投稿者の特定・訴訟
IPアドレスから個人の特定はできるか?誹謗中傷をしてくる相手を特定する方法
2024.08.02
発信者情報開示請求に係る意見照会とは、発信者情報開示請求がなされた際に「発信者の氏名・住所などの個人情報を請求者に開示してもよいか」について発信者自身の意見を求めるための手続きのことです。
ネット上で他人を誹謗中傷するネガティブな書き込みをしてしまった場合、被害者側が投稿者を特定するために、発信者情報開示請求をおこなう場合があります。
発信者に意見照会書が届いたということは、インターネット上での書き込みが原因で、被害者側が法的措置に踏み出す準備段階に入ったことを意味します。
しかし、ほとんどの人は意見照会書が家に届いても、どう対処したらいいかわからず悩んでしまうでしょう。
そこで本記事では、意見照会書が届くタイミングや意見照会書への対処法、意見照会書が届いた場合に弁護士へ相談する理由・メリットなどについてわかりやすく解説します。
ある日突然、家に意見照会書が届いて対応に困っている方は、ぜひ参考にしてください。
意見照会書とは、発信者情報開示請求をおこなった請求者に対して個人情報を開示することについての意見を確認するための書類のことです。
そもそも、発信者情報開示請求とは、SNSや匿名掲示板などに書き込みをした人物の個人情報を特定するための法的措置のことを指します。
匿名投稿者による誹謗中傷・名誉毀損トラブルに対応するために制定された「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称「プロバイダ責任制限法」)に基づく法的請求です。
発信者情報開示請求がおこなわれても、いきなりプロバイダ等が請求者に対して発信者の個人情報を開示することはありません。
情報開示をする前に、発信者本人に情報開示に同意するかの確認がおこなわれます。その際に交付されるのが「意見照会書」です。
意見照会書には「回答書」が同封されており、情報開示に対する同意・不同意の表明が求められます。
意見照会書が届いた理由は、発信者であるあなたに対して発信者情報開示請求がおこなわれたからです。
発信者情報開示請求がおこなわれたということは、請求者が発信者の発信者情報を入手したうえで、以下の法的責任を追及することを検討しているともいえるでしょう。
あなたが発信した情報に対して民事責任を追及されると、誹謗中傷などによって被害者側に生じた精神的損害等の金銭賠償を求められる可能性があります。
具体的な損害賠償額は、事案によって異なりますが、インターネット上の誹謗中傷トラブルの慰謝料相場は一般的に10万円~100万円の範囲といわれています。
また、SNSなどで誹謗中傷をしたケースでは、名誉毀損罪や侮辱罪などの容疑で刑事訴追される可能性もあります。
仮に逮捕・勾留されると数日~数週間の身柄拘束期間が生じるため、通常通りの生活を送ることは難しくなるでしょう。
起訴処分が下されて有罪判決が確定すると、刑事罰の負担を強いられるだけではなく、前科によるデメリットが今後の人生に付いて回ります。
将来的に生じる可能性があるリスクへ対処するためには、意見照会書が届いた段階で早期の防御活動をスタートするべきだといえるでしょう。
発信者の手元に届く意見照会書のサンプルは以下のとおりです。
意見照会書に記載されている項目には、以下のものが挙げられます。
意見照会書が届いた段階で、インターネット上でおこなったどの投稿についてどのような法的措置がとられようとしているのかを察知できます。
意見照会書が届いたら、速やかに弁護士に相談して今後の防御方針についてアドバイスをもらうべきでしょう。
被害者側の動向を確認するためには、意見照会書がいつ届くのかを把握しておくのが重要です。
ここでは、意見照会書が届く一般的なタイミングについて解説します。
意見照会書が届く1つ目のタイミングとして「コンテンツプロバイダに対して発信者情報開示請求がおこなわれたとき」が挙げられます。
コンテンツプロバイダとは、デジタル化された情報を提供する事業者のことです。
インターネットを介して、ニュース・画像・動画・音楽・電子書籍・SNSサービスなどのさまざまなデジタルコンテンツの配信サービスを提供しています。
たとえば、X(旧Twitter)、Facebook、5ちゃんねる、mixi、サイバーエージェント、LINEヤフーなどがコンテンツプロバイダに該当します。
コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示請求は、匿名投稿者を特定する第一段階として実施される手続きです。
コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示請求が認められた場合、コンテンツプロバイダが保管している発信者のIPアドレス・タイムスタンプなどの情報が公開されます。
コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示請求から、意見照会書が届くまでの期間は以下のとおりです。
なお、発信者に対して意見照会書が送付されるのは、コンテンツプロバイダ側が発信者の発信者情報を保有している場合に限られます。
つまり、利用登録をせずに誰でも簡単に利用できる匿名掲示板に誹謗中傷などを書き込んだケースでは、コンテンツプロバイダ側が発信者の情報を保管していないため、意見照会書が送付されることはないということです。
意見照会書が届く2つ目のタイミングは、「アクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求がおこなわれたとき」です。
意見照会書が届くのは、アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求が申し立てられてから1週間~4週間程度とされています。
アクセスプロバイダとは、ユーザーに対してインターネット接続という電気通信役務を提供する事業者のことです。例として、以下の事業者が挙げられます。
SNSや匿名掲示板などのインターネットサービスを利用する際にはプロバイダとの契約が必須なので(ただし、Free Wi-Fiなどを除く)、インターネット上の誹謗中傷トラブルを起こした加害者を特定するときには、「コンテンツプロバイダ側から提供されたログ・IPアドレスなどを使って、アクセスプロバイダが保管している発信者の発信者情報を入手する」という手順が踏まれます。
アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求が認められると、プロバイダ側が保有している発信者の住所・氏名・電話番号・メールアドレスなどの発信者情報が請求者に開示されます。
その後、被害者側の準備が整った段階で民事責任・刑事責任を追及することになるでしょう。
なお、2022年10月1日に改正プロバイダ責任制限法が施行されたことによって、被害者が匿名発信者を特定する手続きが従前よりも簡素化されました。
つまり、「SNSの匿名アカウントをわざわざ特定してまで法的責任を追及してくることはないだろう」「匿名発信者を特定する負担を考えると、被害者は泣き寝入りをする可能性のほうが高いはずだ」という安易な判断は厳禁だということです。
発信者側がなんとなく書き込んだ投稿でも、被害者側の受け止め次第で発信者情報開示請求がおこなわれる可能性は十分考えられます。
意見照会書が届いたら弁護士への相談・依頼は不可欠ですが、「匿名掲示板などでの書き込みが原因で訴えられるかもしれない」と不安を抱えている段階でも念のために専門家にアドバイスを求めるべきでしょう。
意見照会書が届くタイミングや被害者側が法的措置に踏み出す時期は、正確に判定できないのが実情です。
まず、SNSや匿名掲示板のネガティブな書き込みを被害者がすぐに気付くとは限りません。
被害者本人が問題の投稿に気付かない限り、法的措置に踏み出されることはないので、投稿をしてから意見照会書が届くまでの期間にはラグが生じるでしょう。
次に、被害者が自分を誹謗中傷する投稿に気付いたとしても、発信者情報開示請求の準備に一定の期間を要する可能性もあります。
このように、インターネット上で誹謗中傷・名誉毀損に該当する書き込みをしても、投稿をしてから意見照会書が届くまでの期間を見積もるのは現実的には難しいといえます。
反対に言うと、意見照会書が手元に届いたときには被害者側が法的責任追及に向けた準備を済ませている可能性が高いので、少しでも不安があるのなら、弁護士へ相談しておくとよいでしょう。
意見照会書はアクセスプロバイダと契約している住所・名義人宛に届きます。
しかし、誹謗中傷をした人物とアクセスプロバイダの契約名義人が異なるケースでは注意が必要です。
