SNSのなりすましは犯罪?罪に問えるケースと対策法を解説

SNSのなりすましは犯罪?罪に問えるケースと対策法を解説
目次
  1. SNSのなりすまし行為だけでは犯罪にはならない
  2. >SNSのなりすまし行為によって成立する可能性がある犯罪の主な種類
    1. 名誉毀損罪 | 相手の名誉を傷つけた場合
    2. 侮辱罪 | 公然の場で事実を示さず相手を侮辱した場合
    3. 詐欺罪 | 相手を騙して財物を騙し取った場合
    4. 不正アクセス禁止法違反 | 他人のコンピュータへ不正にアクセスした場合
    5. 電子計算機使用詐欺罪 | コンピュータに不正な指示をだし相手の財物を奪った場合
    6. 業務妨害罪・信用棄損罪 | 嘘などで相手の業務を妨害したり信用を棄損した場合
  3. なりすまし行為に対しては、民法上の責任(損害賠償責任)が問われる可能性もある
  4. なりすまし行為によって刑法上・民法上の責任が認められた事例・判例
    1. インスタグラムのアカウントをのっとり、不正アクセス禁止法違反などに問われた事例
    2. SNSで他人になりすまし、名誉棄損罪で逮捕された事例
    3. なりすまし行為によって名誉を毀損されたとして損害賠償請求を求めた判例
  5. なりすましの被害にあったときの対処法
    1. SNSのフォロワーや友人へ注意喚起をする
    2. SNS運営元に削除を求める
  6. SNSのなりすましをした加害者を特定して訴えたい場合の対応方法
    1. 被害にあった証拠を保存する
    2. 開示請求で相手を特定する
    3. 刑事告訴をする
    4. 損害賠償請求をする
  7. さいごに | SNSのなりすまし被害を受けたら弁護士へ相談を

近年では、SNSの存在が当たり前になったことで、なりすましの被害も増加しています。

ある日突然、SNSで自分の名を名乗る知らないアカウントが、根も葉もない噂や情報を発信していたら、どう対処していいかわからず悩んでしまいますよね。

SNSでのなりすまし行為は、犯罪として罪に問えるケースがあります。自分のケースで、なりすまし犯を罪に問えるのかどうかを確認して、適切に対処しましょう。

本記事では、SNSのなりすまし行為が犯罪になるケースの具体例やなりすまし被害にあったときの対処法などについてわかりやすく解説します。

なりすまし行為に悩んでいる方は、ぜひ本記事を参考に解決に向けた第一歩を踏み出してみてください。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビITで
IT・ネット問題に強い弁護士を探す
相談料無料※
IT・ネット問題に強い弁護士を探す
※一部の法律事務所に限り初回相談無料の場合があります

この記事を監修した弁護士
春田 藤麿弁護士(弁護士法人春田法律事務所)
「お客様の期待を上回る結果を目指す」「生涯にわたり、お客様のパートナーとなる」ことを理念とし、2016年に設立。現在は全国にオフィスを構え、個人・法人を問わず、ニーズに合わせたサポートを提供。

SNSのなりすまし行為だけでは犯罪にはならない

SNSのなりすまし行為とは、自分以外の人物になりすました偽物アカウントを作成する行為のことです。

嫌がらせ、個人情報の収集、知名度を利用したフォロワー獲得など、さまざまな目的で作成されます。

SNSのなりすましが話題に挙がるのは、著名人や有名な飲食店などの偽アカウントが作成されたケースですが、一般人がSNSのなりすまし被害を受けることも少なくありません。

ただし、SNSのなりすまし行為は、それ自体が犯罪になるわけではない点に注意が必要です。

なぜなら、刑法などの規制立法において「SNSのなりすまし行為」を処罰する旨の規定は一切存在しないからです。

SNSのなりすまし行為が犯罪になるのは、作成された偽物アカウントを悪用して、コメント・写真・動画などを投稿したり、他人とメッセージをやり取りしたりしたときに限られます。

SNSで自分になりすました犯人に対して法的責任を追及したいと考えているのなら、「なりすましの偽アカウントがどのような行為に及んでいるのか」を把握するのが重要だといえるでしょう。

>SNSのなりすまし行為によって成立する可能性がある犯罪の主な種類

SNSのなりすまし行為自体は犯罪ではありません。

しかし、SNSのなりすまし行為によって作成されたアカウントが一定の行為に及んだ場合には、以下のような罪に問える可能性があります。/p>

  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪
  • 詐欺罪
  • 不正アクセス禁止法違反
  • 電子計算機使用詐欺罪
  • 業務妨害罪・信用棄損罪

