食べログとの訴訟で口コミは消せるのか|裁判例や弁護士費用の目安

食べログとの訴訟で口コミは消せるのか|裁判例や弁護士費用の目安

アンケートアプリの開発・運営を手がける民間会社が、男女約1万6,000人を対象に実施した調査によると、『食べログ』の利用率は全年代でなんと38.3%にものぼることが明らかになりました。

直近1年以内の食べログ利用率引用元:飲食店検索サービスに関する調査【中編】|TesTee Lab.

ランチや飲み会で利用する店を決める際に、グルメサイトを利用する人が増えている時代、食べログは多くの利用者を集めています。

だからこそ食べログに悪い口コミが投稿されてしまうことは、飲食店にとって大打撃をまねく重大な事態といえます。

場合によっては食べログに店舗情報が掲載されている事自体、望まない店舗もあるでしょう。

過去には食べログの口コミの掲載や口コミによる風評被害を原因として、裁判に至った事例もありました。

食べログに投稿された悪い内容の口コミは削除できるのでしょうか?

本記事では、食べログの口コミを裁判によって削除する方法や、実際の裁判の事例などを紹介していきます。

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この記事を監修した弁護士
甲斐 伸明弁護士(東京みらい法律事務所)
2005年弁護士登録。インターネットの普及に伴うさまざまなトラブルに対し、培ってきた様々な知識・経験を活かし、被害者に寄り添う。テレビなどメディアでの掲載実績も多数有。

食べログを訴えた訴訟の一例

食べログについて口コミによる風評被害や店舗情報の無断掲載を争った事例を紹介します。

食べログの口コミで風評被害があったとして削除を求めた訴訟

北海道で飲食店を経営する会社が、ユーザーからの否定的な口コミ投稿を受けたことで店舗情報ページ全体の削除を求めた事例です。

この事例では、裁判所はそれぞれ次のように判示しています。

札幌地方裁判所(一審)サイト利用者の得られる情報が恣意的に制限されてしまうので削除は認められない
札幌高等裁判所(二審)飲食店を経営する以上、社会的に妥当な口コミであれば損失があっても受け入れるべき
最高裁判所上告不受理

原告となった店舗側は「否定的な書き込みをされない権利」を主張しましたが、裁判所は憲法が保障している「表現の自由」や閲覧者の「知る権利」を尊重した結果、裁判所は口コミ・ページ削除を認めないことになりました。

最決平成28年5月31日Westlaw Japan文献番号2016WLJPCA05316008

食べログに無断で掲載された店舗情報の削除を求めた訴訟

大阪市内のバーが食べログに対して、店舗情報の削除を求めた事例です。

原告のバーは「秘密の隠れ家」をコンセプトにしており、食べログに掲載された店舗情報のすべてについて削除を求めました。

一審の大阪地裁が店舗のホームページに住所や電話番号が公開されていることを理由に訴えを棄却したため、原告は大阪高等裁判所に控訴していましたが、高裁からの勧告で和解に至ったようです。

和解内容は明らかになっていませんが、食べログの店舗情報からは電話番号と地図情報が削除され、住所の一部のみが表示される形式に変更されました。

【参考】 「隠れ家バー」食べログ掲載、店側と運営会社が和解 公開の電話番号や地図削除|産経WEST

食べログの口コミ・店舗情報の削除は難しい

食べログでは、飲食店オーナーが自ら店舗情報を登録するだけでなく、実際に店舗を利用してほかのユーザーにもおすすめしたいと感じたら、ユーザー側で必要事項を入力して店舗情報の登録が可能です。

このシステムが、「勝手に店舗情報を掲載された」「ネット集客を考えていないのに口コミ被害を受けた」といったトラブルにつながっているといえるでしょう。

過去に争われた事例をみる限りでは、食べログにおける店舗情報自体の削除は簡単なことではありませんが、不可能というわけではありません。

食べログの口コミは基準を満たせば削除の可能性はある

食べログでは『口コミガイドライン』が定められており、以下の内容にあたる口コミは食べログ側の判断で削除・ユーザーへの修正依頼がおこなわれます

食べログで禁止されている口コミ
  • 実際にお食事をしていない人の書き込み
  • お店へ悪影響が及ぶ可能性がある事実確認が困難な事象の書き込み
  • 衛生管理面に関するクレーム
  • お店の法律違反・規約違反に関する書き込み
  • 個人への誹謗中傷とお店への断定的な批判
  • お店への個人的なクレームやトラブルに関する書き込み
  • トラブルがあったお店への書き込み