たとえば、誹謗中傷をした人物が実家に住んでおり、自宅のWi-Fiを親が契約している場合には、契約者である親を名宛人として意見照会書が届いてしまいます。
また、会社が契約しているインターネット回線を利用して誹謗中傷に該当する書き込みをすると、会社宛に意見照会書が郵送されます。
自分とは異なる人物がアクセスプロバイダと契約をしているケースでは、被害者側の発信者情報開示請求をきっかけに、名誉毀損トラブルを引き起こしたことが周囲にバレてしまう危険性があります。
会社バレ・身内バレのリスクを回避・軽減するには、速やかにインターネットトラブルを得意とする弁護士へ相談してください。
ここからは、発信者情報開示請求によって意見照会書が届いたときの対応方法を、個別の状況に応じて解説します。
意見照会書に記載されている投稿に一切心当たりがない場合は、回答書で「同意しない」を選択してください。
その場合、原則としてプロバイダが任意に開示することはありません。
「身に覚えがないから」という理由で手元に届いた意見照会書を無視することは絶対にやめてください。
なぜなら、「同意・不同意の意見さえ表明しない」という態度は、裁判所や請求者に対して非常に不誠実なものと受け取られかねないからです。
意見照会に回答しなかったときは、開示について意見がないものとして扱われ、発信者情報が開示されるケースも散見されます。
また、意見照会書が届いたということは、請求者側がプロバイダ責任制限法に基づいて発信者情報開示請求を実施し、指摘された投稿・書き込みに関してIPアドレスなどを特定できていることを意味します。
つまり、請求を受けた側にとっては身に覚えがなくても、発信者情報開示請求の根拠になる客観的な事実関係は存在するということです。
過去の投稿が原因になっているか、契約しているインターネット回線を利用して家族などが誹謗中傷の書き込みをしたことを理由に発信者情報開示請求が実施された可能性も考えられます。
投稿内容に心当たりがなくても、ネットの利用環境などに心当たりがある場合は、弁護士と相談のうえで意見照会書への対応を検討するべきでしょう。
発信者情報開示に係る意見照会書には、権利が侵害された理由・発信者情報開示請求を受ける理由が記載されています。
理由に納得できないときには、回答書において「同意しない」を選択したうえで、発信者情報開示を拒否する理由を丁寧に記載しましょう。
発信者情報開示に係る意見照会書の内容に納得できる場合には、回答書において「同意する」を選択して指定期日までに返送をしてください。
意見照会書で「同意する」を選択すると、請求者側に発信者の発信者情報が開示されるので、今後、被害者側が法的措置に踏み出す可能性が高いです。
そのため、意見照会書の内容に心当たりがあるなら、刑事責任・民事責任をできるだけ回避・軽減するための防御活動をスタートするのが重要だと考えられます。
たとえば、誹謗中傷などの被害者との間で早期に示談契約を締結させられれば、慰謝料額の減額を求めることができたり、刑事事件化を回避できる可能性もあります。
意見照会書が届いた段階で、速やかに弁護士に相談・依頼すると安心でしょう。
発信者情報開示に係る意見照会書が届いたとしても、法的な回答義務が課されるわけではありません。
そのため、意見照会書を無視しても問題ないともいえそうです。
しかし、意見照会書が届いたあとの各種手続きを考えると、意見照会書を無視するのは絶対に避けるべきといえます。
なぜなら、「無視」という行為は被害者・裁判所・捜査機関全てからの印象が悪くなってしまうからです。
たとえば、「無視=反省していない」と受け取られると、刑事処分の内容が厳しくなったり、慰謝料額が増額されたりしかねません。
発信者情報開示請求に同意するつもりがないのなら、「無視」をするのではなく、はっきりと「同意しない」旨を回答するべきでしょう。
ここでは、発信者情報開示に係る意見照会書への回答書を記載するときの方法や記載内容について解説します。
意見照会書には、以下のような回答書が同封されており、意見照会書の受領日から2週間以内に必要事項を記載したうえで返送しなければいけません。
2週間以内の回答が難しい場合には、速やかにプロバイダ側へ連絡をして、理由と回答期限の延長について説明をしてください。
発信者情報開示請求の内容や理由に同意をする場合には、「発信者情報開示に同意します。」の項目に「〇」と記入してください。
