投稿者の特定・訴訟
IPアドレスから個人の特定はできるか?誹謗中傷をしてくる相手を特定する方法
2024.08.02
インターネット上で勝手に自分の実名を晒されて、不快な思いや迷惑を感じている方はいらっしゃいませんか。
ネット上で勝手に他人の実名を晒す行為は、プライバシー権侵害や名誉毀損に当たる可能性があります。
弁護士のサポートを受けながら、損害賠償請求や刑事告訴などを検討しましょう。
本記事では、ネット上で実名晒しの被害に遭った場合の対処法などを解説します。
実名晒しによって迷惑を被っている方は、本記事を参考にしてください。
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インターネット上で勝手に他人の実名を晒す行為は、プライバシー権の侵害に当たる可能性があります。
実名晒しによって迷惑を被っている方は、プライバシー権侵害による損害賠償請求を検討しましょう。
「プライバシー権」とは、私生活上の事柄をみだりに公開されない法的保障・権利を意味します。
また、自己に関する情報をコントロールする権利(=開示・訂正・削除請求権など)もプライバシー権に含まれるとする見解も有力です。
他人の私生活に関する事柄を勝手に公開することは、プライバシー権侵害に当たる可能性があります。
プライバシー権侵害は、以下の要件を満たす場合に成立すると解されています(東京地裁昭和39年9月28日判決参照)。
特にインターネット上では、匿名で活動している方も多いです。
匿名で活動している方にとっては、勝手に実名を晒されることは不本意であり、不快・不安な思いを感じるのが一般的と考えられます。
この場合は、実名晒しがプライバシー権侵害に当たる可能性が高いでしょう。
プライバシー権侵害は不法行為(民法709条)に当たり、被害者は加害者に対して損害賠償(慰謝料など)を請求できます。
プライバシー権侵害による損害賠償の金額はケースバイケースですが、数十万円から100万円程度が認められることが多いです。
ネット上で実名を晒されただけでなく、併せて誹謗中傷も受けた場合は、投稿者に対して名誉毀損の責任を追及できる可能性があります。
名誉毀損には、刑法上の名誉毀損罪と民事上の名誉毀損(不法行為)の2種類があります。
刑法上の名誉毀損罪は、以下の構成要件をすべて満たす行為について成立します(刑法230条1項)。
名誉毀損罪の構成要件 |
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①問題の言動が公然とおこなわれたこと 「公然と」とは、不特定または多数の人に向けて言動がなされることを意味します。 ネット上での誹謗中傷については、SNSや匿名掲示板など、不特定または多数の人が閲覧できる場でおこなわれた場合は「公然と」に該当します。 |
②言動の中で何らかの事実が摘示されたこと 名誉毀損罪の成立には、言動の中で何らかの事実が摘示されたことが必要とされています(例:反社会的勢力との繋がり、不倫、汚職など)。 なお、事実が真実である必要はありません。 事実の摘示がない場合は、名誉毀損罪ではなく侮辱罪(刑法231条)の成否が問題となります(例:単に「バカ」「クズ」などと言った場合)。 |
③他人の名誉を毀損したこと 「名誉を毀損」するとは、他人の社会的評価を下げるような言動を発することを意味します。 実際に被害者の社会的評価が下がっている必要はなく、客観的に見て被害者の社会的評価を低下させる可能性のある言動であれば足ります。 |
なお例外的に、以下の3つの要件をすべて満たす場合には「公共の利害に関する場合の特例」(刑法230条の2)が適用され、名誉毀損罪が成立しません。
公共の利害に関する場合の特例の要件 |
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①言動が公共の利害に関する事実に係ること(公共性) ②言動の目的が専ら公益を図ることにあったこと(公益性) ③摘示された事実が真実であると証明されたこと(真実性) ※摘示した事実が真実であると誤信したことにつき、確実な資料・根拠に照らして相当の理由がある場合には、名誉毀損罪の故意が否定されます(最高裁昭和44年6月25日判決)。 |
ただしインターネット上でおこなわれる誹謗中傷は、公共性や公益性の要件を通常満たさないため、公共の利害に関する場合の特例が適用される可能性は低いでしょう。
名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」です。
犯人は逮捕・起訴された上で処罰の対象となります。
民事上の名誉毀損(不法行為)は、以下の要件をすべて満たす行為について成立します(民法709条)。
民事上の名誉毀損(不法行為)の要件 |
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①言動が違法であること 違法性の判断においては、言動が被害者の社会的評価を下げる性質のものであったか否か、および刑法上の名誉毀損罪における公共の利害に関する場合の特例の要件に該当するか否かなどが考慮されます。 なお、刑法上の名誉毀損罪とは異なり、事実の摘示は要件とされていません。 したがって、刑法上は侮辱罪に該当する場合でも、民事上の名誉毀損(不法行為)が成立することがあります。 |
②故意または過失が認められること 加害者が意図的に被害者に対して損害を与えたか(=故意)、または損害を与えたことについて加害者に注意義務違反が認められること(=過失)が必要です。 刑法上の名誉毀損罪は故意がある場合に限って成立しますが、民事上の名誉毀損(不法行為)は過失による場合も成立します。 |
③言動によって被害者が損害を受けたこと 物理的な損害だけでなく、精神的な損害(慰謝料)も損害賠償の対象となります。 |
インターネット上での誹謗中傷が民事上の名誉毀損(不法行為)に当たる場合、被害者は加害者に対して損害賠償を請求できます。
