合、取調官が必要と考える取り調べも終わらなくなるため、勾留延長されてしまい、身柄拘束の期間が長引くかもしれません。
取り調べ中には黙秘権を行使できる
被疑者には、自己に不利益な供述を強要されない権利、すなわち黙秘権があります。
黙秘権を行使してずっと黙っていれば、不利な証言を避けられるので、自己に不利な供述調書が作成される心配がなくなります。
たとえば、あなたがある事件現場にいたせいで、被疑者として疑われているケースを例とします。
事件に関与していないにも関わらず、取調官に自分の主張を聞いてもらえずに「あなたが犯行に関与しているのではないか?」を問われた場合、黙秘権を行使すべきです。
なぜなら、警察官から被疑者として疑われている場合、どれだけ無実を主張しても被疑者に有利な供述調書は作成してもらえないおそれが高いからです。
それどころか、事実とは異なる供述調書を作成されてしまう可能性もあります。
ただし、黙秘を続けると、取調官が厳しくならう可能性もあるため、黙秘権の行使をするかどうかは慎重に判断しましょう。
供述調書にサインする前に確認すること
供述調書にサインする時は、頭に入れておくべき重要なポイントが3つあります。具体的には以下のとおりです。
- 内容・ニュアンスに間違いがないか確認する
- 訂正が必要な場合は申立をする
- 納得できるまで署名・押印しない
原則として、一度正式に認めた供述調書は撤回できないので、サイン・押印は慎重におこなうことが重要です。
これから解説する内容をしっかりと理解しておきましょう。
内容・ニュアンスに間違いがないか確認する
供述調書は、一度署名・押印をしてしまうと、原則として後から修正はできません。
供述調書の最終確認は被疑者・被告人に委ねられるので、事実と異なる内容が記載されていないか、必ず隅々まで確認しましょう。
なお、自分の話した内容と捜査官が記録した内容のニュアンスが微妙に(大きく)違う、というケースもあります。
また、警察官や検察官が特定の答えを引き出すために意図的に誘導尋問を行う場合も。
自分の証言と供述調書の内容がズレていないか確認しましょう。
証言の内容が大きく変わってしまっているケース
最も注意すべきは、証言の内容が大幅に変わってしまっているケースです。
必ず確認し、訂正するようにしましょう。
ケース①│明確な意図があるように書かれてしまっている
証言:「カメラアプリを誤って起動してしまい、そのままの状態で持ち歩いていた。」
供述調書の内容:「被疑者は、カメラを起動したままスマートフォンを持ち歩き、撮影の準備をしていた。」
ケース②│証言していない内容も書かれてしまっている
証言:「商品を手に持っていたが、他の商品を見ているうちに、うっかりポケットに入れてしまった。」
供述調書の内容:「被疑者は、商品をポケットに入れ、周囲を確認しながら店内を移動した。」
証言の一部が切り取られてしまっているケース
見落としがちな点として、証言の一部が切り取られてしまっている場合です。
例え事実であっても、自分の意図と異なる供述調書となってしまうため、訂正を求めましょう。
ケース①│犯行の意思がなかったことを切り取られている
証言:「意図せずカメラアプリを起動したままスマホを持ち歩いていたが、撮影はしていない。」
供述調書の内容:「被疑者は、カメラを起動した状態でスマートフォンを女性に向けていた。」
ケース②│経緯を切り取られている
証言:「商品を手に持ってレジへ向かう途中で、他の商品を見ようとした際にポケットに入れ、会計を忘れて店を出てしまった」
供述調書の内容:「被疑者は、商品をポケットに入れた後、会計をせずに店を出た。」
訂正が必要な場合は申立をする
供述調書の内容に誤りがある場合、訂正の申立が可能です。
訂正の申立は、書面ではなく口頭のみで構いません。
どの部分をどのように訂正してほしいのかを具体的かつ明確に伝えましょう。
例えば、「〇〇という表現は、△△という意味で言ったのではありません。□□という意味です」といった形で、具体的に指摘することが重要です。
捜査官には、あなたの申し立てを正確に記録し、訂正に応じる義務があります。
納得できるまで署名・押印しない
供述調書に署名・押印するイコール、その内容を認めたことになります。
内容に納得した上で署名・押印すれば、その後の捜査や裁判であなたが不当な状況に巻き込まれるのを防げます。
記載内容を十分に確認せずに署名・押印してしまうと、それが不利な証拠として扱われてしまう可能性が高いため、必ず隅々まで確認しましょう。
サイン・押印をしたその後は訂正できない