その他、回答書の上部にある「年月日」「住所」「氏名」「連絡先」を記載して押印すれば完了です。
まず、発信者情報開示請求の意見照会書の内容に反対をするときには、「発信者情報開示に同意しません。」の項目に「〇」と記入しましょう。
次に、発信者情報開示に同意しないケースでは、「理由」欄の記載が必要になる点に注意が必要です。
ここでは、同意しない理由ごとに、記入時の注意事項を解説します。
インターネット上の投稿や書き込みが権利侵害をしていないと考えるなら、その旨を丁寧に主張する必要があります。
発信者情報開示に係る意見照会書には、「侵害された権利」の項目に請求者側の主張内容が記載されているので、それに対する反論の形式で理由を記入すると効果的です。
「侵害された権利」に掲載されることが多い権利とそれに対する反論方法は以下のとおりです。
権利 | 反論方法・特記事項 |
名誉権 | 「名誉毀損をしていない」という主張を具体的に展開するのがポイント。 ・社会的評価を低下させるような「事実の摘示」はしていない ・名誉毀損に該当する書き込み・投稿はしたものの、公益性・公共性がある事柄であり、かつ、書き込み内容が真実であった(真実であると信じるに相当な理由があった) |
名誉感情 | 被害者を侮辱したかどうかは、書き込みの内容・経緯・回数・頻度・文脈などの諸般の事情を総合的に考慮して判断される。そのため、投稿内容や文脈などを踏まえると、被害者を侮辱したものではない旨を丁寧に説明すると効果的。 |
プライバシー権 | 投稿内容によって私生活上の情報を公開したわけではない理由を説明する。たとえば、「すでに公開されている情報を転載したに過ぎない」「書き込んだ内容はそもそもプライバシーに属するものではない」などの反論が考えられる。 |
肖像権 | インターネット上に他人の写真などをアップロードした場合に肖像権侵害の疑いをかけられる。以下のような反論が効果的。 ・被写体を特定できるほど鮮明に写り込んでいない ・全身が写っているものの、顔などの個人を特定できる箇所が写っていない ・モザイク加工を施している ・プライベートな空間ではなく、公共の場所での撮影で偶然写り込んでしまったに過ぎない ・撮影やアップロードについて撮影された人物から許可を得ていた |
「発信者情報開示請求に正当な理由がない」という理由で「同意しない」を選択するときには、その理由を丁寧に記載しましょう。
たとえば、発信者情報開示請求の根拠になる書き込みに身に覚えがない場合が典型例として挙げられます。
また、以下のような事情が存在する場合には、発信者情報開示請求の行使自体が無効である旨を主張するべきでしょう。
発信者情報開示請求の意見照会書に回答したあとの流れについて解説します。
まずは、発信者情報開示の任意請求に基づく意見照会書の回答書で「同意しない」を選択した場合です。
発信者自身が開示請求を拒否し、プロバイダ側も発信者の情報を開示するべきではないと判断した場合には、個人情報が開示されることはありません。
ただし、プロバイダ責任制限法の改正によって、開示請求の手続きが簡略化され、プロバイダに対する法的措置を1回の非訟事件手続きで行うことができるようになりました。
そのため、被害者側は匿名加害者の個人情報を入手するために、改正されたプロバイダ責任制限法に基づく法的措置を裁判所に対して申し立てる可能性が高いでしょう。
発信者情報開示に関する法的措置はコンテンツプロバイダ及びアクセスプロバイダに対して提起されるものなので、発信者本人はこの手続きに直接関与することはありません。
発信者情報開示に係る意見照会書に同意する旨を回答した場合、プロバイダ経由で発信者の個人情報が被害者に伝えられます。
匿名投稿者の個人情報を特定した被害者は、民事責任及び刑事責任を追及するための具体的な法的措置に踏み出す可能性が高いでしょう
たとえば、民事責任を追及する場合には、示談交渉や民事訴訟の方法によって慰謝料や損害賠償を請求します。
また、刑事責任の追及を視野に入れている場合には、捜査機関に対して刑事告訴をして、刑事事件化を目指すはずです。
民事責任・刑事責任を追及される場合、いよいよ相手方や捜査機関の動向を無視することはできません。
個人だけでの対応が難しいなら、速やかに弁護士へ相談・依頼をするべきでしょう。
インターネット上でトラブルを起こして権利侵害をした場合に請求される慰謝料相場は以下のとおりです。
