その他刑事事件
恐喝罪で逮捕されたらどうなる?無料相談できる窓口と弁護士に依頼するメリット
2024.02.13
公文書偽造とは、市区町村の役所・警察署といった公務所・公務員から入手できる文書・図面などを偽造することです。
公務員たちは犯罪だとわかったら告訴・告発する義務があります(刑事訴訟法第239条2項)ので、刑事事件化は避けることができません。
もし、出来心で別人や架空人の運転免許証の作成や、印鑑証明をわざと違う印鑑で作成したなどの偽造をしてしまうと、取り返しのつかないことになりかねません。
今回は、公文書偽造の罪に問われる要件や、万が一逮捕されてしまったときの対処法などについて解説していきます。
公文書偽造とは、免許証をはじめとした身分証明書・印鑑登録証明書のように役所で入手できる書類などを偽造する行為を指し、偽造するだけで「公文書偽造罪」という罪に問われることがあります。
また、それらを使用しようとした場合は「不正使用罪」という罪も追加されます。まずは、公文書偽造に関して理解するための基礎知識などについて解説していきます。
そもそも公文書とは、国や地方自治体・その他公共団体などの公務所や公務員により作成される書類・図面のことです。具体的には、下記などの書類が該当します。
下記のように、都道府県の役所や市区町村で配布される文書は公文書とされます。
裁判所や公証役場で作成される書類も公文書となります。具体的には下記のとおりです。
公務員などがその職務上利用する可能性のある、あらゆる文書も公文書の扱いとなります。具体的には下記のとおりです。
上記のとおり、公文書には一般的な市民が入手可能な書類から、公務員が独自に作成し保管が義務付けられている書類まで、様々な文書が公文書として数えられます。
委託事業のためのメール等も公文書となります。公務員の方や公務員とやり取りをする事業者の方は、安易にメールの削除や手紙の削除などをしないようにしましょう。
公文書偽造罪には、「偽造」と「変造」の2つの行為が定義されています。それぞれ簡単に解説していきます。
偽造とは、作成権限を持たない他人が、作成権限を持つ人間の名義を勝手に利用して文書を作成することです。
例えば、運転免許のデザインをまねて運転免許証を作成することなどが該当します。
この他、偽造には作成権限がある人が虚偽の内容で文書を作成する「無形偽造」という行為も存在します。
例えば市役所の職員が存在しない人物の住民票を作成するなどといった行為が該当します。
変造とは、もともとあった文書の内容を改変する行為を指します。
例えば、交付された運転免許証の有効期限の書き換えや、土地台帳の図面を広く書き換えるといった行為が該当します。
公文書は発行元の印章・署名の有無によって、有印公文書と無印公文書に分類できます。
例えば運転免許証・印鑑証明書・納税証明書などは公安委員会や役場の印章や署名が押印されていますので、有印公文書となります。
土地台帳付属の地図などはこうした押印は存在しないため、無印公文書となります。
有印公文書のほうが、印章・署名があり信頼度が高いことから、偽造・変造に対する罪が重くなっています。
具体的には、無印公文書は3年以下の懲役または20万円以下の罰金となっているのに対し、有印公文書は1年以上10年以下の懲役です。
公文書偽造と似たような内容で、私文書偽造という罪も存在しています。私文書とは、公文書以外の文書全てです。
具体的には下記の内容などが私文書偽造に当てはまります。
私文書偽造にも偽造と変造があり、印鑑や署名の有無などによって有印・無印に分類可能です。
私文書偽造は公文書偽造よりも罰則は軽く設定されています。例えば無印私文書偽造罪は1年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
とはいえ、私文書の偽造も立派な犯罪行為です。公文書と同様、「うっかり出来心で」といった冗談は通じませんので、犯罪に手を染めないのが一番です。
公文書偽造はただ文書を偽造しただけでも成立する犯罪行為ですが、そのほかにも犯罪として成立する要件はいくつかあります。
公文書偽造が成立する構成要件についてそれぞれ解説していきます。