ここでは、SNSのなりすまし行為に対して問える可能性がある罪について、詳しく解説します。

名誉毀損罪 | 相手の名誉を傷つけた場合

名誉毀損罪とは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損したとき」に成立する犯罪類型のことです。

名誉毀損罪の法定刑は、「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」と定められています。

名誉毀損罪が成立するのは「公の場所で、他人の社会的評価を毀損させるおそれがある具体的な事実を示した場合」です。

たとえば、SNSのなりすましアカウントの行為が名誉毀損罪に該当するケースとして、以下のものが挙げられます。

  • 「私は今まで借金を一度も返済したことがない。踏み倒しのプロです」と、なりすましアカウントで投稿する行為(なりすまされた被害者の名誉を毀損する行為)
  • 「私は浪費癖が酷く、ギャンブル依存症も克服できない。過去に自己破産をしたクズです」と、なりすましアカウントで投稿する行為(なりすまされた被害者の名誉を毀損する行為)
  • 「飲食店〇〇はゴミみたいな料理に高い値段をつけてぼったくりをしている。まるで詐欺師みたいだ」と、なりすましアカウントで投稿する行為(なりすましアカウントで第三者の名誉を毀損する行為)
  • なりすましアカウントで被害者や第三者の名誉を毀損するような画像・動画を投稿する行為

侮辱罪 | 公然の場で事実を示さず相手を侮辱した場合

侮辱罪とは、「事実を摘示することなく、公然と人を侮辱したとき」に成立する犯罪類型のことです。

侮辱罪の法定刑は、「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」と定められています。

インターネット上での誹謗中傷トラブルが急増している背景を踏まえて、近年の刑法改正で法定刑が大幅に引き上げられました。

侮辱罪と名誉毀損罪はどちらも「インターネット上の誹謗中傷・悪口」に対して適用される可能性がある犯罪類型ですが、「事実を摘示しているか否か」という点でどちらの犯罪類型が適用されるかが異なります。

つまり、「事実の摘示がある」場合が名誉毀損罪、「事実の摘示がない」場合が侮辱罪、という形で棲み分けられているということです。

たとえば、SNSのなりすましアカウントの行為が侮辱罪に該当するケースとして、以下のものが挙げられます。

  • 「私は会社で一番のブスです」と、なりすましアカウントで投稿する行為(なりすまされた被害者を侮辱する行為)
  • 「株式会社〇〇の役員△△は無能でバカだ」と、なりすましアカウントで投稿する行為(なりすましアカウントで第三者を侮辱する行為)

詐欺罪 | 相手を騙して財物を騙し取った場合

詐欺罪とは、「人を欺いて財物を交付させたとき、人を欺いて財産上不法の利益を得たり第三者にこれを得させたりしたとき」に成立する犯罪類型のことです。

詐欺罪の法定刑は、「10年以下の懲役刑」と定められています。また、詐欺罪は未遂犯も処罰対象です。

たとえば、SNSのなりすましアカウントを悪用した行為が詐欺罪に該当するケースとして、以下のものが挙げられます。

  • 有名人になりすました偽アカウントを悪用して集客したフォロワーに商品を購入させて代金を得た
  • 企業になりすました偽アカウントを悪用して取引先などに問い合わせをし、商品代金などを支払わせた

不正アクセス禁止法違反 | 他人のコンピュータへ不正にアクセスした場合

SNSのなりすまし行為は、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(通称「不正アクセス禁止法」)の処罰対象になる場合があります。

不正アクセス行為や、不正アクセス行為のためにパスワードやIDなどのデータを取得する行為は、犯罪として規定されています。

たとえば、SNSのなりすましによって以下の行為がおこなわれたときには、不正アクセス禁止法で処罰されるでしょう。

  • SNSのなりすましによって他サービスのパスワード・ログイン情報が抜き取られてのっとり被害が生じた場合
  • SNSのなりすましアカウントが他人のパスワードなどを不正に入手してのっとり行為をおこなった場合

電子計算機使用詐欺罪 | コンピュータに不正な指示をだし相手の財物を奪った場合

電子計算機使用詐欺罪とは、簡単に説明すると「他人のスマホやアカウントを使って勝手に商品を購入したり、決済情報を盗み取ったりしたとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第246条の2)。