前述したとおり、署名・押印した供述調書は原則として訂正できません。
なぜなら、署名や押印は供述調書の内容を最終的に確認し、承認したことを意味するからです。
ただし、例外的なケースもあります。
例えば、違法な捜査によって作成された供述調書は、証拠として認められないケースがあります。
しかし、原則としては訂正できないということをしっかりと覚えておきましょう。
供述調書に何らかの不明点や疑問点がある場合は、その場で必ず解消することが大切です。
サインした供述調書が証拠にならないケース
ただし、供述調書にサイン・押印したとしても、正式な書類として認められない場合があります。
そのような場合に共通している点は、「警察官や検察官が自身の立場を利用し、被疑者を不当に不利な状況に追い込んだケース」です。
具体的な事例を理解しておけば、もしあなたが似たような状況に陥った時も、冷静に対処できるはずです。
これらのケースは、決して他人事ではありません。誰にでも起こりうる可能性があることを認識し、しっかりと頭に入れておきましょう。
長時間の取り調べで作成された
被疑者が長時間にわたる取り調べを受けながら作成された供述調書は、取り調べでの自白が被疑者の意思でなされたのかが疑われ、証拠能力が否定される可能性があります。
長時間におよぶ取り調べは、被疑者に大きな精神的・肉体的ストレスがかかり、「一刻も早く取り調べから解放されたい」という気持ちを強く抱かせます。
その結果、正常な判断ができないまま、捜査官の誘導に乗ってしまい、署名・押印をしてしまうおそれがあるのです。
以下は、実際に長時間の取り調べがおこなわれたケースです。
問題点:
警察官が長時間の取り調べをおこない、黙秘権を侵害するような発言をした事例
担当弁護人から報告された事案の概要等:
・同居する子(成人)に対する暴行(DV)被疑事件。被疑者には適応障害等の精神疾患があった。
①午後3時から午後11時まで参考人として取り調べ、午後11時に逮捕した後も翌午前4時まで取り調べ。
②「精神障碍者手帳はないの?」という旨の発言を、威圧的かつ侮辱的な言い方でした。
③その後、黙秘に転じると。「弁護士に言われたのか」「なんでそんなことするのか」という旨の発言を威圧的な言い方でした。録音録画なし。
・申入れに対し、主任検察官から回答。指摘の言動はあったが、威圧的な態度などはとっていないという回答。ただし検察官から被疑者の特性や黙秘権に配慮するよう指導した、と説明があったとのこと。
・略式請求で終わった。
現在、警察による取り調べは1日あたり8時間以内とされており、8時間以上おこなう場合は警察本部長又は警察署長の承認が必要となります。
なお、取り調べができる時間帯は、基本的には午前5時から午後10までの間です。
深夜に発生した事件で逮捕されるなどのやむを得ない事情がある場合を除き、深夜の事情聴取は禁止されています。
脅迫によって作成された
取り調べ中に、捜査官から脅迫的な言動を受けて作成された供述調書も、任意性が否定され、正式な証拠として採用されない可能性があります。
なぜなら、脅迫は被疑者の自由な意思決定を妨げ、真実とは異なる供述を強要する行為だからです。
問題点:
・警察官が、「あなたがやったのだろう」という旨を行って余罪の供述を強要した事例
担当弁護人から報告された事案の概要等:
・特殊詐欺の受け子事案
・取り調べ時に交通系ICカードの履歴を示し、余罪につき「あなたがやったのだろう」「早く言え」という旨を言って威圧し、被疑者が覚えていないというと「ふざけるな」「しらばっくれるな」「反省してないではないか」という旨を言って威圧・人格否定を繰り返した。
・申し入れ後は担当警察官交代。申入れに対する応答はなし。
もし、脅迫的な取り調べを受けたと感じたら、速やかに弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。
利益供与によって作成された
捜査官が被疑者に対して、供述の見返りとして利益を約束して作成された供述調書も、任意性が疑われ、証拠能力が否定される可能性があります。
例えば、「自白すれば刑を軽くする」「自白するまでトイレに行かせない」といった提示は、利益供与の典型的なパターンです。
利益供与による取り調べは、被疑者に事実とは異なる供述をさせるきっかけとなる行為です。
「虚偽の供述をすれば利益を得られるかもしれない」という状況は、被疑者の認知を歪めるだけでなく、事件に隠された真実の解明を妨げてしまうおそれがある不当な行為です。
