投稿者の特定・訴訟
IPアドレスから個人の特定はできるか?誹謗中傷をしてくる相手を特定する方法
2024.08.02
「IPアドレス」とは、インターネット接続の際に通信の相手先を識別するための番号のことで「111.222.333.444」のように概ね3桁区切りの数字の4組の組み合わせによって表記されます。
ネット上での誹謗中傷や名誉毀損に悩まされている方の中には、IPアドレスがわかれば、相手の個人情報まで特定できる?と悩んでいる方も多いでしょう。
本記事では、IPアドレスだけで相手の個人情報を特定できるのかや、IPアドレスをもとに相手を特定する方法を解説します。
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IPアドレスは、インターネット接続の際に識別用に付与される番号のことです。
「111.222.333.444」のように、概ね3桁区切りの数字の4組の組み合わせによって表記されます。
大きく分けると番号が固定されて変わらない固定IPアドレスと、一定期間の経過や接続切れで番号が変わる動的IPアドレスとがあります。
このIPアドレス表記である「IPv4(インターネット・プロトコル・バージョン4)」は、近年、枯渇して飽和状態にあり、「IPv6(インターネット・プロトコル・バージョン6)」により表記されるIPアドレスの普及が進んでいます。
いずれにしても、バージョン4のIPアドレスは、上記のように数字の羅列により表示されるものですが、あくまでインターネット内のネットワーク上での識別番号に過ぎません。
IPアドレスからわかるのは、回線使用者がいる国、あるいは大まかな地域と、インターネット回線(通信)事業者です。
例えば、日本でドコモの回線を使用している、という程度の情報までしかわかりません。
このIPアドレスからただちに個人の住所・氏名などの個人情報がわかるわけではないのです。
IPアドレスの検索サイトとしては、「Whois」というサイトが有名です。
「Whois」はネットワーク監視サービスを提供しており、無料で使用できます。
同サイトで「グローバルIPアドレスまたはドメイン」のところにIPアドレスを入力して検索すると、IPネットワークアドレス、ネットワーク名、ネームサーバー等の項目が確認できます。
ただ、これ等の項目からわかるのは、同IPアドレスの国(地域)と回線事業者(ドコモ、ソフトバンクなど)、同回線事業者の所在地などです。
ちなみに、「Whois」ではドメインによる検索もできますが、ドメインについては公開代行会社を通じてドメイン登録している者に関しては、代行会社の情報しかわからず、そのドメインの所有者が誰であるかまではわかりません。
誹謗中傷を行った人(発信者)のIPアドレスが取得できれば、まずはこの「Whois」を利用して、発信者がどの回線事業者を利用しているかを特定しましょう。
IPアドレスの情報開示請求をすることで、投稿者つまり犯人を特定することができますが、以下のような場合は特定できない可能性があります。
それでは、1つずつ見ていきましょう。
IPアドレスがわかっても、ISP(インターネットサービスプロバイダ)でのログが消えてしまうと投稿者を特定することはできません。
ログが消される前に情報開示に関する手続きを行う必要があります。
ログの保存期間は法律で定められているわけではありませんが、SNSや5ちゃんねるなどの掲示板をはじめ、IPSではログを一定期間保存しています。
au、docomo、SoftBankなどの大手キャリアは約3か月間、固定ネット回線では長いもので6か月間程度ログを保存しています。
情報開示に関する手続きには時間を要するため、誹謗中傷を受けた際は、なるべく早めに対応するようにしましょう。
プロキシサーバーとは、インターネットへのアクセスを代理で行うサーバーのことです。
投稿者がプロキシサーバーを経由して誹謗中傷などの書き込みを行った場合、情報開示請求をして入手できるIPアドレスはプロキシサーバーのものになります。
例えば、情報開示されたIPアドレスがauやdocomo、SoftBankなどの国内の法人であれば、そのまま情報開示請求が可能です。
しかし、海外プロキシサーバーを経由していた場合は、そうはいきません。
海外対応もできる弁護士に相談することで解決できる可能性はありますが、情報が開示されるまでの期間は長く、費用も高くなることが予想されます。
とはいえ、SNSやネット掲示板では、海外プロキシサーバー経由でのアクセスを禁止しているところも多いため、そこまで心配する必要はありません。
発信者のIPアドレスがわかれば、発信者が利用している回線事業者(プロバイダ)がわかります。
回線事業者(プロバイダ)は、発信者の情報を保有している可能性が高いので、IPアドレスがわかれば回線事業者に対して発信者情報開示請求を行いましょう。
以下、おおよその流れを解説します。
