落書きで逮捕された場合の罪とは?知っておくべき逮捕後の流れと対処法

落書きで逮捕された場合の罪とは?知っておくべき逮捕後の流れと対処法

落書きをしても逮捕される可能性があることをご存知でしょうか?

たかが落書きと思っていても、他人が所有している物や建物を落書きなどで無許可に汚損させてしまうと、器物損壊罪建造物損壊罪などの罪に問われる可能性があり、懲役や罰金を科されることもあります。

今回は、落書きによって逮捕されてしまった際に問われる可能性のある罪や、落書きをしてしまった際の対処方法などについてご紹介します。

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この記事を監修した弁護士
梅澤 康二
梅澤 康二弁護士(弁護士法人プラム綜合法律事務所)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

落書きは器物損壊で逮捕される可能性がある

他人の所有している物に落書きする行為は、当該物の性能を損なう行為として犯罪に問われる可能性があります。

旅行先などで気分が高揚し「記念に…」と落書きをしたり、鬱憤を晴らすために公共物に恨み言を書き連ねたりなど、安易な気持ちで行う落書きは犯罪行為であり、場合によっては逮捕されることもあるのです。

電柱に落書きをして器物損壊容疑で逮捕

電柱などの公共物に塗料を使用して落書きを繰り返した場合、器物損壊罪の他、地域の迷惑防止条例違反にあたる可能性があります。

神社に落書きをして建造物損壊容疑で逮捕

神社など国の文化財として指定されている物や建物に落書きをした場合、建造物損壊罪、文化財保護法違反にあたる可能性があります。

文化財はその物・建物があることに価値があるため、落書きなどで汚損されると文化財としての機能が失われるとして罪が重くなる可能性があるのです。

落書きで逮捕された場合の罪状と違反する法令

他人の所有している物や建物を落書きなどで汚損させる行為は犯罪となる可能性があります。

この項目では、落書きで逮捕された際に問われる可能性のある罪や違反する法令などについてご紹介します。

他方、民事的には落書きの被害者から損害賠償請求を受ける可能性もあります

器物損壊罪|3年以下の懲役または30万以下の罰金

他人の所有する物に故意に落書きをした場合は器物損壊罪にあたる可能性があります。

もっとも、器物損壊罪は親告罪であり、被害者の告訴がなければ立件されることはありません。

第二百六十一条  前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
引用元:刑法

建造物損壊罪|5年以下の懲役

建物に落書きしてこれを汚損させた場合は建造物損壊罪にあたる可能性があります。

建造物損壊は、器物損壊罪より重刑で5年以下の懲役となります

また、建造物損壊罪は非親告罪といって、被害者から被害届が出なくても告訴される罪です。

第二百六十条  他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
引用元:刑法

軽犯罪法違反|勾留または1万円以下の罰金

落書きが悪質なものでない場合は、軽犯罪法違反にあたる可能性があります。

清掃したら比較的簡単に落とすことができるなどの落書きであれば、厳重注意や軽犯罪法違反として扱われる場合があります。

第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
三十三  みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者
引用元:軽犯罪法

なお、軽犯罪法違反の場合は勾留または1,000円以上10,000円以下の罰金が科されることがあります。

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迷惑防止条例違反|5万円以下の罰金

各都道府県や市区町村で迷惑防止条例が定めらえている場合、落書き行為は条例違反になることもあります。

地域が定めている迷惑防止条例に違反した場合は、約5万円以下の罰金が科されることがあります。

例えば、神奈川県横浜市の場合は「落書き防止条例」によって、公共物の落書きの禁止や罰則を定めています。

勧告・命令(第7条)
◯2 市が設置又は管理する公共施設で落書き行為を行ったことで前項の命令を受けた者が、必要な措置を講じない場合は、市長は自ら必要な措置を講じ、その措置に要した費用を命令を受けた者から徴収できます。
引用元:横浜市|市民局

罰金(第9条)
第7条第2項の命令に違反した者は50000円以下の罰金に処します。
引用元:横浜市|市民局

文化財保護法違反|5年以下の懲役または30万円以下の罰金

神社や城など、国の文化財に指定されているものは文化財保護法が適用されます。

そのため、これらのものに落書きをして汚損させた場合は、文化財保護法違反にも問われる可能性があるのです。

第百九十六条  史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
 前項に規定する者が当該史跡名勝天然記念物の所有者であるときは、二年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
引用元:文化財保護法