なお、慰謝料額の相場はあくまでも目安でしかない点に注意が必要です。
たとえば、何百件とSNSで名誉毀損投稿を繰り返したような事案や盗撮したヌード動画を公開したような事案では、事案の悪質性に鑑みて相当高額の慰謝料を請求されかねません。
また、飲食店や企業に対する誹謗中傷によって売上が低下したようなケースでは、慰謝料とは別に、逸失利益などについて損害賠償請求される可能性もあります。
インターネット上で権利侵害行為に及んだ場合、加害者側だけでは、被害者側から合計いくらの慰謝料・損害賠償を請求されるかを判断するのは不可能です。
不当に高額の金銭賠償を求められないようにするためにも、弁護士のサポートが不可欠だといえるでしょう。
発信者情報開示に係る意見照会書が手元に届いたときには、インターネットトラブルを得意とする弁護士に依頼するのがおすすめです。
ここでは、意見照会書が届いたときに弁護士へ相談・依頼するメリット4つを紹介します。
発信者情報開示に係る意見照会書が届いた場合、まずは内容を精査して、紛争の内容を把握する必要があります。
「いつのどの投稿・書き込みに対して、被害者がどのような根拠で法的措置を検討しているのか」を理解しなければ、発信者側としても今後の対応を決められません。
弁護士に相談すれば、請求者側の主張内容を吟味したうえで、「情報開示に同意するべきか否か」「同意をするとして、現段階でどのような防御活動をスタートするべきか」などについてのアドバイスが期待できるでしょう。
発信者情報開示に係る意見照会書を受け取ったうえで、情報開示に同意しない場合、回答書には同意しない理由について丁寧な記載が求められます。
なぜなら、同意しない理由が正当な内容でなければ、プロバイダ側の判断次第で発信者の個人情報が請求者に伝えられる可能性があるからです。
弁護士に依頼をすれば、プロバイダや裁判所が納得するような説得力・法的根拠のある回答書を作成してもらえます。
場合によっては、個人情報の開示自体を阻止して、法的責任を追及されるリスクを軽減してもらえるでしょう。
弁護士に依頼することにより、発信者情報を特定されたあとの手続きを全て委任することができます。
たとえば、被害者側との示談交渉では、慰謝料の金額や支払い方法、支払い時期、宥恕条項などについて丁寧な話し合いを進めなければいけません。
なかには、相場から乖離した高額の慰謝料をふっかけてくる被害者も少なくはなく、加害者側とはいえ、冷静かつ丁寧に主張を展開する必要があります。
当事者同士の感情的な話し合いでは、合理的な和解条件での合意は難しいので、ノウハウを有する弁護士に交渉を任せたほうが、加害者側にとって有利な示談条件での合意形成に至ることもあります。
また、民事訴訟にまで発展した場合、答弁書の作成、各種証拠書類の準備や、口頭弁論期日への出席が求められます。
裁判所への出廷は全て平日なので、会社や学校に通いながら民事訴訟手続きを遂行するのは不可能に近いでしょう。
なお、弁護士に依頼をするなら、民事訴訟段階に至ってからではなく、示談交渉段階から依頼をすることをおすすめします。
交渉実績豊富な弁護士のサポートがあれば、示談段階で紛争解決を実現できる可能性が高まるので、民事訴訟自体を回避しやすくなるでしょう。
発信者情報開示請求を受けて法的責任を追及される場合、民事責任とは別に刑事責任の追及にも注意をする必要があります。
被害者側に刑事告訴をされると、以下のデメリットが生じる可能性があります。
意見照会書が届いた段階で弁護士へ依頼をすれば、被害者との間で示談交渉を開始して、速やかに双方納得の示談条件で和解契約を締結できる可能性が高まります。
一般的な示談契約書には、「慰謝料などの支払いに合意する代わりに、刑事告訴をしないこと」「提出済みの告訴状・被害届を速やかに取り下げること」などの条項が加えられることが多いです。
そのため、示談交渉をスタートして和解契約締結を実現できれば、民事紛争の早期解決だけではなく、刑事事件化自体も回避できるでしょう。
今後の生活のことを考えると、「刑事事件を起こした」という事実は不利な要因でしかありません。
意見照会書が届いた段階で弁護士へ相談することによって、社会生活に生じる悪影響の回避・軽減を目指すべきでしょう。
発信者情報開示に係る意見照会書が届いたときには、弁護士への相談・依頼がおすすめです。