「行使の目的」とは、偽造した書類を利用する目的があるということです。
偽装文書を真実であると誤認させ、自分に有利な条件に設定したり、不利を回避したりする意思があれば、「行使の目的」として成立します。
「行使の目的」には、実際に使ったかどうかは成立要件に含まれていません。なにか目的があって文書を偽造することそれ自体が「行使の目的」として成立します。
なお、このように実際に被害がない場合でも、その危険性があれば罪となることを、法律用語で「抽象的危険犯」と呼びます。
万が一公文書偽造で捕まった・捕まりそうという方は、裁判中に耳にする可能性があるので覚えておきましょう。
有印公文書であると認められるには、公務所もしくは公務員の印章・署名が使用されている必要があります。
印章とは、一般的にいうとハンコのことです。文書偽造においては稟議の認印や郵送物の受取印も印章として扱われる場合があります。
ただし、公務員の仕事でよく見られる「公印省略」という表記は印章として機能しません。公印省略とは権利義務の発生に直接かかわりのない文書でよく利用されます。
署名とは、自筆で自分の氏名を文書にサインする行為またはサインした氏名そのもののことです。
上記のような公務所もしくは公務員の印章や署名を使って公文書を偽造・変造した場合に犯罪が成立します。
そもそもの公文書の定義として、公務所もしくは公務員の作成すべき文書であることが挙げられます。
このため、前述の印章や署名の有無にかかわらず、公務所や公務員が作成する文書は全て公文書として取り扱われます。
もし仮に、印章や署名がない文書だとしても、偽造や変造をすれば無印公文書偽造罪となりますので注意しましょう。
無印公文書として取り扱われるものは、公務所・公務員が作成したものに限りません。
戸籍の除票や引っ越しの転居届など、公文書作成のため市民から受け取った書類もすべて公文書となります。
公文書の偽造行為とは、公務員や公務所職員以外の人間が勝手に作成すること以外にも、公務員や公務所職員が虚偽の内容で作成することを指します。
また、同じ公務員でも、勤める部署によって作成できる文書の権限が異なります。例えば埼玉県庁職員が東京都庁の作成するべき文書を作成した場合、公文書偽造となります。
なお、公文書偽造には権限がない人間が作成した場合の有形偽造と、権限のある人間が虚偽の内容で作成する無形偽造があります。
私文書は一部の場合、無形偽造の罪には問われませんが、公文書の場合はどちらの偽造でも罪になります。
ちなみに、もし何かのミスで誤記載の公文書が作成されてしまったら、「行使の目的」の有無が犯罪の焦点となります。
行使の目的がないと判断されれば、職場内で担当者の処罰だけで済まされることがほとんどです。
公文書偽造が発覚した場合、公務員はその職務として犯罪を告訴・告発する義務があります。このため発覚した時点で逮捕・刑事事件化は免れません。
以下では、公文書偽造が発覚した後の流れについて解説していきます。
公文書偽造は発覚した時点で告訴・告発されます。通常は、その後警察が捜査活動を開始し、裁判所から逮捕令状が出たら逮捕されます。
ただし、公文書偽造は発覚したときの被疑者が公務員か民間人かなどによって流れが異なる場合があります。それぞれ解説していきます。
公務員が公文書偽造を行う場合、逮捕されず懲戒免職だけで済む場合もあります。
これは、前述のとおり犯罪として立件するには「行使の目的」を証明する必要があり、単なる重大なミスとして処理されることもあるためです。
民間人が公文書偽造した場合、作った時点で逮捕されることはあまりありません。
公文書偽造行使罪といった関連犯罪についての調査などをしていくため、芋づる式に罪が重くなっていく可能性が高いです。
なお、警察の逮捕は基本的には何の前触れもありません。突然警察官が令状を携えて来て、そのまま逮捕されます。逮捕状が出ているかどうかを確認する方法も存在しません。
ただし、場合によっては逮捕前に任意同行で呼び出される可能性もあります。しかし、民間人の公文書偽造は行使の目的がある前提で捜査が進みますので、ほとんどの場合は行使罪・詐欺罪などが紐づいて立件されます。