電子計算機使用詐欺罪の法定刑は、「10年以下の懲役刑」と定められています。また、未遂犯も処罰されます(刑法第250)。

たとえば、SNSのなりすましアカウントを悪用した行為が電子計算機使用詐欺罪に該当するケースとして、以下のものが挙げられます。

  • SNSのなりすまし犯が本人のアカウントに侵入して電子決済で商品・サービスを購入した場合
  • SNSのなりすまし犯が商品購入時の決済で本人のポイントを無断使用した場合

業務妨害罪・信用棄損罪 | 嘘などで相手の業務を妨害したり信用を棄損した場合

SNSのなりすましアカウントによっておこなわれた行為は、以下の犯罪類型に該当する可能性もあります。

信用毀損罪・偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪の法定刑は、いずれも「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められています。

たとえば、以下のようなケースでは信用毀損罪・業務妨害罪・威力業務妨害罪にあたる可能性があります。

  • なりすましアカウントで嘘の情報を発信して被害者本人の経済的信用力が低下させられたとき
  • なりすましアカウントで顧客に対して不適切な対応をして企業の業務が妨害されたとき

なりすまし行為に対しては、民法上の責任(損害賠償責任)が問われる可能性もある

SNSのなりすまし被害にあったときには、加害者に対して民事責任を追及することも可能です。

具体的には、不法行為に基づく損害賠償請求及び慰謝料請求をすることによって、被害者に生じた損害に対して金銭的な賠償を求めることになります。

ただし、「なりすましをされたこと」だけでは損害賠償請求の根拠としては足りない点に注意が必要です。

不法行為に基づく損害賠償請求や慰謝料請求をするためには、「なりすまし行為が原因で権利侵害が生じたこと」を主張・立証しなければいけません。

なりすましによる「権利侵害」の内容は、具体的な事案によって異なります。

たとえば、以下のような権利が侵害されたことを丁寧に主張・立証しながら、加害者に対する民事責任を追及しましょう。

  • 名誉権の侵害
  • プライバシー権の侵害
  • 肖像権の侵害
  • アイデンティティ権の侵害

なりすまし行為によって刑法上・民法上の責任が認められた事例・判例

SNSなどのなりすまし行為によって、加害者側に法的責任が認められた事例を具体的に紹介します。

インスタグラムのアカウントをのっとり、不正アクセス禁止法違反などに問われた事例

本件では、加害者の男性が、2020年8月~2021年10月の間に、20代の女性9人のInstagramのID・パスワードを不正に入手して59回にわたって各アカウントにログインをしたうえで、パスワードを書き換えてアカウントののっとりをおこないました。

被害女性のひとりがInstagramにログインできなくなったことを不審に思い警察に相談したところ、のっとり被害が確認されて、不正アクセス禁止法違反及び私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで、犯人が逮捕されるに至っています。

さらに、本件では、のっとりをおこなった犯人が被害者になりすまして、別の女性にダイレクトメールを送信してパスワードを聞き出したうえで、のっとり行為を繰り返していたことも判明しています。

このように、SNSでののっとり・なりすまし行為の被害を受けると、被害者本人だけではなく、その交友関係などにも被害が波及するリスクが生じかねません。

事後的に加害者に対して法的責任を追及することも大切ですが、なりすましやのっとり被害にあわないようにするために、普段からIDやパスワードを厳重に管理するなどの予防措置が重要だといえるでしょう。

SNSで他人になりすまし、名誉棄損罪で逮捕された事例

本件は、加害者男性が、県内の女子高生になりすましてSNS上に偽アカウントを作成し、悪用した事案です。

この偽アカウントでは、性的行為を誘うような投稿が繰り返されたり、本物のアカウントで使用されていた写真が転載されたりしていたため、本人の社会的評価を低下させたことを理由に、犯人は名誉毀損罪の容疑で逮捕されるに至りました。

本件で不正に作成された偽アカウントが削除されるまでに、約500人のユーザーが当該アカウントを閲覧した形跡があることが判明しています。

もちろん、SNS上でなりすまし投稿が繰り返された時点で、名誉毀損罪の「公共性」の要件を満たすことに疑いはありません。

ただ、SNSでなりすまし被害にあうと実際に広範な範囲で被害が生じるリスクがある以上、普段からなりすまし被害にあわないような対策を実施するのが賢明だといえるでしょう。