これらの口コミを受けた場合は削除が認められる可能性がありますが、いいかえれば「この基準に合致しない限りは削除されない」と考えられるでしょう。

問題ある口コミとして削除され得る口コミの例

ここで挙げるような口コミは、食べログのガイドラインに違反することになるので削除される可能性があります。

都内で何件もラーメン屋を巡っているが、その中でも最悪のお店だった。麺もスープも不味く、こんなお店に行く価値は全くない。
[※理由]『都内で最悪のお店』『行く価値はない』など、断定的な表現が含まれている。
大声で下ネタを話す中年グループが居てとても不快だった。店員も注意せずに放置しているし、家族で来店したことをとても後悔している。
[※理由]お店への口コミではなく、利用客への不満が書き込まれている
野菜タンメンを注文したのに野菜定食を出された。作り直しの時間も合わせて40分も待たされたのに、値引きやクーポンでのお詫びも何もなし。こんないい加減なお店は二度といきません。
[※理由]個人的なトラブルに関する不満が書き込まれている

食べログで削除されにくい口コミの例

一方で、以下に挙げるような内容の口コミであれば削除される可能性は低いでしょう。

雑誌で大体的に宣伝されていたが、料理の味は近所の個人店のお店とそこまで大差がない気がする。料金も少し高めだったし、自分はもう行かなくていいかな。
定食屋さんにしてはご飯とおかずのボリュームが少ないと感じました。学生さんや若い男性にはあまりおすすめできないかもです。

飲食店側にとっては不利益となる情報でも、ただちに店舗自体の評価が低下するとはいえません

また主観的な評価は、真実ではないことの反証が困難であるからです。

2週間経っても削除されない場合は法的措置も検討

食べログには店舗情報の掲示とともに「問題のある口コミを報告する」というタブが存在します。

利用規約やガイドラインに違反する口コミは運営に報告することで削除される可能性がありますが、削除を申請しても「削除した」「削除はみとめない」といった連絡が入ることはありません。

もし違反報告から2週間が経っても口コミが削除されていない場合は、運営側が「削除はみとめない」と判断したと考えて、別の手段を検討するべきです。

違反報告による任意の削除が叶わないなら、法的措置によって強制的に削除させる方法を考えていきましょう。

口コミを削除したい場合は裁判所からの削除命令の申立を検討

飲食店にとって不利益をまねくリスクがある口コミは、裁判所への申し立てによって削除命令を得られる可能性があります。

裁判所が削除命令を下すにあたって重要となるのが、口コミに具体的な権利侵害があるのかという点です。

単に「当店のことを低評価している」というだけでは削除されず、法的な権利侵害をもとに削除すべき理由を具体的に立証する必要があります。

先ほど、食べログを相手に訴訟を起こしても裁判所が削除を認めなかった2つの事例を紹介しましたが、これらは「店舗情報のすべてを削除してほしい」という訴えでした。

具体的な権利侵害にあたる口コミ部分のみにフォーカスした訴訟であれば、裁判所が削除命令を下す可能性はあります。

裁判(仮処分)から食べログの口コミ削除までの流れ

食べログに対して口コミの削除を求める裁判を起こした場合は、次のような流れで口コミが削除されます。

裁判というと決着までに長い時間がかかるイメージがありますが、口コミの削除を求める場合は比較的に短期間で暫定的な決定が下される『仮処分申立』を利用するのが一般的です。