さらに、訴訟を通じて謝罪広告などの名誉回復措置を請求することも可能です(民法723条)。
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ネット上で実名晒しの被害を受けたときは、以下の方法で対処しましょう。
実名晒しの投稿を放置していると、被害者の損害がどんどん拡大してしまうおそれがあります。
そのため、サイト管理者に対して速やかに投稿を削除するよう求めましょう。
SNSや匿名掲示板では、投稿に関するガイドラインが設けられているのが一般的です。
ガイドライン違反の投稿については、通報・報告フォームから連絡すれば削除してもらえる可能性があります。
サイト管理者が削除に応じない場合は、裁判所に対して投稿削除の仮処分を申し立てることも検討しましょう。
被害者に著しい損害または急迫の危険が生じるおそれがあり、それを避けるために投稿を削除する必要があることを疎明すれば、裁判所によって仮処分命令が発せられます(民事保全法23条2項)。
仮処分命令を提示して、サイト管理者に対して再度削除を請求すれば、速やかに実名晒しの投稿を削除してもらえるでしょう。
実名晒しの投稿者が匿名である場合、損害賠償を請求するのに先立って、投稿者が誰であるかを特定しなければなりません。
投稿者を特定する方法としては、「発信者情報開示請求」(プロバイダ責任制限法5条)が代表的です。
サイト管理者(=コンテンツ・プロバイダ)やインターネット接続業者(=アクセス・プロバイダ)から、投稿者の個人情報の開示を受けられる可能性があります。
ただし、サイト管理者やインターネット接続業者が発信者情報開示請求に応じるのは、裁判所の判断が出た後に限られるケースが多いです。
発信者情報開示請求について裁判手続きを利用する際には、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
特にサイト管理者においては、一定期間が経過するとIPアドレスなどのログを削除することが多いので、弁護士に依頼して速やかに発信者情報開示請求をおこないましょう。
実名晒しの投稿者を特定できたら、プライバシー権侵害や名誉毀損を理由に損害賠償を請求しましょう。
実名晒しに関する損害賠償請求は、示談交渉や訴訟などを通じておこないます。
数十万円から100万円程度の慰謝料が認められるケースが多いですが、被害の立証や請求額の決定などに関して、慎重な法的検討と対応を要します。
弁護士のアドバイスを受けながら、十分な準備を整えた上で損害賠償請求をおこないましょう。
悪質な誹謗中傷を伴う実名晒しについては、刑事告訴も検討すべきです。
警察官(または検察官)に対して刑事告訴をすれば、名誉毀損罪や侮辱罪によって捜査がおこなわれ、犯人の検挙に至る可能性があります。
刑事告訴は、告訴状を提出しておこなうのが一般的です。
また告訴状と併せて、誹謗中傷による被害状況を示す資料を提出すれば、捜査に動いてもらえる可能性が高まります。
誹謗中傷を伴う実名晒しについて、刑事告訴をする方法が分からない方は、弁護士にご相談ください。
ネット上で実名晒しをした加害者から、被害者が適正な損害賠償を受けるためには、以下のポイントを押さえて対応することが大切です。
インターネット上での実名晒しについて認められる損害賠償の金額は、被害の状況に応じて変化します。
たとえば、投稿内容に悪質な誹謗中傷が含まれる場合には、高額の損害賠償が認められる傾向にあります。
実名晒しの投稿を発見したら、すべてスクリーンショットなどで保存し、証拠として提出できるようにしておきましょう。
また、実名晒しによって実生活に深刻な影響が出ている場合にも、高額の損害賠償が認められる傾向にあります。
たとえば実名と併せて住所も晒されていて、自宅に脅迫状や迷惑な郵便物が届いている場合などには、損害賠償の増額が見込めます。
届いた郵便物を保存するなど、被害状況に関する証拠を確保しましょう。
実名晒しが原因で精神疾患を患った場合にも、損害賠償の増額が期待できます。
医師に診断書を作成してもらい、病状を証明できるようにしておきましょう。
実名晒しの投稿者が匿名である場合は、速やかに発信者情報開示請求をおこない、投稿者の特定を急ぐべきです。
発信者情報開示請求への着手に時間がかかると、サイト管理者が投稿に紐づいたIPアドレスを削除してしまうなど、投稿者の特定に繋がる手がかりが失われてしまうおそれがあります。
実名晒しの投稿を発見したら、スピーディに投稿者の特定へ着手しましょう。
実名晒しの投稿者から適正額の損害賠償を得るためには、プライバシー権侵害や誹謗中傷への対応について豊富な経験を有する弁護士に相談しましょう。
経験豊富な弁護士に相談・依頼すれば、匿名投稿者を迅速に特定した上で、法的根拠に基づいて適正額の損害賠償を請求できる可能性が高まります。
実名晒しに関する損害賠償請求には多くの手間がかかりますが、能力のある弁護士に対応を一任すれば、ストレスなくスムーズに損害賠償請求をおこなうことができます。
インターネット上における実名晒しの被害にお悩みの方は、お早めに弁護士へご相談ください。
インターネット上で実名晒しの被害に遭ったら、プライバシー権侵害・名誉毀損による損害賠償請求や、名誉毀損罪・侮辱罪による刑事告訴を検討しましょう。
弁護士に相談すれば、損害賠償請求や刑事告訴についてサポートを受けられます。
特に損害賠償請求については、匿名投稿者の特定から示談交渉・訴訟に至るまで、一貫してサポートを受けることができます。
経験豊富な弁護士が適切に対応することにより、実名晒しの投稿者から適正額の損害賠償を得られる可能性が高まります。
インターネット上で不本意に実名が晒されて悩んでいる方は、弁護士にご相談ください。
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