逮捕歴は削除できる? 個人で削除する方法、弁護士に依頼するメリット

逮捕歴は削除できる? 個人で削除する方法、弁護士に依頼するメリット

刑事事件で捜査機関に逮捕された場合、事件の内容などによっては実名報道されることがあります

実名報道されるとネット掲示板やSNSなどで話題になることもあり、インターネットで調べるといつでも自分の過去の逮捕歴を知られる状態になってしまいます。

その記事は将来も、長い時間が経っても消えることなく人の目に触れてしまうこともあります

その結果、日常生活を送ったり、再就職したりするにあたり不利益が生じることもあるでしょう。

この記事では、インターネット上に逮捕歴が掲載されている方に向けて、逮捕記事を削除できるケース、削除できるかどうかの判断基準、自分で投稿を削除する方法、逮捕記事を放置するリスクなどについて解説します(捜査機関が保有する前科・前歴情報の削除ではないことに注意が必要です。)。

また、逮捕記事を自分で削除するのが困難な方に向けて、インターネットトラブルが得意な弁護士に依頼するメリットも紹介します。

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ネット上の逮捕記事は削除できるケースとできないケースがある

一般的に、逮捕歴は個人のプライバシーに属する事実としてみだりに公表されてはいけないものと考えられています

しかし、逮捕歴の公表には、表現の自由、報道の自由、知る権利も関係するため、公表されない利益と公表する利益を比較して「公表されない利益が上回るなら削除できる」とされています。

まずは、逮捕記事の削除基準や最高裁判所の判例などを確認しましょう。

逮捕記事を削除できるかどうかの判断基準

インターネット上の逮捕記事を削除できるかどうかは、「事件の内容・時期・裁判結果や処分の内容」や「本人の日常への影響度」、「当該個人が公的立場にある者か、公表された当時の目的の公益性」などによって異なります。

それぞれのポイントについて解説します。

事件の内容・時期・裁判結果や処分の内容

逮捕歴が掲載された記事や投稿を削除できるかどうかは、事件の内容、時期、裁判結果などによって異なります。

それぞれの評価のされかたについては、以下のとおりです。

なお、これらの基準を総合的に判断して決まるため、削除が認められやすい項目に当てはまることが多くても、必ずしも削除が認められるわけではないので注意しましょう

削除が認められやすくなる削除が認められにくくなる
事件の内容犯罪内容が軽微である犯罪内容が重大である
公人による犯罪である
事件の時期事件から相当な期間を経ている事件直後で注目されている
裁判の結果不起訴処分などになっている(不起訴の理由によっても難易度が変化)有罪判決になっている

本人の日常への影響度

逮捕記事を削除できるかどうかは、当該記事や投稿による本人の日常生活、仕事への影響度も考慮されます。

逮捕記事が掲載されたことで日常生活や仕事に不都合が生じている場合は、逮捕記事や投稿の削除が認められやすくなるでしょう

一方、結婚や就職ができており不都合が少ない場合は、削除が認められにくい傾向があります。

ネット投稿の媒体の性格

逮捕記事を削除できるかどうかは、情報が掲載された媒体の性格も影響します

たとえば、検索エンジンの結果ページに表示されるような場合であれば、検索エンジンの情報流通の基盤としての役割を重視して削除が認められにくくなります。

一方、SNSなどに掲載されている場合は、逮捕された人の家族や知人などに知られるリスクが高まるため削除が認められやすくなります

公益性

逮捕記事を削除できるかどうかは、当該個人が公的立場にある者か、公表された当時の目的が公益性を有するかも考慮されます

公益性が強く認定される場合には、削除が認められにくくなります

一方、公益性がそれほど強くない場合には、削除が認められやすくなります

逮捕記事の削除に関する最高裁判所の判断

逮捕記事の削除請求事件は、最高裁判所で争われることもあります

最高裁判所でも事件の内容・時期、日常生活への影響度、情報の伝播のしやすさ、公益性などを考慮し、逮捕記事の削除が認められるかどうかを総合的に判断しています

ここでは、削除が認められたケースと認められかったケースをそれぞれ確認しましょう。

事例①削除が認められたケース

まずは、最高裁判所が逮捕記事の削除を認めたケースです。

Twitterに建造物侵入により逮捕された旨が投稿されている事件について、最高裁判所は建造物侵入が軽微な犯罪ではないにしても、事件から約8年が経過しており、罰金刑の言い渡しの効力が失われていること、Twitterの性質上長期にわたって閲覧され続けることを目的としないこと、面識のある人に伝播される可能性が小さいとはいえないことなどを考慮し、Twitter上からの逮捕記事の削除を認めました