まず、発信者のIPアドレスから回線事業者(プロバイダ)を特定します。
プロバイダの特定は、上記の「Whois」などを利用して行います。
ただ、発信者のIPアドレスがそもそもわからないというケースも多々あります。
その場合は、まず、IPアドレスの開示を請求するところからはじめなければなりません。
IPアドレスはプロバイダ責任制限法の「発信者情報」に該当します。
プロバイダ責任制限法では、サイト運営者に対して発信者情報の開示を請求することができると定められています。
発信者のIPアドレスがわからない場合には、誹謗中傷などが行われたウェブサイトの管理者に対して、当該発信を行った発信者のIPアドレスの開示請求を行う必要があります。
サイト運営者は、発信者の住所氏名等の個人情報は保有していませんが、当該発信が行われた際の発信者のIPアドレスは保有しています。
誹謗中傷などを行った発信者のIPアドレスから、発信者が利用している回線事業者(プロバイダ)がわかります。
そのプロバイダに対して、当該IPアドレスについての発信者情報(氏名、住所、メールアドレス、電話番号など)の開示を求めることができます。
これはプロバイダ責任制限法4条(2021年4月成立の改正プロバイダ責任制限法では5条)に基づきます。
プロバイダが任意で開示してくれればよいですが、一般的にプロバイダが任意開示に応じることはなく、裁判所で開示命令を出してもらう必要があります。
裁判所で発信者情報開示命令を出してもらうためには、プロバイダ責任制限法の要件を満たさなければなりません。
その要件は、発信者による権利侵害が明らかであること、発信者への慰謝料請求を行うためなどの正当な理由があることです。
裁判所がプロバイダに対して発信者情報開示を命じる判決(決定)が得られると、プロバイダから発信者情報の開示を受けられます。
プロバイダ責任制限法及び総務省令では、発信者情報とは、発信者の氏名、住所、メールアドレス、電話番号等であると定めています。
これにより、ようやく発信者が特定でき、慰謝料請求や謝罪などの名誉回復処分を求めることができるようになります。
なお、誹謗中傷の内容が悪質であり、脅迫罪や名誉毀損罪などの犯罪に該当する可能性が高い事案では、警察が犯罪捜査として、発信者のIPアドレスから発信者の特定まで調査することができます。
東京などの大都市圏では、インターネット上でのサイバー犯罪に備えた専門の部署を設けており、犯罪捜査として発信者の特定を行っています。
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IPアドレスの開示や、その他の発信者情報の開示には時間がかかります。
2021年現在のプロバイダ責任制限法では、IPアドレスがわからない場合には、まず発信者のIPアドレスを特定するために、当該発信が行われたサイトを運営する者に対して、仮処分等の裁判上の手続きを起こす必要があります。
裁判所がIPアドレスの開示命令を出してくれるまでにおおよそ2~3か月程度要することが見込まれます。
IPアドレスが開示されたら、次にそのIPアドレスから判明する回線事業者に対して、発信者情報の開示を求める裁判(訴訟)を起こすことになります。
その開示を命じる判決が出るまで、おおよそ3~6か月程度かかります。
そのため、発信者による侵害行為が行われてから発信者を特定するまでには、おおよそ半年~9か月程度はかかると考えておく必要があるでしょう。
その間にプロバイダ事業者が保有しているアクセスログが期間経過により消滅する危険がありますので、そうした事態を防ぐための措置も取らなければなりません。
2022年10月に施行された改正プロバイダ責任制限法では、IPアドレスの開示請求から発信者情報の開示までを一つの裁判手続きでできるように定められています。
現行法よりは期間が短縮されることが見込まれますが、それでも3か月以上はかかるものと考えておいたほうが良いでしょう。
SNS上で誹謗中傷などの被害に遭った場合には、まずは当該SNSの運営元に対して任意での発信者情報の開示を求めましょう。
ここでは、代表的な5つのSNSについて、その手続き方法や弁護士に依頼した場合の費用などをご紹介します。
X(旧Twitter)では、裁判を通じて発信者情報開示を求めることになります。
運営元が外国法人であるため、管轄は東京地裁となります。
開示請求が認められるまで時間がかかり、また、手続きが複雑です。
発信者情報開示を弁護士に依頼した場合には、概ね弁護士費用として20~30万円前後かかります。
以下、発信者情報開示を弁護士に依頼した場合の費用は、運営会社によってやや差がありますが、同程度でしょう。
インスタグラムでも同様に運営元への発信者情報開示請求を行うことになります。
現在、インスタグラムとフェイスブックの運営元は同じ会社(メタプラットフォームズ)であり、X(旧Twitter)同様に外国法人であるため、発信者情報開示は東京地裁で行う必要があります。