通常、逮捕されてから最大48時間は警察により拘束されます。その後検察に身柄を引き渡され、24時間以内に不起訴処分による釈放や起訴猶予、起訴が決定されます。正味3日は拘束されると覚えておきましょう。
なお、3日間で釈放や起訴が判断できないようなケースでは、その後最大10日間の勾留と、さらに10日間の勾留延長があります。このため、最長で23日間の拘束があり得ます。
この最長23日間の拘束期間の中は、基本的に警察官・検察官からの取調べを受けることになります。その中で弁護士に頼れる機会が1度だけです。弁護士を頼る場合、警察官や検察官に「当番弁護⼠を呼んでください」と伝えましょう。
なお、当番弁護士は本人だけでなく、家族などでも呼ぶことができます。逮捕された住所を管轄する弁護士会に連絡を入れましょう。
当番弁護士は弁護士会から派遣されるため、必ずしも刑事事件に注力している弁護士が担当してくれるとは限りません。
刑事事件を得意とする弁護士を頼りたいと考えている場合、当番弁護士に狭義の私選弁護人への交代を打診しましょう。
公文書偽造をすると刑事事件化は避けられず、まず裁判の上で刑事罰を受けることになります。
その他、行使の目的の有無によって民事による罰則を受けたり、職場から懲戒処分などを受ける可能性もあります。それぞれ簡単に解説していきます。
公文書偽造における刑事罰は、刑法155条によって下記のように規定されています。
前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
引用:e-Gov|刑法第百五十五条 3
刑事罰とは、国家に対しての責任に対して与えられる罰です。行使の目的のほか、その結果によって与えられる被害の大きさによって罰の大きさが変わります。
民事責任は被害者である会社や個人に対して償うために負うことになる責任で、民法により規定されます。公文書偽造の場合、民法709条の不法行為による損害賠償が当てはまります。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用:e-Gov|民法七百九条
上記のとおり、709条においては公文書の偽造によって与えた損害分を賠償することのみで、慰謝料の請求などは含まれていません。
ただし、公文書偽造においても慰謝料は請求可能な場合があるので、弁護士によく相談しておきましょう。なお、慰謝料については民法710条(財産以外の損害賠償)によって定められています。
懲戒とは勤め先に対して与えた損害に対して与えられる罰です。懲戒内容は会社ごとに異なりますが、公務員の場合は懲戒免職や減給数ヶ月といった内容が大半です。
公文書の偽造には、その文書の種類によっていくつか罪の種類があり、罪の重さや時効も変わります。具体的には下記7つの種類があります。
それぞれ見ていきましょう。
詔書偽造罪・詔書変造罪とは、御璽(ぎょじ)・国璽(こくじ)を押された有印公文書の偽造・変造をした罪のことで、公文書偽造の中で最も重い罰を課された罪です。
刑法154条によれば、詔書偽造罪・詔書変造罪は無期又は3年以上の懲役となります。時効は15年です。
なお、万が一御璽・国璽自体を偽造して文書を作成した場合、刑法第164条1項により御璽偽造罪が追加されます。この場合、2年以上の懲役が追加されます。御璽偽造罪の時効は10年とされています。
御璽とは日本国内では、天皇が公式に用いるための印章です。例えば閣議決定された法案の書類や、内閣総理大臣任命のための書類など、国事行為のために作成された公文書に押印されます。
国璽とは国家の表徴として用いる印章です。条約締結や外交文書など国家間における重要文書に押印されます。
詔書偽造罪・詔書変造罪の場合、これら御璽・国璽の偽装のほか、名前を勝手に使用しただけでも成立します。
有印公文書偽造罪・有印公文書変造罪は、前述のとおり、公務員又は公務所の使用する印章・署名を用いて偽造・変造した文章を作成することです。
刑法155条によれば、1年以上10年以下の懲役に処されます。偽造・変造によって罪の重さは変わりません。時効年数は15年です。
なお、公文書においても印章や署名自体の偽造は刑法165条により公印偽造罪が適用され、3ヵ月以上5年以下の懲役が追加され、時効は5年間です。