【事例の判断のポイント】

事件の内容建造物侵入の被疑事実である
公的な立場にある者ではない
事件の時期事件から約8年経過している
裁判の結果罰金刑。ただし、刑の言い渡しの効力が失われている
日常生活への影響度×
情報の伝播のしやすさ氏名条件として検索すると当該ツイートが表示される
当該事実を知らない人に伝播する可能性がある
公益性逮捕から時間が経っていて公益性は小さくなっている

【参考】裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

事例②削除が認められなかったケース

次に、最高裁判所が逮捕記事の削除を認めなかったケースです。

検索エンジンの結果に逮捕記事に関するタイトルやURLが表示されている事件について、最高裁判所は児童買春が児童に対する性的搾取および性的虐待と位置付けられており、社会的にも強く非難されていることなどから現在も公共の利害に関係する事項と判断し、伝播の範囲が限られていることや民間企業に勤めながら妻子と暮らしていることも考慮して、当該検索結果の削除を認めませんでした

【事例の判断のポイント】

事件の内容児童買春
事件の時期事件から約5年経過している
裁判の結果罰金刑
日常生活への影響度小さい(※妻子とともに生活し、民間企業で働いている)
情報の伝播のしやすさ伝播の範囲はある程度限られたものといえる
公益性児童買春が社会的にも強く非難されるものであること
から公益性を有する

【参考】裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

ネット上の逮捕記事を自分で削除する方法

インターネット上の逮捕記事に関する投稿は、自力で削除できる場合があります

削除手段はいくつかあり、サイト管理者によって異なります。

ここでは、インターネット上の逮捕記事を自分で削除する方法について確認しましょう

問い合わせフォームで削除申請する

ネット掲示板やSNSなどに自分の逮捕記事が掲載されている場合、まずは削除フォームや問い合わせフォームから削除申請を出すのがおすすめです。

具体的な申請方法はそれぞれのネット掲示板やSNSで異なりますが、通常は専用フォームに削除したい投稿のURLや削除したい理由などを入力するだけで削除申請を出すことができます。

サイト管理者がその申請内容を確認し、権利侵害と認めた場合は数日程度で逮捕歴に関する投稿が削除されます

サイト管理者へメールを送信する

専用フォームが設置されていない場合は、メールで削除依頼を出せないか確認するのがおすすめです。

メールでの削除申請には、本文に削除したい投稿のURLや削除したい理由などを記載し送信する形式と、「送信防止措置依頼書」を添付し送信する形式があります。

Webサイトなどを確認のうえ、指定された申請方法で削除依頼を出しましょう

ネット上の逮捕記事削除は弁護士に依頼するのがおすすめ

ネット掲示板やSNSなどに投稿された逮捕記事を削除したい場合は、インターネットトラブルが得意な弁護士に依頼するのがおすすめです。

弁護士に依頼した場合、自力で削除するよりも迅速な解決が望めたり、裁判手続にも対応できたりします。

ここでは、インターネット上の逮捕記事の削除を弁護士に依頼するメリットを紹介します。

自力よりもスピーディーな解決が期待できる

インターネット上に逮捕記事に関する記事や書き込みがされた場合、それを放置すると日常生活や就職などで不利益が生じる可能性があります。

そのため、できる限り早く削除するのが重要です。

しかし、中にはサイト管理者の連絡先がわからない場合や任意の削除請求に応じてもらえない場合などもあり、自力で対応すると時間がかかってしまうこともあります。

そのようなときには、特に弁護士に依頼して迅速に削除手続を進めてもらうとよいでしょう

法律知識に基づいた主張が可能となる

逮捕記事は、プライバシー権の一種であり「公表されない利益」に該当すると考えられていますが、当該記事や投稿を削除できるかどうかはそのほかの権利との兼ね合いで変わってきます。

そのため、削除依頼を出す場合は、法律知識に基づいて適切に権利侵害を主張することが重要です。

弁護士に依頼している場合は、公表されない利益が公表される利益を優越していることを主張してくれるため、当該記事や投稿を削除できる可能性が高まります(ただし絶対ではありません。)。

裁判手続にも対応してくれる

インターネット上の記事や投稿を削除する手段は大きく、サイト管理者に直接依頼する「任意削除」と裁判所を通じておこなう「法的手続」に分けられます

弁護士には任意削除だけでなく、以下のような法的手続を依頼することも可能です(任意削除とは別途の依頼となることが一般的です。)。

任意削除に応じてもらえない場合には、インターネットトラブルが得意な弁護士に相談しましょう。

  • 削除仮処分命令の申立て
  • 削除請求訴訟の提起(仮処分命令で削除されない場合)
  • サーバー管理者への発信者情報開示請求(サイト管理者の連絡先が不明な場合)

