発信者情報開示請求が棄却されるケースは?失敗のパターンや事前準備のポイントなどを解説

発信者情報開示請求が棄却されるケースは?失敗のパターンや事前準備のポイントなどを解説

誹謗中傷などの投稿について、匿名の投稿者を特定する方法としては「発信者情報開示請求」が代表的です。

しかし発信者情報開示請求は、裁判所によって棄却されてしまうケースもあります。

発信者情報開示請求の棄却・失敗を防ぐためには、弁護士と協力した上での周到な準備が必要不可欠です。

誹謗中傷などの被害を受けている方は、速やかに弁護士へご相談ください。

本記事では、発信者情報開示請求が棄却されてしまうケースやその原因、発信者情報開示請求を成功させるための事前準備のポイントなどを解説します。

誹謗中傷の投稿者を発信者情報開示請求で特定しようとしている方は、本記事を参考にしてください。

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この記事を監修した弁護士
阿部 由羅
阿部 由羅弁護士(ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

発信者情報開示請求が棄却されるケース

発信者情報開示請求は、裁判所に対する申立てによっておこなうのが一般的です。

発信者情報開示請求が認められれば、誹謗中傷などをした匿名投稿者を特定できる可能性があります

しかし、発信者情報開示請求は常に認められるわけではなく、棄却されてしまうケースもあります。

具体的には、以下のいずれかに該当する場合には発信者情報開示請求が棄却されてしまいます。

  1. 権利侵害を受けていることが明らかとはいえない場合
  2. 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由が認められない場合
  3. 特定発信者情報の開示要件を満たさない場合

権利侵害を受けていることが明らかとはいえない場合

発信者情報開示請求が認められるためには、インターネット上での侵害情報(=誹謗中傷など)の流通によって、請求者の権利が侵害されたことが明らかであることが要件とされています(プロバイダ責任制限法5条1項1号)。

したがって、権利侵害を受けていることが明らかとはいえない場合は、発信者情報開示請求が認められません。

たとえば誰に対して誹謗中傷をしているのか明確でないような投稿や、主観的には気分を害し得るものの、客観的には社会的評価を下げるような内容とは言えない投稿などについては、発信者情報開示請求は棄却される可能性が高いと考えられます

発信者情報の開示を受けるべき正当な理由が認められない場合

発信者情報開示請求が認められるためには、請求者の損害賠償請求権の行使のために必要であるなど、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があることが要件とされています(プロバイダ責任制限法5条1項2号)。

したがって、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由が認められない場合は、発信者情報開示請求が棄却されてしまいます

極端な例ですが、たとえば投稿者に対して私的に報復(暴行など)をしようと考えている場合などには、発信者情報開示請求が認められません

特定発信者情報の開示要件を満たさない場合

発信者情報開示請求によって開示を受けられる「発信者情報」は、「特定発信者情報以外の発信者情報」と「特定発信者情報」の2つに区別されていますプロバイダ責任制限法施行規則2条、3条)。

特定発信者情報以外の発信者情報①氏名・名称
②住所
③電話番号
④電子メールアドレス
⑤侵害情報の送信に係るIPアドレス
⑥侵害情報の送信に係る移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号
⑦侵害情報の送信に係るSIM識別番号
⑧侵害情報が送信された年月日・時刻
⑨利用管理符号
特定発信者情報⑩専ら侵害関連通信に係るIPアドレス、ポート番号
⑪専ら侵害関連通信に係る移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号
⑫専ら侵害関連通信に係るSIM識別番号
⑬専ら侵害関連通信に係るSMS電話番号
⑭侵害情報の送信がおこなわれた年月日・時刻

※侵害情報:請求者が権利侵害を受けていると主張するインターネット上の情報

※侵害関連通信:侵害情報と相当の関連性を有する符号の電気通信による送信

このうち、特定発信者情報の開示を受けることができるのは、以下のいずれかの事情がある場合に限られています(プロバイダ責任制限法5条1項3号)。

特定発信者情報の開示を受けるための要件(いずれかに該当すればOK)
・相手方のプロバイダが特定発信者情報しか保有していない
・相手方のプロバイダが保有する特定発信者情報以外の発信者情報が、プロバイダ責任制限法施行規則4条に定めるものに限定されている
・特定発信者情報の開示を受けないと、発信者を特定できない