なりすまし行為によって名誉を毀損されたとして損害賠償請求を求めた判例

本件は、被告が原告になりすましたうえで、インターネット上の掲示板において、第三者を罵倒するような差別用語・侮辱表現を投稿した事案です。

なりすまされた原告は、あたかも「インターネット上で他者を侮辱したりトラブルを起こしたりする人物である」との社会的評価を受けざるを得ませんでした。

そのため、原告の名誉権・プライバシー権・肖像権・アイデンティティ権が侵害されたことを理由に、130万6,000円の損害賠償請求が認められています。

名誉毀損を理由とする慰謝料請求の相場は、一般的に10万円~50万円程度といわれています。

ただ、投稿の内容・頻度・回数・経緯・なりすましの有無などの諸般の事情次第では高額の慰謝料請求が認められる可能性もあると理解しておきましょう。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビITで
IT・ネット問題に強い弁護士を探す
相談料無料※
IT・ネット問題に強い弁護士を探す
※一部の法律事務所に限り初回相談無料の場合があります

なりすましの被害にあったときの対処法

SNSでなりすまし被害にあったときには、被害拡大を防止するための措置が必要です。

ここでは、なりすまし被害を受けたときに最優先でおこなうべき対処を2つ紹介します。

SNSのフォロワーや友人へ注意喚起をする

SNSのなりすましアカウントは、その後さまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。

なりすましアカウントが悪用されて、SNS上で繋がっている他のユーザーの個人情報などが流出するリスクも少なくありません。

そのため、SNS上のなりすまし被害を確認したときには、フォロワーや友人への注意喚起が必要です。

たとえば、「なりすまし被害にあっています。DMなどには返信しないでください」などの注意喚起を旨とする投稿などをしておけば、なりすまし被害の拡大を防止できるでしょう。

SNS運営元に削除を求める

なりすまし行為は、各SNSなどが独自に設けている利用規約に違反する行為です。

SNSのなりすまし被害を確認したときには、SNSの運営元に速やかに報告をしたうえで、アカウントの凍結・利用停止・アカウント削除などの措置を求めましょう。

ただし、なりすまし行為について通報をしても、運営側がスムーズに対応をしてくれる可能性は高くはありません。

また、運営が削除をする前に、なりすまし行為についての証拠保全をしておかなければ、犯人の法的責任を追及するのが難しくなってしまいます。

なりすまし被害を発見したときには、いきなり運営元に対して通報をするのではなく、将来的な法的措置の可能性を考慮したうえでの対応が欠かせないといえるでしょう。

弁護士のサポートがあれば運営元の前向きな対応も期待できるので、速やかにIT系のトラブルを得意とする専門家へ相談してください。

SNSのなりすましをした加害者を特定して訴えたい場合の対応方法

SNSでなりすまし行為に及んだ加害者の法的責任を追及するときの流れは、以下の通りです。

  1. 被害にあった証拠を保存する
  2. 開示請求で相手を特定する
  3. 刑事告訴をする
  4. 損害賠償請求をする

それぞれの手順について、以下で詳しく解説します。

被害にあった証拠を保存する

なりすましの加害者に対して民事責任・刑事責任を追及したいと考えるなら、まずはなりすまし犯人がどこの誰なのかを特定しなければいけません。

そのためには、なりすまし行為の証拠、偽アカウントによっておこなわれた誹謗中傷などの証拠を収集・保全する必要があります。

保全するべき証拠は個別事案によって異なります。

たとえば、以下のような証拠は必須なので、弁護士へ相談する前の段階でできる限り収集しておきましょう。

  • なりすましアカウントの情報(ID、URL、IPアドレスなど)
  • なりすましアカウントによっておこなわれた投稿、書き込みの情報(URL、スクリーンショットなど)
  • なりすましアカウントの投稿や書き込みに寄せられた反響、ビュー数など

開示請求で相手を特定する

なりすましに関する証拠の確保が終わったら、なりすまし犯を特定する作業をスタートします。

理屈上、なりすましアカウントに対して直接DMなどを送ることで個人情報を引き出す方法も考えられます。

しかし、直接的な働きかけによってなりすまし行為がエスカレートする可能性があるうえ、証拠を保全する前にアカウントが削除されることによって特定作業が不可能になるリスクも生じます。

なりすまし犯を特定するための有効な法的措置としては、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称「プロバイダ責任制限法」)に基づく開示手続きが挙げられます。