供述調書に署名・押印してしまった後の流れと注意点
何度も述べたとおり、供述調書に署名・押印してしまった後は原則として撤回できません。
署名・押印した後に後悔してしまわぬよう、訂正箇所がないかを十分にチェックすることが非常に重要です。
ここでは、署名・押印する前に供述調書の訂正を申し立てる時の流れと、その後の対策について解説します。
もし、供述調書の内容に疑問や不安を感じたら、以下の内容を参考にしながら冷静に行動しましょう。
①署名・押印する前に内容の修正を求める
供述調書は、取調官が被疑者の供述を基に作成します。
ただし、供述を聞いた取調官の受け取り方次第で、被疑者の意図とは異なる表現で書かれてしまう可能性は否定できません。
あなたに不利な供述調書が作成されるリスクを減らすためにも、署名・押印前に必ず内容を詳細に確認し、少しでも事実と異なる点があれば、速やかに訂正を申し出ましょう。
供述調書は、取締官が文章を読み上げて被疑者に確認してもらった後に署名・押印をします。
読み上げてもらった際に、誤りや不明確な点があれば具体的に指摘し、修正が必要であれば正確な内容に訂正してもらいましょう。
②修正してもらえない場合は署名・押印を拒否する
被疑者は、供述調書の内容に納得できない場合、署名・押印を拒否する権利があります。
押署名・押印の拒否権は、刑事訴訟法第198条第5項で以下のように認められています。
【刑事訴訟法198条5項】
被疑者が、調書に誤りのないことを申し立てた時は、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。
法律上、被疑者が署名・押印を拒否した供述調書は、裁判の場で証拠として認められません。
つまり、署名・押印を拒否することは、自分を守るための有効な手段となり得るのです。
もし、取調官が修正に応じてくれない時は、署名・押印を拒否することを躊躇う必要はありません。
③弁護士に相談して今後の対応方法について話し合う
供述調書に関する問題や取り調べに関する不安がある際は、早期に弁護士に相談することが最善です。
弁護士は法律のプロであり、あなたの状況を客観的に分析し、最善の対応策をアドバイスしてくれます。
さらに、弁護士は取り調べに対する対応方法や供述調書の確認・修正手続きに関する具体的なアドバイスも可能です。
さらに、被疑者の権利を守るために取り調べへの立ち会いなども相談できます。
他にも、署名・押印の拒否が必要な場合の対応やその後の法的手続きについても、全面的にサポートしてくれます。
供述調書を作成される前に弁護士に依頼するのがおすすめ
弁護士は法律の専門家であり、供述調書の作成においても、適切な法的知識を提供してくれます。
弁護士のサポートを受ければ、供述調書作成時の法的リスクなどを最小限に抑えられます。
一般的に、弁護士に依頼すると50万円以上の依頼費用がかかりますが、法的リスクを回避し、かつ時間と労力を大幅に削減できる点を考慮すると、費用対効果は高いと言えるでしょう。
特に、供述調書はその後の捜査や裁判に大きな影響を与える可能性があるので、弁護士に直接相談するのがいいでしょう。
ただし、1から弁護士を自分で探すのは手間がかかるので、ベンナビ刑事事件を活用してあなたに合った弁護士を探すのがおすすめです。
早い段階で弁護士に相談し、適切なサポートを受けるのを強くおすすめします。
供述調書作成を弁護士に相談するメリット
供述調書の作成を弁護士に相談することには、さまざまなメリットがあります。
取り調べに同席してくれる可能性がある
日本の刑事手続では、弁護士が取り調べに立ち会う権利は法的には認められていません。
弁護士に取り調べへの立ち会いを求めることはできますが、捜査機関側から断られるケースが多いのが現状です。
しかし、取り調べの前後に弁護士に面会を依頼すれば、適切なアドバイスの下、不当な取り調べに対処するための準備ができます。
さらに、近年は取り調べの可視化(録音・録画)が進められています。
弁護士に記録の確認を依頼すれば、取り調べが適切に行われたかどうかを判断してもらうことも可能です。
供述調書の内容をチェックしてくれる
弁護士は、供述調書の内容が被疑者の真意を正確に反映しているかを確認し、不利な記載や誤解を招く表現がないかをチェックします。
被疑者には、供述調書の内容に納得できない場合、署名・押印を拒否する権利がありますが、取り調べの雰囲気に圧倒されてなかなか言い出せない人も決してゼロではありません。
そこで頼もしい味方になってくれるのが、弁護士です。