たとえば、サイト管理者が投稿に紐づいたIPアドレス(=特定発信者情報)を保有している場合でも、投稿者の氏名・名称や住所などの情報を保有している場合は、IPアドレスの開示を受けることはできません

氏名・名称や住所などの情報の開示を受けた方が、投稿者の特定に直接繋がるからです。

発信者情報開示請求をおこなう際には、まず特定発信者情報以外の発信者情報の開示を請求し、それができない場合に(予備的に)特定発信者情報の開示を請求する形をとりましょう。

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発信者情報開示請求が失敗する主な原因

発信者情報開示請求が棄却などによって失敗してしまうのは、主に以下の原因によります

  • 誹謗中傷等の被害に関する証拠が乏しい
  • 投稿そのものが削除されてしまっている
  • 発信者情報の保存期間が過ぎている
  • 発信者が自ら契約していない端末を使用して投稿した

誹謗中傷等の被害に関する証拠が乏しい

裁判所における発信者情報開示請求の手続きにおいては、誹謗中傷などによって権利侵害を受けている事実を疎明しなければなりません。

権利侵害の疎明は、基本的には客観的な証拠に基づいておこなう必要があります。

たとえば誹謗中傷の投稿を撮影したスクリーンショットなどが証拠になりますが、十分な証拠を確保できなければ、発信者情報開示請求が棄却されてしまう可能性が高いです。

特に、誹謗中傷が自分に向けられているのかどうか分かりにくい投稿や、一見すると誹謗中傷ではないように見える投稿については、「自分に対する誹謗中傷である」ことを合理的に説明する必要があります。

たとえば別の投稿と併せた文脈を説明するなどの方法が考えられますが、その際にも十分な証拠が揃っていないと、裁判所に権利侵害を認定してもらえず、発信者情報開示請求が棄却されてしまいます。

裁判所に発信者情報開示請求を認めてもらうには、十分な証拠を確保するなどの事前準備が必要不可欠です。

投稿そのものが削除されてしまっている

発信者情報開示請求に備えて証拠を確保しようとしても、すでに投稿そのものが削除されてしまっているケースがあります

削除された過去の投稿についても発信者情報開示請求は可能ですが、その投稿の内容を保存していなければ、権利侵害を受けた事実を証明することができません

誹謗中傷などの投稿を見つけたら、速やかにスクリーンショットなどでその証拠を確保しましょう

発信者情報の保存期間が過ぎている

投稿に紐づいたIPアドレスなどの発信者情報は、一定期間が過ぎるとサイト管理者が削除してしまうケースが多いです。

保存期間はサイト管理者の方針によるので一概に言えませんが、3か月から6か月程度が経過すると削除されてしまう可能性が高くなります

削除された発信者情報については、権利侵害の事実を疎明できたとしても、開示を受けることができません。

発信者情報の保存期間が経過しないように、迅速に発信者情報開示請求をおこないましょう。

発信者が自ら契約していない端末を使用して投稿した

発信者情報開示請求は、誹謗中傷などの投稿に用いられた端末の契約者を特定するのに役立ちます。

その一方で、発信者が自ら契約していない端末を使用して投稿した場合、発信者情報開示請求だけでは投稿者を特定することができません

たとえばインターネットカフェの端末を利用して誹謗中傷の投稿がなされた場合には、発信者情報開示請求をおこなっても、そのインターネットカフェの端末から投稿がなされたことが判明するだけです。