逮捕記事削除を弁護士に依頼する場合の弁護士費用

インターネット上の逮捕記事の削除を弁護士に依頼した場合の費用の目安は、以下のとおりです。

なお、弁護士事務所や依頼内容によって料金が異なるため、正式な依頼をする前に必ずいくらくらいになるかを確認しておきましょう

削除の方法費用
任意による削除の場合着手金:5万〜10万円程度
報酬金:5万〜10万円程度
仮処分申し立てをおこなう場合着手金: 20万円程度
報酬金: 15万円程度
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ネット上の逮捕記事を放置するリスク

前科と異なり、 インターネット上の逮捕記事があるからといって法律上の不利益が生じるわけではありません

しかし、私生活や職場などでは不利益を被る可能性もあります。

ここでは、インターネット上の逮捕記事を放置するリスクを紹介します。

職場での評価・処分に影響が出る

逮捕された場合であっても、必ずしも職場の評価や処分に影響が出るわけではありません

しかし、「逮捕されたこと」が解雇事由になっている場合、経営者や人事担当者などに逮捕歴が知られてしまい、解雇の対象になるリスクはあります

なお、通常は逮捕ではなく「有罪判決」を解雇事由としている企業のほうが多いです。

就職・転職活動が厳しくなる

逮捕歴は賞罰に当たらないため、履歴書に書く必要はありません。

そのため、基本的には就職・転職への影響は少ないと考えられます

しかし、経営者や人事担当者などが、インターネットで逮捕記事を調べる可能性はあります。

どのような人材を採用するかは企業の自由であるため、逮捕記事があることで採用されないということもあり得ます

賃貸契約に影響が出る

賃貸契約をする際には、賃貸物件の大家や管理会社などが入居審査をおこないます。

入居審査では、支払能力の有無、保証人・保証機関の可否、入居者の性格や属性などを確認されることが多いです。

また、場合によってはインターネットで逮捕記事が調べられることもあり、逮捕記事があった場合は賃貸契約が断られてしまう可能性があります

家族にも影響を及ぼす可能性がある

逮捕された方に配偶者や子どもなどがいる場合、その方たちに対して悪影響が生じる可能性もあります。

逮捕記事を見た近所の住人から差別を受けたり、学校でいじめられたりすることは少なくなく、住所や電話番号を特定されて嫌がらせを受ける可能性もあります

平穏に日常生活を送ることができず、ストレスにつながってしまうかもしれません。

逮捕記事の削除に関するよくある質問

最後に、逮捕記事の削除に関するよくある質問・疑問に回答します。

Q.サイト管理者がわからない場合でも削除できる?

個人ブログなどに逮捕記事が投稿されている場合、その運営者の連絡先がわからないことがあります。

連絡先がわからない場合は、まずWhoisを使いサイト管理者に関する情報を調査し、それから特定できたサイト管理者に対して削除依頼を出します。

しかし、Whoisでもサイト管理者を特定できない場合があります。

そのような場合にはサーバー管理者を特定し、そのサーバー管理者経由でサイト管理者に対して削除依頼を出す手続きが必要になるでしょう

Q.仮処分命令で投稿が削除されない場合はどうすべき?

裁判所から仮処分命令が発令されたにもかかわらず、サイト管理者が当該投稿を削除しないこともあります

そのような場合には、仮処分命令の強制執行として、裁判所に間接強制の命令を下してもらう必要があります。

この間接強制の命令は、一定の期限までに記事を削除しなければ制裁金の支払いを命じるものです。

サイト管理者が削除しなければ多額のお金を支払わなければならなくなってしまうため、削除に応じることが期待できます

まとめ|ネット上の逮捕記事の削除は弁護士へ依頼を

インターネット上に逮捕記事が残り続けると、私生活や仕事などにも影響が出てしまうリスクがあります

そのため、できる限り早く当該記事や投稿を掲載しているサイト管理者に連絡し、削除してもらうのが望ましいでしょう。

また、当該記事や投稿を削除するのが難しい場合には、インターネットトラブルが得意な弁護士に相談・依頼することをおすすめします

インターネットトラブルが得意な弁護士は「ベンナビIT」で見つけることができます。

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監修記事
弁護士法人アークレスト法律事務所
野口 明男 (第二東京弁護士会)
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アシロ編集部
編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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