弁護士は、第三者目線からアドバイスをしてくれる法律の専門家です。
供述調書の内容に納得がいかない時は、被疑者に対して供述調書の訂正を申し立てる権利があることを冷静に伝え、サポートしてくれます。
もし、供述調書の作成過程で捜査官による誘導や圧力などがあった場合は、弁護士にその旨を主張し、供述調書の証拠能力に異議を唱えてくれるでしょう。
減刑や保釈などの結果につながりやすくなる
弁護士は、被疑者の状況や事件の内容を踏まえて、適切な弁護活動を行います。
具体的には、被疑者が反省していることや再犯の可能性が低いことを示す資料を収集の上、検察官や裁判所に提出し、勾留の阻止や減刑につながるリスクを抑えてくれます。
また、弁護士は被害者との示談交渉を円滑に進めることが可能です。被害者の許しを得られれば、起訴猶予や執行猶予といった有利な結果につながりやすくなります。
さらに、保釈請求においても、弁護士は被疑者の逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを主張し、早期の身柄解放を目指します。
被害者との示談交渉を円滑に進めやすくなる
弁護士は、被害者との示談交渉において、法律の専門知識と交渉経験を活かして適切な対応を行います。
被疑者自身が直接交渉を試みると、感情的な対立や誤解が生じるおそれがあります。
しかし、弁護士が代理人として交渉すれば、冷静かつ客観的な話し合いが可能となります。
示談の内容や条件についても適切に助言し、被疑者にとって最良の結果を目指してくれるため、被疑者の精神的な負担も軽減されます。
示談が成立すれば、被害者の処罰感情が和らぎ、刑事処分においても有利に働くことが期待できるでしょう。
法律問題や実生活への影響にも配慮してもらえる
弁護士は、刑事手続における弁護活動だけでなく、被疑者の社会生活や家族関係などの実生活への影響にも配慮してくれます。
被疑者が勾留・逮捕された場合も、家族の職場や学校に与える影響を最小限に抑えるためのアドバイスや家族への説明・対応もサポートしてくれます。
また、弁護士は、再犯防止のためのカウンセリングや社会復帰支援など、被疑者が更生して社会に適応できるような支援策を提案してくれるケースもあります。
供述調書に関するよくある質問
最後に、供述調書に関するよくある質問を解説します。具体的には以下のとおりです。
- Q.供述調書は必ず作成しなければいけないの?
- Q.供述調書にサインを拒否したらどうなるの?
- Q.家族が逮捕されたが、供述調書について相談できる?
本記事のおさらいもふまえて、供述調書にまつわる不安や疑問点を解消しておきましょう。
Q.供述調書は必ず作成しなければいけないの?
結論として、必ず作成する必要はありません。
なぜなら、供述調書は捜査機関が被疑者や参考人の証言を公的に証明する重要な書面ですが、供述者には供述を拒否する権利(黙秘権)があるからです。
ただし、供述を拒否した場合、あなたへの心証が悪くなり、取り調べが長引く可能性もあるため、状況に応じた適切な判断が求められます。
Q.供述調書にサインを拒否したらどうなるの?
被疑者の署名も押印もない供述調書は、裁判の証拠として認められません。
たとえ供述した内容が全て書かれていても、被疑者が署名と押印を拒否すれば、調書は法的効力を得られません。
なお、供述調書に署名・押印をした後は、拒否してもその供述調書の撤回は不可能です。
ただし、被疑者にとって明らかに不利な状況で取り調べが進められた上で作成された供述調書の場合、署名・押印後も例外的に撤回が認められる可能性があります。
もし、そのようなケースに当てはまる場合は、速やかに弁護士に相談しましょう。
Q.家族が逮捕されたが、供述調書について相談できる?
家族が逮捕された場合、供述調書の作成や取り調べ対応について弁護士に相談できます。
逮捕直後に弁護士に相談し、適切に対応することで、勾留を阻止できる可能性が高まります。
さいごに|供述調書の作成や手続きにお悩みの方はベンナビ刑事事件で
供述調書に関する手続きや対応は、今後の刑事手続きに大きな影響を及ぼす可能性があります。
「不当な取り調べを受けた」「身に覚えのない罪を着せられようとしている」という方は、弁護士への依頼を検討しましょう。
また、そこまでいかなくとも、自分に不利な供述調書が作成されるリスクを最小限にしたい方も、専門家である弁護士の力を借りた方が良いかもしれません。
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