  1. 仮処分申立書の提出
  2. 審理(削除すべき理由の証明)
  3. 担保金の支払い
  4. 仮処分命令の発令
  5. 口コミの削除

弁護士へ裁判(仮処分)を依頼する費用の目安

食べログに対する仮処分申立を弁護士に依頼した場合、次のような費用がかかります。

裁判(仮処分)費用の目安
弁護士費用着手金:20万円、報酬金15万円
担保金30〜50万円

担保金とは、違法・不当な仮処分申立によって食べログ側が負う損害を担保するものです。

違法・不当な申し立てでなければ、手続き終了後に還付されます。

弁護士へ相談するならIT分野に詳しい弁護士に

食べログにおける口コミの削除は、IT分野のトラブルについて詳しい弁護士への依頼をおすすめします。

口コミの削除は、掲示板サイトやSNSなどの誹謗中傷と比べると、サイト管理者や裁判所の判断も慎重です。

法的に認められる明らかな権利侵害の立証ができないと、裁判所の手続きを利用しても削除は認められないでしょう。

より確実に、スピーディーに削除を叶えたいなら、これまでに食べログの口コミ削除やインターネット分野に注力する弁護士に依頼するのがベストです。

食べログの口コミ投稿者の特定も可能

食べログは実名登録を義務としていません。

ニックネームで登録しているユーザーが大半であり、口コミを投稿した個人は特定できないことが多いです。

ただし裁判所に申し立てて、食べログにある利用者のIPアドレスと、投稿者が利用したプロバイダが持つ情報開示を受ければ、投稿者の特定が可能になります。

投稿者の特定が可能なのは、口コミが刑法の名誉毀損罪や信用毀損罪などに該当するような、権利侵害がある場合です。

投稿者が特定できれば、慰謝料や損害賠償の請求も可能になります。

特定には費用がかかるため、本当に訴訟を起こしてまで投稿者を特定する必要があるのかを弁護士に相談することをおすすめします。

口コミの投稿者を特定するまでの流れ

口コミの投稿者を特定するまでの流れは以下のとおりです。

  1. 食べログIPアドレスの開示請求
  2. IPアドレスからプロバイダの特定
  3. プロバイダへ契約者情報の開示請求
  4. 投稿者の特定

まず食べログに対して投稿者のIPアドレスなどの情報開示を求め、そのIPアドレスからたどったプロバイダに対して契約者の情報開示を受けます。

この二段階の開示請求によって、投稿者がどこの誰なのかが特定できるのです。

なお、2022年10月27日までに改正プロバイダ責任制限法が施行されます。

改正プロバイダ責任制限法では、従来2段階の裁判手続が必要だった発信者情報開示請求を、1回の非訟手続によって行うことができるようになります。

これにより、被害者側の負担が軽減すると考えられるでしょう。

また、ログイン時情報の発信者情報開示請求は、一定の条件はあるものの、明文で認められるようになります。

弁護士に特定のための開示請求を依頼する費用の相場

投稿者を特定するための開示請求にかかる弁護士費用の相場は以下のとおりです。

IPアドレス開示請求(仮処分)着手金:約20万円
報酬金:約15万円
契約者情報開示請求(裁判)着手金:約20〜30万円
報酬金:約15〜20万円

2回の開示請求にかかる弁護士費用の相場は、合計で70~85万円が相場になります。

これはあくまでも相場で、弁護士事務所によって多少の上下があることを心得ておきましょう。

また二段階の請求を同じ事務所に任せることで、着手金を節約できる場合があります。

弁護士費用といった点を含め、初回は相談料が無料の弁護士事務所もありますので、まずは弁護士事務所に相談しましょう。

まとめ

多くのユーザーが飲食店を利用する際の参考に食べログを利用しているので、悪い内容の口コミが投稿されてしまえば客足に大きく影響してしまうでしょう。

食べログが定めているガイドラインに違反した口コミであれば、違反報告による削除が期待できますが、食べログ側が削除を認めなかった場合は裁判所への申し立てで削除を目指すことになります。

また、裁判所の手続きを利用すれば投稿者の特定も可能なので、悪質な口コミ被害でお困りならただちに弁護士に相談してサポートを求めましょう

食べログにおける口コミの削除や投稿者の特定は、インターネット上のトラブルの解決実績がある弁護士への依頼をおすすめします。

IPアドレスの保管期限などを考えれば、できるだけ素早くアクションを起こすのがベストです。

食べログで問題のある口コミを発見したら、ただちに弁護士に相談しましょう。

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※一部の法律事務所に限り初回相談無料の場合があります
この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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