ネット誹謗中傷を弁護士費用保険で対策|補償内容と契約のメリットとは

ネット誹謗中傷を弁護士費用保険で対策|補償内容と契約のメリットとは

弁護士費用保険とは、弁護士に依頼・相談した時の費用を補償してもらえる保険です。

ネット誹謗中傷被害は弁護士の介入で解決できるケースも多いですが、依頼費用が高額になるため、泣き寝入りになる被害者も少なくありません。

弁護士費用の相場
削除依頼(仮処分)約20〜30万円
投稿者特定・慰謝料請求約60〜80万円

※依頼先や対象サイトによって費用は変わります。

しかし、近年、このような誹謗中傷トラブルへの対応について、弁護士費用保険を提供するサービスが発足しています。

もしこのような保険に加入していれば、誹謗中傷の被害を受けても弁護士費用の負担を軽減しつつ、削除依頼や加害者の特定などの対応を弁護士に依頼しやすくなるかもしれません。

この記事では、ネット誹謗中傷の対策に弁護士費用保険を活用するメリット、弁護士費用保険の補償などについて詳しくご紹介します。

ネット誹謗中傷について弁護士に相談する

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この記事を監修した弁護士
梅澤 康二
梅澤 康二弁護士(弁護士法人プラム綜合法律事務所)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

弁護士費用保険の補償の目安

弁護士費用保険の補償内容は保険の種類やプランによって異なります。

この記事では、『弁護士保険Mikata』についてご紹介します。

あくまでネット上の概括的説明を紹介するものですので、実際の保険適用の可否、範囲については契約の際に十分にご確認ください。

『弁護士保険Mikata』の保険プランは、月額2,980円の1種類のみです。

ネット誹謗中傷の被害を依頼する場合だと、以下の内容で着手金を負担してもらえます

※『報酬金』『日当』『実費』などは自己負担

保険金のお支払額支払い限度額
次のいずれか低い金額
①被保険者が弁護士等に支払う着手金・手数料の全額
②(当社の定める基準弁護士費用※-5万円)×70%
100万円
※Mikataが定める基準弁護士費用
訴訟事件15万円
保全命令申立事件10万円
示談向上事件5万円

【参考】普通保険約款|プリベント少額短期保険株式会社

支払われる補償額の計算例

例えば、加害者の訴訟依頼の着手金が20万円の場合だと、以下の計算式が適用されることになります。

15万円−5万円×70%=7万円

20万円の着手金に対して7万円の補償が支払われるので、着手金の負担は13万円で済むことになります。

弁護士費用保険へ加入するメリット

次にネット誹謗中傷対策で弁護士費用保険に加入するメリットを2点ご紹介します。

  • 弁護士へ依頼する敷居が低くなる
  • 保険加入を公表することによる抑止効果

弁護士へ依頼する敷居が低くなる

弁護士への依頼費用の内訳には、着手金と報酬金が代表例として挙げられます。

加害者への損害賠償(慰謝料など)請求が成功したら、報酬金はそこから支払うケースが一般的です。

しかし、着手金は依頼者がまず自己負担しなくてはいけません。

そのため、弁護士への依頼で最もネックになりやすいのが、着手金の支払いだと考えられます。

弁護士費用保険では、この着手金の負担を小さくすることが可能です。

保険加入を公表することによる抑止効果

弁護士費用保険に加入をすると、被保険者証とステッカーが配られます。

弁護士費用保険のステッカー

ネット上で何かしらの投稿・活動をしている場合に被保険証を示しつつ保険加入済であることをアピールすることで、悪質な誹謗中傷を抑止できる可能性があります。

ネット誹謗中傷事による事件例

近年よく見受けられるネット誹謗中傷の事件例をご紹介します。

X(旧Twitter)のデマ情報によるネットリンチ
煽り運転の同乗者だと誤った情報をSNSから拡散され、被害者の女性が大勢の人から誹謗中傷を受けた事件。
犯人からフォローされていて、服装が似ているからという理由だけで勘違いをされ、個人情報と悪評をネット上に晒される被害を受けました。
性的画像と住所を晒すリベンジポルノ
アダルトサイトに自身の性的な画像・動画と受書を公開されたリベンジポルノ事件。
無断で投稿された動画は60万回以上も再生され、被害者の自宅には住所を見て見知らぬ男が押し寄せるなど、精神的にも実生活でも大きな被害が生じました。