ただし、弁護士に相談・依頼をする以上、一定の弁護士費用は発生します。
弁護士費用の目安は以下のとおりです。
弁護士費用は、各法律事務所が自由に設計・決定できるものです。
また、示談交渉だけを依頼するのか民事訴訟の対応も任せるのか、刑事事件化したときの弁護人活動も依頼するのかによっても、弁護士費用の計算方法は変わってきます。
実際に発生する弁護士費用については、相談・依頼を検討している法律事務所まで直接確認してください。
ここからは、発信者情報開示に係る意見照会書が届いた人からよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
似たような悩みを抱えている場合は、ぜひ参考にしてください。
発信者情報開示に係る意見照会書に対する回答期限は、「意見照会書の受領日から2週間以内」に設定されるのが一般的です。
ただし、発送元のプロバイダによって異なる回答期限を定めている場合があるので、必ず意見照会書の記載内容を確認してください。
また、万が一回答期限に間に合わないときには、無回答のまま放置するのではなく、プロバイダ側に連絡して、回答期限の延長について打診してみましょう。
発信者情報開示請求によって匿名投稿者の個人情報を特定するには、プロバイダ側が保管しているログ情報が必要です。
ログの保存期間は約3カ月~6カ月といわれています。つまり、誹謗中傷などの投稿をしてから1年以上が経過していれば、プロバイダ側にログ情報が残っていない可能性が高く、匿名投稿者を特定するのは難しいといえるでしょう。
ただし、匿名アカウントを継続して使っている場合や、問題の投稿が拡散されるなどして炎上している場合は、1年以上前の書き込みであったとしても、投稿者の個人情報がバレる可能性があります。
また、プロバイダのログ保存期間は明確に公表されているわけではなく、事業者によって保存期間も異なるので、「1年以上前のログ情報だから抹消されているに違いない」と決めつけるのは避けましょう。
1年以上前の書き込みだからといって、法的責任を追及されるリスクがゼロになったと確定することはできません。
インターネット上への書き込みが原因で法的責任を追及されるのではないかと不安を抱えている方は、念のために弁護士へ相談をして、今後とるべき防御活動や法的リスク追及の可能性について判断を仰ぐべきでしょう。
発信者情報開示に係る意見照会書に回答してから、実際に情報が開示されるまでの目安期間は以下のとおりです。
ただし、期間はあくまでも目安でしかなく、想像以上に早いタイミングで発信者情報が開示されて、被害者側が法的措置に踏み出すケースも少なくありません。
そのため、発信者情報開示に係る意見照会書が届いたときには、回答書を送付する前に弁護士へ相談すべきでしょう。
発信者情報開示に係る意見照会書は、2回届くのが一般的です。
これは、「任意の発信者情報開示請求」「裁判手続きに基づく発信者情報開示請求」の2段階の開示請求を取るのが、現在の実務だからです。
つまり、1回目の任意の発信者情報開示請求で「同意しない」を選択して、結果として、プロバイダ側が発信者情報を開示しなかったとしても、被害者側が2回目の裁判手続きに基づく発信者情報開示請求に踏み出す可能性があるということです。
「1回目の意見照会書が届いたが、同意しなかったら何もないままの状態が続いている」と油断をしていると、2回目の意見照会書が届いて厳しく法的責任を追及されかねないので、1回目の意見照会書が届いた段階で弁護士へ相談することを強くおすすめします。
意見照会書とは、発信者情報開示請求がおこなわれた際に、個人情報を開示について発信者自身の意見を確認するための書類です。
意見照会書が届いたということは、被害者が発信者を特定してなんらかの責任を追求しようとしている可能性が高いでしょう。
そのため、匿名掲示板やSNSなどへの書き込みについて発信者情報開示請求に係る意見照会書が手元に届いたときは、速やかに弁護士へ相談してください。
早期に専門家の力を借りることによって、将来的に発生する民事紛争・刑事事件に向けて充分な準備・対策ができるでしょう。
ベンナビITでは、インターネット上の誹謗中傷・名誉毀損トラブルを起こした加害者側の支援を得意とする弁護士を多数紹介中です。
法律事務所の所在地・具体的な相談内容・初回相談無料などのサービス面からニーズに適した専門家を検索できるので、この機会にぜひ活用してみてください。