このようなケースにおいて投稿者を特定するためには、発信者情報開示請求以外の方法も組み合わせる必要があります。

たとえば上記のケースでは、インターネットカフェの利用履歴と照合すれば、誹謗中傷などの投稿者が判明する可能性があるでしょう。

発信者情報開示請求が棄却・失敗となった場合のリスク

発信者情報開示請求が棄却などによって失敗してしまうと、誹謗中傷などの投稿者を特定できず、損害賠償請求などによって責任を追及する機会を逸してしまうおそれがあります

被害者にとっては、心理的にも経済的にも大きなダメージとなってしまうでしょう。

次の項目で紹介する事前準備をしっかりとおこない、発信者情報開示請求の成功を目指しましょう

発信者情報開示請求を成功させるための事前準備

発信者情報開示請求を成功させるためには、以下の事前準備をおこないましょう

  • 誹謗中傷等の証拠を十分に確保する
  • 迅速に発信者情報開示請求をおこなう
  • 必要に応じて発信者情報開示請求以外の方法も併用する
  • 発信者情報開示請求の経験を豊富に有する弁護士に依頼する

誹謗中傷等の証拠を十分に確保する

裁判手続きによって発信者情報開示請求をおこなう際には、客観的な証拠を確保することが非常に重要です。

権利侵害の事実を疎明できるように、投稿のスクリーンショットを撮影するなど、十分な客観的証拠を確保して提出しましょう

迅速に発信者情報開示請求をおこなう

誹謗中傷などの投稿は削除されてしまうことがあるほか、IPアドレスなどの発信者情報も、一定期間が過ぎると削除されてしまうケースが多いです。

発信者情報開示請求への着手が遅れれば遅れるほど、誹謗中傷などの投稿者の特定は難しくなってしまいます。

自分に対する誹謗中傷など不適切な投稿を発見したら、迅速に発信者情報開示請求へ着手しましょう

必要に応じて発信者情報開示請求以外の方法も併用する

前述のとおり、発信者情報開示請求をおこなっても、投稿に用いられた端末の契約者が投稿者本人でない場合は、まだ投稿者を特定するには至りません。

たとえばインターネットカフェの端末からの投稿であれば、店舗の利用履歴の開示を請求すれば、発信者情報開示請求の結果と併せて投稿者を特定できる可能性があります

発信者情報開示請求の結果を踏まえた上で、必要に応じて発信者情報開示請求以外の方法も併用し、投稿者の特定を試みましょう

発信者情報開示請求の経験を豊富に有する弁護士に依頼する

発信者情報開示請求を成功させるためには、経験豊富な弁護士のサポートが必要不可欠です。

発信者情報開示請求について豊富な経験・実績を有する弁護士に依頼すれば、複雑かつ専門的な裁判手続きにもスムーズに対応してもらえます。

また、発信者情報開示請求の要件を踏まえた準備を整えることができるため、迅速に発信者情報の開示を受けられる可能性が高まります

インターネット上で自分に対する誹謗中傷などの匿名投稿を発見したら、発信者情報開示請求について速やかに弁護士へご相談ください。

発信者情報開示請求の依頼にかかる弁護士費用

発信者情報開示請求を弁護士に依頼する際には、弁護士費用が発生します。

発信者情報開示請求の弁護士費用は、30万円から100万円程度かかるケースが多いです。

具体的な弁護士費用の金額は依頼先によって異なるので、正式な依頼の前に必ず見積もりを取得しましょう。

複数の弁護士から見積もりを取得して比較すれば、合理的な金額で発信者情報開示請求を依頼することができます

さいごに|発信者情報開示請求を成功させるためには、弁護士に相談を

発信者情報開示請求は、十分な準備を整えなければ、裁判所によって棄却されてしまうおそれがあります

また、仮に発信者情報開示請求が認められても、それだけでは誹謗中傷などの投稿者の特定に至らないケースもあります。

これらの失敗のリスクをできる限り防ぎ、発信者情報開示請求の成功率を高めるためには、経験豊富な弁護士のサポートが必要不可欠です。

「ベンナビIT」には、発信者情報開示請求を豊富に取り扱う弁護士が多数登録されています。

相談内容や地域に応じてスムーズに弁護士を検索できるほか、多くの弁護士は無料相談を受け付けています

インターネット上で匿名アカウントによる誹謗中傷を受けてお困りの方は、「ベンナビIT」を通じてお早めに弁護士へご相談ください。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法ナビ債務を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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