フェイスブックの運営会社(メタプラットフォームズ)に対して、発信者情報開示を求めることができます。
参考:Facebookメッセージを報告するにはどうすればよいですか。 | Facebookヘルプセンター
ユーチューブの運営会社はグーグルですので、グーグルに対して、発信者情報開示を求めることになります。
参考:名誉毀損 – 米国 – YouTube ヘルプ (google.com)
5ちゃんねるは、ロキテクノロジー社が運営元ですので、同社に対して、発信者情報開示を求めることになります。
誹謗中傷を受けたが、その発信者のIPアドレスすらわからないという場合、警察や弁護士に相談するようにしましょう。
警察には捜査権限がありますので、名誉毀損罪等の刑事事件として扱うと判断された場合には、犯罪捜査として、IPアドレス含め、発信者情報を特定することができます。
ただし、警察には民事不介入の原則がありますので、警察が捜査してくれるのは、刑事事件であることが明白である場合に限られます。
例えば、「○○を殺す」等の明確な殺害予告があれば、警察は迅速に対応してくれるでしょう。
名誉毀損罪で警察が捜査してくれるかどうかは事案ごとの警察の判断に委ねられます。
発信者の誹謗中傷が悪質であると考えられる場合には、警察に相談してみるのが良いでしょう。
IPアドレスの開示や発信者の住所・氏名等の発信者情報の開示請求は基本的に裁判所を通じて行う必要があります。
弁護士なら、裁判所に提出すべき書面の作成など、発信者情報の開示請求の手続きを迅速に対応してもらえます。
また、サイト運営元へのIPアドレス開示やプロバイダへの発信者情報開示等について代理人として任意で交渉してもらうこともできますし、発信者情報開示請求ないしはその先にある慰謝料請求等の当該事案の見込みについてもアドバイスしてもらえるでしょう。
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発信者のIPアドレスがわからない場合、本人でも開示請求ができますが、できれば弁護士に依頼したほうが良いです。
ここでは、弁護士に依頼するメリットをお伝えします。
発信者情報の開示というのは、あくまで手段に過ぎません。
悪質な誹謗中傷を受けたことに対する慰謝料請求、名誉を毀損されたことに対する損害賠償や謝罪などの名誉回復処分などが最終目的にあり、その相手を特定するために発信者情報の開示を行うことになります。
弁護士に相談すれば、個別の事案に応じて、慰謝料請求等が認められるかどうか、認められるとしてどのような内容で認められるかなど、ある程度の見通しをアドバイスしてくれます。
また、開示請求が認められた後の損害賠償請求も弁護士が行ってくれます。
発信者情報開示請求は、裁判所で行う手続きです。
法律とインターネットの両方の知識が必要となります。
本人で行うこともできますが、法的知識がないとなかなか難しいでしょう。
弁護士なら、発信者情報開示などの裁判所での手続きもスムーズに対応してくれます。
悪質な誹謗中傷に対しては、名誉毀損罪や業務妨害罪などで警察に告訴したいと考える人もおられるでしょう。
弁護士に依頼すれば、告訴に必要となる告訴状の作成や、警察に提出すべき証拠の整理等、法的な側面を全面的にサポートしてもらえます。
告訴や被害届の提出など、刑事事件化することをお考えの方も、ぜひ一度、弁護士に相談してみましょう。
IPアドレスだけでは発信者の氏名、住所など発信者を特定する情報はわかりません。
IPアドレスからわかるのは、その発信者が利用している国(地域)と回線事業者(プロバイダ)程度です。
ただ、発信者が利用するプロバイダがわかれば、そのプロバイダに対してプロバイダが保有する発信者情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど)の開示を請求できます。
つまり、IPアドレスを特定することは、発信者を特定する第一歩といえます。
発信者による誹謗中傷などがある場合に発信者が負う責任は大きく分けて二つあります。
誹謗中傷が悪質で刑事責任を問えるような事案では、警察が捜査してIPアドレス含め発信者を特定してくれます。
他方、民事責任を追及する場合には、プロバイダ責任制限法に基づいて発信者情報開示請求を行う必要があります。
IPアドレスがわからない場合には、まずサイト運営者に対してIPアドレスの開示請求を行い、次にプロバイダに対して発信者情報開示請求を行うことで発信者を特定することになります。
こうした手続きは裁判所を通じて行わねばならず、法的知見がないと対応が難しい面があります。
弁護士に相談することで問題解決に向けて進めていきましょう。
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