上記の例のように、自分にはまったく非がなくても、ネット誹謗中傷事件に巻き込まれるケースは少なくありません。

ネットが普及した現代では、万が一に備えて、誹謗中傷被害に遭ったときの対策を検討しておいた方が安心でしょう。

法律トラブルの発生確率は意外と高い

一般的には、法律トラブルは生活にあまり馴染みのないものと思われていますが、実は身近なところで多く発生しています。

法律トラブルの発生率

インターネット上の法的トラブルも増加傾向にある

法務省が公開しているインターネット上の誹謗中傷、個人情報の無断掲示、差別的な書き込み等による人権侵犯事件数でも増加傾向であることが見て取れます。

ネット人権侵害の発生件数引用元:法務省:インターネットを悪用した人権侵害をなくしましょう

このように、法律トラブルは実はとても身近なものである様子がわかります。

まだ身の回りに何もなくても、完全に他人事であるとは言い切れません。

ネット誹謗中傷だけでなく、今後起こりうる法律トラブルに備えておきたい場合は、弁護士費用保険の活用を検討されることをおすすめいたします。

ネット誹謗中傷の事件以外も補償される

弁護士費用保険で補償される法律トラブルは、ネット誹謗中傷事件だけではありません。

交通事故や離婚問題など、様々な場面で活用することができる場合もあるようです。

例えば、mikataでは弁護士費用保険の対象となるトラブルを以下の2つにカテゴライズしています。

  • 偶発事件
  • 一般事件

偶発事故の例

偶発事故とは、偶然起きてしまった不慮の事故のことです。

代表例としては、交通事故や物損事故などが挙げられます。

偶発事件

Mikataでは偶発事故について以下のような保障が予定されているようです。

保険金のお支払額支払い限度額
次のいずれか低い金額
①被保険者が弁護士等に支払う着手金・手数料の全額
②(当社の定める基準弁護士費用※-5万円)×100%
300万円

ネット誹謗中傷事件と異なり、着手金だけでなく『報酬金』『日当』『実費』なども補償の対象となります。

一般事件の例

一般事件とは、偶発事件以外の法律トラブルのことです。

代表例としては、離婚問題や労働トラブルなどが挙げられます。

なお、ネット誹謗中傷被害も一般事件に分類されています。

一般事件

Mikataでは一般事件について上記の『弁護士費用保険の補償の目安』でご紹介した着手金を保障対象とするようです。

弁護士費用保険に加入する際の注意点

最後に、弁護士費用保険に加入する際の注意事項を2点ご紹介します。

  • 保険期間内の事例について適用される
  • 保険適用外となる法律トラブルもある

保険期間内の事例について適用される

弁護士費用保険は保険ですので、当然、保険適用の期間が明確とされています。

例えば、弁護士費用保険mikataの場合には、『待機期間』と『不担保期間』があり、この期間中に発生した事件は補償対象外となります。

  • 待機期間:契約から3ヶ月以内
  • 不担保期間:契約から1年間(離婚・相続・親族関係のみが対象)

例えば、今すぐ法律トラブルが起きそうという状況であわてて弁護士費用保険に加入しても、上記待機期間中に事件が起きてしまえば保険適用は受けられませんので注意が必要です。

保険適用外となる法律トラブルもある

また、弁護士費用保険の適用がされる事件についても保険契約上明記されています。

例えば、Mikataでは以下のような事件は適用対象外のようです。

  • 国や地方公共団体、行政庁などが相手の法律事件
  • 破産、⺠事再⽣、特定調停、任意整理に関する法律事件
  • 刑事事件、少年事件、医療観察事件

Mikataについての保険適用範囲について詳細は、『普通保険約款』2ページ目の第3条をご確認ください。

なお、『弁護士費用保険mikata』は個人向けのサービスであるため、法人や個人事業主の事業に関与する法律トラブルも対象外のようです。

法人で弁護士費用保険への加入を検討されている場合は、法人向けのサービスをご活用ください。

まとめ

ネット誹謗中傷対策で弁護士費用保険に加入するメリットは、以下の通りです。

  • 着手金の負担を少なくできる
  • 誹謗中傷の抑止効果を期待できる

また、弁護士費用保険は交通事故や労働問題に隣人トラブルなど、様々な場面で活用することができるかもしれません。

将来的に起こりうる法律トラブルに備えておきたい場合は、保険への加入を検討されてみてはいかがでしょうか。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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