コンテンツプロバイダ及びアクセスプロバイダを相手に開示請求をおこなうことによって、なりすまし犯の個人情報を特定すること可能です。

なお、プロバイダ責任制限法は近年改正されたことによって、発信者情報開示請求をめぐる手続きを1回の非訟事件内でおこなうことができるようになりました。

従来よりも加害者を特定する手続きが簡易・簡便になっているので、プロバイダにログ情報が保存されているうちに法的措置に踏み出してください。

刑事告訴をする

なりすまし犯を特定できたら、刑事責任を追及するために、捜査機関に告訴状・被害届を提出してください。

特に、名誉毀損罪・侮辱罪のような親告罪については、告訴状の提出が不可欠です。

なお、インターネットをめぐるなりすまし事件や誹謗中傷事件が急増しているため、ただ単に告訴状を提出するだけでは受理してもらえない可能性が高いです。

捜査機関の人的リソースには限りがあるので、全てのなりすまし事案に対して捜査活動を実施するのは不可能だからです。

また、被害者側の処罰感情がどれだけ強くても、捜査機関の判断次第では逮捕に至らなかったり、不起訴処分が下されたりするケースも少なくありません。

告訴状が受理される可能性を高めたり、なりすまし犯に対する重い刑事処分を希望するなら、被害者本人だけで刑事告訴をするのではなく、告訴状の作成や参考人聴取のコツについて弁護士のサポートを受けるべきでしょう。

損害賠償請求をする

なりすまし犯に対して民事責任を追及する場合には、以下2種類の方法で加害者へアプローチします。

  • 示談交渉によって当事者間で和解契約(示談契約)締結を目指す
  • 民事訴訟を提起して裁判手続きで紛争の終局的解決を目指す

なりすまし犯の個人情報を特定できた場合、示談交渉からスタートするのが一般的です。

なりすまし犯側が交渉に応じてくれたうえで、当事者双方で示談条件について合意形成に至れば、その時点で紛争は解決します。

一方で、話し合いの末に示談条件が折り合わない場合や、そもそもなりすまし犯側が示談交渉に応じない場合には、民事訴訟を提起せざるを得ません。

民事訴訟を提起すると、複数の口頭弁論期日を経て証拠調べなどの手続きが進められるので、判決が確定するまでに年単位の期間が必要になることも多いです。

「なりすまし犯との示談交渉段階で民事紛争を解決させたい」「民事訴訟手続きを自分だけで進めるのは不安だ」という方は、示談交渉段階から弁護士へ依頼をするとスムーズでしょう。

請求可能な慰謝料額は決して高くない点は注意が必要

なりすまし被害にあって名誉毀損などをされたときの慰謝料額は10万円~50万円が相場とされています。

ただし、SNSのなりすましトラブルの解決を弁護士へ依頼した場合、以下の費用が発生する点に注意が必要です。

着手金報酬金裁判費用
削除依頼裁判外約5万円~10万円

約5万円~10万円

裁判約20万円約15万円3万円
発信者の身元特定裁判外

約5万円~10万円

約15万円
裁判約20万円~30万円約15万円~20万円6万円
損害賠償請求裁判外約10万円慰謝料の約16%
裁判約20万円慰謝料の約16%3万円

もちろん、なりすまし犯との交渉次第では、弁護士費用・裁判費用などを加害者側から受け取ることができる場合もあります。

しかし、弁護士費用などをなりすまし犯側に請求できないケースでは、慰謝料額よりも高額の費用負担が生じかねません。

費用倒れのリスクを回避するには、弁護士との間で委任契約を締結する前に、想定慰謝料額や弁護士費用の見積もりを出してもらうべきでしょう。

さいごに | SNSのなりすまし被害を受けたら弁護士へ相談を

SNSのなりすまし行為は、それ自体が直ちに犯罪になるものではありません。

しかし、なりすまし行為によってなんらかの被害が出ている場合は、犯罪行為として罪に問える可能性があります。

そのため、SNSのなりすまし被害を受けたときには、速やかに弁護士へ相談するのがおすすめです。

インターネットトラブルを得意とする弁護士の力を借りることで、なりすまし行為への対処について以下のメリットを得られるでしょう

  • なりすまし犯の特定作業をスピーディーに実施してくれる
  • 法的責任を追及するプロセスとのバランスを見ながら削除請求を実施してくれる
  • なりすまし犯との示談交渉や民事訴訟手続きを全て代理してくれる
  • なりすまし犯を刑事告訴する際のアドバイスも期待できる
  • SNSのなりすましによる被害の予防策を教えてくれる

ベンナビITでは、SNSのなりすましトラブルなどを得意とする弁護士を多数紹介中です。

法律事務所の所在地、具体的な相談内容、初回相談無料などのサービス面から、24時間無料で専門家を検索できるので、この機会にぜひ活用してみてください。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビITで
IT・ネット問題に強い弁護士を探す
相談料無料※
IT・ネット問題に強い弁護士を探す
※一部の法律事務所に限り初回相談無料の場合があります
この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
弁護士の方はこちら