また、特殊詐欺などでよくあるのが、裁判所の記号を用いた文書の偽造です。これら公務所の記号を偽造した場合、刑法166条の公記号偽造罪が適用され、3年以下の懲役が追加され、時効は3年とされています。
有印公文書のほうが信頼性が高く想定される被害も大きいことから、後述する無印公文書よりも重い罪が設定されているのが特徴です。
有印公文書には運転免許証・印鑑証明書・納税証明書などが含まれます。
無印公文書偽造罪・無印公文書変造罪は、刑法155条3項にて3年以下の懲役又は20万円以下の罰金と規定されています。
無印公文書は、職員が作成する土地台帳の地図のような付帯書類のほか、住民から提出された届出など、公文書にかかわるすべての文書が含まれ、時効は5年間です。
公務所又は公務員が、自身の職務に関して行使の目的で虚偽の内容で公文書を作成した・公文書の内容を虚偽の内容にすり替えた場合、刑法156条により虚偽公文書作成罪・虚偽公文書変造罪が適用されます。
こちらの内容については印章・署名の有無によって罪の重さは変わりません。罰則は1年以上10年以下の懲役となり、時効は15年です。
虚偽公文書作成罪・虚偽公文書変造罪は、公務員が「行使の目的」で作成したことを罰する内容になっていますので、誤記載や重大なミスの場合、この罪に問われることはなく、懲戒処分で済むことがほとんどです。
公務員や公務所に対して虚偽の申告をして、登記簿や戸籍などといった権利義務に関する公正証書に虚偽の内容を記載させると、公正証書原本不実記載罪が成立します。
刑法157条によって5年以下の懲役または50万以下の罰金となり、時効は5年間です。
公正証書原本不実記載罪では、刑法157条2項において免状・鑑札・旅券の取得について免状等不実記載罪が規定されています。
罰則は1年以下の懲役又は20万円以下となり、時効も5年間へと短縮され、公正証書原本不実記載罪寄りは軽微な罰として取り扱われています。
公正証書原本不実記載罪・免状等不実記載罪ともに虚偽の申告をして、途中でばれて書類が作成されなかった場合(つまり未遂)でも、同様に罰せられますので注意が必要です。
公電磁的記録不正作出罪とは、刑法161条の2によって規定される法律です。
他者に誤った事務処理をさせるため、利用するデータを不正に作成した場合に適用されます。私文書・公文書共に公電磁的記録不正作出罪によって裁かれることとなります。
公文書の場合、同法2項により、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金となり、時効は15年です。また、同法3項により、上記の目的のため、不正データを提供した者も同様の処分が科されます。
例えば、運転免許証の不正取得のため、受験のためのデータを不正に作成・利用した場合、作成者・利用者共に罰せられることとなります。
もし公文書を偽造・変造してしまった方がいれば、早急に弁護士に相談しましょう。一般市民・公務員にかかわらず、すでに告発され警察の捜査が進んでいる可能性もあります。
事前に対策をすることで、不起訴が目指せたり早期釈放が望めるなど、弁護士に相談するメリットがあるので以下をご参照ください。
早急に弁護士に相談することで、逮捕前に示談交渉などによって不起訴処分を目指せる可能性があります。
懲戒処分などは免れない可能性はありますが、逮捕されてから対応するよりも、更生の余地を見いだされ情状酌量を得られる可能性があります。
もし万が一逮捕されてしまっても、弁護士に相談することで早期釈放が狙えます。
逮捕や勾留は、被疑者が逃亡の余地がないなど特定条件を満たすことで釈放ができるのです。弁護士に相談することで身元が保証され、早期釈放の確率が高まります。
公文書偽造は、どんな文章であれ公務員に気づかれた途端に刑事事件として立件は避けることができません。万が一自身が公文書偽造に手を染めてしまった場合、早急に弁護士に相談し不起訴・早期釈放を目指しましょう。
また、同僚の不正現場を目撃してしまった・不正に気が付いてしまった方も、まず弁護士に相談することをおすすめします。組織ぐるみで隠蔽が図られる場合、気が付いてしまった人物は危険人物です。ご自身の安全を確保する意味でも、弁護士を頼りましょう。