落書きによる損害賠償請求や逮捕された事例

落書き行為は、犯罪行為となる可能性があり、社会通念上も許容されるものではありません。

そのため、落書き行為によって相手の財産を毀損(きそん)した場合、当該損失を補填する義務(損害賠償義務)が生じます。

例えば、絵画などに落書きをした場合、その絵画の価値がなくなってしまうため財産を毀損(きそん)したことになります。

その場合は、絵画の価値の分だけ賠償しなければならないのです。

賠償する金額は、落書きの清掃にかかった費用や清掃困難な場合に買い替えにかかった費用などを請求されることがあります。

落書きによる裁判例

被告人が、他人の住居の外壁、シャッター等に、緑色の合成塗料を吹き付けて落書きしたという建造物損壊、器物損壊被告事件で、門扉両脇に設置された外壁およびシャッターは、建造物との接合の程度および建造物における機能上の重要性から「建造物」の一部であると認められ、本件落書き行為は、その範囲自体はそれほど大きいとはいえないものの、原状回復に相当の困難を生じさせたものであり、本件建物の効用を減損させたというべきものであるから、「損壊」に該当するとして、建造物損壊罪の成立を認めた事例。

裁判年月日 平成19年 9月11日
裁判所名 広島高裁 裁判区分 判決
事件番号 平19(う)77号
事件名 建造物損壊、器物損壊被告事件
裁判結果 控訴棄却
文献番号 2007WLJPCA09119007

落書きで逮捕されるまでの流れと対処方法

落書きは、周辺住民や被害者が通報したり巡回中の警察官によって現行犯逮捕されたりすることがあります。

この項目では逮捕されるまでの流れと対処方法についてご紹介します。

周辺住民や被害者からの通報で任意同行・事情聴取

落書きは周辺住民や被害者からの通報によって任意同行を求められるほか、巡回中の警察官による現行犯逮捕などで逮捕されるケースがあります。

なお、任意同行の場合は、逮捕ではないため拒否することは可能ですが、現行犯逮捕の場合は拒否することはできません。

悪質な場合は逮捕・取り調べをされる

落書きを繰り返し行っていたなど、悪質なものと判断されたという場合は、現行犯でなくとも令状に基づき現行犯逮捕されることがあります。

逮捕された場合は、48時間以内に取調べが行われ、その後検察庁へ身柄が送られます。

検察庁へ送検された後は、落書き程度であれば通常は勾留されませんが、よほど悪質な場合や余罪が疑われる場合は追加捜査のために勾留されることがあります。

勾留は原則10日間ですが、余罪などがある場合は捜査が長引くこともあり最大20日間まで延長されることがあります。

示談交渉

勾留中に、弁護士を通じて被害者に示談交渉を依頼するようにしましょう。

その際は、「もう二度と行わない」ということを反省し、落書きによって発生した損害の賠償などを交渉することになります。

落書きは、器物損壊罪などの親告罪で告訴されることが多いため、被害者と示談交渉の結果告訴が取り下げられれば、不起訴として処理されます

起訴・裁判

検察官は最終的に起訴・不起訴の判断をしますが、示談もされず態様も悪質と評価されれば起訴される可能性が高いです。

起訴された場合は刑事裁判に移行し、裁判所による判決を待つことになります。

身の周りの人が落書きで他人のものを汚してしまった場合

懲役や罰金、損害賠償請求などの可能性がある落書きは、当然「やってはいけない行為」です。

しかし、身の回りの人が安易な気持ちで落書きをしてしまった際は、事態を収束させるために対処しなければなりません。

軽度な落書きは、被害者との話し合いで解決できることもあります。

この項目では、落書きをしてしまった際の対処法についてご紹介します。

被害者に謝って話し合いでの解決を図る

落書きの多くは器物損壊罪などの罪が問われます。

器物損壊罪は親告罪ですので被害者が被害届を出さなければ逮捕されることはありません。

そのため、落書きをして他人のものを汚損させてしまった場合は、素直に謝って被害者と話し合いで解決できるようにすることをおすすめします

再発防止に努める

落書きを放置すると、その地域の治安が悪化することが知られています。

そのため、落書きを見つけたら所有者に報告したり掃除をしたりして、落書きを消すということが再発防止や新たな犯罪の発生防止につながるといわれています。

また、落書きをしてしまったという人は、安易な気持ちでした行為によって逮捕されてしまう可能性もあるので、二度としないようにしましょう。

まとめ

他人が所有している物や建物に無断で落書きをすることは犯罪です。

軽い気持ちで行ってしまうと、逮捕されたり有罪となってしまったりして、その後の人生に影響を及ぼしてしまいます。

もしも、落書きをしてしまった際はすぐに消したり、被害者に謝罪したりしてその後二度と行わないようにしましょう。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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